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第百四十四話 知らないふりはもうできない
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プログレス国へと向かう旅が始まったが、俺たちの日常になんら変わりは無かった。村や街、それに都があれば寄って旅の宿を借りる、そうでない時には野宿で過ごした。
俺は元々ヴァンパイアに最初狙われた時からずっと、そしてフェリシアに出会いそれからもずっと、少なからずヴァンパイアに関わってきた。ヴァンパイアの王とされているフェリシアを開放したいという俺の想いは、その臣下であるヴァンパイアたちにとっては不満なようだ。
だから俺自身が草食系ヴァンパイアだが、普通のヴァンパイアは敵だと言ってもいい。でも、ディーレやファンは違う、元々はヴァンパイアとは関係がなく生きることができる者たちだ。
「ディーレ、ファン。俺はよく考えたすえに思うんだが、もしヴァンパイアを退治する魔法が見つかっても、それをお前たちは知らないほうがいいかもしれない。……少なくとも多くの人がそれを知る機会が訪れるまでは、何も知らないほうが良くないか」
「……レクスさん、僕たちがヴァンパイアに襲われる心配をしているんですね」
「そっか、遥か昔に一度は確かにヴァンパイアたちはその魔法を葬ってるんだもんね」
「また同じことをしかねないということですか、レクス様。ちょっと私も除外してくれませんかね」
俺は旅の最中によく考えたすえのことをディーレとファンに訊ねてみた、ディーレとファンはお互いに顔を見合わせた後に返事をした。
「レクスさん、僕たちは既に貴方にもヴァンパイアにも深く関わっています。フェリシアさんが貴方の状況をなんらかの術で知っているように、ヴァンパイアたちも僕たちのことを知っているでしょう」
「そうそう、だから今更知らないふりをしても無駄だよ。それにドラゴンはヴァンパイアなんて恐れない、同じ太古の生き物の祝福されし者は別だけど、ヴァンパイアはドラゴンにとっても血を狙う魔物に過ぎない」
二人とも俺の心配を笑いながら、必要ないのだという返事をしてくれた。確かにこの二人は俺に関わり過ぎている、今頃になってその心配をしても遅すぎることだった。
「……そうか、それじゃ。改めて残っているか分からないが、ヴァンパイアを倒す魔法を一緒に探してくれるか」
「もちろんですとも、神に仕える者としても、人を襲う魔を退けるのは当然です」
「ドラゴンは何者も恐れない、時に正々堂々と戦って死ぬのはその本望」
ちょっと悩んでいた俺が馬鹿なくらいに二人は力強く戦ってくれると言ってくれた、一人ではなく共に戦う者がいるというのは何て心強いことだろう。
「お三人とも私をお忘れですね、確かに私はレクス様の従魔ですから、その為に戦うのは当たり前のことですけどね!!…………もうっ、私は元々は愛玩用なんですったら!!」
たった一匹、ミゼだけが話の外に置かれて拗ねていた。ミゼよ、お前は俺の従魔だから戦いには強制参加だ。というか既に俺の血を分けている時点で切り離すことができない、ミゼの意志を尊重して戦いから遠ざけることはできるんだが、主である俺が死ぬとおそらくミゼにも何らかの影響が出るはずだ。だから、ミゼのことを軽視しているわけじゃない。
「二人ともありがとな。それから拗ねるな、ミゼ。それにヴァンパイアを倒す魔法を知ったところで、こちらを襲ってこないなら意味がないことだしな」
「ヴァンパイアは確かに魔物ですが、ここから遠くの国に多いと聞きます」
「そうだね、ヴァンパイアたちははぐれた者はともかく、多くは集まって一つの国のなっているはずだっけ」
「そうでございます、最初はレクス様にもそこに行って、高位ヴァンパイアとしてのし上がって貰いたかったのですが」
「そういえばミゼは確かに最初、そんなことを言っていたな。どこにあるんだ、その国は?」
「ええと、それがですね。忘れてしまったのです、いいえ、忘れたというか記憶から消されている感じがするのです」
