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4-9犯人が見つからないが分かっている

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「リタ、街の方でも嫌な感じがビリビリする!!」
「どのあたりでする、ジェンド」

「神殿のあたり、あのあたりがビリビリする!!」
「ジーニャス、ここをお願いします!! 僕たちは神殿へ!!」

 ジーニャスはわかったと頷いて首を斬り落とされた黒いドラゴンを調べていた、僕たちはジェンドの案内するままに神殿へと向かった。ジェンドは一人で、僕はソアンを抱えて『飛翔フライ』の魔法を使って急いだ。行ってみると神殿の広場にも黒いドラゴンが現れていた、神殿の広場には既に息をしてない神官たちが倒れていた。ジェンドがそれを見ると怒って、そのままその怒りを黒いドラゴンにぶつけた。

「『抱かれよエンブレイス煉獄ヘルの火炎フレイム!!』」

 ジェンドが放った魔法で黒いドラゴンだけが炎に飲み込まれた、他の人間は傷つけずジェンドは黒いドラゴンだけを狙った。その魔法の一撃が消えても黒いドラゴンはまだ生きていた、だが今度はソアンが飛び出していって脆くなっていたその首を大剣で斬り落とした。ジェンドはまだ生きている神官を何人か僕のところに連れてきた、僕は慌てて癒しの魔法を使った。

「『完全なるパーフェクト癒しヒーリングの光シャイン』」

 既にこときれている神官も少なくなかった、ジェンドはそれを見て泣いていた。詳しく話を聞いてみるとその神官は神殿の孤児院を担当していた人間だった、ジェンドとも顔見知りで何度も子どもたちのことについて話し合った仲だった。だから悲しくてジェンドは泣いていた、まだ素直に感情が出せる子どもなのだ。

「リタ、ソアン。犯人はひどいやつだ」
「ああ、ジェンド。本当に許しておけない、このまま放っておけないよ」
「ジェンド、悪いことが起こることをよく知らせてくれました」

「もうあまり嫌な感じはしない、でもまた起こりそうな気がする」
「そうだね、犯人が捕まるまできっと事件が起こり続ける」
「リタ様、どうすれば犯人がわかるでしょうか」

 僕はソアンの質問に考え込んだ、以前のように犯人を怒らせる曲を歌ってみようか、いやこの犯人はとても用心深そうだ。まず自分の手は汚さずに全てを召喚獣にやらせている、自らの手は汚したくない者なのだろう、こんな犯人を捕まえるなんて良い案は思い浮かばなかった。とりあえず僕たちは神殿の人たち、彼らが黒いドラゴンの被害の後始末をするのを手伝った。

 亡くなってしまった人たちには上級の回復魔法も効かない、ジェンドは泣きながら遺体を運びソアンはそんな彼を宥めていた、そうして僕はだんだん怒りがわいてきていた。彼らは神殿に仕えている神官で悪いことは何もしていなかった、それにこの神殿にはジェンドが大切にしている孤児院もあった。子どもたちが殺される危険もあったのだ、僕はこの状況を引き起こしている犯人に激しい怒りを感じていた。

 だが犯人を捕まえる良い案も浮かばなかった、そうして日常へと僕たちは戻った。だがやはり黒いドラゴンが現れたことは噂になっていて、冒険者は自分がドラゴンを倒す夢をみて張り切った。それ以外の者たちは怯えが見えるようになった、ただでさえフェイクドラゴンのせいで物流が悪いのに、更に人々は家に閉じこもるようになっていった。そんな中、僕たちはジーニャスに呼び出された。

「どうやら、犯人が見つかったぞ」

 僕たちはジーニャスのその言葉に驚いた、召喚獣を使い自分の手を汚さない犯人を、彼はどうやって見つけたのか気になった。ジーニャスは国に召喚の上級魔法が使える者を問い合わせた、オラシオン国では上級魔法が使える人間は登録されることになっていた。それだけ上級魔法が使える人間は脅威で、逆にいえば国の力になるからそうしているのだった。犯人はその中にいた、一人の男性だった。

