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第五章 流通革命
スズケホーズ伯爵に流通部門を教えよう―前編
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その後もアカツキ伯爵は精力的に領地を見て回った。
時々領主邸で書類仕事もこなしながら。
そうこうしていくうちに、スズケホーズ伯爵から時間が空いたとの知らせが入った。
アカツキ伯爵は、スズケホーズ伯爵夫妻に流通部門の仕事を教えるために、一旦領地視察を中断して、スズケホーズ伯爵夫妻に会いに行くことにした。
「お時間をいただきありがとうございますスズケホーズ伯爵」
「ようこそおいで下さりましたアカツキ伯爵」
まずは記憶に名前を付けるやり方を教える。
スズケホーズ伯爵はアカツキ伯爵より年上だ。
知識も豊富だろう。
これを知れば一人で没頭しそうになるので、やり方だけ教えて、記憶の整理は面会時間以外でとお願いした。
次に、掃き出し窓の能力を使ってもらった。
掃き出し窓の魔法と基本的には同じなのだが、魔力の出所が違う。
掃き出し窓の魔法はマナを使う。マナは自分の体内に蓄えられた魔力だ。
一方、掃き出し窓の能力はオドを使う。オドは大気中やら、体の外から魔力をもらう。
この違いをスズケホーズ伯爵にしたところ、
「魔法と能力の違いは魔力の出所の違いだけで、その違いが分かっていたら、知っている魔法もこれから能力に変換できるかも知れない。実に興味深い」
と、感心された。
ちなみにアカツキ伯爵は神代魔法の中級編を読み終えたので、異世界から魔力を引っ張り出せたりするのだが、話が脱線するし、そこまではスズケホーズ伯爵に教える気もなかったのでそこは黙っておいた。
そこまで話をしておいて、次に、第一流通部門との顔合わせをしてもらうことにした。
「第一から第五まである流通部門のうち、こちらが第一流通部門です。最初に出来た流通部門にして、他の流通部門のリーダーを育てる流通部門の要とも言える部署になっております」
「おぉ、ここで次期リーダーが育つのですね」
「今、この部署にいて、考え事をしているように見える者は、遠隔で掃き出し窓の能力を開けるベテランばかりです。現地の片方にも赴かず、掃き出し窓の能力を使うのは、ちょっとした熟練が必要になります」
「おぉ。掃き出し窓の能力は自分が移動することしか念頭になかったが、改めて、ここは他者に掃き出し窓の能力を使わせるために存在するのだと改めて感じる光景ですな」
そうなのである。
普通、掃き出し窓の魔法は自分が移動したいから窓を開くのである。
しかしここは他者に移動してもらうために開くメンバーばかりである。
ちょっとした意識改革が必要になるのである。
「メンバーを紹介します。…とは言っても、彼らも仕事中で、集中していますから名前を教えるだけの紹介です。彼が佐藤頓馬。その隣が奥さんの沙華。この二人がここのリーダーです。そして彼がトムソン・パトルス、その隣が奥さんのジェシカ。この4人は現在ここの仕事がメインですが、扱いとしてはアカツキ家の使用人です。あと、比較的新人が片方の現地へ行って掃き出し窓の能力を開いたり閉じたりする仕事をしています」
名前と立場を教えた後、ここを流通部門フォルダの第一流通部門と記憶してもらって、他の流通部門も紹介する。
「ここが第二流通部門です。ここで遠隔で掃き出し窓の能力を開いているのはここのリーダー2人、ミハエル・アマハドと妻のコフィーです。他は出払ってますね」
ここを流通部門フォルダの第二流通部門と記憶してもらって次、第三流通部門から第五流通部門まで紹介して、一旦アカツキ伯爵邸まで戻って来た。
「覚えるにはなかなかのボリュームでしょう」
「そうですね。でも、記憶に名前を付ける能力というのは素晴らしいですね。記憶を意識の外へ追いやる能力と組み合わせると、いくらでも物を記憶できそうです」
「記憶の整理は後で行って下さいね。そちらに集中するとキリがありませんし、一人でもできますので」
そう言って、記憶の整理は後回しにしてもらって、新人募集の件を聞いてみる。
「以前お願いしてました流通部門の新人の募集の件、どうなってますか?」
「なかなかに給料や待遇が良く、新しい魔法を覚えられるとあって、結構人気が高いようですよ。ちらほら応募の手紙が届いてます」
「おぉ。流通部門の事柄は、スズケホーズ領でも知られてますか」
「はい。仕事に就く前に募集があったら絶対に流通部門に志願していたのに、と、悔しがりながら他の仕事をしている若者も多いと聞いています」
「アハハ…」
あまり笑い事でもないな。
”前の仕事を辞めて、流通部門を受けることにしました”とか来られても困る。
他の仕事も大事だ。
「あとは、今回の募集の件とは離れますが、工場団地の工員も結構人気が高い就職先のようです。テレビに冷蔵庫、掃除機に洗濯機を使ってみたいという若者や、団地住まいに興味を持つ若者も結構いるみたいですよ」
「電化製品はともかく、団地に興味を持つのは団地が目新しいからだけですね。団地内の人間関係だとか、団地が老朽化して建て替えなければならなくなったときとか、日本の古い団地は結構問題を抱えているところが多いです。歴史を重ねるとしがらみが多くなります」
「ほぉ。歴史のある団地というものも興味をそそられますな」
「話が脱線しますので、団地についてはこれくらいにして、今回の人員募集は、これから出来る工場団地の数を見越して多く取りたいと考えています。そこで、人数のご相談と、あと、面接にはスズケホーズ伯爵夫妻にも参加して欲しいと考えています」
