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83.ある意味似た兄妹

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 クレアを怯えさせてマーリンと一度周囲に引かれるくらいの戦いを行なって、ボッコボコにされたエリアスではあったが、反省をしているかと問われれば、そうではない。またアプローチがまずかったのか、という思考だった。はじめは文句なしでプラス方面に傾いていた好感度が短期間で急降下しているというのに恋する男は止まらなかった。
 その執着心が怖がられている、とまでは思っていない。


「殿下、これもう無理では?マーリン殿まで出てくるの手遅れってやつな気がするんですけど」


 フェネックのような長い耳が不機嫌そうに動き、尻尾が揺れる。そんな部下の言葉からはいい加減にしろという感情が滲み出ていた。最初はどうあれ、部下を配置して小まめに報告させたりしている時点でドン引きしている。それでもエリアスという男についているのは、その確かな強さ故だ。その種族に恥じぬ強靭さを認めている。


「マーリン殿は殿下のしつこさと執念にクレア嬢が怯えていると仰ってました。贈り物はやめて、とりあえず文通をできるようになるところから始めればどうです」

「それでは本気が伝わらないのではないか」

「だから!!本気が伝わってるから下心がバレて怯えられてるんですよ!殿下だって殿下と同等かそれ以上の強さを持つヤバい御令嬢に迫られたら逃げるでしょうが!!」


 エリアスの動きが止まり、部下の青年をじっと見つめる。ようやく話を聞く気になったらしい。
 溜息を吐いて、青年は今まで彼の兄だとかそれこそマーリンが諭してきた内容を再びきちんと話し直した。


 ツインテールにしたピンクブロンドの髪が揺れる様はウサギのようだ。けれど、その大きな瞳は怒りの色を見せており、手にした扇がミシミシと音を立てていた。


「まぁ、アスお兄様ったらようやくなの?」


 リルローズ・エヴァンジェリン・アポロニアはクレアに助けられたことがあることもあって、すごくクレア贔屓のお姫様だった。ドラゴレインの第一王女の彼女は正真正銘のお姫様である。
 リルローズはクレアが大好きだ。姉になってもいいと思う。けれど、それはクレアが望めばの話だ。クレアが幸せになるのであれば相手が親族でなくても構わない。

 少し背が伸びたように見える少女は兄への怒りに燃えて、それから侍女の「姫様、今日のお薬を忘れておりますよ」という声に我に帰った。


「そうだ、クレアの作ってくれたお薬飲まないと」


 嫌そうな顔で「苦いのよね」と呟いてから、キラキラと輝く青い薬を一気飲みした。
 勇者が住む家で作られている満ちた月の夜にだけ花開くある特別な薬草と、マーリンが連んでいる悪魔が見張りながら栽培させている、とても繊細な薬草で作られた薬はリルローズにかけられた術を解くのに大きく貢献している。


「というか、リズが女でなければ……」


 悔しそうに扇を握りしめる姫に、侍女は「赤髪の魔導師様ってこういうの多そう」とちょっと思った。天然と人助けがなぜか確実に厄介勢を作り出しているのが不思議である。
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