My Doctor

west forest

文字の大きさ
上 下
2 / 4
第1章:始まり

2.壊される日常

しおりを挟む
次の日。

わたしは朝から頭が重かった。
はぁ…。絶対熱あるしこれ…。
学校行きたくない。
きっと熱があることも先生にばれてしまうだろう…。

怖い。怖い。もう病院に戻りたくない。

でも学校にいかなきゃお父さんになにされるかわかったもんじゃない…。

わたしの家、篠崎家は代々『篠崎総合病院』を営んでいて、もちろんお父さんは委員長である。

とにかく世間体を気にするので、心臓の弱い、なんの役にも立たない私の存在は周囲に消されている。

現在中学二年生の私の妹。篠崎 夏愛(しのざき なつめ)。
なつめは勉強も運動も完璧にこなす。

そのため、周りからはとてもいい一人娘がいる、と思われている。
私が篠崎家の長女だとばれるときっと追い出される。殺されるかもしれない…。



「…いってきます。」
もちろんまた返事はない。

学校に着いた頃、さらに具合は悪くなっていった…。

最悪だ…しかも今日は体育ある。
でも絶対保健室には行きたくない。

ああ…。昨日の失態は思い出しただけで嫌だ…。もう二度と、あの人と関わりたくない。

そんなことを思っていると、
「おい」

「げっ…」
よりによって1番会いたくない奴…。

「ちょっとこい」
私はまた保健室まで連れていかれた。

丸椅子に座ると、さっそく取り調べが…

「昨日、あの後熱は上がったか?」

…本当のことを言えるわけがない。

「大丈夫です。すぐ下がりました。昨日もぐっすり寝れたので、平気です。
失礼します。」

そそくさと立ち去ろうとしたが
くらっ…
えっ…。立ちくらみかな…。立ち上がることができず椅子に戻ってしまう。
すぐにふたたび立ち上がり、出て行こうとすると、

がしっ。ああ、また捕まった…。
「逃げんな。おい。昨日の約束覚えてるか?悪い時はいえって言っただろう。」

くそっ…。このままじゃばれちゃう…。
わたしは手を振りほどいて駆け出した。

「はぁ…。はぁ…。ここまでくれば大丈夫かな。」
「ゴホゴホッ」
やばい。また喘息が…。
くらくらしてきた…。

もう全部全部あの男のせいだ…。
何もかも、あいつにめちゃくちゃにされる…。後ろを振り返ると、あいつが走ってくる。

逃げなきゃ…!そう思ったけど思うように力が入らない…。
結局すぐ追いつかれてしまった…。

「逃げるな!!
おとなしくしてろ!
また喘息出たろ?」

「うる…!さい…!ゲホッ…
ほっといてって…!ハァ…いってるっ…ハァハァハァ…ゲホゲホッ」

「ゆっくり。深呼吸。落ち着いて。」

熱のせいか、意識がもうろうとしてうまく聞き取れない…。

「しっかり!意識は保って!深呼吸だ」

もう…なんなんだよ…お前のせいなのに
なんでこんなにかまうんだよ……

するとふっとわたしの体が浮いた…
お姫様抱っこされて、そのまま保健室に連行されたためだった。

ベットに寝かされると、吸引器を使って喘息を落ち着かせる。

「ゆっくり深呼吸、飛ばすなよ、意識は」

「わかっ…てる、ハァ…」
いま意識を失ったらきっと病院に連れて行かれる。
なんとしてでも耐えなければ。


喘息は治ったが熱がさらに上がったらしく、視界が歪んで見える…。

「とりあえず熱はかるぞ。」

「いや…」
精一杯抵抗するが、そんな力残ってるわけもなく、簡単に体温計を入れられてしまう。

ピピピピッ

取り出した体温計をみて一瞬先生が驚いた。

「お前、平熱何度だ」

「35.8…」

「病院に…」

「いやっ!!」
その言葉を聞いて、わたしはとびおきる。

枕を先生に投げつけ、外に出ようとするがベットから数歩のところで動けなくなってしまった。

また先生に抱えられベットに戻る。

「…悪かった。落ち着け。
その代わり点滴させろ。」

病院に行かなくて済むなら…

「わかった…。」

「じゃあ、少し痛むぞ」

チクッ。

「2時間くらいしたらはずすから、それまで寝てろ。」

わたしは素直に目を閉じた。
その間に、氷枕を当てたり冷えピタを貼ってくれたのがわかった。



目がさめると、時計はお昼を下げていた。まだ多少体が熱いが、さっきよりは下がったらしい。ゆっくり体を起こすと頭に激痛が走った。

「うっ…」
思わず頭を抱え込む。

シャッ。カーテンが開く。

しまった。ばれる…

一瞬のことだったのに先生はきずいていた。
「頭痛、ひどいか?痛み止め飲むか…」

そう言って薬を用意してくれる。

わたしは飲む気になれなかったけど、あまりにも痛くて素直に薬を飲んだ。

飲み終わると体温計をはさんでくる。
わたしが拒むから、もう聞くのを止めたのだろう。

ピピピピッ
「だいぶ下がったな…。」

「もう教室に戻っていいでしょ?」

「まだだ。あと1時間は寝てろ。
それから…」

そう言って聴診器を取り出す。

「服をあげて…。」

抵抗しようと思ったがどうせ無駄だろうので、服をあげた。

ビクッ。冷たくてびっくりした。
あれ…この感じ…前にどこかで…


ポロッ

「おい、大丈夫か?
