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2-3エリクサーの価値を知る
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「エリクサーを見つけた、この金の冒険者であるカイトとの勝負だぜ」
「それは本当ですか、ちょっと信じられませんが……」
「俺と戦ってみれば分かるさ、これでも金の冒険者なんだからな」
「いいでしょう、模擬戦でよければ受けましょう」
ソアンとカイトという少年はそうして模擬戦をすることになった、カイトという少年を観察すると剣士だが装備は少なく、剣の重さよりもスピードを重視している装備のようだ。ソアンは丈夫な服と皮鎧に大剣と一見すると少し重装備だが、ソアンにはドワーフの父親譲りの怪力があるから、これでもかなりスピードもあるのだ。僕は二人から審判を頼まれてソアンとカイトという少年の真ん中に立った、そして開始と言って二人から離れた。
思ったとおりカイトという少年が素晴らしい速さで攻撃してきた、そのカイトの右からの剣の振り下ろしをソアンは楽々と弾き飛ばした。そしてそのまま大剣の横っ腹でカイトへと殴り掛かった、大剣の刃をそのまま使わないのは模擬戦だから手加減しているのだ。だがそれでソアンの剣のスピードが風を受けて遅れる、カイトは楽々とソアンの剣を受け止めた。
だが、ソアンは見た目以上に力があるのだ。カイトはどうにかソアンの剣を受け止めたが、その場から動けなくなってしまった。少しでも力を抜けばソアンの攻撃がカイトを押しつぶす、だがカイトはどうにかソアンの剣を受け流した。それからまたソアンに向かっていったが、ソアンが振り回す大剣に阻まれて近づくことがなかなかできないでいた。
ソアンは銅の冒険者だが剣の腕は相当のものだ、そのソアンと模擬戦なので本気ではないが、互角に戦えているとはなかなか腕の良い少年だった。
「二人ともそれまで、模擬戦ならもう充分だよ」
「はい、リタ様。良い練習になりました」
「えええええ、もう終わりかよ、俺はまだまだいけたぜ」
ソアンは満足そうに剣を背中に収めた、カイトは少々不満げに剣を引いた。そこで僕はカイトに聞いてみることにした、ソアンも僕と同じように考えていたようだった。ソアンはカイトの服を握って、僕はその背後に立ってから、彼に聞きたかったことを質問することにした。カイトは黒い瞳で瞬きしながら、逃げようとはせずに素直に僕らの質問に答えてくれた。
「君が相当の実力者だというのは分かった、首から下げているプレートも確かに金の冒険者のものだ」
「それではですね、貴方がエリクサーを見つけたというのは本当ですか?」
「あっ、あああああっ、俺、忘れてた!?」
「えっ、一体何を忘れていたんだい」
「まさか全て嘘なのですか、それを誤魔化すおつもりですか」
「えっ、いや、その…………」
赤い髪に黒い瞳をした15歳くらいの少年は少し気まずげに僕らに言った、それは本当にそのこと忘れていたようで、彼は手で頬をかきつつ申し訳なさそうな声で返事をした。
「エリクサーを見つけたこと、それっ仲間たちと領主に言うなって、言われてたんだった」
カイトは本気でそう言っているようだった、ソアンは理由を聞いてそれからありそうな話だ、そう思ったのか納得して頷いている。このカイトという少年が本当にエリクサーを見つけたのなら、領主は街に余計な混乱を招かないように必ず口止めをしたはずだからだ。だから僕はにっこりと笑ってこう言ってみた、カイトという少年が喋りやすいようにしてみたのだ。
「ここだけの話にするから、少しだけエリクサーのこと教えてくれないか」
「そうか、それじゃここだけの話だな。えっとあれは古代遺跡、そこに落っこちた時に見つけたんだ」
「古代遺跡に落っこちた、それはまた器用なことをしたね」
「そうそう、山道を歩いてたら突然足元が無くなってさ。そこが古代遺跡だったんだぜ」
「エリクサーは本物だったのかい、どうしてそれが分かったんだ」
「落っこちた先の古代遺跡を仲間と歩いて見つけたんだ、仲間が『鑑定』持ちでさ。それですぐにお宝だって分かった、……でもせっかく見つけたのに、領主の息子に取り上げられちまったんだぜ」
そうやって僕はカイトという少年の話を丁寧に聞いてみたが、彼は偶々古代遺跡をここから遠くない山で見つけた。そうして仲間と一緒にそこを探索してエリクサーも見つけ出した、だけど領主の息子がそれを金貨1000枚でカイトたちから無理矢理に買い取った。領主からは他ではエリクサーのことを話さない、そう口止めをされてしまった。それが面白くなかったから今日は一人で冒険者ギルドをぶらついて、僕とソアンが面白そうな模擬戦をしているのを見つけたのだった。
