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第四章 世界の工場
魔法の神髄―初級編
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流通部門の人間全員に能力を授けてもらい、その日の終わりの会で能力の説明をする汲広。
「これを使うと、作業が楽になるのですか?」
流通部門の佐藤沙華からそんな質問が飛んできた。すると汲広は、
「作業は楽になるし、ミスも減るし、慣れればちゃんと現場に行かなくても開けるようになるぞ」
と、そんな返事をするのであった。
汲広が試した通り、準備期間に1週間程。中には10日かかる者もいたが。その間、詰め所にあてがっていたアカツキ邸の一室は人気が減り、ガランとしていた。
まぁ、とりあえず、皆が能力を本稼働させてみると間違いが無くなった。すると、リリアーナ・ブレッドは、
「以前は頭にもやもやっとしたものがありましたが、今は、この名前はココと、はっきり意識できるので、作業がやりやすくなりました」
概ね、高評価を受けた。
次の日の朝、6時には、パラパラと流通部門の人間が集まり始め、6時半には、朝の会。汲広は、
「今日からはノーミスでいきましょう」
「「「「はい」」」」
新しい朝が始まるのであった。
*
その日の作業が終わり、眠って2時間くらい経ったであろうか、また、スキカのミーティング空間に呼ばれた。
誰が呼ばれたかを確認すると、スキカはもちろん居る。他には領地組の汲広とアントネラだけであった。
まずはスキカが飲み物に口を付けた。
先にそうしておかないと、汲広やアントネラが気を遣って、飲み物に手を付けないからだ。スキカが話し始める。
「これを教えるべきか、悩みに悩んだのだが、折角汲広も色々と気が回るようになってきたし、その頑張りに答えてやりたくなったのが本音か」
汲広とアントネラ、二人は生唾を飲んだ。
「困りごとがあると我に頼み込んでくるのも気が引けるであろう。そんな君等に、初級編ではあるが、魔道の知識を授けたいと思う」
「魔道の知識… ですか」
すると、スキカは立ち上がり、汲広に手をかざす。すると、スキカの手は淡く光を放ち、膨大な知識が脳になだれ込んでくる。
やがて、光は収まり、次はアントネラの番になる。
「いわゆる神代魔法というものだ。今の世では、これを知る者は皆無である」
スキカは続ける。
「この記憶は脳が改ざんできないようにしている。間違った知識にならないようにするためにな。あと、初級編というだけあって、これだけでは不十分であろう。対処できなくなったら、また我を呼ぶがいい」
汲広はその知識をざっとつまんで、スキカに問いかける。
「この知識を魔法学会に伝えれば、学会は知識改革で大変なことになるんじゃ?」
「まぁ、そうだろうね。こうすればこうなる。と、実用部分のみ、それも不完全な知識しか伝えられていない今の魔法学会には刺激が強すぎるであろう。おまけに、伝えても、多分信用されない。君等はさっきまで、その学会風に言えば、魔法を修めている者のうちで平均のちょい下の方、最高権威と言われる学会に仮に物申したところで、素人の戯れ言と、切り捨てられるのが道理だとは思わないかね?」
確かに。サーメイヤ語を通訳する権威とは言われている汲広とアントネラではあったが、魔法学会には席はない。
平均のちょい下の方。
とても学会の人間に偉そうに講釈を垂れても変人と思われるばかりで相手にはされないだろう。
スキカは続ける。
「まぁ、他人に教えることは否定しないのだけれどね。それより、君等の生活を充実させたり、困りごとの解決に使って欲しくて我はこの能力を授けたのだよ。王都組の汲広やアントネラには教えずにね」
スキカは続ける。
「この知識があれば、新たな魔法や能力を創造できる。それだけ強力な知識を授けたつもりだ。魔法や能力を紐解く知識も含まれているので、今まで授けた能力で、まぁ、中級、高等に分類される部分をブラックボックス化すれば、応用して変化させることもできるであろう。君等が活躍するのを我々は皆、楽しんでおったが、これからは、どんな魔法を創造するかという楽しみも増えたわい。期待を裏切らないように励めよ」
「「はい」」
「今後の君等の行い次第ではあるが、中級、高等の知識を教えることもやぶさかではない。今は初級を処理するのでいっぱいいっぱいであろう。それは今後の楽しみとして、我からは以上だ。質問は?」
「特にありません」