聴診が嫌なのか?」

「え?」

わたしは気づいたら泣いていた。

「あれ、なんで…」
ポロポロ…涙が止まらない。
なんでだろう。体が震える…。
怖い。何が怖いのかわからないけど、とにかく怖い…。

「何が怖い?」
めずらしく優しく聞いてくれるが、わたしもわからない。

「わかん…ない…ヒッ」

ぽんぽん。
頭を撫でられた。
「大丈夫。俺は何もしないから。」

びっくりしたけど、すごく落ち着いた。

「もう大丈夫です。すみません。」
やっと震えも治まった。

…なんだったんだろう。

「過去に嫌なことでもあって、体がそれを思い出したんだろう。気にすることはない。これから直していけばいい。」

「はい…。」

「じゃあ、少し触るぞ。」

そう言って首筋を触って診る。
リンパ腺を確認しているのだ。

「これ以上熱が上がることはなさそうだな。とりあえず寝ろ。」

そんなにねれない…。
そう思いながらもうとうとし始めた。



「おい、起きろ。夜ねれなくなるぞ。」
気がつくともう4時。

「えっ!もう4時…?」

「ああ。熱も完全に下がった。かえっていいぞ。」

「あの…ありがとう…ございました。」

「ああ。」

なんだろう。すごく不思議な感じ。
うざいのに、嫌いなのに、でも落ち着く…。あの人は何者なんだろう…。
 


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

好きだった幼馴染に出会ったらイケメンドクターだった!?

すず。
恋愛
体調を崩してしまった私 社会人 26歳 佐藤鈴音(すずね) 診察室にいた医師は2つ年上の 幼馴染だった!? 診察室に居た医師(鈴音と幼馴染) 内科医 28歳 桐生慶太(けいた) ※お話に出てくるものは全て空想です 現実世界とは何も関係ないです ※治療法、病気知識ほぼなく書かせて頂きます

ma.chaaaa
恋愛
病弱な女の子美雪の日常のお話です。 ーーーーー 生まれつき病弱体質であり、病院が苦手な主人公 月城美雪(ツキシロ ミユキ) 中学2年生の13歳。喘息と心臓病を患ってい、病院にはかなりお世話になっているが病院はとても苦手。 美雪の双子の兄 月城葵 (ツキシロアオイ) 月城家の長男。クールでいつでも冷静沈着。とてもしっかりしてい、ダメなことはダメと厳しくよく美雪とバトっている。優秀な小児外科医兼小児救急医であるためとても多忙であり、家にいることが少ない。 双子の弟 月城宏(ツキシロヒロ) 月城家の次男。葵同様に医師免許は持っているが、医師は辞めて教員になった。美雪が通う中高一貫の数学の教師である。とても優しく、フレンドリーであり、美雪にとても甘いためお願いは体調に関すること以外はなんでも聞く。お母さんのような。 双子は2人とも勉強面でもとても優秀、スポーツ万能、イケメンのスタイル抜群なので狙っている人もとても多い。 父は医療機器メーカー月城グループの代表兼社長であり、海外を飛び回っている。母は、ドイツの元モデルでありとても美人で美雪の憧れの人である。 四宮 遥斗(シノミヤ ハルト) 美雪の担当医。とても優しく子ども達に限らず、保護者、看護師からとても人気。美雪の兄達と同級生であり、小児外科医をしている。美雪にはとても手をやかされている… 橘 咲(タチバナ サキ) 美雪と同級生の女の子。美雪の親友。とても可愛く、スタイルが良いためとてもモテるが、少し気の強い女の子。双子の姉。 橘 透(タチバナ トオル) 美雪と同級生の男の子。咲の弟。美雪とは幼なじみ。美雪に対して密かに恋心を抱いている。サッカーがとても好きな不器用男子。こちらもかなりモテる

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

4人の王子に囲まれて

*YUA*
恋愛
シングルマザーで育った貧乏で平凡な女子高生の結衣は、母の再婚がきっかけとなり4人の義兄ができる。 4人の兄たちは結衣が気に食わず意地悪ばかりし、追い出そうとするが、段々と結衣の魅力に惹かれていって…… 4人のイケメン義兄と1人の妹の共同生活を描いたストーリー! 鈴木結衣(Yui Suzuki) 高1 156cm 39kg シングルマザーで育った貧乏で平凡な女子高生。 母の再婚によって4人の義兄ができる。 矢神 琉生(Ryusei yagami) 26歳 178cm 結衣の義兄の長男。 面倒見がよく優しい。 近くのクリニックの先生をしている。 矢神 秀(Shu yagami) 24歳 172cm 結衣の義兄の次男。 優しくて結衣の1番の頼れるお義兄さん。 結衣と大雅が通うS高の数学教師。 矢神 瑛斗(Eito yagami) 22歳 177cm 結衣の義兄の三男。 優しいけどちょっぴりSな一面も!? 今大人気若手俳優のエイトの顔を持つ。 矢神 大雅(Taiga yagami) 高3 182cm 結衣の義兄の四男。 学校からも目をつけられているヤンキー。 結衣と同じ高校に通うモテモテの先輩でもある。 *注 医療の知識等はございません。    ご了承くださいませ。

処理中です...