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4-11ずっと見守られている
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「ん? おかしいな、誰かに見られている気がする」
「リタも気づいた? ……エリーが見ているんだ」
「エリーさんって、ジェンドさんの養い親じゃないですか」
「俺がとても悪い事したから、エリーが怒ってるけど見てるだけなんだ」
「ジェンドが何か悪いことをしたかい?」
「何もしていない気がしますけど?」
「ううん、俺はエリーに発情した。そうしたら、とても怒られて嫌われた」
「え!? い、いやそれだけで嫌いにはならないよ。ねぇ、ソアン」
「ええ!? そ、そうですね。リタ様、そんなにいきなり嫌いにはなりませんよ」
珍しくジェンドがしょんぼりした顔をした、エリーさんが養い親だとは聞いていたが、まさかジェンドがエリーさんに惚れていたとは知らなかった。ソアンは落ち込むジェンドを励ましていた、一時は家族として一緒に暮らしたのだ、ジェンドが自分に発情したくらいで嫌いになるだろうか、僕はどちらかといえば保護者の立場だったからそれはないと思った。
それよりも僕は勢いで怒ってしまったが、今更になって会いにこれないのではないかと思った。普通だったら自分が育てた子供から本気で好きだと言われたら慌てる、自分がそう育ててしまったのではないかと自分を責め、そうして怒ったのではなく慌てて自分からジェンドを遠ざけてしまった。それでも心配だからまだジェンドを見ている、遠くから見守っているのではないかと思った。
「ジェンド、エリーさんはどんな人間の姿になる?」
「エリーは薄い青の長い髪、それに深い蒼の瞳の女性になる」
「今度ジェンドがいない時に、エリーさんと話してみてもいいかな?」
「エリーはまだ怒っていて、リタとも話してくれないかもしれない」
「やってみないと分からないよ、ジェンドもエリーさんが好きなんだろう」
「うん、好き。俺が好きなのはエリーだけ、でも拒否されたから他の相手を見つけなきゃ」
そう言ってまたジェンドは落ち込んでしまった、ソアンはあわあわしながらそんなジェンドを慰めていた。ジェンドがやたら最初の頃に繁殖に拘ったのは、それを済ませてしまえば大人になったと、また養い親に会いにいけるからだった。だから好奇心もあっただろうが人間の街にきた、人間は繁殖力が高くて交尾をしやすいと考えたのだ。
そんなことを落ち込むジェンドは話した、どうりでまだ常識が身についてなかったわけだ。エリーというドラゴンの女性が人間の常識を教える前に、ジェンドが怒られ嫌われたと思って飛び出しただけなのだ。本当に嫌われていたのなら今もジェンドを見ていたリしない、ドラゴンは個人主義が強い種族でもあった。
そんなエリーという女性のドラゴンとは、その日の夜に会うことができた。クレーネ草の薬を飲んで僕が宿屋の屋根の上で待っていると、月の無い空から薄い青の長髪に深い蒼の瞳の美しい女性が降りてきた。ジェンドから話を聞いていなければ天女のように美しい女性だった、彼女は落ち着いていてもちろん怒ってはいなかった。
「はじめまして、蒼き太古からの隣人に、大いなる力の加護があらんことを」
「緑の祝福を受けた民よ古き良き隣人に、大いなる力の加護があらんことを」
「僕はクアリタ・グランフォレ、皆はリタといいます」
「私はエリー、……ジェンドがご迷惑をおかけしました」
「いいえ、彼には随分と助けられました。少し知識が不足していましたが、優しい良い青年です」
「お恥ずかしいです、教育を終える前にジェンドが急に大人になってしまったのです」