「王宮に仕える魔法使いだったが、権力争いに巻き込まれて追放された男だ。名前はバントル、今はこの街に滞在しているらしい。街に入った後のことは分からんが、ここにいるのは間違いない」
「それでは警備隊の出番ですね」
「犯人を見つけるための人海戦術ですか」
「えっと、それどういうこと?」

「簡単に言えばジェンド、沢山の人を使って犯人を見つけ出すんだ。それとこのゼーエンの街が恨まれている理由はエリクサーだ、以前に王家に献上したエリクサーについて奴は否定的な態度だったそうだ」
「それで権力争いに敗れ、逆恨みでこの街を狙っていると」
「これだから貴族とか王族って嫌いです、無駄に争いごとを起こすんだから」
「沢山の人間で犯人をみつけだすのか、その後はどうするんだ?」

「リタ達には悪いが犯人を捕まえるのを手伝って欲しい、召喚術が得意らしいが上級まで魔法が使える人間は厄介だからな」
「もちろん手伝います、ジェンド。君はどうする?」
「人間の争いごとですから、無理はしなくていいんですよ」
「いや、俺も戦う。その犯人は俺の親しい人間を殺した、俺の大事な孤児院だって危なかった」

 こうして犯人であるバンドルを探し出すことになった、ただし相手は上級魔法が使えるので警備隊たちが密かに探していた。迂闊に追い詰めて上級魔法を使われてら大惨事だった、だから情報をしぼって警備隊に関する者だけが探していた。だが不思議なことにどこの宿屋にもバンドルはいなかった、長い黒髪に紫の瞳をしているという話だったが、そんな人間はどこを探しても見つからなかった。

「あ~ら、お久しぶり。どうあたしに会いたくなった?」
「またお前か、お前なんかに用はない」

 ジーニャスが犯人を捜しに街に来るようになると、以前にミーティアの結婚式で会ったマーニャという女性、彼女がジーニャスに絡んでくるようになった。どういう手段を使っているのか分からないが、ジーニャスの居場所を探し出して話しかけてくるのだった。マーニャという女性はジーニャスを気に入っているのかもしれない、でもジーニャスのマーニャの印象は最悪だった。

「犯人は見つからないのに、女と遊んでいる暇があるか!!」

 マーニャの方はそんなふうに怒るジーニャスをよく笑っていた、そうしてふらっと現れては声をかけてくるのだった。男女の仲は難しいが、この二人では上手くいきそうになかった。まずジーニャスがマーニャに興味を持っていなかった、マーニャはジーニャスを気にしていたが、ほとんど相手にはされなかった。

「人間の繁殖は難しいんだな、ソアンに怒られた意味がよく分かった」
「そうでしょう、ジェンド。女の子っていうのは、謎がいっぱいなのよ」
「確かに女性は不思議な存在だ、同じ種族でも分からないことがある」

「リタも分からないのか、俺と同じだな!!」
「ジェンド、リタ様はこういう方面だけは察しが悪くて……」
「そうなんだ、僕もジェンドと同じ子どもみたいだね」

「でもリタはソアンを好きなんだろ? それにソアンもリタが大好きだろ?」
「ええ!? なんで!? そんなこと分かるの!?」
「ああ、ジェンドはドラゴンだから、匂いで発情しているか分かるんだろう」

 僕がそう言ったらソアンが真っ赤になってしまった、良かった真っ青になられてしまったら僕は失恋だ。ソアンは無言で恥ずかしいのかぼかぼかっと、顔を隠して僕の背中を容赦なく叩いてきた。僕はソアンが僕のことを少しでも好きでいてくれた、そう分かって幸せだったからその容赦ない攻撃にも耐えた。ジェンドは両方が発情してるのに、なぜ交尾しないのかと不思議がっていた。

「ジェンド、発情しているからといって、すぐに交尾するものじゃないんだよ」
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