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14家族
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「ロン、戸籍も僕の戸籍に移して良い?」
「オウガ、お前は馬鹿か!?」
「やっぱり駄目か」
「違うんだよ、お前をダリルから引き取った時に、俺の養子にお前はもうなってるんだよ」
「……僕、ロンともう結婚してた」
「いや、結婚とは違うだろ!?」
首都テンプルムに戸籍を移すことになって、オウガがまた馬鹿なことを言いだした。一緒の戸籍も何も、もうオウガの戸籍は五年も前から、俺の養子として一緒の戸籍に入っていた。オウガは何故かそのことに物凄く感動していた、確かに男同士のカップルだと、同じ戸籍に入るにはどちらかの養子になるしかないらしかった。
「僕すっごく嬉しくて、今なら空も飛べそう」
「そんなに気にすることか? 俺の息子ってだけだぞ」
「それが嬉しいんだよ!! ねぇ、僕は奥さん? それとも旦那さん?」
「だからお前は養子だっつーの!?」
「強いていうなら、どっち!?」
「あー、それなら奥さんだろ。だって、俺は女の方が好きだし」
それからオウガは初めて会う人に俺の妻だって自己紹介するようになって、俺はそれを止めさせるのにとても大変だった。実際のところ一緒に住むようになると、オウガは掃除も洗濯も料理も完璧だった。俺が半分はやるって言っていても、いつの間にかオウガが先に全部の家事を済ませていた、俺は家賃を折半していることだけが救いだった。
「だから家事も俺がやるって言ってるだろ」
「だって、僕はロンの奥さんだから」
「首都では奥さんが全部家事をする、っていうのも珍しいらしいぞ」
「うん、知ってる。でも僕がロンの管理を全部したいんだ」
「だから……、ああ? なんだ?」
「女の子、十歳くらいか」
俺たちはいつものようにハンターギルドで訓練が終わったら、肩くらいの長さの金の髪に蒼い瞳の女の子が、あまり人気のない床に座り込んでいた。俺が素早くその様子を観察すると、どうやら女の子の下半身が血まみれだった。これはあれだ女にだけくる生理ってやつ、いきなり血が自分から出たから驚いたんだなと、俺はそう推測して俺が着ていた上着のシャツを脱いで女の子にかけた。
「どうしたちょっと血が出たのか?」
「……お腹が痛くなって、頭も痛くてそしたら血が出てた」
「よっし、それじゃ受付のお姉さんに助けて貰おう」
「……うっ、うん」
「名前はなんて言うんだ?」
「……エフィ」
それから俺はエフィを抱きかかえて受付のお姉さんのところへ行った、俺が簡単に事情を説明するとすぐに受付のお姉さんは、エフィと一緒に他の部屋に入っていった。もう一人の受付のお姉さんから俺とオウガは驚くことを聞いた、エフィは十歳でもう五つ星のハンターだった。天才だと言われていて、アビス退治の経験もあるそうだった。
「さっきはありがとう、えっと……」
「ロンだ」
「オウガです」
「勉強して知っていたけど、私実際になったら驚いて、ありがとう、ロン、オウガ」
「なぁに、大したことはしてねぇさ」
「そうそう受付のお姉さんに頼んだだけです」
「それでこのシャツ、血で汚れちゃったから洗って返すね」
「気にすんなよ、安物のシャツだ」
「そのまま返してもらっていいですよ」
そう言ってオウガは素早く俺のシャツを回収していた、エフィは何度もお礼を言ってくれて帰っていった。オウガはそれをにっこりと笑って見送って、俺のシャツをゴミ箱にいきなり捨てた。俺がそれ俺のお気に入りなんだけど、と抗議してみたら後で新品で返すと言われた。オウガにとっては十歳児の女の子でさえ、俺を狙っているライバルに見えるようだった。
「あのな、俺のお気に入りをいきなり捨てんなよ」
「でも血がついてたし、どうせ洗っても落ちなかったよ」
「それにしても、即座に捨てなくても」
