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05人狼族の女は立ち入り禁止
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「それじゃ、今日のお茶会は終わりにしよう」
「いえ、リオン殿下。もう一人ご令嬢がいますよ」
俺は公式の場だから敬語を使ってリオンに話しかけた、一番端のテーブルの隅っこに長い黒髪に茶色い目をした令嬢がいた。リオンは顔はにっこりと笑顔で、でも内心は面倒くさいのだろう、その長い黒髪と茶色い目をした令嬢に話しかけた。
「ご令嬢、貴女の得意なことは何かな?」
「私はシーラ男爵令嬢と申します、得意なのは舞です。いまからお目にかけます!!」
その最後に残っていた男爵令嬢はそう言うとドレスを脱いで、あっという間に中庭に飛び出していってしまった。そこで舞っていたシーラという少女は美しかった、こちらの世界ではとても珍しい舞をみせてくれた。風のように薄い衣で舞う彼女は天女のようだった、そして美しく舞い終わるとシーラ男爵令嬢はこう言いだした。
「リオン殿下、どうか私を側室にしてください。側室になれなければ私の家は崩壊し、私はどこにも行くところがなくなってしまうのです。どうか、どうか」
リオンは珍しくシーラという少女の舞を最初から最後まで見ていた、これはもしかしてリオンにこの少女は気に入られたのかもしれなかった。そうしてリオンはしばらく黙りこんで考えてから、やがてとても優しくだが静かな声でこう言いだした。
「シーラ男爵令嬢、この国には働く場所はいくらでもある。行くところがないというが、必ずどこかで仕事が見つかるだろう。君の未来に良き出来事がありますように」
「そんなっ!? 殿下!?」
リオンの言う通りこの国、魔国はよく統治されているから仕事は無数にあった。舞はできなくなっても食べていくだけなら仕事がある、リオンにその気が無いならわざわざ後宮に入れてやる必要はなかった。
「それじゃ、今度こそ今日のお茶会は終わりにしよう」
「リオン殿下!! どうぞお慈悲を!!」
シーラという男爵令嬢が悲鳴のように声を上げていたが、今日のお茶会はここまでとなった。俺は珍しい舞が見れたなと思ったが、シーラという男爵令嬢のこの先については口出ししなかった。仮に最悪な話だが彼女が娼婦になったとしても同情はできなかった、そんな俺にリオンはやっと終わったと体を預けてきた。俺はリオンをお姫様抱っこして、後宮にある王太子の部屋に戻っていった。
「珍しい舞だったな、リオン」
「むー、クロは他の女の話なんかしちゃ駄目!!」
「それじゃ、リオン。俺はいつになったら結婚できるんだ?」
「クロがその気になれば、明日にでも僕と結婚できるよ」
「お前以外の女との結婚だ」
「クロも僕を見捨てていくの、そんなこと絶対させない」
そういうとリオンは俺をベッドに押し倒した、そしてキスをしようとするものだから、俺はそれを右手で優しく遮って止めさせた。するとリオンがポロポロと涙を零して泣き出してしまった、俺はリオンを抱きしめて安心させようとした。
「クロは、ひっく、どこにも、ひっく、行かないよね」
「未来のことは簡単に約束できない、明日にでも俺は好みの人狼族の女に出会うかもしれない」
「やだ、ひっく、クロが、ひっく、どこか行っちゃ、ひっく、やだぁ!!」
「リオン仕方がないだろ、未来のことは誰にも分からない」
「クロが、ひっく、いなくなったら、ひっく、魔国なんて、ひっく、滅ぼしてやるもん!!」
「お前が言うとそれは冗談にならないからなぁ、俺はまだここにいるよ。リオン、ここにいるから泣き止んでくれ」
