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1-26恐ろしい再会をする
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「えっと扉を開け、『アペルタ』」
僕が古代語を唱えたとたんに行き止まりだったところは変化した、壁だったところが無くなってぽっかりと黒い穴が開いていたのだ。僕は『開け』という意味の古代語を唱えたのだが、それで答えはあっていたようだ。よく見ると下に続く階段らしきものがあるようだった、僕たち二人で何があるか分からないこの中に入るより、ジーニャスにまず報告をして皆で捜索したほうが良いと僕は思った。
「えっと、ソアン。君の言葉で合っていたよ、唱える言葉は『開け』だった」
「はわわわっ、なんでも言ってみるものです」
「ひとまずジーニャスに報告しに行こう、皆で中を捜索したほうが安全だ」
「そうですね、それじゃあ一旦戻りましょう」
「ああ、そうしようって、ソアン!!」
「リタ様!?」
そうして僕たちがとりあえずダンジョンの入り口まで引き返そうとしたら、突然僕たちの足元が崩れて僕と一緒にいたソアンも階段の方に落ちてしまった。それだけなら別に良かったのだけれど、階段が劣化していたのか僕たちは大量の土砂と一緒に、そのまま下の階に向かって落下することになった。僕は咄嗟にソアンを抱きしめて庇った、ソアンも僕から離れないようにしっかりと抱き着いた。
それはあっという間の出来事だった、僕たちは大人が三人はいないと届かないような高さがある上の階、そこから下の階に大量の土砂とともに落ちた。土埃が舞ってしばらくは話もできなかった、でも土砂に埋まってしまわなかったのは幸運だった、だけどこのままでは元いた階に戻れなかった。土砂はもう階段の形をしていなくて、全て崩れて壊れ原形をとどめていなかった。
「けほっ、けほっ、大丈夫かい。ソアン」
「はい、けほっ、リタ様こそ大丈夫ですか」
「僕は大丈夫だよ、ソアン」
「それは良かったです。リタ様」
「古代遺跡がこんなに簡単に崩れるなんて……」
「これは変ですね、それならこのダンジョン全体が危険なはずです」
さてこれからどうするかよく考えてみた、そして数ある魔法の中に『浮遊』というものがあることを思い出した、言葉通り人や物を浮かせる魔法だ。だがソアンが『浮遊』の魔法を使ったとしても、ソアン一人分の体重を浮かせるだけで精一杯なので、僕と彼女が一緒に上がることはできなかった。でもここから脱出することは難しくない、この魔法があればそれは十分に可能だった。あまりぐずぐずはしていられなかった、古代語で一度は壁がなくなって開いたが、自分の家を開きっぱなしにはしておかないはずだ。だから、早く脱出しないと出口が閉じる可能性があった。
「まず君が『浮遊』で、とりあえず上の階まで上がってくれ」
「はい、リタ様。それからロープでリタ様を、私が上の階へ引き上げればよいのですね」
「そうだよ、ロープも荷物の中にあったはずだ。それじゃ、君から……」
「リタ様、そうしたいのですができそうにありません!?」
「あれはっ、ソアン!!」
「はい、リタ様!! 正直なところお会いしたくないお客様がおみえです!!」
崩れた階段の先にはダンジョンと同じように広い通路が続いていた、だがそこを数体のゾンビがゆっくりと歩いて近づいてきていた。まだあまり体が崩れていないゾンビたちで、最近ゾンビになったばかりのようだった。もしかしてここはジーニャスの言ったとおり、今騒がれているネクロマンサーの隠れている場所なのだろうか、僕がそんなことを考えていられたのも僅かな時間だった。そう無情にも上の階へ開いていた通路が自動的に閉ざされ、僕たちは前に進むしかなくなってしまったのだ。
「リタ様は私の後ろに!! それではいきます!!」
「ソアン、数が多すぎると思ったらすぐに下がるんだ、火炎玉でまとめて燃やしてしまおう!!」
ソアンは大剣を一体のゾンビに向かって振るった、そのゾンビは首と胴が離れて動きが鈍くなった。基本的にゾンビを退治するなら強い火の魔法が有効だ、もしくは神官がよく使っている浄化魔法が良いのだ。火炎なら空気にさえ気をつければゾンビを燃やしてしまえる、浄化魔法ならゾンビについている死霊を追い出すことができる、だが今の僕たちはそのどちらも使えないのだ。それならばソアンがやったように頭と胴を切り離すのが一番良い、ゾンビは頭を切り離されても動くが、その動きは鈍くなり格段の差がでてくるのだ。
僕たちはこの場にとどまっていることは諦めて、襲ってくるゾンビの首をソアンが大剣で斬り飛ばしながら、それができないほど数が多い時には僕が火炎玉で燃やしながら道を走っていった。そうしながら最奥へと進んでいった、僕の持っている火炎玉には限りがあるから、それが無くなった時が命運に関わる時だ。しばらくゾンビの大群を始末しながら進むと、やがて重そうな大きな扉がある場所に出た、そこで僕が持っていた最後の火炎玉をゾンビの群れに投げた。