エリーというドラゴンの女性はやはりジェンドを嫌ってはいなかった、ただ急に好意をそれも養い親以上の愛情を求められて混乱したのだと言った。ジェンドのことはいきなりいなくなってから、ずっと会いにはいけなかったが見守っていた。何か遭ったらすぐに助けに入るつもりだったと言った、エリーという女性と僕はよく似ている気がした。
「ジェンドの事が男性として好きですか?」
「…………長く一緒にいすぎて分からないのです、でも私の命よりも大切な子です」
「しばらく僕たちと一緒にジェンドと過ごしませんか、他の者がいた方が冷静になれるでしょう」
「ジェンドがそれを許してくれるなら、そうさせて貰えればとても嬉しいです」
「ジェンドは貴女を拒否しないでしょう、でも最初にまだ自分の気持ちが分からない、そのことはきちんと彼に伝えてください」
「優しき緑の祝福を受けた民に感謝致します、あの子はまだ130歳になったばかりの子どもなのです」
僕はジェンドの年齢を聞いて驚いた、体はもうすっかり成人していたがソアンより20歳も若いのだ。どおりで他種族に関する教育も途中だったはずだ、エリーという女性はまだ時間があると思っていたのだ。でもジェンドが予想外に早く大人になってしまった、ドラゴンは発情が起こればもう立派な大人になるのだ。
翌朝、エリーさんを僕たちの部屋に招き入れてソアンに相手をしてもらった、そうしているうちにジェンドの部屋にいって彼の素直な気持ちを聞いてみた。まずエリーさんはジェンドに対してもう怒っていないこと、ジェンドが予想外に早く大人になったので混乱したのだと言った。ジェンドのことは大切な養い子として何も変わっていない、だからずっと見守っていたのだと僕は説明した。
ジェンドは今にも泣きそうな顔をしていた、そして僕は彼女がジェンドが許せばまた彼の傍にいたいと言っていることを伝えた。そうしたら、ジェンドはすぐに部屋を飛び出していった。そして僕たちの部屋、ソアンとエリーさんがいる部屋に駆けこんでいった。彼は泣きながらエリーさんに向かって言った、ずっと今まで我慢していたことを伝えようとした。
「エリー!! エリー!! まだ俺はエリーと一緒にいたい!! ううん、ずっと一緒にいたいよ!!」
「リタも気づいた? ……エリーが見ているんだ」
「エリーさんって、ジェンドさんの養い親じゃないですか」
「俺がとても悪い事したから、エリーが怒ってるけど見てるだけなんだ」
「ジェンドが何か悪いことをしたかい?」
「何もしていない気がしますけど?」
「ううん、俺はエリーに発情した。そうしたら、とても怒られて嫌われた」
「え!? い、いやそれだけで嫌いにはならないよ。ねぇ、ソアン」
「ええ!? そ、そうですね。リタ様、そんなにいきなり嫌いにはなりませんよ」
珍しくジェンドがしょんぼりした顔をした、エリーさんが養い親だとは聞いていたが、まさかジェンドがエリーさんに惚れていたとは知らなかった。ソアンは落ち込むジェンドを励ましていた、一時は家族として一緒に暮らしたのだ、ジェンドが自分に発情したくらいで嫌いになるだろうか、僕はどちらかといえば保護者の立場だったからそれはないと思った。
それよりも僕は勢いで怒ってしまったが、今更になって会いにこれないのではないかと思った。普通だったら自分が育てた子供から本気で好きだと言われたら慌てる、自分がそう育ててしまったのではないかと自分を責め、そうして怒ったのではなく慌てて自分からジェンドを遠ざけてしまった。それでも心配だからまだジェンドを見ている、遠くから見守っているのではないかと思った。
「ジェンド、エリーさんはどんな人間の姿になる?」
「エリーは薄い青の長い髪、それに深い蒼の瞳の女性になる」
「今度ジェンドがいない時に、エリーさんと話してみてもいいかな?」
「エリーはまだ怒っていて、リタとも話してくれないかもしれない」
「やってみないと分からないよ、ジェンドもエリーさんが好きなんだろう」
「うん、好き。俺が好きなのはエリーだけ、でも拒否されたから他の相手を見つけなきゃ」
