ここにおわすお方をどなたと心得る、俺を口説いている次期魔王様であるぞ!!

アキナヌカ

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09新たな仲間

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「無理はするなよ、俺のリオン坊ちゃん」

 そんな翌日のことだった、リオンがまたいきなり変なことを言いだした。朝食を摂った後、王太子室に俺、アクアとマリンを集めての会議になった。

「僕たち正義の味方だけど、もっと人を入れるべきだと思う!!」
「………………はぁ!?」
「おお、分かった。綺麗だけど忍びのお姉さんだ!!」
「いや、違うわよ。大男だけど忍びのお兄さんよ!!」

「そう、アクアとマリンが言ったとおりだ、僕たちを助けてくれる忍びの男女が必要だ」
「………………はぁ」
「やったぜ、心は優しくて大男を探してくるぜ!!」
「やったぁ、綺麗で聡明な美女を探してくるわ!!」

「それじゃ、アクアとマリン頼んだよ」
「………………本当に探す気なんだな」
「おう、絶対に良い男を見つけてくるぜ!!」
「はーい、凄く綺麗な美女を見つけるわ!!」

 そうして朝の会議は解散した、確かにぽーたぶるでぃぶいでぃぷれいやーでは正義の味方、彼らを助ける隠密二人も存在していた。しかし、本当にリオンが彼らを探すとは思わなかった。一体どういう悪魔族を探してくるつもりだろうか、俺はアクアやマリンのことが心配で仕方がなかった。

「見つけてきたよ」

 そしてまず見つかったのは”綺麗だけど忍びのお姉さん”だった、マリンが娼館をいくつもまわってそして見つけてきたのだった。長い黒髪と吸い込まれそうな綺麗な黒い瞳の女性で、年は二百歳くらいで名前はサギリといった。

「夫は石工でしたが事故で死にました、私も兵隊の一人でしたが、たった一人の娘が病気になりました。私ではとても払えない高額の治療代が欲しくて、娼館で働こうとしていたのです」
「それじゃ、もし娘さんの病気を治せたら、何でもしてくれるかな?」

「そんなことができるのなら、もちろん何でも致します。この身をかけて命がけで、一生懸命に働かせて貰います!!」
「よし、それじゃ娘さんの病気を治そう」

 そう言ってリオンは出かけていって、リオンの魔法『大いなるラージスケール浄化の光ピュアフュケーション』で娘さんの病気を治してしまった。サギリさんは涙を流して喜んで、二人の母娘は抱きしめ合った。

「母さん、どこも苦しくなくなったわ!!」
「ああ、良かった。本当に良かった!!」

 そして元気になった娘さんとしばらく過ごして、それからサギリはリオンの為に忍びとして働くことになった。

「見つかったぜ!!」

 そして次にアクアが見つけてきたのは”心は優しい大男で忍びのお兄さん”だった、アクアはフライハイト国に無いはずの『貧民街スラム』に通ってそうして見つけてきたのだった。黒髪に紫の瞳をした大男で、年は三百歳くらい名はラザルといった。

「『貧民街スラム』の顔役の俺を誘拐するとは力のある坊主だぜ、だが俺は『貧民街スラム』の顔役だ、こんな国の為に働くもんか!! それよりも『貧民街スラム』を守る方が忙しいんだ!!」
「それじゃ、その『貧民街スラム』を普通の街にできたら、何でもしてくれるかな?」

「そんなことができるんならなんでもしてやるぜ、『貧民街スラム』には死にかけた子どもや手足の無い奴らが集まって細々と生きているんだ!!」
「まずその『貧民街スラム』を管理している地区の役人をしめあげよう、フライハイト国には『貧民街スラム』は無かったはずだから必ず横領をしているな」

 そう言ってリオンは『貧民街スラム』の地区の役人を捕まえて、彼の仕事場と家を徹底的に調べさせたそうしたら案の定、横領の証拠が山ほど見つかった。ラザルにもその様子を見せて、また『貧民街スラム』にいた地区の病人や手足のない怪我人をリオンは治してしまった。

