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魔王退治ととある商人の暗躍

キャンピングカーを解析される

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 俺は、城下町の惣菜屋を回ってキャンピングカーの燃料となる廃油を集めて回り、バーンクリット邸へと戻ると、かおるがやって来た。

「やっぱり油を集めに回ってたんだ」

「そうだよ」

 俺はキャンピングカーに給油をしながら話を聞く。

 何でも朝早くにザガンガ王国の研究部会所属メンバーというのがやって来て、「便利そうで素晴らしい!是非車というものを調べさせていただきたい!」と、言ってきたのだそうな。

「車をバラされると移動手段がなくなる。却下だ」

「車をバラさない、非破壊解析ができるそうよ」

「で、何を使って解析するんだ?電子か?陽子か?中性子か?」

「…そこまで聞いていなかったわ」

「電子なら完全にアウトだな。ICチップが焼き付いて使い物にならなくなる」

「早く来たのは足止めで、朝食後くらいにまた来るそうよ。何で調べるのか聞いておくわね」

「俺が戻るまで、とりあえず、車には触らせるな。頼む」

「分ったわ」

 話し終わって、給油も終わった。燃料タンクは満タンになった。また油をもらいに、空になった予備タンクを持って、城下町に降りるのであった。


 予備タンクもいっぱいになった。車の後ろに積んで朝食にする。他のメンバーはもう朝食をった後のようだ。

 宣言通り、研究部会所属メンバーが車の解析にやって来た。

「すまん、かおる。足止めしておいてくれ。こちらもすぐに食べ終わるようにする」




 朝食後、研究部会所属メンバーがいる客間へ入る。

「あなた、やっぱり電子照射タイプらしいのよ」

『是非とも調べさせて下さい』

『却下だ』

『何故です?』

『電子で調べるんだろ?』

『電子とは何ですか?』

『電気… 雷のようなヤツで調べるんだろ?』

『えぇそうです』

『雷に弱い部品を使っているんだ。弱い電気をかけても壊れてしまうような。その調べ方じゃぁ到底とうてい許可できん』

『それでは精度は悪くなりますし、大量の魔力が必要になりますが、魔力波で調べさせてもらいましょう』

かおる、どうする?」

「一度調べさせないと引きそうにないのよこの人達。一度調べさせましょう」

「分った」

『じゃぁ、魔力波で調べること。雷では駄目だ。それでいいなら許可する』

『分りました。ありがとうございます』

『ところで、うちの車を何故調べようと?』

 何でも、便利そうだから、こちらの世界に無いものだから調べたいらしい。

 試しに車は何をする道具でしょう?と聞いてみた。みな、答えられなかった。

『何故、用途も分らないものを調べようと?』

『謎なものを調べるのは男のロマンじゃないか!』

『そんなつまらん理由で来たのか。まぁいい。どんなものか教えるから来い』



 俺は研究部会所属メンバーをキャンピングカーに乗せ、走り出した。

 城下町はゆっくり徐行。

『おぉ。馬もつなげていないのに走りよる』

 門を出てから飛ばす。

『おぉ。こんな速い乗り物はじめてじゃ!』

 しばらく走り、引き返す。バーンクリット邸に到着する。



 研究部会所属メンバーは興奮していた。是非とも解析して自分たちでも作ってみたいと。

『それでは是非とも、すぐにでも解析を!』

『まだだ。エンジンの基本を教えてからだ』

 俺は車からノートパソコンを取り出し、エンジンの基本中の基本、吸気、圧縮、爆発、排気を教える。

『それでは解析を!』

『車全体だったら多分、いつまでっても解析は終わらない。主要部品、エンジンのみ許可する』

『ありがとう!』

 俺はキャンピングカーの座席をがしてエンジンを見せる。

『これだけだからな!』

 と、念押しして、非破壊検査させる。

 …壊すんじゃないぞ!