それから夜になるまで俺はリオンを慰めた、リオンは俺にしがみついて離れなかった。そのまま俺たちは一緒に眠った、リオンは涙を零しながら眠りについた。リオンをこんなに泣かせて悪いが未来は本当に誰にもわからない、俺に人狼族の好きな女が本当に突然できるかもしれなかった。そして翌日、リオンは泣きはらした目で起きてきた、そしていきなりこんな法律を作った。
”リオン殿下がいる間、人狼族の女は城内に勝手に立ち入らないこと”
これで俺が人狼族の魅力的な女性と出会える機会はぐんと減った、俺は普段からリオンの傍にいて一人で街に行くことは、休日くらいでほとんどないに等しかった。あと外に出る機会といえば正義の味方ごっこの時くらいだが、その時もリオンと一緒に行動するから俺が魅力的な人狼族の女と出会える確率は低かった。
「ちょっとやりすぎじゃないか、リオン?」
「本当は城内の女性はマリン以外、全員立ち入り禁止にしてやりたい」
「それはさすがに反対が多くでるから人狼族の女だけか、この法律で迷惑をこうむる部下は?」
「いない、人狼族の女は今のところ臣下として雇っていない。これから採用になった場合は他の仕事をしてもらうだけだよ」
「それならいいか、誰にも迷惑はかからんからな」
「クロは女なんか見ないで!! 僕だけを見ていてよ!!」
俺は朝からそう言ってまた抱き着いてくるリオンをよしよしと抱きしめて宥めた、やがていつもどおりに双子と来て小食堂へ行って、普段と何も変わらない朝食の風景になったはずだった。
「クロはいつリオン様と結婚するんだ?」
「わぁ、あたしもそれ知りたいー!?」
「………………俺の予定にはまだそれはないな」
「なんだよー!! クロはリオン様が好きだろー!!」
「そうよ、他の魔族より明らかに特別扱いだわ!?」
「………………確かに俺にとってリオンは特別だけどな」
「それならさっさと結婚しろよ!!」
「そうしないとリオン様を他にとられちゃうわよ!!」
「………………前向きに検討する」
俺は双子からご飯を食べながらリオンとのことを問い詰められた、そうは言われても確かにリオンはもう特別な悪魔だが、俺の好みはできることなら人狼族の女のほうがいいのだ。俺は前向きに検討すると言って双子を誤魔化したが、リオンが前向きに検討と聞いて顔を真っ赤にしてしまっていた。
「クロ前向きに検討してくれるの?」
「そう言っただろ」
「うん!? 僕も頑張る!!」
「何を頑張るんだ、何を」
「いろいろと考えてみる」
「結果が出たら教えてくれ」
そうして俺たちは日常に戻っていった、ちょっと朝のリオンの食事のキスが濃厚になったりしたが、普段どおりの日々が流れていった。リオンはまた成敗すべき悪を書類から見つけ出したりして、そして正義の味方ごっこをするのもいつものことだった。
「静まれ、静まれ、このフライハイト王家の証である紋章が目に入らぬか!!」
ここで悪党どもは大抵、驚きのあまりに体が動かなくなる、いきなりフライハイト国なんて出てくるから当然だ。
「ここにおわすお方をどなたと心得る。 恐れ多くも今のフライハイトの次期国王リオン・フライハイト様にあらせられるぞ!!」
そして止めにリオンの素性を相手に教える、これでもう相手は抵抗する気がなくなるのだった。フライハイト国の属国で、リオンに逆らえる者はいなかった。こうして悪は滅び去り、リオンは満足して、フライハイト国の城に戻って俺たちは休むのだった。そんな日々の翌日のことだった、リオン相手に客がやってきた。無視するのもちょっと問題があった、だからリオンに謁見の間でその客に会って貰った。
「ああ、リオン。私よ、お母さんよ!!」
やってきたのはリオンと同じ長い銀髪と蒼い目をした女性だった、年は人間でいう三十歳くらいに見えて分からなかった。その女性が謁見の間の階段をリオンめがけて走り出した、俺は敵という可能性が高いからリオンを庇ってその女を近づけさせなかった。
