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守りの聖女と学園生活

学園入学 1

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制服に身を包み、メリッサ義母様から支給されたヴェールをつける。
白いヴェールは繊細で美しい。

目立ちたくないという自分の気持ちが高級なものを装着するという結果に。
汚さないようにしないと!
でもこれ、もっと目立つ気がするの気のせいでしょうか。


「やはり、顔を隠すだけでは君の愛らしさを隠すことはできないな」


ジェリーはそんなことを言ってくれるけれど……いや、ちょっと待ってください。小声の「やはり着ぐるみしかないか」は本気っぽくて怖いのですが!?


「ジェリー、顔が見えないのだからしっかり隠れていますよ」

「当人は気が付かないものだよ。聖女というスキルだけでも注目を集めてしまうというのに、隠せぬ君の魅力に気がついた人間が少しでも近づきたいと願ってしまうだろう」


落ち着くために深呼吸をする。今日も好きな人からの愛がずっしり重い。嬉しいけれど、最近はこれそのうち監禁されるのではという危惧もしている。
差し出された手に、思わず手を重ねる流れるように自然に馬車へとエスコートされた。王子様かな…?王子様だった。

馬車に乗ってしばらくすると、荘厳な門が現れ、馬車が次々とその中に入っていく。
そこを過ぎるとセレフィナと呼ばれる桃色の花が舞い散る様子が見えた。薄ピンクの花弁が咲き誇る様子はとても美しい。

セレフィナ並木を通り過ぎると校舎らしき建物が見えた。
扉が開くと、先に降りたジェリーが手を差し出してくれる。その手を取って馬車を降りれば、否が応でもその視線の多さに気づいてしまう。

それは、好意的な目もあれば否定的な目もある。
まぁ、今の私は養子とはいえ辺境伯令嬢だ。正面切って喧嘩を売ってくるような方は少ないはずです。

ジェリーは私を見つめてニコニコしているが、そんな彼を驚きの目で見る方々もいます。
おかしいな。ジェリーはいつも優しくて笑顔のはずなのだけど。この様子はいつもと一緒なのに、そんなに驚かれることってあるのでしょうか?

もしかして、女の子といるというのが珍しいのかな。


「誤解なさらないでほしいのですが、ジェリーはあなた以外には塩対応もいいところなので彼女たちの驚きは正当ですよ」


アロイスさんの言うことにびっくりしてしまう。


「メグ以外に優しくする必要もないだろう?」


本気で不思議そうに首を傾げないでください。
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