「そうか。眠りを邪魔して済まなかったな。ゆっくり休めよ」
そして、また、穏やかな眠りに吸い込まれる汲広とアントネラであった。
「これを使うと、作業が楽になるのですか?」
流通部門の佐藤沙華からそんな質問が飛んできた。すると汲広は、
「作業は楽になるし、ミスも減るし、慣れればちゃんと現場に行かなくても開けるようになるぞ」
と、そんな返事をするのであった。
汲広が試した通り、準備期間に1週間程。中には10日かかる者もいたが。その間、詰め所にあてがっていたアカツキ邸の一室は人気が減り、ガランとしていた。
まぁ、とりあえず、皆が能力を本稼働させてみると間違いが無くなった。すると、リリアーナ・ブレッドは、
「以前は頭にもやもやっとしたものがありましたが、今は、この名前はココと、はっきり意識できるので、作業がやりやすくなりました」
概ね、高評価を受けた。
次の日の朝、6時には、パラパラと流通部門の人間が集まり始め、6時半には、朝の会。汲広は、
「今日からはノーミスでいきましょう」
「「「「はい」」」」
新しい朝が始まるのであった。
*
その日の作業が終わり、眠って2時間くらい経ったであろうか、また、スキカのミーティング空間に呼ばれた。
誰が呼ばれたかを確認すると、スキカはもちろん居る。他には領地組の汲広とアントネラだけであった。
まずはスキカが飲み物に口を付けた。
先にそうしておかないと、汲広やアントネラが気を遣って、飲み物に手を付けないからだ。スキカが話し始める。
「これを教えるべきか、悩みに悩んだのだが、折角汲広も色々と気が回るようになってきたし、その頑張りに答えてやりたくなったのが本音か」
汲広とアントネラ、二人は生唾を飲んだ。
「困りごとがあると我に頼み込んでくるのも気が引けるであろう。そんな君等に、初級編ではあるが、魔道の知識を授けたいと思う」
「魔道の知識… ですか」
すると、スキカは立ち上がり、汲広に手をかざす。すると、スキカの手は淡く光を放ち、膨大な知識が脳になだれ込んでくる。
やがて、光は収まり、次はアントネラの番になる。
「いわゆる神代魔法というものだ。今の世では、これを知る者は皆無である」
スキカは続ける。
「この記憶は脳が改ざんできないようにしている。間違った知識にならないようにするためにな。あと、初級編というだけあって、これだけでは不十分であろう。対処できなくなったら、また我を呼ぶがいい」
汲広はその知識をざっとつまんで、スキカに問いかける。
「この知識を魔法学会に伝えれば、学会は知識改革で大変なことになるんじゃ?」
「まぁ、そうだろうね。こうすればこうなる。と、実用部分のみ、それも不完全な知識しか伝えられていない今の魔法学会には刺激が強すぎるであろう。おまけに、伝えても、多分信用されない。君等はさっきまで、その学会風に言えば、魔法を修めている者のうちで平均のちょい下の方、最高権威と言われる学会に仮に物申したところで、素人の戯れ言と、切り捨てられるのが道理だとは思わないかね?」
確かに。サーメイヤ語を通訳する権威とは言われている汲広とアントネラではあったが、魔法学会には席はない。
平均のちょい下の方。
とても学会の人間に偉そうに講釈を垂れても変人と思われるばかりで相手にはされないだろう。
スキカは続ける。
「まぁ、他人に教えることは否定しないのだけれどね。それより、君等の生活を充実させたり、困りごとの解決に使って欲しくて我はこの能力を授けたのだよ。王都組の汲広やアントネラには教えずにね」
スキカは続ける。
「この知識があれば、新たな魔法や能力を創造できる。それだけ強力な知識を授けたつもりだ。魔法や能力を紐解く知識も含まれているので、今まで授けた能力で、まぁ、中級、高等に分類される部分をブラックボックス化すれば、応用して変化させることもできるであろう。君等が活躍するのを我々は皆、楽しんでおったが、これからは、どんな魔法を創造するかという楽しみも増えたわい。期待を裏切らないように励めよ」
「「はい」」
「今後の君等の行い次第ではあるが、中級、高等の知識を教えることもやぶさかではない。今は初級を処理するのでいっぱいいっぱいであろう。それは今後の楽しみとして、我からは以上だ。質問は?」
「特にありません」
「そうか。眠りを邪魔して済まなかったな。ゆっくり休めよ」
そして、また、穏やかな眠りに吸い込まれる汲広とアントネラであった。
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