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新しい生活

パーサー王子の立太子式

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 翌朝、二郎は目覚ましのアラームの音に目が覚めた。今日はパーサー王子の立太子式がある。こちらも結婚披露宴と同じくいろいろと演出をするために仕掛けを用意している。2つの大きな式典があることで、今日から三日間、祝日となり、ほとんどの市民は休みとなる。市民は休み。こちらは市民を注目させるお仕事のため、頑張りましょうかね。


かおる、起きてるか?」

「ん?あぁ、今日はいろいろ忙しいのよね。もう起きるわ」


 二郎は身だしなみを整え、朝食をった後、王城へ行き、兵士を借りてくる。

 兵士たちを誘導しながら市街地を出て何も無い原っぱへ。そこで、転移して日本へ。


「どうも。依頼してました麻宗あそうです。出発準備、できてますか?」

「あぁ、あんちゃんか。待ってたぜ。それじゃぁ、連れて行ってくれ」


 職人4人にトラック2台を先ほどの原っぱに転送する。


「ここなら人が通らないし、大丈夫でしょ?」

「そうだな。お客さんはあの町から見るんかい?」

「ええ。ポジション的にも問題ないでしょ?」

「まぁ、大丈夫だろう」

「それじゃぁ、打ち合わせした時間にお願いします」

「おぉ。任せとけ」


 そうして二郎は街に戻った。

 場所は、中央広場。そこで音響のチェックをする。二郎は音響機材をちょいとイジってから王城の、昨日披露宴をやった広間にいるはずのかおるに念話を飛ばし、

(機材セットしたから、マイクテストやって。こっちでチェックするから)

(分ったわ。ちょっと待ってて)

 程なくしてかおるの声が届いた。

(中央広場の音響はテスト終了引き続きそっちの準備よろしく)

(分ったわ)

 この街には広場がもう一つある。そっちの方にも音響機材があるので、そっちも起動させて、チェックをした。


 二郎が中央広場へ戻ってきて、あの、好きな場所、好きなアングルでながめられる魔法、とりあえず、遠見の魔法としておこうか。遠見の魔法で、かおるがいる、今日の式の会場の様子をチェックする。アバン王もパーサー王子もピンマイクを付けたな。会場も貴族がそろっているようだ。かおるがもう一つの広場へ飛んで、かおるも待機。


「さぁて、中継始めますかね」

(かおる、こっちは中継を開始する。そちらも準備出来でき次第、中継を始めてくれ)

(了解)


 頭に思い描いた画像を空間に浮かび上がらせる魔法、これを投影魔法と呼ぼうか。今までしてきたように、遠見の魔法と投影魔法を組み合わせて、広場に大きく会場の様子を投影する。すると、ガヤガヤと賑やかだった中央広場は静まりかえった。

 ほどなくして、


「これからパーサー王子の立太子式を執り行います」


 どうやら始まったようだ。中央広場に集まった市民は、画像に釘付けである。


「国王、アバン・ルイジアンヌ及び、王子、パーサー入場」


 アングルを変えて、二人が入場する様子を投影する。立ち位置が決まり、アングルを固定する。

 アバン国王が発言する。


「王子、パーサーよ、そなたは国を愛し、国を豊かにし、国を取り仕切り、将来国王となるべく王太子になることを望むか?」

「はい。私は国を愛し、国を豊かにし、国を取り仕切り、将来国王となるべく王太子になることを希望します」

「あい分かった。それでは、このアバン・ルイジアンヌ、国王として、そなた、パーサー・ルイジアンヌを王太子として認めよう」


 国王手すがら、パーサー王子に王太子を示す勲章を服に付けた。


「これよりパーサー・ルイジアンヌは王太子となった。パーサーよ、精進しょうじんし、良い王太子に、そして、将来良い王になれ」

「かしこまりました」

「これにてパーサー王子の立太子式を終わります」


 会場では集まった貴族が、パーサー王子に割れんばかりの拍手を送った。パーサー王子は手を振ってこたえる。中央広場に集まった市民も、式が終わったことに気付き、こちらでも割れんばかりの拍手が起こった。

 広場が落ち着いたところで投影魔法を切り、音響設備のスイッチを切った。

(二郎、こっちは落ち着いたから投影終了させたわよ。そっちはどう?)

(こっちも今切ったところ。それじゃぁ、片付けを始めようか)

(了解)


 これまで使った機材はレンタル品。ちゃんと片付けて返さないと。

 アンプやらとスピーカーの接続を切り、コードをまとめてスピーカーを次々とアイテムボックスにしまった。アンプなどの制御装置類と電源取り用の大きなリチウムイオン電池もしまった。ここの片付けはこれでおしまい。機材のチェックリストも埋まった。さて、次は会場の方の片付けを始めましょうか。

 会場入りした。集まった貴族はもう解散して誰もおらず、城の使用人が片付けをしていた。程なくしてかおるもやって来た。


「中央広場の方の片付け終わったぞ。残りはここだな」

「そうね。もう一つの広場の方も終わったわ。じゃぁ、ここの片付けをやっちゃいましょうか」


 二郎とかおるは黙々と片付け、機材レンタル会社に品物を返すのであった。



 機材を返して王都へ戻ってくると、王族によるパレードが始まっていた。オープンの馬車にアバン国王、パトリシア王妃、パーサー王太子とアヴァリン王太子妃夫妻、そして我が妻ミネルバとカッテリーナ。王都をゆっくりと、ぐるっと一周して新王太子と王太子妃をお披露目するらしい。


 パレードも終わり、空が夕焼けに染まる頃、空砲が鳴り出した。二郎は作っておいてもらった職人さんの夕食をアイテムボックスにしまった。


 そして日が落ちて、空が真っ暗になった頃、一発ドーンと花火が打ち上がった。

 それを皮切りに、リズミカルに花火が打ち上がる。2つの行事を祝う花火だ。

 この国の人は花火を見たことが無い。花火の美しさに市民は空に見入っている。

 空には賑やかに、そして綺麗に花火が飛ぶ。王都は花火の音以外は静まりかえり、市民はただ一心に、花火を見続けた。

 そして、最後の賑やかしに連続で花火が上がり、予定していた発数を討ち終わって花火は終了する。終わったことに市民が気付くまで、どれくらいの時間がかかったであろう?静かだった街に徐々に話し声が戻り、賑やかなお祭りの雰囲気が戻って来た。


 二郎は歩いて例の原っぱへ向かい、


「おっちゃん、差し入れの夕食。片付けが残ってるから酒は無いけど食べてってよ」

「おぉ、あんちゃん。済まねぇな」


 そして始まる遅い夕食タイム。二郎も一緒に食べた。


「熱も冷めたな。それじゃぁ、片付け始めるぞ!」

「「「はい」」」


 花火職人は後片付けをして、終わったら、二郎が日本まで無事に送り届けた。


 翌日、


「今日が休みだったら良かったのになぁ」

「何言ってんのよ。遠見魔法が使えるようになったから、街の監視の仕事の依頼が来たじゃない。今日、明日の私たちは防犯カメラよ。さぁ、準備して王城に行くわよ」

「俺たちは平日に休みが多いから、まぁ、仕方ないか」


 二郎とかおるは今日もお仕事。町の平和を見守る二郎とかおるであった。
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