「だから後で新品の同じ物を買って返すから」
「まぁ、それならいいか。しかし十歳で五つ星か」
「強力なライバル出現だね」
オウガは俺に近づく女は十歳児でもライバルなのだ、その後エフィとは運動場で姿を見る度に声をかけられた。父親はこの仕事に賛成しているらしいが、送り迎えをされているところは見たことがなかった。エフィは俺に懐いてくれた、戦闘訓練を一緒にしたいと言いだした。俺は武器あり狙撃なしの条件でエフィと訓練してみた、そうしたら筋は良いがいくつかなおすべき癖があった。
「すげぇなエフィ、十歳でここまでできれば大したもんだ」
「ありがとう、ロン」
「エフィ、お前は筋が良い。でも、いくつかなおした方が良い癖がある」
「本当? 教えてくれる?」
「ああ、まずは……」
「うん、うん」
こうして俺がエフィと話したり、訓練している間はオウガは筋トレをしていた。筋トレのマシンを壊すんじゃないかという強さだった、でもいくら訓練しても体質でオウガには筋肉がつかなかった。エフィは他にハンターの友達もいなくて、俺たちは三人で訓練することが増えた。オウガは家に帰ると俺に文句を言っていたが、エフィとの訓練を邪魔したりはしなかった。
「エフィと会うなとか言わないだけ、大人になったな。オウガ」
「……十歳で頼る大人がいない、少しだけその寂しさが分かるから」
「お前が十歳の時には俺がいただろ?」
「でも、最初に売春宿に売られた時には、僕はもう世界からいらない子なんだって思った」
「お前は絶対に世界に必要な男だよ、俺にとってはかけがえのないパートナーさ」
「うん、ロンにそう言って貰えると嬉しい」
俺はオウガの手を握り締めた、オウガがハンターでなければ今も一緒には居られなかった。養子として引きとっただろうが、俺とパートナーになることはなかっただろう、俺は俺たちがハンターで良かったとお互いに思って笑った。そんなある日のことだった、エフィが右頬を酷く誰かに叩かれてハンターギルドに来た、俺たちを見ると笑ったがそれは無理をしている顔だった。
「どうしたエフィ、この右頬は誰にやられたんだ?」
「氷を受付から貰ってきました、少し冷やしますね」
「…………お父さん、もっと稼いでこいって」
「エフィのお父さんは、こんなに強くエフィを叩くのか?」
「口の中も切っているようですね、これは虐待です」
「…………お酒を飲むと酷いことするの、この前は服を破られた」
「こりゃ、スーソルさんに相談が必要だな。エフィ、心配するな」
「スーソルさんを呼ぶように、受付のお姉さんと話してきます」
「お父さんを逮捕しないで!? お母さんが死んでからちょっと乱暴なだけなの!?」
すぐにスーソルさんはハンターギルドに来てくれた、そしてスーソルさんとエフィと二人だけで別室で話をしていた。やがてエフィは出てきた、少し泣いていたが何かを納得した顔をしていた。スーソルさんがとりあえずエフィを緊急保護すること、しばらくは彼女は孤児院に預かって貰うことになった。そしてエフィの父親の様子を見て、アルコール依存症の施設に入れることなどを説明してくれた。
「アルコール依存症の施設に入ったら、昔みたいなお父さんになるかもしれないって」
「そうか、それは良かったな。エフィ」
「孤児院からの行き帰り、気をつけてくださいね」
「ありがとう、ロン、オウガ。孤児院から誰かが必ず送り迎えして貰えるって」
「それなら心配ないな」
「寂しいでしょうけど、今は耐えてください。エフィ」
「うん、ロン、オウガ。本当にありがとう、また訓練しようね」
「ああ、待ってるぜ。エフィ」
「気をつけて、今は家には絶対帰ったら駄目ですよ」
こうして俺たちはエフィと別れた、エフィはどこかホッとした顔をしていた。父親からの暴力に耐えてきたのが、それがなくなることになって気が抜けたのだろうと思った。十歳で五つ星のハンターだからと言って幸せかどうかは分からないものだ、エフィのように家族から虐待を受ける子どもだっているのだった。