「分かりました。面接には参加しましょう」
これからの流通部門について詰めていくアカツキ伯爵夫妻とスズケホーズ伯爵夫妻であった。
時々領主邸で書類仕事もこなしながら。
そうこうしていくうちに、スズケホーズ伯爵から時間が空いたとの知らせが入った。
アカツキ伯爵は、スズケホーズ伯爵夫妻に流通部門の仕事を教えるために、一旦領地視察を中断して、スズケホーズ伯爵夫妻に会いに行くことにした。
「お時間をいただきありがとうございますスズケホーズ伯爵」
「ようこそおいで下さりましたアカツキ伯爵」
まずは記憶に名前を付けるやり方を教える。
スズケホーズ伯爵はアカツキ伯爵より年上だ。
知識も豊富だろう。
これを知れば一人で没頭しそうになるので、やり方だけ教えて、記憶の整理は面会時間以外でとお願いした。
次に、掃き出し窓の能力を使ってもらった。
掃き出し窓の魔法と基本的には同じなのだが、魔力の出所が違う。
掃き出し窓の魔法はマナを使う。マナは自分の体内に蓄えられた魔力だ。
一方、掃き出し窓の能力はオドを使う。オドは大気中やら、体の外から魔力をもらう。
この違いをスズケホーズ伯爵にしたところ、
「魔法と能力の違いは魔力の出所の違いだけで、その違いが分かっていたら、知っている魔法もこれから能力に変換できるかも知れない。実に興味深い」
と、感心された。
ちなみにアカツキ伯爵は神代魔法の中級編を読み終えたので、異世界から魔力を引っ張り出せたりするのだが、話が脱線するし、そこまではスズケホーズ伯爵に教える気もなかったのでそこは黙っておいた。
そこまで話をしておいて、次に、第一流通部門との顔合わせをしてもらうことにした。
「第一から第五まである流通部門のうち、こちらが第一流通部門です。最初に出来た流通部門にして、他の流通部門のリーダーを育てる流通部門の要とも言える部署になっております」
「おぉ、ここで次期リーダーが育つのですね」
「今、この部署にいて、考え事をしているように見える者は、遠隔で掃き出し窓の能力を開けるベテランばかりです。現地の片方にも赴かず、掃き出し窓の能力を使うのは、ちょっとした熟練が必要になります」
「おぉ。掃き出し窓の能力は自分が移動することしか念頭になかったが、改めて、ここは他者に掃き出し窓の能力を使わせるために存在するのだと改めて感じる光景ですな」
そうなのである。
普通、掃き出し窓の魔法は自分が移動したいから窓を開くのである。
しかしここは他者に移動してもらうために開くメンバーばかりである。
ちょっとした意識改革が必要になるのである。
「メンバーを紹介します。…とは言っても、彼らも仕事中で、集中していますから名前を教えるだけの紹介です。彼が佐藤頓馬。その隣が奥さんの沙華。この二人がここのリーダーです。そして彼がトムソン・パトルス、その隣が奥さんのジェシカ。この4人は現在ここの仕事がメインですが、扱いとしてはアカツキ家の使用人です。あと、比較的新人が片方の現地へ行って掃き出し窓の能力を開いたり閉じたりする仕事をしています」
名前と立場を教えた後、ここを流通部門フォルダの第一流通部門と記憶してもらって、他の流通部門も紹介する。
「ここが第二流通部門です。ここで遠隔で掃き出し窓の能力を開いているのはここのリーダー2人、ミハエル・アマハドと妻のコフィーです。他は出払ってますね」
ここを流通部門フォルダの第二流通部門と記憶してもらって次、第三流通部門から第五流通部門まで紹介して、一旦アカツキ伯爵邸まで戻って来た。
「覚えるにはなかなかのボリュームでしょう」
「そうですね。でも、記憶に名前を付ける能力というのは素晴らしいですね。記憶を意識の外へ追いやる能力と組み合わせると、いくらでも物を記憶できそうです」
「記憶の整理は後で行って下さいね。そちらに集中するとキリがありませんし、一人でもできますので」
そう言って、記憶の整理は後回しにしてもらって、新人募集の件を聞いてみる。
「以前お願いしてました流通部門の新人の募集の件、どうなってますか?」
「なかなかに給料や待遇が良く、新しい魔法を覚えられるとあって、結構人気が高いようですよ。ちらほら応募の手紙が届いてます」
「おぉ。流通部門の事柄は、スズケホーズ領でも知られてますか」
「はい。仕事に就く前に募集があったら絶対に流通部門に志願していたのに、と、悔しがりながら他の仕事をしている若者も多いと聞いています」
「アハハ…」
あまり笑い事でもないな。
”前の仕事を辞めて、流通部門を受けることにしました”とか来られても困る。
他の仕事も大事だ。
「あとは、今回の募集の件とは離れますが、工場団地の工員も結構人気が高い就職先のようです。テレビに冷蔵庫、掃除機に洗濯機を使ってみたいという若者や、団地住まいに興味を持つ若者も結構いるみたいですよ」
「電化製品はともかく、団地に興味を持つのは団地が目新しいからだけですね。団地内の人間関係だとか、団地が老朽化して建て替えなければならなくなったときとか、日本の古い団地は結構問題を抱えているところが多いです。歴史を重ねるとしがらみが多くなります」
「ほぉ。歴史のある団地というものも興味をそそられますな」
「話が脱線しますので、団地についてはこれくらいにして、今回の人員募集は、これから出来る工場団地の数を見越して多く取りたいと考えています。そこで、人数のご相談と、あと、面接にはスズケホーズ伯爵夫妻にも参加して欲しいと考えています」
「分かりました。面接には参加しましょう」
これからの流通部門について詰めていくアカツキ伯爵夫妻とスズケホーズ伯爵夫妻であった。
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