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第百三十話 全部狩っても持ち切れない

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一騒動がなんとか収まった後、ディーレは俺が持ち帰った詳細不明の十個の魔石を比較検討していた。そして特に質の高い魔石を二つ選び出して魔法銃の強化をしていた、それを初めて見るファンは興味深々だ。

「それでは『望みの姿にデザイアルック変化しチェンジ創造されよクリエイション』…………できました、魔法銃の魔石と交換してみます」
「わくわく、綺麗な魔法だね。ファン、気に入った」
「ほら、ディーレの邪魔をするな、今は魔法銃の組み立て中だ」
「どのくらい強くなるのでしょうか?」

「また、前よりも力が上がったようです。そろそろ金属の方を別の物に変えた方がいいかもしれません」
「うわぁ、ディーレの魔法銃ってやっぱり綺麗だね」
「この国の迷宮は大きいらしいから、良い金属がみつかるといいな」
「そうですね、どんな敵がまっているでしょうか?」

俺達はタークオの首都まで無事に来ていた、暫く滞在するつもりなので馬車を売り払う。馬車の購入で金を使ったことだし、この迷宮では稼がせて貰いたい。

適当に風呂付きの宿屋をとると、俺達はこの国の迷宮にも興味があったが、大国だけに迷宮も入口がいくつかあるようだ。俺達はできれば魔法銃に仕える希少な金属が欲しかったので、事前にギルドに聞いたモンスターがいる入り口から迷宮に入っていった。

「この迷宮にはファイアーマースがいるぞ」
「水撃弾!!衝撃弾!!」
「ちょっと熱い魔物だね。あっ、見て何かの金属!!」
「外で鑑定して貰えば、何の金属か分かるでしょう」

ファイアーマースは岩石が火の塊になったような魔物だが、金属を食べてその身に貯めこむという性質を持ったいた。

もちろん、金属によって当たり外れはあるが、それもまた面白かった。俺達は二十階層から三十階層付近でファイアーマースを狩り続けた。

「これはヒヒイロカネだ、少量だが貴重な金属だよ。売ってくれないかい?」
「いや、悪いがこの金属には使う予定があるんだ」

今ディーレが魔法銃に使っているミスリルよりも硬く、魔力伝導率の高い石がやっと見つかった。

三十階層まで潜ったほうが、ファイアーマースがヒヒイロカネを食べていることが多い、だから俺達はそっちへ移動して狩りを続けた。

「ただこの魔物は近づくと熱いのが嫌だよな、『水撃ウォーターボム!!』から追撃だ!!」

ファイアーマースは水属性の魔法で水や氷をぶつけてから、メイスで打撃を与えると破壊するのが簡単だった。ただのメイスで攻撃するだけだと、破壊はできるが多少の火傷を負うことがあった。

「『水撃ウォーターボム!!』とかぎ爪攻撃!!」
「水撃弾、衝撃弾!!」
「『水撃ウォーターボム!!』からの『標的撃ハンティングショット』でございます」

ディーレの武器強化を目指してこの金属を食べるファイアーマースを皆で狩りまくった、何百個も狩ってようやく魔法銃に出来るだけの金属が手に入った。元々持っていた重さを軽くするグラビトル石と、今度は魔力の伝導力が高くて硬いヒヒイロカネが手に入ったのだ。

「それでは、『望みの姿にデザイアルック変化しチェンジ創造されよクリエイション』………………できました!!」

上級魔法のおかげでほとんど鍛冶屋要らずだ、ディーレの魔法銃ライト&ダークはまた少し強化されて強くなった。

ぐらあああああぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁ!!

「風撃弾!!」

どのくらい強くなったかというと、ディーレが風撃弾で目や口など体で柔らかくて弱いところを狙えば、撃ちこまれた風の弾で確実に頭部の内部をかき回して破壊できるようになった。ジャイアントも数発撃ちこめば同じように破壊できた。

「皆さんのおかげです、ありがとうございます!!」
「いや、あんな精密射撃ができるディーレが凄い」
「ファンもびっくりしちゃった、あとでその銃を貸してほしい」
「前の魔法銃をファンさんにあげたらどうでしょうか?」

ディーレが以前に使っていた魔法銃は、ファンが時々遊び半分で使えるようにした。ファンの魔力の波動を記憶させて、持ち主の書き換えを鍛冶屋で行ってもらった。

ファンは魔法銃をホワイト&ブラックと呼んで大事に時々使っていた。迷宮のゴブリンやコボルトなど、ザコを始末するのにはこの銃達も役に立った。

「武器も強くなったことだし、ジャイアント退治にでもいくか?」
「うん、頑張る!!」
「はい、今日も私達にできることをしましょう」
「皆さん、強くなっちゃって私の存在意義が……」

