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Karte.1 自己愛の可不可-水鏡
自己愛の可不可-水鏡 14
しおりを挟む珠樹はガウンの帯を解き、そのまま床へ、するり、と落とした。
朝の眩しい光の中に、洗練された肢体が浮かび上がる。
「きれいだ、珠樹……。水面に映った俺の半身……」
冬樹はベッドに腰を預けたまま、その素肌に口づけた。前に立つ珠樹の腰を静かに抱き寄せ、舌を立てて、肌を、濡らす。
「……春名先生に、もう一つ訊かれたよ」
舌先に応えながら、珠樹は言った。
「また、あの医者の話か」
冬樹が不機嫌を露に、瞳を細める。
「同性との性交渉はあるか、って」
「それで?」
「ぼくと冬樹はどうなんだろう?」
目の前にある冬樹の髪に指を絡め、珠樹は、あの日、春名に問われて応えられなかった問いを、持ち出した。
「俺たちは離れているのが不自然なんだ。こうして一つに還る時が本来の姿だ。この唇も、首筋も、腕も、胸も……。そして、これも……全て同じだ……」
指先がゆっくりと肢体を這い、官能の中心を口に含む。
「冬樹……」
搦み付く舌と、注ぎ込まれる愛撫に、体はすぐに溶け始めた。
一番敏感な部分を慣れた舌が巧みに責め立て、指先が慈しむように、全身を、撫でる。
「……そうだろ? 感じるところも、感じ方も同じだ」
「続けて……」
「ああ」
求める体に与えられる官能が、火照った肌を震わせる。
喉の奥まで含んでは、舌が巧みに絡み付く。
口の中で熱く育つ官能は、指先が開く後ろの蕾に呼応して、愛しいほどに懐かしい鼓動を伝え、届けた。
熱い吐息に、触れる指に、全ての感覚が溶けて、交わる。
――ぼくたちは、一つに、還る……。
「あっ……う……」
珠樹は、込み上げる懐かしさに、喉を開いた。
「まだ……だ……。まだ……。冬樹……」
まだ、全てではない。
まだ、一つだった頃の二人では――。
同じ卵の中にいた二人では……。
「く……っ。冬……」
「……来いよ、ベッドへ。一緒に還ろう……」
冬樹の腕が、珠樹の汗ばむ肌を、シーツに誘う。
水鏡をのぞき込むように、二つの肢体が、美しい形に、重なり合った。
「……先にやる?」
「後でいい……」
どっちがそう言ったのかは、判らない。――いや、どっちでも同じことなのだ。
――ぼくたちは、一つ、なのだから……。
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参考文献
ナルシズム 中西信男著 講談社刊 自閉症 玉井収介著 講談社刊 異常の構造 木村敏著 講談社刊 心理テスト 岡堂 哲雄著 精神病理から見る現代思想 小林敏明著
ナルシズム 中西信男著 講談社刊 自閉症 玉井収介著 講談社刊 異常の構造 木村敏著 講談社刊 心理テスト 岡堂 哲雄著 精神病理から見る現代思想 小林敏明著
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