カイトの話には真実味があった、領主の息子がエリクサーを買い取ったというもありそうな話だった。領主の息子というのは次男のジーニャスではなさそうだ、人格者の彼なら正当な報酬を払ってカイトたちに与えただろうからだ。それから口止めされたというのがなお本当の事のように思える、それにカイトという少年は素直そうで小声で話している間も、くるくると表情が変わり嘘がつけるような人物には見えなかった。エリクサーを金貨1000枚で買い取られた、平民が一人なら50年は暮らせる額だが、エリクサーの値段としては安かった。
なにせエリクサーはどんな病気でも治してしまえるのだ、ならばどれだけの人々がこれを欲しがるだろうか、金貨1000枚では安過ぎる値段だとしか言えなかった。そう僕が言うとカイトはやはり悔しがっていた、でも貴族である領主には逆らえなかったのだ。それに見つけた遺跡がまだダンジョンとして、正式に開放されていなかったのもまずかった。
ダンジョンとして正式に領主から開放されていたら、そこで見つけた物は発見者の物になるのが常識だ。たとえそれがどんなに素晴らしい宝でも、見つけた者が自由にしてよいというのがダンジョンなのだ。これはオラシオン国が正式に決めていることでもあった、他の国でもほとんど同じような決まり事が存在している、そうしないと冒険者がダンジョンに行ってくれなくなるからだった。
「ダンジョンとして正式に開放されていない、それがよくなかったからエリクサーは領主に取り上げられたんだ」
「ああ、仲間たちにもそう言われたよ。でも、俺たちが見つけたものなのにさ」
「確かに発見者としてもう少し報酬を貰っても良い、そんな気もするが領主にも事情があるんだろう」
「そうだよな、もっと高く買ってくれてもいい物だよな、領主は国に献上するらしいぜ。要するに王様のご機嫌取りさ」
「本当だったならエリクサーは一体どれだけの値段がしたんだろう」
「仲間たちはこう言ってたぜ、これも内緒だけど……」
そう言ってカイトが教えてくれた金額は僕の想像を超えていた、確かにエリクサーは貴重なものだが僕が思っているよりも高かったのだ。
「本当なら金貨10000枚は最低したってさ、いやそれ以上の値段がついたって話だぜ」
「それは本当ですか、ちょっと信じられませんが……」
「俺と戦ってみれば分かるさ、これでも金の冒険者なんだからな」
「いいでしょう、模擬戦でよければ受けましょう」
ソアンとカイトという少年はそうして模擬戦をすることになった、カイトという少年を観察すると剣士だが装備は少なく、剣の重さよりもスピードを重視している装備のようだ。ソアンは丈夫な服と皮鎧に大剣と一見すると少し重装備だが、ソアンにはドワーフの父親譲りの怪力があるから、これでもかなりスピードもあるのだ。僕は二人から審判を頼まれてソアンとカイトという少年の真ん中に立った、そして開始と言って二人から離れた。
思ったとおりカイトという少年が素晴らしい速さで攻撃してきた、そのカイトの右からの剣の振り下ろしをソアンは楽々と弾き飛ばした。そしてそのまま大剣の横っ腹でカイトへと殴り掛かった、大剣の刃をそのまま使わないのは模擬戦だから手加減しているのだ。だがそれでソアンの剣のスピードが風を受けて遅れる、カイトは楽々とソアンの剣を受け止めた。
だが、ソアンは見た目以上に力があるのだ。カイトはどうにかソアンの剣を受け止めたが、その場から動けなくなってしまった。少しでも力を抜けばソアンの攻撃がカイトを押しつぶす、だがカイトはどうにかソアンの剣を受け流した。それからまたソアンに向かっていったが、ソアンが振り回す大剣に阻まれて近づくことがなかなかできないでいた。
ソアンは銅の冒険者だが剣の腕は相当のものだ、そのソアンと模擬戦なので本気ではないが、互角に戦えているとはなかなか腕の良い少年だった。
「二人ともそれまで、模擬戦ならもう充分だよ」
「はい、リタ様。良い練習になりました」
「えええええ、もう終わりかよ、俺はまだまだいけたぜ」
ソアンは満足そうに剣を背中に収めた、カイトは少々不満げに剣を引いた。そこで僕はカイトに聞いてみることにした、ソアンも僕と同じように考えていたようだった。ソアンはカイトの服を握って、僕はその背後に立ってから、彼に聞きたかったことを質問することにした。カイトは黒い瞳で瞬きしながら、逃げようとはせずに素直に僕らの質問に答えてくれた。
