異世界マゼマゼ奮闘記

ぷい16

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第四章 世界の工場

西洋医、後輩を連れて来る

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”年間パス”

 日本から海外に行くには、空港なり港なりで入出国審査をして海外に行き来する。

 しかし、こと、インジスカン王国へ渡るとなると、空港や港に寄る必要はない。

 移動は魔法である。

 掃き出し窓の魔法が使える者に頼み、入出国審査なしで行き来できてしまう。

 その、入出国審査をどうしようかと日本政府とインジスカン王国首脳陣が考えた結果出来できたのが、”年間パス”である。

 厳しい審査しんさを受けて、”年間パス”を手にした者が、入出国審査なし、荷物検査なし、入出国記録なしでいつでも日本とインジスカン王国間を行き来できる制度である。

 掃き出し窓の魔法がある以上、入出国審査など土台どだい無理むりな話である。

 日本とインジスカン王国間の苦肉の策である。

 もっとも、汲広くみひろやアントネラ、悠生ゆうせいやステファニアは他の法律で日本とインジスカン王国間を行き来するのだが。



 悠生ゆうせいとステファニアと言えば、スキカに魂と体を1つずつもらってもう一人ずつ、2ペアるのだが、インジスカン王国に長く2ペアるため、インジスカン王国側から説明を求められた。

 分身の術で… と、苦しまぎれな答弁とうべんでその場は乗り切ったが、特殊事例なので、インジスカン王国に特措法とくそほうができた。

 ”アカツキ伯爵夫妻は2組り、その地位や財産、その他権限を悠生ゆうせい悠生ゆうせい汲広くみひろ共通、、ステファニアはアントネラ、ステファニア共通であり、2人で1人の扱いをする”と。

 日本も汲広くみひろたちの特別立法を改正して、”汲広くみひろ悠生ゆうせいは1人の人間として、アントネラ、ステファニアは1人の人間として、国籍、地位、財産その他を共に共有する”という文言が付け加えられた。

 これで、悠生ゆうせいが2人ること、ステファニアが2人ることを誤魔化ごまかさずにむようになったのである。


     *


 工業団地の西洋医、今では治癒魔法師としても、地位を確立し始めているのだが、彼、多々身たたみ省語しょうごは、後輩とよく電話をし、面白いからとこちら、インジスカン王国で、一緒に医療をやろうとインジスカン王国への移住を強くすすめていた。

 すると、その後輩は、”一度会って直接話がしたい”と言われ、企業に張られた掃き出し窓を使って日本に渡り、直談判じかだんぱんに出かけるのであった。


多々身たたみさん、電話では最近よく話していますがご無沙汰ぶさたしております」

多田之助ただのすけ君、お久しぶり」


 後輩、名を大倉おおくら多田之助ただのすけと言うが、省語しょうご何故なぜ、インジスカン王国行きを強くすすめるのか意味が分からなかった。

 省語しょうごは、


「インジスカン王国には治癒魔法というのがあるのは知っているかな?」

「あぁ、魔法ですか。最近大学に魔法学とかできたあれの延長ですね。私に言わせれば、怪しいことこの上ない」

「まぁ、そう言わずに資料を見てくれ」


 そう言うと、インジスカン王国から持って来た大量の資料を多田之助ただのすけに見せた。

 その資料にっている内容は、西洋医学ではあり得ないアプローチで患者をなおす試みが記されていた。


「え、これ、本当ですか?」

「本当だとも。私も、西洋医学を学んで、医師免許まで取って医療に励んできたが、治癒魔法は画期的だ。私も治癒魔法は学んでいる最中さいちゅうだが、奥が深い。使いどころを間違わなければ医療は劇的げきてきに進歩すると確信しているよ」

「これが本物かどうかは私には判断できません。ですけど多々身たたみさんの希望です。今行っている病院には長期休暇をもらって現地で実際に見てみようと思います」

「おぉ、そうか。見学に来てくれるか」

「それでは時期が来ればそちらにお邪魔したいと思います」


 そうして話は終わった。

 省語しょうごは、インジスカン王国へ帰ると、汲広くみひろと面会し、大倉おおくら多田之助ただのすけのことを伝えた。

 汲広くみひろに伝えるのは早いほうが良い。

 自分も身辺を探られた身として、多田之助ただのすけを早く見てもらい、早いうちに魔術医療をさずけてもらおうと思ったからだ。


「分かりました。魔法医術を教えるにたる人物か、調べさせてもらいましょう」


 汲広くみひろの行動は早かった。

 日本での多田之助ただのすけの人となりを調べ上げ、省語しょうご推薦すいせんもあって、会う前から、汲広くみひろ多田之助ただのすけに魔術医療をさずけることを決意するのであった。


     *


 時は流れて多田之助ただのすけがインジスカン王国へやって来た。

 省語しょうご多田之助ただのすけの話しもそこそこのところに多々身たたみ医院に汲広くみひろがやって来た。


「あなたが大倉おおくら多田之助ただのすけさんですね。話は伺っております。あなたに魔術医療をさずけましょう」


 と言って、汲広くみひろ多田之助ただのすけの頭に手をかざし、多田之助ただのすけの頭に直接、魔術医療を叩き込むのであった。
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