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2-6異世界が広がっている

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「このダンジョンはゼーエンの街の物である、これからダンジョンを開放するが、そこで発見された物もゼーエンの領主の物とする!!」

 フォルクという領主の息子はそう喚いていたが、周囲からは強い反対の声が次々にあがっていた。それは当たり前だ、本来ならばオラシオン国の物であるダンジョン、それを勝手に私有化するなんて許されない。だから僕は声色を変えて冒険者たちの中から一際大きな声をあげた、冒険者に与えられているはずの当然の権利について法的にフォルクを責めたのだ。

「オラシオン国法の第155法において、オラシオン国のダンジョンで発見された物は、発見した者に与えられるはずだぞ!!」

 僕のそんな声に多くの冒険者たちが同意する声をあげた、そんな声はどんどん大きくなってフォルクがその声に思わず体を引くのが見えた。

「そうだ、そのはずだ!!」
「オラシオン国の法律だぞ!!」
「それでも法を守る貴族なのか!?」
「法律違反だ!!」
「ふざけんな、やっちまえ!!」

 僕が意図してしたことではなかったのだが、このままでは暴動も起こりそうになっていた。そんな中でジーニャスが皆の間をすり抜けて、兄であるフォルクのところ民衆の前までやってきた。

「フォルク兄上、父上からオラシオン国法に従って、今すぐに新しいダンジョンを開放するように言われています!!」
「黙れ!! ジーニャス!! 俺は民衆に当然のことを教えているのだぞ!!」

「いいえ、皆の者よ。領主の名において今この時をもって、このエテルノのダンジョンを開放する!!もちろんここで見つかった宝は、全て見つけた者が好きにしてよい!!」
「ジーニャス!! 貴様は勝手によくも!?」

 ジーニャスがダンジョンの開放を宣言した途端、新しいエテルノのダンジョン入り口を守っていた、その剣士たちが一斉に動き出して道を開けた。どうやら長男であるフォルクよりも次男であるジーニャス、彼の方が家臣たちに一目おかれているようだった、新しいダンジョンが彼の言葉によって開いたのがその証拠だ。僕とソアンもエテルノのダンジョンの入り口に押しかける冒険者、彼らの流れに逆らわないようにしながら新たなダンジョンへと入っていった。

「ソアン、僕とはぐれないように!!」
「はい、リタ様!!」

「最初から急ぐ必要はない、どうせすぐにはエリクサーは見つからないさ」
「それよりも焦る民衆に、彼らに押しつぶされないように、ゆっくりと進んでいきましょう」

 そうして入ったエテルノのダンジョンには最初から驚くことになった、なんとダンジョンの中に広い森と青い空が広がっていたのだ。完全な異空間になっているダンジョンだった、入り口だけが石で囲まれてぽっかりと開いていて僕たちの後ろにあった。これは方角や進むところを選ばないとすぐに迷子になりそうだった、僕とソアンはとりあえず疑似的な太陽から方角を判断して西の方角に進んでみたが、他の皆も広がる異世界に驚きながらバラバラにはなれていった。

「エテルノのダンジョンがこんな場所だとは思わなかった、これは地図を作るのが難しい」
「そうですね、あっ、リタ様。あそこに目立つ大きな樹がいくつかあります」

「ああ、ソアン。そういった物を覚えておいて、どうにか地図を作ってみよう」
「そうしないと入り口が分からなくなる、そんな不思議な場所ですね」

「これこそ古代の遺跡というやつだ、こんなに本格的なものは初めて見た」
「凄い文明だったんですね、古代の方々はこんな物まで作ってしまうのですから」

 この新たなダンジョンがどれだけ広いのかも分からなかった、どこまでも森が続いていたしその間には湖らしきものも見えた。僕は一応はダンジョンにもぐるための荷物をもってきていた、でもこのダンジョンを本格的に探索するのなら、野営することができる荷物も必要そうだった。まさかこんなダンジョンだとは考えていなかった、こんなことならば金の冒険者であるカイト、彼にダンジョンの話をもっと聞いておくべきだった。

 クレーネ草の薬など最低限に必要な物は持ってきていた、とりあえず僕たちは西の方角に向かって進んでいった。時々印象的な大きな岩や大樹を目印としながら、慎重に僕たちはお互いに索敵をしながら進んでいった。するとデビルラビットという魔物に出くわした、兎が魔物化したものだが角が生えていてこれが危ない、その魔物は一直線に僕たちに向かってきた。僕もソアンも剣を持ち出して構えた、そうして僕より先にソアンがそのデビルラビットを斬り払った。

「ソアン、やはり魔物がいるんだ。気をつけて進まないといけない」
「はい、リタ様。このデビルラビットはどうしましょうか」

「とりあえず魔石だけ持っていこう、毛皮なども剥いでもいいが、今日は野営する荷物がない」
「今日のところは様子見ということですね、野営をする夜になる前にダンジョンの入り口に戻りましょう」

「ああ、そうしよう。今度来る時には野営道具も必要だ、でも僕の体調もあるから無理かな」
「朝からこのダンジョンに入って、夜まで探索するというのが、私たちには一番かもしれませんね」

 そうしてまだ日も高いので進んでいくと時々、小さい魔物に出くわした。僕たちは彼らを倒して魔石だけをいただいていった、そうやって時間だけが過ぎていってもうすぐ夜になる、そんな時に大きなリンゴらしき実が生っている森に出くわした。そこの木々には緑から黄緑がかった色のリンゴのような果実が多く生っていた、僕たちはその森の入り口に立ったのだが、僕は何故かそこで何か思い出しそうになって足を止めてしまった。

「わぁ、少し緑ですけどリンゴでしょうか。ダンジョンの中にも、食べれる物があるんですね」
「……ソアン」

「このリンゴとってみてもよろしいでしょうか、リタ様」
「……ちょっと待ってくれ、ソアン。何か、何か思い出せそうなんだ」

 僕はその森の入り口で考え込んだ、さっきから急に危険だという僕の勘がいっているからだった。でも辺りには何も敵になりそうなものはいなかった、ただ美味しそうなリンゴらしき実が木々に実っているだけだった。でもその木になっている実にソアンが触れそうになった時、僕は唐突に遥か昔に本で読んだことを思い出した。

「触るな、ソアン!!それは毒だ、猛毒の実だ!!」
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