全体的に戦力の底上げができたと思う、今日の獲物はジャイアントが五体だった、まずはディーレの精密射撃で数を減らす。

「風撃弾と閃光弾。二頭仕留めました、残り三体です!!」

ディーレからそれを聞いたファンがその身軽な体でジャイアントに駆け上って、ファンの武器であるかぎ爪でその首を刈り取った。

「ふふふっ、余裕、余裕!!」
「このくらいならな」

俺も前よりも軽くなった体で迷宮の床を蹴り、壁を走って蹴りを入れてバキバキッとジャイアントの首をへし折った。続いて、その近くにいたもう一体に飛び移りながらその首をメイスでボギリッと叩き潰した。ジャイアント五体は其々攻撃を受けて倒れて死んでいった。

「それじゃ、剥ぎ取りといきますかね」
「ファンはご飯を食べながら魔石を探すね!!」
「僕たちは皮のはぎとりですね」
「私はいつものとおり見張りを致します」

ファンはドラゴンに変身してジャイアントを食べていった。そうやって半分ほどの剥ぎ取りが終わったところだった、見張りをしていたミゼが突然声をあげた。

「レクス様、どなたか来られます」

「よぉ、こんにちは。すげぇなぁ、巨人を五体倒すとは、俺達が剥ぎ取りを手伝ってやろうか」
「いや手は足りている、もう半分くらいで終わるところだ」

十人ほどの冒険者たちが俺たちに遭遇した、彼らから殺気を感じなかったから一応警戒を解いた。何事も無かったかのように俺たちは作業に戻った。

「そっか、それじゃあんたらのそれが終わるまで待たせて貰おう」
「皆、さっさと剥ぎ取りを終わらせて帰るぞ」

俺達はジャイアントから柔らかくてしなやかな皮の上等な部分だけを剥ぎ取った。ファンは思う存分に食事をして、合計で五個の魔石を俺に渡してきた。

「それじゃ、俺達は帰る」
「おお、お疲れさん。おい、みんな残りを剥ぎ取ってやろうぜ」

俺達が良い部分の剥ぎ取りをした後、後からやってきた彼らがそれでもまだ余っているジャイアントから、残っている皮の剥ぎ取りをしていた。

「ああやって、他の人間が倒した部分を持っていく奴らもいるんだ」
『ふーん、なんだかずるい気もしちゃうな』
「僕達だけでは全部は剥ぎ取りきれませんから、再利用ということでいいのではないでしょうか?」
「ハイエナのような、いやハイエナは意外と狩りをするんだったような?それじゃ、ライオンのオスのような?いやこれも違う??」

そいつらから充分に離れてから、ファンをドラゴンから人間形態に戻した。『ウォーター』と『乾燥ドライ』で充分に身体を綺麗にして、全身に浴びた血を洗い流して乾かした。

「買い取りを頼みたい、ジャイアントの皮と魔石だ」
「はい、少々お待ちください」

冒険者ギルドで買い取りして貰って金貨二十五枚ほどの良い稼ぎになった、飯屋に行ってファンは思う存分にご飯を食べ続ける。

俺は食べれるのはスープ料理だけだが、この国は料理が多くていろんな味が楽しめた。ただ、虫料理系には抵抗感を感じて避けた。もう一つ避けたのは猫の料理だ、これは全員がミゼのことを思って手を出さなかった。

「はうぅ、この国の飯屋が怖い。私を見るあの目、あれは食材を見る目です!!」

俺達から料理を分けてもらいながらも、ミゼはずっと警戒していた。世界は広いからいろんな料理があるわけだ、ミゼにはそうやって納得して貰うしかない。

料理を食べ終わったあとに、俺達は宿屋に帰ってきた。だが、しばらくするといきなりこの国の役人が押しかけてきてこう言った。

「ここにドラゴンを不正に売買している者がいると聞いた、お前らか?」
「そんなことをした覚えはない、ドラゴンはいる。だが納得しておれの従魔になっているんだ」

役人たちの間でざわめきと相談が行われたようだ、やがて一番偉そうな奴がでてきて言った。

「その言葉が偽りではないと、領主様の前に出てきて証明してみろ」

こうして俺達はこのタークオの首都である領主、つまりはタークオ国の王様の前に行くことになったのだ。
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