「……記憶から消されている?」
「そうなのです、最初は確かに覚えていたのです。ですがレクス様にその気が無いと分かってから、だんだんと記憶が曖昧になっていった感じです」
俺も時々記憶にないことをしていることがある。上質な魔石に囲まれて目が覚めた時のこと、ディーレやファンそれにミゼに心配をかけて血を吐いて倒れたこと、それからドラゴンたちと対話しタークオ国を退けた時の記憶は曖昧だ。
ヴァンパイアには記憶を操る者がいるのだろうか、俺自身もそんな魔法を作って一つ持っているぐらいだしな。だとしたら面倒な相手だ、記憶を操られたらどうしようもない。うーん、そのわりには俺自身の記憶の欠落は怖い感じがしない、今はまだその記憶の扉を開けないほうがいい気がするんだ。
「ヴァンパイアたちは一体なにを考えているんだろうな」
「それはまだ分かりません、なにせ生まれた時から僕たちとは違った生き物ですから」
「基本的にはヴァンパイアは真祖、自分をヴァンパイアにした者の言うことから、多くは逆らえないはずだけどね」
「そういえばレクス様の幼馴染の方も、ヴァンパイアに従っていましたしね。私がレクス様に逆らえないように、真祖には逆らうことができないのでしょう」
ヴァンパイアの真祖というのはおそらくだが、人間と祝福されし者の間に生まれた子どもだ。そのわりには数が少ないような印象を受ける、ドラゴンのような太古に生き物が数を決めて生き延びているように、ヴァンパイアにも数を増やすことができない理由があるのだろうか。
人間が動物を狩るように、ヴァンパイアも人間を狩る。捕食者が被食者より多くなることはない、何故なら飢えがそれを阻むからだ。そうなると人間はもっとも繁栄した種族かもしれない、多くの国がありそこで沢山の人々が生きているからだ。
「まぁ、ヴァンパイアが敵だということには変わりないがな」
俺はずっとそう思っていた、何故なら今までずっとヴァンパイアに命を脅かされてきたからだ。だから、その考えが揺らぐようなことがあるとは思っていなかった。
それは旅の途中で立ち寄った、プラントンという街での出来事だった。いつものように通行税を収めて街に入り、冒険者ギルドに立ち寄った時の話だ。
「貴方は白金の冒険者ですか?」
「ん、ああ、一応はそうだが。何の用だ?」
俺たちは飯屋で腹を満たした後に、いつものように冒険者ギルドに立ち寄った。ギルドの図書室はいろいろなことを教えてくれる、それにギルドの職員たちは魔物の動きに誰よりも詳しい。
「良かった、ギルドから特別依頼があるんです。まずは応接室までどうぞ」
「よく分からないが、引き受けるとは限らないぞ」
最初にそう断っておいて、俺たちは冒険者ギルドの応接室に通された。タンポポではなく豆からひいたコーヒーが出されて、俺たちは猫のミゼ以外それに口をつけた。しばらく待たされたが、やがてギルドの職員が現れた。
「貴方たちはヴァンパイアではないようですね、そのコーヒーは聖水から作ったものです」
俺たちはその言葉にぎょっとして手元のコーヒーを見た、爽やかな味がすると思ったが聖水は単なる光属性の魔法がかかった水で、ヴァンパイアを見分ける役には立たないと俺は思っている。いや、それよりこの街にはヴァンパイアがいるのか。
「実は最近、ヴァンパイアの仕業と見られる遺体が幾つも見つかっています。女性や子どもが被害者で全身の血が抜かれています、もう半年になりますが犯人のヴァンパイアが見つからなくて困っています。どうか、白金の冒険者の力を貸してもらえませんか?」
「……大体、どのくらい被害が出ているんだ?」
「被害者は月に一人か二人ですが、『貧民街』で死んだ者が多く、正確な数が把握できないのです」
「……それだけ人が死んでいるのなら、領主も調査しているんだろう。何故、冒険者ギルドが俺に依頼をする」
「依頼は数少ない被害に遭われた貴族の遺族から出ています、もちろんこの街の領主さまもヴァンパイアを探して調査はしています」
「……なるほど、そうか。少し仲間と話をさせてくれ」
俺はいったん冒険者ギルドの職員を下がらせた、仲間だけになった応接室でヴァンパイアをどうするのか相談する。
