お疲れエルフの家出からはじまる癒されライフ

アキナヌカ

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1-12フォシルを調べる

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「気になることを放っておけないのは僕の悪い癖だな」

 翌日の僕は朝から調子が良かった、だからソアンといつもの鍛錬を済ませると、とりあえず冒険者ギルドの図書室に向かった。ソアンと一緒にまずは冒険者ギルドの依頼の掲示板も見てみた、特に緊急で受けたい依頼はなかったので予定通りに図書室に二人で向かった。

「リタ様、何をお調べになるんです?」
「フォシルのダンジョンについて、ちょっと気になったから調べなおしたい」

「分かりました、私もダンジョンのことは気になりますし、色々とその関係の本を読んでみます」
「そうだね、それぞれが本を調べてみて、後で意見を交換しよう」

 そもそもダンジョンというもの自体が不思議なものなのだ、灯が必要ないダンジョンやそこで倒した魔物の死体が消えてしまったりすること、まぁ光り苔が生えていたとかスライムが死体を食べていたりした。そういう理由があったりもするのだが、生態系がおかしいとか罠が何度でも仕掛けなおされているとか、今でも解明できていない謎が沢山ある場所なのだ。

 ダンジョンは古代の遺跡というのが一番よくある説だが、ではそのダンジョンを作った古代文明はなぜ滅びてしまったのだろうか、ダンジョンを作れるくらいの高い技術があったはずなのにおかしい。中には魔法技術を極め過ぎ神の領域に触れてその怒りで滅びた、そう言う人たちもいてダンジョン自体を封印している国もある、でもダンジョンから出る魔石やアイテムは国の財政を左右することもあるくらいなのだ。

 さて結論からはっきりと言うとだが、冒険者ギルドの図書室ではフォシルのダンジョンについて、あまり詳しいことが分からなかった。出てくるモンスターとその退治方法については詳しかった、それにダンジョンの地図も全てできあがっているくらいだ。ただ、何故フォシルのダンジョンにフォシルと名がついているか、それだけは謎というかあまり気にされていなかった。

 そもそもそれはフォシルのダンジョンが簡単に攻略できる、言ってはいけない気もするがダンジョンとしては弱い、弱すぎるせいもあるから研究がすすんでいないのだ。初心者の冒険者でも数名いれば攻略できてしまう、そして主に出てくるモンスターのスライム、彼らが落とす魔石が街の収入になるがそれはあまり多くないのだ。

 ダンジョンのボスから偶に得られるレアアイテムもプルエールの森、僕らの故郷から持ってきた魔法薬と同じくらいの薬草だった。このくらいの薬草ならエルフのいる森に行けばそう珍しくない、ただ僕たちエルフだからこそその薬草を珍しいと思わないが、人間にとっては上級回復魔法にあたるくらいの薬の材料ではあった。そうやって昼まで冒険者ギルドの図書室にいると、唐突にソアンはこう言いだした。

「そうだ、街の図書館にも行きましょう」
「うん、ここ以外の場所にも情報があるかもしれないね」

「それに私がおすすめの食事が美味しいお店にも行きましょう!!」
「ああ、そうだった。実は…‥、僕も結構それを楽しみにしていたんだ」

 僕らはそう言って冒険者ギルドの図書室をあとにして飯屋に行った、今回ソアンが連れてきてくれたのは肉が名物の飯屋だった。僕はエルフだが肉を食べることには全く抵抗が無い、むしろ両親が狩人だったのでよく肉を食べて育った、だから肉を食べるのを嫌がるエルフがいることの方が不思議だった。ソアンも僕と同様に肉を食べることに抵抗がない、だから一緒にこれから色んな食事を楽しめそうだ。

「リタ様、この店でのおすすめは良質な油であげた豚カツです!!」
「とんかつ?」

「はい、豚の肉を使った料理でして、パン粉をつけた豚肉を油で揚げる料理です」
「油をそんなに贅沢につかうのか、それに豚肉も貴重だから高いだろう」

「確かにこの世界では二人で銀貨1枚もします、でもたまには贅沢な食事も必要だと思いますよ」
「ソアンが勧めてくれるんだったら大丈夫だろう、お金のこともしばらく心配はいらないしね」

 そう話しながらまって出てきた食事は美味しかった、そうさっくさくに揚がったパン粉がついた豚肉は美味しかった。豚は育てないといけないので手間がかかるぶん高い肉になる、でも二人で銀貨1枚払ってもいいくらいには美味しかった。口の中に入れるとさくっっとした触感と溢れる肉汁が美味しくて、油を沢山つかっているのにしつこくないし、また豚肉にかけるソースの味が深くてそれも良かった。

「もうここにお米があれば最高なのに!!」
「いやこれだけでも十分に美味しいよ、でもオコメとはこれよりも美味しいのかい?」

「はい、生まれて150年でさすがにパンが主食なのにも慣れましたが、お米は主食にしてもいい食べ物です!! そう私の愛するソウルフードです!!」
「オコメ、ソウルフード。うん、ソアンは美味しい物をよく知っているんだね」

「私、食事には煩いハーフエルフですから」
「確かにソアンは食事に使うハーブなどにとても詳しい」

「はぁ~、ごちそうさまでした」
「うん、ゴチソウサマデシタ」

 美味しい食事のあとには街の図書館にも行ってみた、ゼーエンの街は交易で発展してるだけはある、それなりに蔵書のそろった図書館だった。冒険者証が身分証代わりになって、僕たちは閲覧することができた。ダンジョン関係以外にも面白そうな本があって目移りしそうになった、だが今日の目的はフォシルのダンジョンを調べること、それだけに集中して色々と本を読み漁ってみた。

 すると僅かだが記録が残されていた、今から500年ほど昔にフォシルという魔法使いが実際にいた。それはこのゼーエンの街ができる前の出来事だったらしい、フォシルはその当時の王族に仕えていたが、人間を犠牲にする邪悪な儀式を行った為に処刑された。そう簡潔に記録には記してあった、ふむ実際に生きていた人間の名前が関係するのかもしれない、僕は知りたかったことが少し分かってすっきりした。

 夕方になるまで色々と調べて街の図書館を出た、それから宿屋に戻ってそこにある酒場で食事をしながら、ソアンと図書館で調べて分かったことを話し合った。

「500年、そうだな。僕の両親が生きていた頃に、この辺りには別の国があった。そこにフォシルという魔法使いがいたようだ、ただダンジョンとの関係は分からない」
「私が読んだ本にもありました、その本によるとフォシルというのは……アレだったそうです」

「うん、なんだい。ソアン」
「あのですね、もっと近くに来てください。リタ様」

僕たちは頬が触れそうなくらい近づいて、僕の耳にだけ聞こえるようにソアンはその言葉を囁いた。それを聞いた僕はおそらく眉をひそめたと思う、それはエルフでも禁忌とされている所業を行う者のことだったからだ。

「フォシルというのはネクロマンサーだったそうなんです」
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