「ラザル、すまない。今回は不正を働いていた役人を見逃していた僕の責任だ、本当にすまなかった」
「………………」

 そしてリオンはラザルに頭を下げて謝った、『貧民街スラム』ができた原因は役人にあったと謝った。するとラザルは『貧民街スラム』の仲間のもう普通に動けるようになった様子を確認して、それからリオンの為に忍びとして働くことになった。

「それじゃ、まずコレを見てね!!」

 そう言ってサギリとラザルはリオンのぽーたぶるでぃぶいでぃぷれいやーの映像を見せられた、そしてリオンと双子たちから中身の説明をいっぱい受けていた。俺は多分彼らが呆れると思っていたが、サギリもラザルも笑っていた。本気で正義の味方になりたがっているリオンたちを、サギリとラザルは本当に悪を討つためだけに動いているのだと感動さえしていた。こうして俺たちには二人の仲間ができた、基本的にサギリはメイドを、ラザルは侍従をすることになった。そして、いざという時には忍びとして動いて貰うそうだ。

「サギリはいいのか、リオンと正義の味方ごっこをしてもいいのか?」
「私の娘はリオン様のおかげで助かりました、その代わりにこの命をかけてお仕え致します」

「ラザルはいいのか、リオンと正義の味方ごっこをしてもいいのか?」
「ああ、俺がいた『貧民街スラム』はあいつのおかげで助かった。しかもあいつは俺に謝った、次期国王さまが『貧民街スラム』の住人に謝ったんだぜ。面白いから命をかけて、最後まであいつが正義を貫けるか手伝ってやる」

 こうして俺たちには新しい仲間が二人できた、俺からすれば物好きだと思うが二人とも本気でリオンに仕えるつもりだった。そんな二人のおかげで城内での話が、リオンのところまで届くようになった。サギリは美人だが気さくな性格をしていて、城内のメイドたちと一緒にお喋りして情報を集めてきた。ラザルは大男だが気の良い男で、相手につい口を滑らせるのが上手かった。

「サギリもラザルも良い仲間だね!!」
「リオンはよくサギリを仲間にしたな」

「えっ!? どうして?」
「俺がサギリの惚れちまうかも、とか思わなかったのか?」

「それなら、大丈夫。クロは亡くなった旦那さんを想う未亡人に惚れたりしないよ」
「ああ、まぁな。確かに死んでいても、好きな相手がいる女には手は出さねぇな」

 そうやってカシードル国が属国になった後始末も済んだ頃だった、またリオンが正義の味方ごっこの候補地を探し始めた。するとエガルテ国でまた悪い役人がいるようだった、リオンは目を輝かせてフライハイト国の城を後にして、新しい仲間も一緒にエガルテ国に向かった。

「――――――以上が貴様の起こした罪である、証拠も揃っておりエガルテ国の法で貴様は裁かれることになる」
「こいつらを殺せぇ!!」

 いつもどおりの下調べをしたから悪党の館に俺たちは乗り込んだ、そうしたら悪党のすることも一緒だった。俺とアクアやマリン、それにサギリとラザルも戦った。サギリは身が軽くて素早い攻撃が得意だった、ラザルは豪快に人一人を空中に放り投げた。そしてアクアの出番となる、リオンは目を輝かせていた。

「静まれ、静まれ、このフライハイト王家の証である紋章が目に入らぬか!!」

 アクアが大きな白い虎から白い髪に金色の瞳の人間に変身して、我がフライハイト王国を象徴する証、宝石や希少金属でできた紋章を目立つように掲げていた。悪党どもは一斉に動くのを止めた、その目は紋章に釘付けだった。そして次はマリンの出番だ、リオンがわくわくとマリンのセリフを待っていた。

「ここにおわすお方をどなたと心得る。 恐れ多くも今のフライハイトの次期国王リオン・フライハイト様にあらせられるぞ!!」

いつもどおりのマリンのセリフに、珍しくいつもとは違う反応が返ってきた、その悪党はマリンをせせら笑って言うことを聞かなかったのだ。

「わはははははっ、皆、殺せぇ!! フライハイト国の次期国王がこんなところにいるものかぁ!?」
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