 しばらく調べた後は、大人しく帰っていく研究部会所属メンバー。何ともはた迷惑な。おかげでこちらの計画が狂ったじゃないか。

『なぁかおる、この後どうする?』

『この近くの魔物でも倒して魔法の練習でもしましょうか』

 俺たちパーティーは、西門を出たところで魔物を倒す。使うのは剣ではなく魔法だ。

 しばらくして、のっそりのっそり歩く何とも危機感のない魔物、ナマケムーヌに出くわした。

風雅ふうが、しっかり狙えよ!』

『うん』

 風雅ふうがはしっかり狙いを定めて、

『ファイアーボール!』

 風雅ふうがはナマケムーヌを倒した。

「やった!」


 次に、周囲に関心がなく、ふわふわと上下に動くだけの危機感のない魔物、アトバルーンに出くわした。

『次、花菜香はなか、いってみよう!』

『はい!』

 花菜香はなかもしっかり狙いを定めて…

『ファイアーボール!』

 花菜香はなかはナマケムーヌを倒した。

「やったね!」

 そうして弱い魔物相手に初めての魔法での討伐練習を済ませてバーンクリット邸に到着した。



 そして次の日は、南門を飛ばして東門の外で討伐練習をすることにした。

 ちなみに、王城でもらった杖をかかげながら魔法を打つと、少し威力が増したみたいだ。杖ってこうやって使うのか…

 東門での討伐練習をし始めて数日。バーンクリット邸滞在期間中は、風呂から上がったら、読み書きの勉強をしていたので、子供たちも少しだけ読み書きを覚えた。



『本当は、子供たちに、もう少し読み書きを教えたかったけど、あの草原に出発!』

『『『出発!』』』


 パーティーメンバーをキャンピングカーに乗せ、城下町はゆっくり徐行。門を出ると、アンリエッタに運転させる。助手席にはカーライルだ。

 例のぽつんとそびえ立つ大きな木の下に車を停め、皆を降ろした。

『それではまず、野営の準備をしてから狩りに向かおうか』

 テントを組み立て、石でかまどを作り、それから狩りに出た。


 狩りが終わってまき拾い。かおる、アンリエッタ、メンドローサ、ステインの女性メンバーに料理を任せて俺とカーライルで子供の面倒を見る。

『熱風荒れ狂う大いなる火の神よ、我に大いなる力を分け与えたまえ。ファイアーアロー! やった!火の矢が出た!』

『寒風吹きすさぶ大いなる氷の神よ、我に大いなる力を分け与えたまえ。アイシクルアロー! やった!火の矢が出たわ!』

 新しい、別の魔法を教えていた。


『ここでは炎の魔法は使わないこと。いいわね』

『はい!』

 数日草原で狩りをした後、一路補給に戻り、あの、ビッグゴスゴリルを倒したクロッドキューブの森に入っていた。子供たちには炎の魔法を使わないことを約束させた。

『最近魔法の練習ばかりで剣を使っていませんから、久しぶりに剣の練習しませんか?』

 カーライルがそんなことを言い始めた。

 そう言えば、魔法の練習にかたよってばかりで剣の練習をしていない。なまったかも知れない。

『分った。今日は剣の練習をしよう』


 そうして、剣の練習もしつつ、魔法の練習もしつつで討伐練習は進んでいった。


 そんなこんなで森に入ってから4日が過ぎ、訓練は順調に進んでいた。

『今日の訓練も順調ですね』

『それではもう少し奥まで行きましょうか』

 カーライルとアンリエッタがそんなことを話ながら、一行は奥へ奥へと進んだ。今思う。そんなに急いで奥へ進むから危機が訪れるのだと。

奥へ進んでしばし、視力を強化していたメンドローサが、

『前方に巨大な敵発見!敵に見つかりました。避けられません。こちらに向かってきます!』

みな、全力で逃げるぞ!退避-ー!!!』

 何か感じたデジャブ感。

 俺は剣をさやにしまい、花菜香はなか風雅ふうがを両脇に抱えると、みなに続き、一目散に逃げた。

 しかし、敵の方が進むスピードが速い。徐々に差を詰められ、

『ビッグアンプロデキサフォンじゃないか!中ボスクラスじゃないか!我々ではとても戦えないぞ!』

 逃げ惑うパーティーメンバー達。しかしかおるは落ち着いて何かを唱え始める。

『エクスペリメンタル・シリンダリカル・シールド!』

 例の盾に、

『エクストラ・サンダーボルト! 弾はじけろーー!!!』

 例の落雷魔法。

 ビッグアンプロデキサフォンに特大の雷が落ち、言葉通り、ビッグアンプロデキサフォンの巨体は体内に爆弾があり、それが爆発したかのように、バラバラに弾け飛んだ。

 ハァハァ、ゼェゼェ、一行は息を切らし、その場で息を整えようとする。またか、この展開。

 今の衝撃で、戦闘続行不能と、一行は早いがベースへ戻ることにした。いや、肉体的にも、精神的にも。


 ベースに戻り、一行は食事の用意やら、子供のお守りをそれぞれし、食事をし、明日の作戦会議を始めた。

『この展開。ひょっとしたらビッグアンプロデキサフォンの目撃情報があって討伐隊が組まれるかも知れん。かおる、念のため、リチャードお義父様に「ビッグアンプロデキサフォンは倒したよ!」と連絡入れてもらえるか?』

『ん?分った』

 かおるは手紙を書き、魔法でミニチュア飛行機を出し、それに手紙を入れ、空に飛ばした。

『これで大丈夫』



『この森にはもっと、とは言ってもビッグゴスゴリルやビッグアンプロデキサフォンクラスの魔獣はないでしょうが、でも、経験値上げに必要な魔物はいると思われます。このままここで鍛錬しましょう!』

 カーライルがそう言うので、このままここで、狩りを続けることになった。

 そうこう言っている間に、飛行機がやって来た。かおるの手で止まった。

 かおるは開けてみる。やはり手紙が入っていた。

『何々、最近、クロッドキューブの森でビッグアンプロデキサフォンが見つかり、明日、討伐隊が出発するところであった。もう討伐されたのだな。分った。すぐに王城に連絡し、明日の出発は中止にする。ビッグアンプロデキサフォンの討伐、よくやってくれた。だってさ』

 どこまでもデジャブ感漂う日であった。
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