「被害が出ているのなら見捨てることはできません、レクスさん。もちろん引き受けましょう」
「ディーレが言う通りかも、それにヴァンパイアについて、よく知る良い機会だと僕も思う」
「私は戦闘では役にたてませんが、引き受けておいても良いと思います。一人ヴァンパイアが減れば、それだけ私の未来の嫁候補が助かります」
「そうだな、被害者がいるのなら引き受けるか」
ミゼの言うことは分からなかったが、俺たちは一旦旅を止めて、プラントンという街でヴァンパイア退治をすることにした。はぐれのヴァンパイアだったらいい、相手が一人で済むからだ。だが、下手をすればヴァンパイア一族を相手にしなくてはならない。
ディーレはもう下位くらいのヴァンパイアなら勝てると思う。ファンも力とスピードだけなら中位のヴァンパイアにでも負けていない、ミゼだけは戦いに参加しないほうがいいだろう。
「まずは最後の被害者に会わせてもらいたい、それは一体どこの誰だ?」
「お引き受けくださるのですね!!被害者はもう死んでおりますので、再びヴァンパイアの訪れはありませんが案内をさせます」
冒険者ギルドに依頼を引き受けることを伝えると、成功報酬で金貨10枚だと説明があった。それから最後の被害者、『貧民街』の者だったがその家に案内して貰った。
「……ん、よし覚えたぞ」
俺だって草食系とはいえヴァンパイアだ、血の匂いにはことさら敏感だ。特定の人間の血の匂いを追っていくこともできる、俺はギルドの者は帰して残っている血の匂いを追っていった。
最後にヴァンパイアが出てから、1週間も経っていなくて助かった。まだ血の匂いは新しく、それを追跡するのは容易かった。
「ここに間違いはないんだが、これはまずいな」
「ここは特別区ですね、貴族や王族の方でないと入れません」
「人間って変なの、生きてく場所に細かい区別が多いね」
「ファンさん、人間にとって身分は大切なものなのです。下手に私たちのような庶民が騒ぎ立てれば、逆にヴァンパイア扱いされて焚火にされますよ」
俺たちは特別区を目の前にして途方にくれた、また有力な貴族が犯人なら面倒なことになるのは、どうしても避けられないことだったからだ。
俺は元々ヴァンパイアに最初狙われた時からずっと、そしてフェリシアに出会いそれからもずっと、少なからずヴァンパイアに関わってきた。ヴァンパイアの王とされているフェリシアを開放したいという俺の想いは、その臣下であるヴァンパイアたちにとっては不満なようだ。
だから俺自身が草食系ヴァンパイアだが、普通のヴァンパイアは敵だと言ってもいい。でも、ディーレやファンは違う、元々はヴァンパイアとは関係がなく生きることができる者たちだ。
「ディーレ、ファン。俺はよく考えたすえに思うんだが、もしヴァンパイアを退治する魔法が見つかっても、それをお前たちは知らないほうがいいかもしれない。……少なくとも多くの人がそれを知る機会が訪れるまでは、何も知らないほうが良くないか」
「……レクスさん、僕たちがヴァンパイアに襲われる心配をしているんですね」
「そっか、遥か昔に一度は確かにヴァンパイアたちはその魔法を葬ってるんだもんね」
「また同じことをしかねないということですか、レクス様。ちょっと私も除外してくれませんかね」
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「レクスさん、僕たちは既に貴方にもヴァンパイアにも深く関わっています。フェリシアさんが貴方の状況をなんらかの術で知っているように、ヴァンパイアたちも僕たちのことを知っているでしょう」
「そうそう、だから今更知らないふりをしても無駄だよ。それにドラゴンはヴァンパイアなんて恐れない、同じ太古の生き物の祝福されし者は別だけど、ヴァンパイアはドラゴンにとっても血を狙う魔物に過ぎない」
二人とも俺の心配を笑いながら、必要ないのだという返事をしてくれた。確かにこの二人は俺に関わり過ぎている、今頃になってその心配をしても遅すぎることだった。
