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巻き戻った世界
新天地
しおりを挟むローナ王国の辺境地、アルマ村に住むことになった。
一番近い冒険者ギルドがここだったので訪ねれば、なんと10歳からしか登録ができないらしい。勇気を出して入ったのに空ぶったので、そんなぁ、とへたり込んだ私にギルドの受付のお姉さんは両親の元に帰った方がいいと言ってきたけれど、死んでるって言ったら顔色を変えた。
ここの国は比較的平和だけれど、それでも人身売買とかする怖い人もいるんだって。子供一人で生きるのは大変なんだって。
うん。まぁ、それはそう。
聖女時代も結構見てきた。上の人たちにとっては基本的に平民なんて家畜みたいなもんだから貴族がやってたら摘発されないけど、王太子殿下とかが法改正をしようと根回ししているって噂だけは少し耳にしたことがある。
「あ!じゃあ、前いたところでも一人でなんとかやってたので、てきとーにやります。家だけはなんとかなりませんか」
そう言うと、受付のお姉さんは崩れ落ちた。後ろからなんか顔のキラキラしたお兄さんが出てきて「ララ!」とお姉さんに駆け寄る。
「こ、こんな小さな子が?ひとりでやってきた?」
呆然と呟いて手で顔を覆う。
小さな声で「国が必死に制度を整え、孤児を保護し、できる限りの支援をしてきたはずなのに」と項垂れている。
「えっと、私、亡命者なので……」
それを口に出した瞬間、パッと顔を上げた。そして、キラキラお兄さんにガシリと肩をつかまれる。
怖い怖い怖い!
ビビっている私に「どこの国だ」と言うお兄さんに受付のお姉さんは拳骨を落とした。
「あ、あるまりあ……」
勢いがめちゃくちゃ怖かった。お姉さんの後ろに隠れながらそう口に出すと、驚いた顔をする。
まぁ、うん!遠いものね!!
「あの光属性の女を使い潰す、クソ王国か」
さらに殺気が増して震えていると、「フレッド」とお姉さんがお兄さんの名前?を呼んだ。私を抱きしめて、横に首を振ったのが見えた。その様子を見たお兄さんが「すまない」と頭を下げる。
「君の怒っているわけではないんだ。あの国には少し問題があってな。…もう一つ聴いてもいいか?」
「はい」
「どうやってこの国に?」
そう問われて、少し迷ったけれど、“魔力検査以前から魔法が使えたからダンジョンを通って“と小さな声で告げると、二人の目つきが変わった。
他のギルド職員に合図をして職務を交代した上で、なんだか少し豪華な部屋に連れて行かれた。
「それで、なぜそんな危険を冒し、どこでそんなことを聞いた?」
なるべく優しく問いかけようとする意思は感じた。
ダンジョンの通路のことを聞かれてるんだと思うけど、まさか未来で悪知恵の働く魔物がこの国からアルマリアまで進撃したっていう噂があったからとか、お父さんの隠してた幾つかの地図の一つがダンジョン地図だったとか言っていいものか迷う。
少し迷った結果、昔お父さんから聞いた、と言った。一か八かの賭けだったと言えば、お兄さんは「もしかすると、強い魔法を持つ娘を逃すための道を探そうとしていたのかもしれないな」と小さくつぶやいた。その表情は暗い。
「平民に強い魔法を扱える人間は少ないが居ないことはない。だが、逃すほどか?」
「えーっと、お名前は何というの?」
お姉さんに聞かれて、「マーガレット」と名乗る。大人の私であれば指名手配犯扱いで自分の名を名乗れなかったけれど、今の私は誰にも知られていない、ただの孤児のマーガレット。自分の名前を堂々と名乗れるのが少しだけ嬉しい。
「そう、マーガレットちゃん。もしかして、光魔法を使える?」
頷くと、二人は何かを理解したとばかりに頷いた。
そして、何かを相談して最終的にお姉さんが「我が家で預かります!」と私を抱えて宣言した。
「マーガレット、私はララ。今日からあなたのお姉さんよ!」
突然の言葉にびっくりしているとお兄さんを指差して「あっちはアルフレッド。フレッドでいいわ」と雑に説明する。
フレッドさんはララさんの夫らしい。
なんか私は保護が必須だそうで、二人の妹としてこの村に住むことになった。
なんか、一人だと体調不良の時とかに攫われたりしたら売られちゃうかもなんだって。どこも世知辛い。
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