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第三章 4人、日本とインジスカン王国を行き来する
セバスチャン・ハーバーズの述懐
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私はアカツキ伯爵の妻君であらせられますステファニア様に付いていますセバスチャン・ハーバーズという執事で御座います。
私がカンデラ子爵に雇われたのは私が21才の頃、ステファニア様は10才でありましたか。
雇われて早々カンデラ子爵のスティーブ様から仰せつかったのは、ステファニア様が成人し、農地改良に乗り出したり、新しい冶金の技術に投資したり等、ステファニア様ご自身で、領地を良くしようと動いた際に、ステファニア様のスケジュール管理等、ステファニア様に寄り添い、執事の仕事をせよということでした。
私はまだ、その頃は、執事見習い。時が来るまでは、スティーブ様の執事であるメーンフェス・ゴルモットールより、執事の仕事について教わり、立派に仕事をこなせる執事になれとスティーブ様は仰いました。
その頃のステファニア様は、家庭教師のラメリア・オーガストの目を盗んで領主邸の外のメルタープの街へ出かけ、遊び仲間の同い年くらいの町人、ピボット・テーブラーと共に、メルタープの街を走り回っておいででした。
ラメリアも、メイドのユートピー・セーノも、授業があるのにとステファニア様が逃げ出す度にメルタープの街を走り回ってステファニア様を毎回のように捜し回っていました。
あるとき、ラメリアも、ユートピーも、とうとうステファニア様を探し出すことができず、お屋敷へ戻って来て、ステファニア様は日が暮れてからお帰りになりました。
そのとき、母親のナンシー様に、お土産とか言って、芋虫を差し出し、ナンシー様が悲鳴を上げたのが昨日のように思い出される程、私の記憶に鮮明に残っております。
ステファニア様は、年を追うごとに、やんちゃなことは減って参りましたが、時折、また、メルタープの街に下りて、ピボットとの遊びに興じておりました。
回数は減ったとはいえ、やんちゃなお姫様、私も、これは一生治らないものと諦めておりました。
しかし、あの、今の夫君であらせられますユウセイ・フォン・アカツキ伯爵にお会いしてからそのやんちゃがピタッと収まったので御座います。
ステファニア様は、ユウセイ様とお話しなさっているときは、とても楽しそうで御座いました。
初めは、ユウセイ様は異国の言葉しか知らず、カンデラ家の方々も、使用人も、何を仰っているか、皆目見当が付きませんでしたが、ステファニア様はうんうんと言葉を聞き、カンデラ家の方々に、通訳しておいででした。
私も、理解に苦しみまして、家庭教師のラメリアに、あのような言葉を教えたのかと問いただしたことが御座いましたが、そのラメリア自身、ユウセイ様の言葉が分からない。
どこであの言葉を覚たのか皆目見当が付かないと言っていました。とにかく、不思議なこともあるものだと思いました。
ユウセイ様も、徐々にこの国にお慣れになり、徐々に話が通じるようになりました。
しかし、その後が凄かった。文字や単語を覚えるスピードが異常だったので御座います。
普通、読むのに10年かかるスティーブ様に届いた部下からの書類を、ユウセイ様は誰の助けもなく読み上げ、スティーブ様に意見するようになったので御座います。
それも、その意見がスティーブ様も舌を巻く程の解決方法であり、スティーブ様が、ユウセイ様の居ない間、こそっとメーンフェスや私にこぼしたのですが、スティーブ様の意見より効率的で、見通しも素晴らしいとのこと。ひょっとしたら、ユウセイ様は、国元では高貴な出、貴族のご子息なのではと仰っておいででした。
その後もステファニア様もユウセイ様も仲睦まじく暮らしており、ユウセイ様の名が王都まで届き、それも、王様の耳にも届き、なんと名誉なことか、王宮でご婚礼を上げることになったではありませんか。
私は従者として飛び上がって喜んだもので御座います。ただ、王都は遠う御座います。私は付いていくこともできず、その晴れ姿を拝むことは叶わなかったので御座います。
それから数ヶ月経った頃で御座います。
王都にいらっしゃった若君や姫君が揃ってお帰りなされた際、やっと、私はステファニア様付きの執事となったので御座います。
しかし、最近思うのです。
先日、ユウセイ様が領地視察で、その地の作物であるラクオーベの実をご試食した際、マナーとしては種を入れる袋を持参してそこに種を棄てるのですが、ユウセイ様は平民の様に、口から勢いよく飛ばし、畑に棄てたので御座います。
しかし、お国によってマナーというのは違うと申します。きっとユウセイ様のお国ではそういうマナーなのでしょう。
とにもかくにも、ステファニア様、ユウセイ様、お二人とも類い希なる頭脳の持ち主。
私めが思いも付かぬ方法でご政務をことごとく片付けていくことでしょう。