「エフィ、元気になるといいな。オウガ」
「オウガ、お前は馬鹿か!?」
「やっぱり駄目か」
「違うんだよ、お前をダリルから引き取った時に、俺の養子にお前はもうなってるんだよ」
「……僕、ロンともう結婚してた」
「いや、結婚とは違うだろ!?」
首都テンプルムに戸籍を移すことになって、オウガがまた馬鹿なことを言いだした。一緒の戸籍も何も、もうオウガの戸籍は五年も前から、俺の養子として一緒の戸籍に入っていた。オウガは何故かそのことに物凄く感動していた、確かに男同士のカップルだと、同じ戸籍に入るにはどちらかの養子になるしかないらしかった。
「僕すっごく嬉しくて、今なら空も飛べそう」
「そんなに気にすることか? 俺の息子ってだけだぞ」
「それが嬉しいんだよ!! ねぇ、僕は奥さん? それとも旦那さん?」
「だからお前は養子だっつーの!?」
「強いていうなら、どっち!?」
「あー、それなら奥さんだろ。だって、俺は女の方が好きだし」
それからオウガは初めて会う人に俺の妻だって自己紹介するようになって、俺はそれを止めさせるのにとても大変だった。実際のところ一緒に住むようになると、オウガは掃除も洗濯も料理も完璧だった。俺が半分はやるって言っていても、いつの間にかオウガが先に全部の家事を済ませていた、俺は家賃を折半していることだけが救いだった。
「だから家事も俺がやるって言ってるだろ」
「だって、僕はロンの奥さんだから」
「首都では奥さんが全部家事をする、っていうのも珍しいらしいぞ」
「うん、知ってる。でも僕がロンの管理を全部したいんだ」
「だから……、ああ? なんだ?」
「女の子、十歳くらいか」
俺たちはいつものようにハンターギルドで訓練が終わったら、肩くらいの長さの金の髪に蒼い瞳の女の子が、あまり人気のない床に座り込んでいた。俺が素早くその様子を観察すると、どうやら女の子の下半身が血まみれだった。これはあれだ女にだけくる生理ってやつ、いきなり血が自分から出たから驚いたんだなと、俺はそう推測して俺が着ていた上着のシャツを脱いで女の子にかけた。
「どうしたちょっと血が出たのか?」
「……お腹が痛くなって、頭も痛くてそしたら血が出てた」
「よっし、それじゃ受付のお姉さんに助けて貰おう」
「……うっ、うん」
「名前はなんて言うんだ?」
「……エフィ」
それから俺はエフィを抱きかかえて受付のお姉さんのところへ行った、俺が簡単に事情を説明するとすぐに受付のお姉さんは、エフィと一緒に他の部屋に入っていった。もう一人の受付のお姉さんから俺とオウガは驚くことを聞いた、エフィは十歳でもう五つ星のハンターだった。天才だと言われていて、アビス退治の経験もあるそうだった。
「さっきはありがとう、えっと……」
「ロンだ」
「オウガです」
「勉強して知っていたけど、私実際になったら驚いて、ありがとう、ロン、オウガ」
「なぁに、大したことはしてねぇさ」
「そうそう受付のお姉さんに頼んだだけです」
「それでこのシャツ、血で汚れちゃったから洗って返すね」
「気にすんなよ、安物のシャツだ」
「そのまま返してもらっていいですよ」
そう言ってオウガは素早く俺のシャツを回収していた、エフィは何度もお礼を言ってくれて帰っていった。オウガはそれをにっこりと笑って見送って、俺のシャツをゴミ箱にいきなり捨てた。俺がそれ俺のお気に入りなんだけど、と抗議してみたら後で新品で返すと言われた。オウガにとっては十歳児の女の子でさえ、俺を狙っているライバルに見えるようだった。
「あのな、俺のお気に入りをいきなり捨てんなよ」
「でも血がついてたし、どうせ洗っても落ちなかったよ」
「それにしても、即座に捨てなくても」
「だから後で新品の同じ物を買って返すから」
「まぁ、それならいいか。しかし十歳で五つ星か」
「強力なライバル出現だね」
