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守りの聖女と学園生活

人喰い森 3

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結果的に言うともっとヤバいものがいた。
というか上位種が一匹?一本?いた。


「デッドツリーがいたらそりゃ、普通の人間なら誰も帰って来ねぇだろうな」


そして例のそいつは、私が張った結界内でジェリーが展開する魔法に焼かれていた。
ジェリーは基本的には火と風の二重属性だ。二つの属性持ちって結構珍しい。三つになるとそれだけで貴族は結婚に困らないと聞く。平民でも無理矢理囲われて子を求められることがあると聞く。アルマリアでの貴族庶子ってだいたいこのパターンだ。


「火の竜巻とかこいつらにしてみりゃ悪夢みたいだろうな」


ドライさんがしみじみと口に出す。
私もそう思うので頷いた。

植物系の魔物は火に弱い。あとは、あんまり雨の多い地域だと根腐れしちゃうこともあるそうだ。まぁ、それに関しては周囲の植物からエネルギーを吸い取ってそいつだけピンピン当てることで気付かれて討伐されることもあるんだけど。

上位種になっても弱点はそう変わらない。
食べたものの内容によっては、耐熱性を身につけてしまったりとか、岩みたいに硬くなったりとかすることもあるけど、今回はそこまででもなかったようだ。
厄介な魔物に違いはないので私たちが相性が良くて助かった面もある。決して弱い魔物ではないので、油断されることがないように多少話は盛らないといけないかな?

報告だけ見て「これなら自分でもいける!」…なーんて思っちゃった冒険者や兵士が単独で、もしくは少人数で突撃することってあるからね。
私は普通の女の子に見えるし、ジェリーだってすごくガタイが良いわけじゃない。だから、そこそこ舐められちゃう可能性は高い。けど、そこにエイリーク義兄様やドライさんの名前があれば話は別だ。明らかに強そうな人たちの名前を見ると「あいつらだからできたんだろう」と納得してくれる。この世は理不尽である。


「まさに人喰い森、で間違いなかったわけですね」


木を切るために森に入った人間を全員食べていたようなので間違いないか、と頷く。
服とかは食べなかったのか、いくつか遺品も拾ったので領主さんへ渡してもらおうと思う。私はやたらと勧誘受けるので基本的にはあまり会わないことにしている。勧誘受けるのが嫌というのもあるけど、基本人間怖いというのもある。

フレッド兄さんには「おまえ、そんなことで学園大丈夫か?」と心配されてもいるけど。


「ドロップアイテム、相変わらずすごいな」


ジャラジャラと出てきた大きな琥珀や希少な草花。
ドロップアイテムの一部は換金して孤児院や平民の魔法使いの支援に回すけど、それ以外は報酬として山分けである。私の場合殆どをポーションの研究と私がいなくても結界が作られるようにという研究に費やしている。
誰かのため、も確かにあるけれど、私の身体は一つしかないのでその対策もある。
光の魔法自体が基本的に守りや治癒に特化している部分もあるが、ほかの魔法使いがその手の魔法を全く扱えないわけではない。水の魔法使いもそれなりに治癒が使えるわけだし、土の魔法使いも結界は比較的得意だ。
私以外でも国を守れるようにしていれば特別扱いも減るだろう。
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