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出遅れた国

アハントルト王立魔法学校卒業後は…

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 無事アハントルト王立魔法学校を卒業した花菜香はなか風雅ふうが。そこに待っていたのは政務と子守であった。

 政務は二郎の領地であるアレストバートやクアレシスに関した書類を読み、可・不可に振り分けるところから始まった。


「おい、花菜香はなか

「はい」

「この”可”に入れた書類なんだがこれは”不可・差し戻し”だ。なぜだか分かるか?」

「いえ。分かりません」


 二郎は「経験がないと分からないか」と、言いながら、


「これは水増しで予算が組まれているんだ。適正価格はもっと下がる」

「そうなんですね」

「次は風雅ふうが

「はい」


 こうして積まれた書類は減っていくのであった。



「アァーッ、アァーッ、アァーッ」

風雅ふうが様、エミール様のオムツを変えてあげて下さい」

「分かった」


 風雅ふうがが慣れない手つきでエミールのオムツを交換する。


「オムツは後で洗いますのでそちらに固めておいて下さい」

「あぁ。分かった」


 そして、


花菜香はなか様、ミラダリーナ様が脱走します。引き戻して下さい」

「分かったわ」


 小さい子の相手はそれはそれで難しく、忙しいのであった。


「これは何かな?」

「「「「1」」」」

「じゃぁ、これは何かな?」

「「「「2」」」」


 今度は幼児組の相手。数字のお勉強中だ。

 エルビン、コンスタンティン、アクレシス、エーベルハルトがいる。


「アクレシス様、ブリトニー様が脱走しました。捕まえて下さい」


 お勉強はよく中断するのであった。


 日が暮れてくるとお風呂の時間だ。

 赤ちゃん組は、さすがに扱いに慣れていないと危険と判断されて、乳母たちがお風呂に入れてやるのだが、幼児組はお風呂に入れてやれる。今日は風雅ふうがの番だ。


「よく洗って、泡を落としてから湯船に入るんだぞ」

「そら4人とも、背中を流してやろう」


 大人でもそうだが、背中は洗いづらい。エルビン、コンスタンティン、アクレシス、エーベルハルト、それぞれを捕まえて、背中を流してやる。


「アクレシス、それじゃぁ足は洗えてないぞ。エーベルハルトは左腕が洗えていない」


 ついでに他も、洗い残しがないかチェックしてやる。

 体の泡を流し、次に頭を洗う。


「指の腹でよく頭皮を洗うんだぞ」


 最初は自分で洗わせ、最後に風雅ふうがが綺麗に洗ってやり、お湯で流した。


「それじゃぁ湯船に入るぞ。10数えるからそれまで肩まで入るように。1、2、3…」


 湯船から上がったら乾いたタオルで拭いてやり、それぞれが新しく用意された部屋着に着替えるのであった。

 着替えたらごはんだ。エルビン、コンスタンティン、アクレシス、エーベルハルトの幼児組は自分で食器を使って食べるが、食べこぼしやら、顔をベタベタにするやら、まだ慣れていない。

 とりあえず、ちゃんと食べさせて、口周りを濡れたタオルで拭いてやる。食堂で食べられるのはまだ当分先かぁ。

 幼児組を食べさせたあとは世話を乳母たちに任せて自分たちが食べる。


花菜香はなか風雅ふうが。子供たちはどんな様子だ?」

「変わりなく、すくすくと育っていますよ」

「まだ小さい子の世話は任せてもらえませんわ」


 二郎も、「まぁ、そうだろうな」と納得する。


「ところで、私の婚礼はいつ頃になりますの?」

「日取りが決まったぞ。2ヶ月後だ。お前たちは婚礼の準備に回るか?」

「えぇ。そういたしますわ」

「私も15才になったら式を挙げることになるでしょうから私も準備の方に当たらせてもらいたいと思います」

「分かった。そのように手配する」


 そして2日ほどは今まで通りの生活を送り、3日後からはリーガンズ伯爵家の面々も交えて、式のことを話し合った。


「アソウ家の方々は式に手慣れているでしょう。何せ奥方も多いですし、式の演出も多く手がけているとか」

「確かに式には手慣れているかも知れません。では、演出について過去映像を交えてご説明させていただきます」


 二郎は自分たちの式の過去映像を見せて、演出について説明し始めた。


「…とまぁ、これだけ一応使用実績があるのです」

「過去画像だけでいい気がしますわ」


 と、そこに、花菜香はなかが意見を言う。


「演出を派手にしてもその後税収が増えたり得をすることはありませんわ。それなら出費をおさえて他のことに使った方が有意義ですわ」


 と、すかさず二郎は、


「いや、音響は入れようよ」

「音響は入れてもいいかも知れませんわ」


 それから演出の話は進み、別の日には衣装選び、採寸などをした。


 その話し合いの中、婚約者のジョージア・リーガンズは、


「もっと上質な物を選んでいいのだぞ。このために、父はちゃんと蓄えをしてきた」

「結婚式で見栄を張っても仕方がありませんわ。それよりも蓄えて、他のことに使った方が有意義ですわ」

「父にも見栄があるんだ。そのことを理解してほしい」


 普通とは逆のケンカが始まってしまった。


「姉さん、衣装だけは相応の物を選ばないと」

「分かったわ。ちょっと趣味に合わないけれどお高い物を選ぶわ」


 一応花菜香はなかも折れてくれた。


「それではこちらのデザインで作らせていただきます」


 衣装のデザインが決まったところで、略歴と、過去映像の打ち合わせに。


「隠し立てしていると、式の途中でヤジが飛びますわ。洗いざらい吐いてもらいますわよ」

「あ、うん。分かった」


 波乱な式の打ち合わせであった。
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