オウガは俺に近づく女は十歳児でもライバルなのだ、その後エフィとは運動場で姿を見る度に声をかけられた。父親はこの仕事に賛成しているらしいが、送り迎えをされているところは見たことがなかった。エフィは俺に懐いてくれた、戦闘訓練を一緒にしたいと言いだした。俺は武器あり狙撃なしの条件でエフィと訓練してみた、そうしたら筋は良いがいくつかなおすべき癖があった。
「すげぇなエフィ、十歳でここまでできれば大したもんだ」
「ありがとう、ロン」
「エフィ、お前は筋が良い。でも、いくつかなおした方が良い癖がある」
「本当? 教えてくれる?」
「ああ、まずは……」
「うん、うん」
こうして俺がエフィと話したり、訓練している間はオウガは筋トレをしていた。筋トレのマシンを壊すんじゃないかという強さだった、でもいくら訓練しても体質でオウガには筋肉がつかなかった。エフィは他にハンターの友達もいなくて、俺たちは三人で訓練することが増えた。オウガは家に帰ると俺に文句を言っていたが、エフィとの訓練を邪魔したりはしなかった。
「エフィと会うなとか言わないだけ、大人になったな。オウガ」
「……十歳で頼る大人がいない、少しだけその寂しさが分かるから」
「お前が十歳の時には俺がいただろ?」
「でも、最初に売春宿に売られた時には、僕はもう世界からいらない子なんだって思った」
「お前は絶対に世界に必要な男だよ、俺にとってはかけがえのないパートナーさ」
「うん、ロンにそう言って貰えると嬉しい」
俺はオウガの手を握り締めた、オウガがハンターでなければ今も一緒には居られなかった。養子として引きとっただろうが、俺とパートナーになることはなかっただろう、俺は俺たちがハンターで良かったとお互いに思って笑った。そんなある日のことだった、エフィが右頬を酷く誰かに叩かれてハンターギルドに来た、俺たちを見ると笑ったがそれは無理をしている顔だった。
「どうしたエフィ、この右頬は誰にやられたんだ?」
「氷を受付から貰ってきました、少し冷やしますね」
「…………お父さん、もっと稼いでこいって」
「エフィのお父さんは、こんなに強くエフィを叩くのか?」
「口の中も切っているようですね、これは虐待です」
「…………お酒を飲むと酷いことするの、この前は服を破られた」
「こりゃ、スーソルさんに相談が必要だな。エフィ、心配するな」
「スーソルさんを呼ぶように、受付のお姉さんと話してきます」
「お父さんを逮捕しないで!? お母さんが死んでからちょっと乱暴なだけなの!?」
すぐにスーソルさんはハンターギルドに来てくれた、そしてスーソルさんとエフィと二人だけで別室で話をしていた。やがてエフィは出てきた、少し泣いていたが何かを納得した顔をしていた。スーソルさんがとりあえずエフィを緊急保護すること、しばらくは彼女は孤児院に預かって貰うことになった。そしてエフィの父親の様子を見て、アルコール依存症の施設に入れることなどを説明してくれた。
「アルコール依存症の施設に入ったら、昔みたいなお父さんになるかもしれないって」
「そうか、それは良かったな。エフィ」
「孤児院からの行き帰り、気をつけてくださいね」
「ありがとう、ロン、オウガ。孤児院から誰かが必ず送り迎えして貰えるって」
「それなら心配ないな」
「寂しいでしょうけど、今は耐えてください。エフィ」
「うん、ロン、オウガ。本当にありがとう、また訓練しようね」
「ああ、待ってるぜ。エフィ」
「気をつけて、今は家には絶対帰ったら駄目ですよ」
こうして俺たちはエフィと別れた、エフィはどこかホッとした顔をしていた。父親からの暴力に耐えてきたのが、それがなくなることになって気が抜けたのだろうと思った。十歳で五つ星のハンターだからと言って幸せかどうかは分からないものだ、エフィのように家族から虐待を受ける子どもだっているのだった。
「エフィ、元気になるといいな。オウガ」
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