「ソアン、その大扉の中に入れ!!」
「はい、リタ様もご一緒に!!」
中に何があるのかも分からず、僕たちは大扉を何とか少しだけ開けて、その部屋の中に飛び込んだ。そして、今度は大扉を閉めてまだやってくるゾンビから逃れようとした。
「重い!? けどこの扉を閉めれば!!」
「リタ様、もう少しです!!」
そうして入った大きな扉の向こうには広場があった、僕たち二人はとりあえず重い大扉を閉めきった。そうやって集まってきたゾンビが、これ以上は中に入ってこないようにした。広場の中には不思議なことにゾンビはいなかった、代わりに静かで不気味な沈黙がその場を支配していた。誰もいないのかと思ったその時、奥にあった扉が開いて少年が一人だけ姿を現した、その見覚えのある姿を見て僕もソアンも思わず息をのんだ。
「もしかして、……フェーダーなのか」
「ああ、フェーダーさん!?」
そこに現れたのはフェーダーだった、以前と同じく黒い髪に赤い瞳をしていて、右手首から先が失われている右腕が見えた。生前と変わらない姿がそこにはあった、いや瞳の輝きだけが失われていた、フェーダーは僕たちを見て首を傾げた。その生きている人間のような仕草に僕はゾッとして咄嗟に思った、きっとこのフェーダーの遺体にはいくらか知性が残っているのだ。多分だが僅かな生前の記憶と知性があって、もしかしたら僕たちを覚えているのかもしれなかった。
「あっ、あっ、ああああああああぁぁぁぁ!!」
フェーダーが何かを振り払うかのように大声を上げた、それと同時に子どもだった体が醜く歪みだした。子どもの愛らしい丸みをおびていた体は無理矢理引き延ばしたように大きくなり、また口には鋭い牙が突き出てきて手首の無い右手が肥大化していった、そして無事に残っている左手にはかぎ爪のようなものが生えてきた。それから緑色の液体を吐き散らしながら、フェーダーは完全に変貌してしまった。
フェーダーだったものがこちらを見て笑ったような気がした、笑いながらフェーダーは広場にあった柱に向けて拳を振るった。柱は拳が当たった部分から圧し折れてしまった、古代遺跡の石で作られた柱がそうなったのだ。フェーダーはそのことに驚いている僕たちを見てまた笑ったようだった、間違いないこのフェーダーだった者には知性があるのだ。
「知のある死者、……ワイズデッドなのか」
僕が古代語を唱えたとたんに行き止まりだったところは変化した、壁だったところが無くなってぽっかりと黒い穴が開いていたのだ。僕は『開け』という意味の古代語を唱えたのだが、それで答えはあっていたようだ。よく見ると下に続く階段らしきものがあるようだった、僕たち二人で何があるか分からないこの中に入るより、ジーニャスにまず報告をして皆で捜索したほうが良いと僕は思った。
「えっと、ソアン。君の言葉で合っていたよ、唱える言葉は『開け』だった」
「はわわわっ、なんでも言ってみるものです」
「ひとまずジーニャスに報告しに行こう、皆で中を捜索したほうが安全だ」
「そうですね、それじゃあ一旦戻りましょう」
「ああ、そうしようって、ソアン!!」
「リタ様!?」
そうして僕たちがとりあえずダンジョンの入り口まで引き返そうとしたら、突然僕たちの足元が崩れて僕と一緒にいたソアンも階段の方に落ちてしまった。それだけなら別に良かったのだけれど、階段が劣化していたのか僕たちは大量の土砂と一緒に、そのまま下の階に向かって落下することになった。僕は咄嗟にソアンを抱きしめて庇った、ソアンも僕から離れないようにしっかりと抱き着いた。
それはあっという間の出来事だった、僕たちは大人が三人はいないと届かないような高さがある上の階、そこから下の階に大量の土砂とともに落ちた。土埃が舞ってしばらくは話もできなかった、でも土砂に埋まってしまわなかったのは幸運だった、だけどこのままでは元いた階に戻れなかった。土砂はもう階段の形をしていなくて、全て崩れて壊れ原形をとどめていなかった。
「けほっ、けほっ、大丈夫かい。ソアン」
「はい、けほっ、リタ様こそ大丈夫ですか」
「僕は大丈夫だよ、ソアン」
「それは良かったです。リタ様」
「古代遺跡がこんなに簡単に崩れるなんて……」
「これは変ですね、それならこのダンジョン全体が危険なはずです」
さてこれからどうするかよく考えてみた、そして数ある魔法の中に『浮遊』というものがあることを思い出した、言葉通り人や物を浮かせる魔法だ。だがソアンが『浮遊』の魔法を使ったとしても、ソアン一人分の体重を浮かせるだけで精一杯なので、僕と彼女が一緒に上がることはできなかった。でもここから脱出することは難しくない、この魔法があればそれは十分に可能だった。あまりぐずぐずはしていられなかった、古代語で一度は壁がなくなって開いたが、自分の家を開きっぱなしにはしておかないはずだ。だから、早く脱出しないと出口が閉じる可能性があった。