「君が相当の実力者だというのは分かった、首から下げているプレートも確かに金の冒険者のものだ」
「それではですね、貴方がエリクサーを見つけたというのは本当ですか?」
「あっ、あああああっ、俺、忘れてた!?」
「えっ、一体何を忘れていたんだい」
「まさか全て嘘なのですか、それを誤魔化すおつもりですか」
「えっ、いや、その…………」
赤い髪に黒い瞳をした15歳くらいの少年は少し気まずげに僕らに言った、それは本当にそのこと忘れていたようで、彼は手で頬をかきつつ申し訳なさそうな声で返事をした。
「エリクサーを見つけたこと、それっ仲間たちと領主に言うなって、言われてたんだった」
カイトは本気でそう言っているようだった、ソアンは理由を聞いてそれからありそうな話だ、そう思ったのか納得して頷いている。このカイトという少年が本当にエリクサーを見つけたのなら、領主は街に余計な混乱を招かないように必ず口止めをしたはずだからだ。だから僕はにっこりと笑ってこう言ってみた、カイトという少年が喋りやすいようにしてみたのだ。
「ここだけの話にするから、少しだけエリクサーのこと教えてくれないか」
「そうか、それじゃここだけの話だな。えっとあれは古代遺跡、そこに落っこちた時に見つけたんだ」
「古代遺跡に落っこちた、それはまた器用なことをしたね」
「そうそう、山道を歩いてたら突然足元が無くなってさ。そこが古代遺跡だったんだぜ」
「エリクサーは本物だったのかい、どうしてそれが分かったんだ」
「落っこちた先の古代遺跡を仲間と歩いて見つけたんだ、仲間が『鑑定』持ちでさ。それですぐにお宝だって分かった、……でもせっかく見つけたのに、領主の息子に取り上げられちまったんだぜ」
そうやって僕はカイトという少年の話を丁寧に聞いてみたが、彼は偶々古代遺跡をここから遠くない山で見つけた。そうして仲間と一緒にそこを探索してエリクサーも見つけ出した、だけど領主の息子がそれを金貨1000枚でカイトたちから無理矢理に買い取った。領主からは他ではエリクサーのことを話さない、そう口止めをされてしまった。それが面白くなかったから今日は一人で冒険者ギルドをぶらついて、僕とソアンが面白そうな模擬戦をしているのを見つけたのだった。
カイトの話には真実味があった、領主の息子がエリクサーを買い取ったというもありそうな話だった。領主の息子というのは次男のジーニャスではなさそうだ、人格者の彼なら正当な報酬を払ってカイトたちに与えただろうからだ。それから口止めされたというのがなお本当の事のように思える、それにカイトという少年は素直そうで小声で話している間も、くるくると表情が変わり嘘がつけるような人物には見えなかった。エリクサーを金貨1000枚で買い取られた、平民が一人なら50年は暮らせる額だが、エリクサーの値段としては安かった。
なにせエリクサーはどんな病気でも治してしまえるのだ、ならばどれだけの人々がこれを欲しがるだろうか、金貨1000枚では安過ぎる値段だとしか言えなかった。そう僕が言うとカイトはやはり悔しがっていた、でも貴族である領主には逆らえなかったのだ。それに見つけた遺跡がまだダンジョンとして、正式に開放されていなかったのもまずかった。
ダンジョンとして正式に領主から開放されていたら、そこで見つけた物は発見者の物になるのが常識だ。たとえそれがどんなに素晴らしい宝でも、見つけた者が自由にしてよいというのがダンジョンなのだ。これはオラシオン国が正式に決めていることでもあった、他の国でもほとんど同じような決まり事が存在している、そうしないと冒険者がダンジョンに行ってくれなくなるからだった。
「ダンジョンとして正式に開放されていない、それがよくなかったからエリクサーは領主に取り上げられたんだ」
「ああ、仲間たちにもそう言われたよ。でも、俺たちが見つけたものなのにさ」
「確かに発見者としてもう少し報酬を貰っても良い、そんな気もするが領主にも事情があるんだろう」
「そうだよな、もっと高く買ってくれてもいい物だよな、領主は国に献上するらしいぜ。要するに王様のご機嫌取りさ」
「本当だったならエリクサーは一体どれだけの値段がしたんだろう」
「仲間たちはこう言ってたぜ、これも内緒だけど……」
そう言ってカイトが教えてくれた金額は僕の想像を超えていた、確かにエリクサーは貴重なものだが僕が思っているよりも高かったのだ。
「本当なら金貨10000枚は最低したってさ、いやそれ以上の値段がついたって話だぜ」
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