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魔王退治ととある商人の暗躍

調印式

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 ”悪の魔王を倒して欲しい”


 そういった願いから召還された麻宗あそう一家。麻宗あそう家の面々は武芸の稽古もしいない家族だったので、最初は剣振りから始めたが、こちらで仲間になったジョルダン・カーライル、カトリーナ・アンリエッタ、メリーア・メンドローサ、マヤ・ステインと共に、日々、魔王打倒を目標に、魔物を討伐してきた。

 そんな中、4匹いる中ボスのうち、ビッグゴスゴリル、ビッグアンプロデキサフォン、ビッグドロリゴスを倒し、残り1匹は王国騎士団が倒したので中ボスは全滅。それから1年間討伐をして強くなったと思ったので魔王を探したら、今度は魔王が白旗をはためかせながらこちらにやって来るではないか。


 ”人間と和解したい”


 魔王、アンドレシロシウスに訳を聞けば、一部低級な魔物を除いては、魔物側には人間と争う意思はなく、住処を追われて北の生息地から人間の多い南へ南下して来たとのこと。人間の王と話がしたいという魔王の話を受け、勇者、麻宗あそう二郎じろうは、王にそのことを話す。

 人間側は、役人を送り、魔物の各地域、種族のリーダー格との折衝の末、一部を除く、魔物と人間たちとの停戦に合意、本日ウンザバンテの森の外れの草原にて、調印式をする運びとなった。



 草原には魔法陣に乗った魔物たちとその魔法陣に魔力を供給するダリクルたち魔法陣魔力供給班の面々、ザガンガ王国の役人に、アマズスたち魔法陣研究班、勇者一行が並び、少し外れたところに馬と、1人の騎士がいた。その前には対面する形でザガンガ王国国王、アバン・ルイジアンヌと、魔王、アンドレシロシウスが並んでいた。


『これよりザガンガ王国と、魔物たちとの間の停戦合意に関する調印式を行います』


 ザガンガ王国高官、アマズス・ゲロットスの司会により調印式の開会が宣言される。

『それでは、国王陛下、魔王様、文書を読んでいただき、間違いがなければサインをお願いします』

 あらかじめ用意された停戦合意文書、同じ内容の物2枚をそれぞれ、国王、魔王共、内容を読み、間違いがないことを確認すると、それぞれサインを書く。

『それでは、文書を交換していただき、今一度確認していただいて、間違いがなければサインをお願いします』

 2人とも、もう一度内容を確認し、サインする。

『サインが終わったようですので確認をさせていただきます。確認しました。それでは双方文書の交換をして、最後に握手をお願いします』

 国王と魔王は、今サインした文書を交換し、互いに握手をした。

『ここに調印がなされました。これにて調印式を終わります』

 調印式が問題なく終わったことを確認すると、外れにいた騎士が、馬にまたがり王都へ駆けていく。

『やったー!停戦だ!』
『これで落ち着いた生活に戻れるぞ!』
『帰ったら祝杯だ!』

 調印式を見ていた魔物たち、人間たち、双方から歓声が上がり、皆、喜びに包まれるのであった。


     *


『終わってみればあっけないものでしたね』

『あぁ、そうだな』

 停戦合意を見届け、互いに抱き合い、喜びの歓声を上げた後は、皆、帰り支度を始め、ちりじりに散っていく。政府の高官は用意されていた馬車に乗り、王都へ向けて出発し、魔物たちは、森へ帰っていく。

 残った研究部会の魔法陣研究班と魔法陣魔力供給班は、使った魔法陣と、国王と魔王が使った椅子とテーブルを片付け始める。勇者一行も手伝おうと思ったが、片付ける物もそう多くなく、研究部会のメンバーだけで早々に片付けと馬車への積み込みを終えると、彼らも帰路につくのであった。

『2人とも大人しくしていてお利口さんでしたねー』

 かおるは、はしゃぐでもなく、騒ぐでもなく、大人しくしていた娘の花菜香はなかと息子の風雅ふうがの頭を撫でながらめ、

『さぁ、帰りましょ』

 片付けを見届けた勇者一行は、そのままキャンピングカーに乗り込み、王都へ帰るのであった。


     *


『あらまぁ、随分と賑やかねぇ』

 その日の王都は賑やかであった。王都の門をくぐると”祝!停戦合意”の横断幕が掲げられており、皆、今日はパーティーでも開くのであろうか、いつもより多くの食材を買い込む女性たちやら、酔っ払いながら祝杯をあげている男たちなど、街はお祭り騒ぎであった。

 そんな中を人にぶつからないように慎重に、二郎は城下町を運転し、王城へ入るのであった。


     *


 正装に着替えた勇者一行は、王城の大広間にいた。周りには多くの正装で身を固めた貴族たちが居り、テーブルには豪華な食事が並んでいた。

『皆様グラスをお取り下さい』

 勇者パーティーの大人組はお酒を、花菜香はなか風雅ふうがはジュースをそれぞれ手に取った。

『本日は、我がザガンガ王国と、魔王との間に停戦合意が成されました。もう、脅威はなくなりました。それを祝してささやかながらパーティーの開催を宣言します。カンパーイ』

 皆はグラスを掲げ、

『『『『『カンパーイ』』』』』

 と、叫んだ。

 参加者はそれぞれ周りにいる者とグラスを合わせ、飲み物を飲み干すと、パーティーの開始だ。

 二郎たち、勇者パーティーは、日頃の苦労も忘れ、今日は羽目を外すのであった。
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