「まず君が『浮遊』で、とりあえず上の階まで上がってくれ」
「はい、リタ様。それからロープでリタ様を、私が上の階へ引き上げればよいのですね」
「そうだよ、ロープも荷物の中にあったはずだ。それじゃ、君から……」
「リタ様、そうしたいのですができそうにありません!?」
「あれはっ、ソアン!!」
「はい、リタ様!! 正直なところお会いしたくないお客様がおみえです!!」
崩れた階段の先にはダンジョンと同じように広い通路が続いていた、だがそこを数体のゾンビがゆっくりと歩いて近づいてきていた。まだあまり体が崩れていないゾンビたちで、最近ゾンビになったばかりのようだった。もしかしてここはジーニャスの言ったとおり、今騒がれているネクロマンサーの隠れている場所なのだろうか、僕がそんなことを考えていられたのも僅かな時間だった。そう無情にも上の階へ開いていた通路が自動的に閉ざされ、僕たちは前に進むしかなくなってしまったのだ。
「リタ様は私の後ろに!! それではいきます!!」
「ソアン、数が多すぎると思ったらすぐに下がるんだ、火炎玉でまとめて燃やしてしまおう!!」
ソアンは大剣を一体のゾンビに向かって振るった、そのゾンビは首と胴が離れて動きが鈍くなった。基本的にゾンビを退治するなら強い火の魔法が有効だ、もしくは神官がよく使っている浄化魔法が良いのだ。火炎なら空気にさえ気をつければゾンビを燃やしてしまえる、浄化魔法ならゾンビについている死霊を追い出すことができる、だが今の僕たちはそのどちらも使えないのだ。それならばソアンがやったように頭と胴を切り離すのが一番良い、ゾンビは頭を切り離されても動くが、その動きは鈍くなり格段の差がでてくるのだ。
僕たちはこの場にとどまっていることは諦めて、襲ってくるゾンビの首をソアンが大剣で斬り飛ばしながら、それができないほど数が多い時には僕が火炎玉で燃やしながら道を走っていった。そうしながら最奥へと進んでいった、僕の持っている火炎玉には限りがあるから、それが無くなった時が命運に関わる時だ。しばらくゾンビの大群を始末しながら進むと、やがて重そうな大きな扉がある場所に出た、そこで僕が持っていた最後の火炎玉をゾンビの群れに投げた。
「ソアン、その大扉の中に入れ!!」
「はい、リタ様もご一緒に!!」
中に何があるのかも分からず、僕たちは大扉を何とか少しだけ開けて、その部屋の中に飛び込んだ。そして、今度は大扉を閉めてまだやってくるゾンビから逃れようとした。
「重い!? けどこの扉を閉めれば!!」
「リタ様、もう少しです!!」
そうして入った大きな扉の向こうには広場があった、僕たち二人はとりあえず重い大扉を閉めきった。そうやって集まってきたゾンビが、これ以上は中に入ってこないようにした。広場の中には不思議なことにゾンビはいなかった、代わりに静かで不気味な沈黙がその場を支配していた。誰もいないのかと思ったその時、奥にあった扉が開いて少年が一人だけ姿を現した、その見覚えのある姿を見て僕もソアンも思わず息をのんだ。
「もしかして、……フェーダーなのか」
「ああ、フェーダーさん!?」
そこに現れたのはフェーダーだった、以前と同じく黒い髪に赤い瞳をしていて、右手首から先が失われている右腕が見えた。生前と変わらない姿がそこにはあった、いや瞳の輝きだけが失われていた、フェーダーは僕たちを見て首を傾げた。その生きている人間のような仕草に僕はゾッとして咄嗟に思った、きっとこのフェーダーの遺体にはいくらか知性が残っているのだ。多分だが僅かな生前の記憶と知性があって、もしかしたら僕たちを覚えているのかもしれなかった。
「あっ、あっ、ああああああああぁぁぁぁ!!」
フェーダーが何かを振り払うかのように大声を上げた、それと同時に子どもだった体が醜く歪みだした。子どもの愛らしい丸みをおびていた体は無理矢理引き延ばしたように大きくなり、また口には鋭い牙が突き出てきて手首の無い右手が肥大化していった、そして無事に残っている左手にはかぎ爪のようなものが生えてきた。それから緑色の液体を吐き散らしながら、フェーダーは完全に変貌してしまった。
フェーダーだったものがこちらを見て笑ったような気がした、笑いながらフェーダーは広場にあった柱に向けて拳を振るった。柱は拳が当たった部分から圧し折れてしまった、古代遺跡の石で作られた柱がそうなったのだ。フェーダーはそのことに驚いている僕たちを見てまた笑ったようだった、間違いないこのフェーダーだった者には知性があるのだ。
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