「……そうか、それじゃ。改めて残っているか分からないが、ヴァンパイアを倒す魔法を一緒に探してくれるか」
「もちろんですとも、神に仕える者としても、人を襲う魔を退けるのは当然です」
「ドラゴンは何者も恐れない、時に正々堂々と戦って死ぬのはその本望」
ちょっと悩んでいた俺が馬鹿なくらいに二人は力強く戦ってくれると言ってくれた、一人ではなく共に戦う者がいるというのは何て心強いことだろう。
「お三人とも私をお忘れですね、確かに私はレクス様の従魔ですから、その為に戦うのは当たり前のことですけどね!!…………もうっ、私は元々は愛玩用なんですったら!!」
たった一匹、ミゼだけが話の外に置かれて拗ねていた。ミゼよ、お前は俺の従魔だから戦いには強制参加だ。というか既に俺の血を分けている時点で切り離すことができない、ミゼの意志を尊重して戦いから遠ざけることはできるんだが、主である俺が死ぬとおそらくミゼにも何らかの影響が出るはずだ。だから、ミゼのことを軽視しているわけじゃない。
「二人ともありがとな。それから拗ねるな、ミゼ。それにヴァンパイアを倒す魔法を知ったところで、こちらを襲ってこないなら意味がないことだしな」
「ヴァンパイアは確かに魔物ですが、ここから遠くの国に多いと聞きます」
「そうだね、ヴァンパイアたちははぐれた者はともかく、多くは集まって一つの国のなっているはずだっけ」
「そうでございます、最初はレクス様にもそこに行って、高位ヴァンパイアとしてのし上がって貰いたかったのですが」
「そういえばミゼは確かに最初、そんなことを言っていたな。どこにあるんだ、その国は?」
「ええと、それがですね。忘れてしまったのです、いいえ、忘れたというか記憶から消されている感じがするのです」
「……記憶から消されている?」
「そうなのです、最初は確かに覚えていたのです。ですがレクス様にその気が無いと分かってから、だんだんと記憶が曖昧になっていった感じです」
俺も時々記憶にないことをしていることがある。上質な魔石に囲まれて目が覚めた時のこと、ディーレやファンそれにミゼに心配をかけて血を吐いて倒れたこと、それからドラゴンたちと対話しタークオ国を退けた時の記憶は曖昧だ。
ヴァンパイアには記憶を操る者がいるのだろうか、俺自身もそんな魔法を作って一つ持っているぐらいだしな。だとしたら面倒な相手だ、記憶を操られたらどうしようもない。うーん、そのわりには俺自身の記憶の欠落は怖い感じがしない、今はまだその記憶の扉を開けないほうがいい気がするんだ。
「ヴァンパイアたちは一体なにを考えているんだろうな」
「それはまだ分かりません、なにせ生まれた時から僕たちとは違った生き物ですから」
「基本的にはヴァンパイアは真祖、自分をヴァンパイアにした者の言うことから、多くは逆らえないはずだけどね」
「そういえばレクス様の幼馴染の方も、ヴァンパイアに従っていましたしね。私がレクス様に逆らえないように、真祖には逆らうことができないのでしょう」
ヴァンパイアの真祖というのはおそらくだが、人間と祝福されし者の間に生まれた子どもだ。そのわりには数が少ないような印象を受ける、ドラゴンのような太古に生き物が数を決めて生き延びているように、ヴァンパイアにも数を増やすことができない理由があるのだろうか。
人間が動物を狩るように、ヴァンパイアも人間を狩る。捕食者が被食者より多くなることはない、何故なら飢えがそれを阻むからだ。そうなると人間はもっとも繁栄した種族かもしれない、多くの国がありそこで沢山の人々が生きているからだ。
「まぁ、ヴァンパイアが敵だということには変わりないがな」
俺はずっとそう思っていた、何故なら今までずっとヴァンパイアに命を脅かされてきたからだ。だから、その考えが揺らぐようなことがあるとは思っていなかった。
それは旅の途中で立ち寄った、プラントンという街での出来事だった。いつものように通行税を収めて街に入り、冒険者ギルドに立ち寄った時の話だ。
「貴方は白金の冒険者ですか?」
「ん、ああ、一応はそうだが。何の用だ?」