そう言ってまたジェンドは落ち込んでしまった、ソアンはあわあわしながらそんなジェンドを慰めていた。ジェンドがやたら最初の頃に繁殖に拘ったのは、それを済ませてしまえば大人になったと、また養い親に会いにいけるからだった。だから好奇心もあっただろうが人間の街にきた、人間は繁殖力が高くて交尾をしやすいと考えたのだ。
そんなことを落ち込むジェンドは話した、どうりでまだ常識が身についてなかったわけだ。エリーというドラゴンの女性が人間の常識を教える前に、ジェンドが怒られ嫌われたと思って飛び出しただけなのだ。本当に嫌われていたのなら今もジェンドを見ていたリしない、ドラゴンは個人主義が強い種族でもあった。
そんなエリーという女性のドラゴンとは、その日の夜に会うことができた。クレーネ草の薬を飲んで僕が宿屋の屋根の上で待っていると、月の無い空から薄い青の長髪に深い蒼の瞳の美しい女性が降りてきた。ジェンドから話を聞いていなければ天女のように美しい女性だった、彼女は落ち着いていてもちろん怒ってはいなかった。
「はじめまして、蒼き太古からの隣人に、大いなる力の加護があらんことを」
「緑の祝福を受けた民よ古き良き隣人に、大いなる力の加護があらんことを」
「僕はクアリタ・グランフォレ、皆はリタといいます」
「私はエリー、……ジェンドがご迷惑をおかけしました」
「いいえ、彼には随分と助けられました。少し知識が不足していましたが、優しい良い青年です」
「お恥ずかしいです、教育を終える前にジェンドが急に大人になってしまったのです」
エリーというドラゴンの女性はやはりジェンドを嫌ってはいなかった、ただ急に好意をそれも養い親以上の愛情を求められて混乱したのだと言った。ジェンドのことはいきなりいなくなってから、ずっと会いにはいけなかったが見守っていた。何か遭ったらすぐに助けに入るつもりだったと言った、エリーという女性と僕はよく似ている気がした。
「ジェンドの事が男性として好きですか?」
「…………長く一緒にいすぎて分からないのです、でも私の命よりも大切な子です」
「しばらく僕たちと一緒にジェンドと過ごしませんか、他の者がいた方が冷静になれるでしょう」
「ジェンドがそれを許してくれるなら、そうさせて貰えればとても嬉しいです」
「ジェンドは貴女を拒否しないでしょう、でも最初にまだ自分の気持ちが分からない、そのことはきちんと彼に伝えてください」
「優しき緑の祝福を受けた民に感謝致します、あの子はまだ130歳になったばかりの子どもなのです」
僕はジェンドの年齢を聞いて驚いた、体はもうすっかり成人していたがソアンより20歳も若いのだ。どおりで他種族に関する教育も途中だったはずだ、エリーという女性はまだ時間があると思っていたのだ。でもジェンドが予想外に早く大人になってしまった、ドラゴンは発情が起こればもう立派な大人になるのだ。
翌朝、エリーさんを僕たちの部屋に招き入れてソアンに相手をしてもらった、そうしているうちにジェンドの部屋にいって彼の素直な気持ちを聞いてみた。まずエリーさんはジェンドに対してもう怒っていないこと、ジェンドが予想外に早く大人になったので混乱したのだと言った。ジェンドのことは大切な養い子として何も変わっていない、だからずっと見守っていたのだと僕は説明した。
ジェンドは今にも泣きそうな顔をしていた、そして僕は彼女がジェンドが許せばまた彼の傍にいたいと言っていることを伝えた。そうしたら、ジェンドはすぐに部屋を飛び出していった。そして僕たちの部屋、ソアンとエリーさんがいる部屋に駆けこんでいった。彼は泣きながらエリーさんに向かって言った、ずっと今まで我慢していたことを伝えようとした。
「エリー!! エリー!! まだ俺はエリーと一緒にいたい!! ううん、ずっと一緒にいたいよ!!」
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