「ああ、どうしてリオン!? 私よ、本当のお母さんなのよ!!」
「いえ、リオン殿下。もう一人ご令嬢がいますよ」
俺は公式の場だから敬語を使ってリオンに話しかけた、一番端のテーブルの隅っこに長い黒髪に茶色い目をした令嬢がいた。リオンは顔はにっこりと笑顔で、でも内心は面倒くさいのだろう、その長い黒髪と茶色い目をした令嬢に話しかけた。
「ご令嬢、貴女の得意なことは何かな?」
「私はシーラ男爵令嬢と申します、得意なのは舞です。いまからお目にかけます!!」
その最後に残っていた男爵令嬢はそう言うとドレスを脱いで、あっという間に中庭に飛び出していってしまった。そこで舞っていたシーラという少女は美しかった、こちらの世界ではとても珍しい舞をみせてくれた。風のように薄い衣で舞う彼女は天女のようだった、そして美しく舞い終わるとシーラ男爵令嬢はこう言いだした。
「リオン殿下、どうか私を側室にしてください。側室になれなければ私の家は崩壊し、私はどこにも行くところがなくなってしまうのです。どうか、どうか」
リオンは珍しくシーラという少女の舞を最初から最後まで見ていた、これはもしかしてリオンにこの少女は気に入られたのかもしれなかった。そうしてリオンはしばらく黙りこんで考えてから、やがてとても優しくだが静かな声でこう言いだした。
「シーラ男爵令嬢、この国には働く場所はいくらでもある。行くところがないというが、必ずどこかで仕事が見つかるだろう。君の未来に良き出来事がありますように」
「そんなっ!? 殿下!?」
リオンの言う通りこの国、魔国はよく統治されているから仕事は無数にあった。舞はできなくなっても食べていくだけなら仕事がある、リオンにその気が無いならわざわざ後宮に入れてやる必要はなかった。
「それじゃ、今度こそ今日のお茶会は終わりにしよう」
「リオン殿下!! どうぞお慈悲を!!」
シーラという男爵令嬢が悲鳴のように声を上げていたが、今日のお茶会はここまでとなった。俺は珍しい舞が見れたなと思ったが、シーラという男爵令嬢のこの先については口出ししなかった。仮に最悪な話だが彼女が娼婦になったとしても同情はできなかった、そんな俺にリオンはやっと終わったと体を預けてきた。俺はリオンをお姫様抱っこして、後宮にある王太子の部屋に戻っていった。
「珍しい舞だったな、リオン」
「むー、クロは他の女の話なんかしちゃ駄目!!」
「それじゃ、リオン。俺はいつになったら結婚できるんだ?」
「クロがその気になれば、明日にでも僕と結婚できるよ」
「お前以外の女との結婚だ」
「クロも僕を見捨てていくの、そんなこと絶対させない」
そういうとリオンは俺をベッドに押し倒した、そしてキスをしようとするものだから、俺はそれを右手で優しく遮って止めさせた。するとリオンがポロポロと涙を零して泣き出してしまった、俺はリオンを抱きしめて安心させようとした。
「クロは、ひっく、どこにも、ひっく、行かないよね」
「未来のことは簡単に約束できない、明日にでも俺は好みの人狼族の女に出会うかもしれない」
「やだ、ひっく、クロが、ひっく、どこか行っちゃ、ひっく、やだぁ!!」
「リオン仕方がないだろ、未来のことは誰にも分からない」
「クロが、ひっく、いなくなったら、ひっく、魔国なんて、ひっく、滅ぼしてやるもん!!」
「お前が言うとそれは冗談にならないからなぁ、俺はまだここにいるよ。リオン、ここにいるから泣き止んでくれ」
それから夜になるまで俺はリオンを慰めた、リオンは俺にしがみついて離れなかった。そのまま俺たちは一緒に眠った、リオンは涙を零しながら眠りについた。リオンをこんなに泣かせて悪いが未来は本当に誰にもわからない、俺に人狼族の好きな女が本当に突然できるかもしれなかった。そして翌日、リオンは泣きはらした目で起きてきた、そしていきなりこんな法律を作った。