俺たちは飯屋で腹を満たした後に、いつものように冒険者ギルドに立ち寄った。ギルドの図書室はいろいろなことを教えてくれる、それにギルドの職員たちは魔物の動きに誰よりも詳しい。
「良かった、ギルドから特別依頼があるんです。まずは応接室までどうぞ」
「よく分からないが、引き受けるとは限らないぞ」
最初にそう断っておいて、俺たちは冒険者ギルドの応接室に通された。タンポポではなく豆からひいたコーヒーが出されて、俺たちは猫のミゼ以外それに口をつけた。しばらく待たされたが、やがてギルドの職員が現れた。
「貴方たちはヴァンパイアではないようですね、そのコーヒーは聖水から作ったものです」
俺たちはその言葉にぎょっとして手元のコーヒーを見た、爽やかな味がすると思ったが聖水は単なる光属性の魔法がかかった水で、ヴァンパイアを見分ける役には立たないと俺は思っている。いや、それよりこの街にはヴァンパイアがいるのか。
「実は最近、ヴァンパイアの仕業と見られる遺体が幾つも見つかっています。女性や子どもが被害者で全身の血が抜かれています、もう半年になりますが犯人のヴァンパイアが見つからなくて困っています。どうか、白金の冒険者の力を貸してもらえませんか?」
「……大体、どのくらい被害が出ているんだ?」
「被害者は月に一人か二人ですが、『貧民街』で死んだ者が多く、正確な数が把握できないのです」
「……それだけ人が死んでいるのなら、領主も調査しているんだろう。何故、冒険者ギルドが俺に依頼をする」
「依頼は数少ない被害に遭われた貴族の遺族から出ています、もちろんこの街の領主さまもヴァンパイアを探して調査はしています」
「……なるほど、そうか。少し仲間と話をさせてくれ」
俺はいったん冒険者ギルドの職員を下がらせた、仲間だけになった応接室でヴァンパイアをどうするのか相談する。
「被害が出ているのなら見捨てることはできません、レクスさん。もちろん引き受けましょう」
「ディーレが言う通りかも、それにヴァンパイアについて、よく知る良い機会だと僕も思う」
「私は戦闘では役にたてませんが、引き受けておいても良いと思います。一人ヴァンパイアが減れば、それだけ私の未来の嫁候補が助かります」
「そうだな、被害者がいるのなら引き受けるか」
ミゼの言うことは分からなかったが、俺たちは一旦旅を止めて、プラントンという街でヴァンパイア退治をすることにした。はぐれのヴァンパイアだったらいい、相手が一人で済むからだ。だが、下手をすればヴァンパイア一族を相手にしなくてはならない。
ディーレはもう下位くらいのヴァンパイアなら勝てると思う。ファンも力とスピードだけなら中位のヴァンパイアにでも負けていない、ミゼだけは戦いに参加しないほうがいいだろう。
「まずは最後の被害者に会わせてもらいたい、それは一体どこの誰だ?」
「お引き受けくださるのですね!!被害者はもう死んでおりますので、再びヴァンパイアの訪れはありませんが案内をさせます」
冒険者ギルドに依頼を引き受けることを伝えると、成功報酬で金貨10枚だと説明があった。それから最後の被害者、『貧民街』の者だったがその家に案内して貰った。
「……ん、よし覚えたぞ」
俺だって草食系とはいえヴァンパイアだ、血の匂いにはことさら敏感だ。特定の人間の血の匂いを追っていくこともできる、俺はギルドの者は帰して残っている血の匂いを追っていった。
最後にヴァンパイアが出てから、1週間も経っていなくて助かった。まだ血の匂いは新しく、それを追跡するのは容易かった。
「ここに間違いはないんだが、これはまずいな」
「ここは特別区ですね、貴族や王族の方でないと入れません」
「人間って変なの、生きてく場所に細かい区別が多いね」
「ファンさん、人間にとって身分は大切なものなのです。下手に私たちのような庶民が騒ぎ立てれば、逆にヴァンパイア扱いされて焚火にされますよ」
俺たちは特別区を目の前にして途方にくれた、また有力な貴族が犯人なら面倒なことになるのは、どうしても避けられないことだったからだ。
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