その一部始終をこの目で見届けられる執事という職。これは役得で御座いましょう。
あのお二方にはどこまででも付いて行く所存で御座います。この身が老いて、朽ち果てるまで。
私がカンデラ子爵に雇われたのは私が21才の頃、ステファニア様は10才でありましたか。
雇われて早々カンデラ子爵のスティーブ様から仰せつかったのは、ステファニア様が成人し、農地改良に乗り出したり、新しい冶金の技術に投資したり等、ステファニア様ご自身で、領地を良くしようと動いた際に、ステファニア様のスケジュール管理等、ステファニア様に寄り添い、執事の仕事をせよということでした。
私はまだ、その頃は、執事見習い。時が来るまでは、スティーブ様の執事であるメーンフェス・ゴルモットールより、執事の仕事について教わり、立派に仕事をこなせる執事になれとスティーブ様は仰いました。
その頃のステファニア様は、家庭教師のラメリア・オーガストの目を盗んで領主邸の外のメルタープの街へ出かけ、遊び仲間の同い年くらいの町人、ピボット・テーブラーと共に、メルタープの街を走り回っておいででした。
ラメリアも、メイドのユートピー・セーノも、授業があるのにとステファニア様が逃げ出す度にメルタープの街を走り回ってステファニア様を毎回のように捜し回っていました。
あるとき、ラメリアも、ユートピーも、とうとうステファニア様を探し出すことができず、お屋敷へ戻って来て、ステファニア様は日が暮れてからお帰りになりました。
そのとき、母親のナンシー様に、お土産とか言って、芋虫を差し出し、ナンシー様が悲鳴を上げたのが昨日のように思い出される程、私の記憶に鮮明に残っております。
ステファニア様は、年を追うごとに、やんちゃなことは減って参りましたが、時折、また、メルタープの街に下りて、ピボットとの遊びに興じておりました。
回数は減ったとはいえ、やんちゃなお姫様、私も、これは一生治らないものと諦めておりました。
しかし、あの、今の夫君であらせられますユウセイ・フォン・アカツキ伯爵にお会いしてからそのやんちゃがピタッと収まったので御座います。
ステファニア様は、ユウセイ様とお話しなさっているときは、とても楽しそうで御座いました。
初めは、ユウセイ様は異国の言葉しか知らず、カンデラ家の方々も、使用人も、何を仰っているか、皆目見当が付きませんでしたが、ステファニア様はうんうんと言葉を聞き、カンデラ家の方々に、通訳しておいででした。
私も、理解に苦しみまして、家庭教師のラメリアに、あのような言葉を教えたのかと問いただしたことが御座いましたが、そのラメリア自身、ユウセイ様の言葉が分からない。
どこであの言葉を覚たのか皆目見当が付かないと言っていました。とにかく、不思議なこともあるものだと思いました。
ユウセイ様も、徐々にこの国にお慣れになり、徐々に話が通じるようになりました。
しかし、その後が凄かった。文字や単語を覚えるスピードが異常だったので御座います。
普通、読むのに10年かかるスティーブ様に届いた部下からの書類を、ユウセイ様は誰の助けもなく読み上げ、スティーブ様に意見するようになったので御座います。
それも、その意見がスティーブ様も舌を巻く程の解決方法であり、スティーブ様が、ユウセイ様の居ない間、こそっとメーンフェスや私にこぼしたのですが、スティーブ様の意見より効率的で、見通しも素晴らしいとのこと。ひょっとしたら、ユウセイ様は、国元では高貴な出、貴族のご子息なのではと仰っておいででした。
その後もステファニア様もユウセイ様も仲睦まじく暮らしており、ユウセイ様の名が王都まで届き、それも、王様の耳にも届き、なんと名誉なことか、王宮でご婚礼を上げることになったではありませんか。
私は従者として飛び上がって喜んだもので御座います。ただ、王都は遠う御座います。私は付いていくこともできず、その晴れ姿を拝むことは叶わなかったので御座います。
それから数ヶ月経った頃で御座います。
王都にいらっしゃった若君や姫君が揃ってお帰りなされた際、やっと、私はステファニア様付きの執事となったので御座います。
しかし、最近思うのです。
先日、ユウセイ様が領地視察で、その地の作物であるラクオーベの実をご試食した際、マナーとしては種を入れる袋を持参してそこに種を棄てるのですが、ユウセイ様は平民の様に、口から勢いよく飛ばし、畑に棄てたので御座います。
しかし、お国によってマナーというのは違うと申します。きっとユウセイ様のお国ではそういうマナーなのでしょう。
とにもかくにも、ステファニア様、ユウセイ様、お二人とも類い希なる頭脳の持ち主。
私めが思いも付かぬ方法でご政務をことごとく片付けていくことでしょう。
その一部始終をこの目で見届けられる執事という職。これは役得で御座いましょう。
あのお二方にはどこまででも付いて行く所存で御座います。この身が老いて、朽ち果てるまで。
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