”リオン殿下がいる間、人狼族の女は城内に勝手に立ち入らないこと”
これで俺が人狼族の魅力的な女性と出会える機会はぐんと減った、俺は普段からリオンの傍にいて一人で街に行くことは、休日くらいでほとんどないに等しかった。あと外に出る機会といえば正義の味方ごっこの時くらいだが、その時もリオンと一緒に行動するから俺が魅力的な人狼族の女と出会える確率は低かった。
「ちょっとやりすぎじゃないか、リオン?」
「本当は城内の女性はマリン以外、全員立ち入り禁止にしてやりたい」
「それはさすがに反対が多くでるから人狼族の女だけか、この法律で迷惑をこうむる部下は?」
「いない、人狼族の女は今のところ臣下として雇っていない。これから採用になった場合は他の仕事をしてもらうだけだよ」
「それならいいか、誰にも迷惑はかからんからな」
「クロは女なんか見ないで!! 僕だけを見ていてよ!!」
俺は朝からそう言ってまた抱き着いてくるリオンをよしよしと抱きしめて宥めた、やがていつもどおりに双子と来て小食堂へ行って、普段と何も変わらない朝食の風景になったはずだった。
「クロはいつリオン様と結婚するんだ?」
「わぁ、あたしもそれ知りたいー!?」
「………………俺の予定にはまだそれはないな」
「なんだよー!! クロはリオン様が好きだろー!!」
「そうよ、他の魔族より明らかに特別扱いだわ!?」
「………………確かに俺にとってリオンは特別だけどな」
「それならさっさと結婚しろよ!!」
「そうしないとリオン様を他にとられちゃうわよ!!」
「………………前向きに検討する」
俺は双子からご飯を食べながらリオンとのことを問い詰められた、そうは言われても確かにリオンはもう特別な悪魔だが、俺の好みはできることなら人狼族の女のほうがいいのだ。俺は前向きに検討すると言って双子を誤魔化したが、リオンが前向きに検討と聞いて顔を真っ赤にしてしまっていた。
「クロ前向きに検討してくれるの?」
「そう言っただろ」
「うん!? 僕も頑張る!!」
「何を頑張るんだ、何を」
「いろいろと考えてみる」
「結果が出たら教えてくれ」
そうして俺たちは日常に戻っていった、ちょっと朝のリオンの食事のキスが濃厚になったりしたが、普段どおりの日々が流れていった。リオンはまた成敗すべき悪を書類から見つけ出したりして、そして正義の味方ごっこをするのもいつものことだった。
「静まれ、静まれ、このフライハイト王家の証である紋章が目に入らぬか!!」
ここで悪党どもは大抵、驚きのあまりに体が動かなくなる、いきなりフライハイト国なんて出てくるから当然だ。
「ここにおわすお方をどなたと心得る。 恐れ多くも今のフライハイトの次期国王リオン・フライハイト様にあらせられるぞ!!」
そして止めにリオンの素性を相手に教える、これでもう相手は抵抗する気がなくなるのだった。フライハイト国の属国で、リオンに逆らえる者はいなかった。こうして悪は滅び去り、リオンは満足して、フライハイト国の城に戻って俺たちは休むのだった。そんな日々の翌日のことだった、リオン相手に客がやってきた。無視するのもちょっと問題があった、だからリオンに謁見の間でその客に会って貰った。
「ああ、リオン。私よ、お母さんよ!!」
やってきたのはリオンと同じ長い銀髪と蒼い目をした女性だった、年は人間でいう三十歳くらいに見えて分からなかった。その女性が謁見の間の階段をリオンめがけて走り出した、俺は敵という可能性が高いからリオンを庇ってその女を近づけさせなかった。
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