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新しい生活

自動車教習

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 宮廷魔道士の遠見の魔法による監視の甲斐かいあってか、王都の治安は徐々に良くなっていった。出動件数も下がってきており、これなら出勤する人員を減らしてもよく、宮廷魔道士の休みを増やせるようになった。


「なあかおる、もう少し様子を見て、件数が上がらなかったら宮廷魔道士の休み、増やすか?」

「そうね。上がらなければ休みを増やしてもいいわね」


 治安が悪化しないなら休みを増やす。決定事項になった。いいことだ。


「そう言えば、車、売り出し始まったみたいね」

「とうとう始まったのか。早かったな」


 研究部会が最初に試作機を作ったときは、完全なる魔力ごり押しの作成方法。しかし、コストが高すぎて、この方法では量産できなかった。そこで、街の鍛冶屋かじやなどを参加させて試作機を作ったそうなのだが、地球とここ、サガンガ王国では鍛冶かじの技術に雲泥の差がある。最初、強度不足でエンジンが爆発したり、いろいろトラブルがあったそうな。それを乗り越え、構造を変え、もっとローテクにして量産体制が整ったのだ。

 きっかけは二郎だが、もう手は離れている。もう感知しない。そう思っていたのだが、


 1週間後、トラブルが起きた。購入者は使用人に運転を任せたのだが、危うく人を引きかけたらしい。それに、運転にもたつき、馬車などの交通妨害が頻発しているらしい。

 二郎が日本から輸入して渡した車は、運転手には二郎が付きっきりで納車前に運転の練習をさせた。新しい車も、誰か教える人が必要であろう。研究部会に話を通すことにした。二郎は、研究部会の車両製作のリーダー、スプロッドを訪ねた。


「車を売り出したそうだが、何だか問題を起こしているそうじゃないか」

「そうなんです。困ったものです」


 人ごとのように言うスプロッド。


「売る前に、運転の練習とかはさせないのか?」

「そんな時間があったら車の性能向上に充てたいですね」


 研究部会の人間はいつも勝手なものだ。売った後のことは知らないという。


「何も自分で教える必要はない。訓練させて、人を育てれば、後は仕組みができあがる」

「そこまで首を突っ込もうとするのなら、自分たちで人を育てればいいでしょう」


 とうとうこっちに丸投げしてきた。


「それなら、売った相手と予約の入れている人のリストをくれ」

「ちょっと待って下さいね」


 簡単にリストをくれた。本当に作ること以外は興味がないようだ。


 そして、二郎はリストを当たり、有料で教習をすることを伝えて回ったら、大抵の所有者は快諾かいだくしてくれた。みな、現状がまずいことを認識しているようであった。


 集まったのは、所有者が運転者に指定した人たちと、二郎が呼んだシドニーという青年。二郎はシドニー君に教えてシドニー君を教官に育てるつもりである。


「クラッチを床に当たるまで踏んで、ギアを入れたらちょっとふかして左足を浮かして。次のギヤに入れよいか。そうそうその調子」


 教習車はキャンピングカーでもよかったのだが、研究部会製作の車を借りた。シートは前方に二席。他の生徒は荷台にしゃがんで乗っている。


「停まるときは、ブレーキを踏んで、速度が落ちたらクラッチを踏んで。そう。それで走り出したいときは1速に入れて…」


 ストップアンドゴーを教え込む。これでもたついて渋滞になることはないであろう。

 次に、段ボールを積み上げて、駐車の方法を教える。段ボールにぶつからないように駐車できるようになれば成功だ。

 その後、街道を使って高速運転をしてもらう。街道を飛ばすのも慣れてもらった方がいいであろう。

 次にに町中を走ってもらった。町中で荷物の積み下ろしをすることを考えれば、町中を走れるようになるのは必要であろう。


「他に習っておきたいことは?」


 最後に生徒に希望を聞いて、それを教えた。


「それでは教習を終了します。お疲れ様でした」


 その後、シドニー君には麻宗あそう邸で雑要兼運転手をしてもらった。自動車教習の仕事はそれほど多くない。他に職を持っていた方がいいだろう。


 次の日、また研究部会のスプロッドを訪ねた。


「昨日購入者を集めて講習会を開いた。今後の購入者で講習が必要ならこちらに連絡してくれ」

「分りました。その様にします」


 講習をしてから、トラブルは減った。


 1ヶ月後、シドニー君を教官として、また講習会を開いた。シドニー君、ちゃんと指導教官ができるようである。

 その後の教習はシドニー君に任せることにした。


 その後、フライクルを1台買って、それもシドニー君に教えた。これなら、フライクルの講習もできるだろう。


 いろいろと地球からサガンガ王国に持ち込んだ二郎。これで1つ、肩の荷を降ろすのであった。
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