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02正義の味方の日常

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「むー、ちょっと味見したかったのに」
「味見なんてこっそりするな、堂々と食事がしたいと言えばいいだろ」

「それだとクロはキスしてくれるけど、義務的でつまんないんだもん」
「いいから、食っとけ」

 そう言って俺はインキュバスのリオンにキスしてやった、するとすぐにリオンに抱きしめられて舌をいれられた、一見すると恋人同士のようだがこれはリオンの食事なのだ。リオンはインキュバスだからセックスを介した食事が良いのだが、俺もさすがにそれはできないので毎日キスでリオンに食事をさせているのだ。

「……どうだ、満腹になったか?」
「むー、お腹はいっぱいだけど心が空腹。ねぇ、クロ。がっつりセックスしてよ」

「あいにく俺は女しか相手したくない」
「大丈夫だって、男も女も大して変わりはないよ」

「男と女じゃ大違いだ、ほらっ普通の飯を食いに行くぞ」
「クロのケチっ!! 一回でも僕の相手をすれば、凄く気持ち良いのが分かるのに」

 俺たちはそれからそれぞれ着替えて小食堂にいった、俺は近衛兵の制服でリオンはひらひらした私服を好きに着ていた。インキュバスのリオンに普通の食事は質は落ちる、でも食べればいくらかの力にはなるのだ、それに遅れてアクアとマリンの双子もやってきた。

「やったぜ、俺様の大好きなホットケーキ!! 蜂蜜もえいっ!!」
「ああ、あたしもホットケーキ好きなんだから!! 蜂蜜残しておいてよ!!」
「二人とも喧嘩しなくても蜂蜜は山ほどあるぞ」
「クロのいうとおりだよ、足りなかったらまた運ばせればいいさ」

 リオンはいまや次期国王だ、本来なら俺たちは一緒に食事などできない、でもリオンが寂しがるのでこうして一緒に食事をとっているのだ。王家のパーティーなどがない限り、それが俺たちの日常だった。食事が終わったらリオンは執務に、俺はリオンの護衛に、そしてアクアは侍従に、マリンはメイドの仕事をするようになっていた。

「魔国の方の書類には不備はないね、でも属国の方の書類はいろいろとありそうだ」
「正義の味方ごっこの候補か?」

「そうだよ、いや~面白いくらいに上手く数字を誤魔化してるけどこれは怪しい、これも、この書類もだな」
「リオンの努力は凄いんだが、それを向ける方角が間違っている気がする」

「ええっ!? 僕は日々正義の味方になるために努力しているんだよ!!」
「そうか、だが今夜は王家主催のパーティがあるぞ。正義の味方ごっこはお預けだ」

 パーティと聞いてリオンは頭をゴンッと机の上に乗せて突っ伏した、リオンは魔国の貴族たちのパーティが大嫌いだ。貴族たちから綺麗な男や女を愛玩用に薦められるし、相手が善良な魔国の貴族では正義の味方ごっこもできないからだ。俺はよしよしとその頭を撫でてやり、リオンが片付けた書類を整理して置いておいた。やがて侍従であるアクアがやってきて、そんな書類たちをそれぞれの部署へと届けに行った。

「また男や女の側室を薦められるんだ、面倒くさいよ!?」
「仕方ないだろう、お前は次期国王なんだから」

「僕にはクロがいればそれで良いのに、クロ!! 僕の一番近くで護衛してよ!!」
「ああ、分かっている。しかし、なんでお前はそんなに俺が好きなんだ?」

 俺がそう聞くとリオンは顔を真っ赤にして黙ってしまった、リオンは俺のことが好きだ愛してるというわりに、俺が聞いてもその理由は教えてくれなかった。少しばかり気になるがリオンはそれから黙々と書類仕事をこなしていた、俺は書類の整理を手伝ったりしながらリオンの護衛を一人でこなした。時々書類の端に紙がいれてあり解決する前に報告すること、そう書かれていてリオンの正義の味方ごっこ用の書類だな、そう俺は思ったがため息を吐くだけにしておいた。そして、夜はリオンの嫌いな王家のパーティだった。

「リオン殿下、美しい薔薇を見に中庭へ行かれませんか?」
「お断りします、薔薇ならクロと一緒に見たいので」

「リオン殿下、この者を侍従にいかがですか?」
「クロの方がカッコいいのでいりません」

「リオン殿下、この子を側室にいかがですか?」
「夜もクロが相手してくれるので結構です」

「リオン殿下……」

 そうしてパーティでは王族からの形式的な挨拶がすむと、リオンは臣下の貴族に追いかけまわされていた。そして、案の定だが綺麗な男性や女性を傍におくように薦められていた。しかし、リオンがその献上される男女を断る言い訳、それに俺を使うので俺は貴族たちから睨まれていた。俺は仕事なんだ仕事だからと思ってその視線に耐えていた、世間ではリオンの愛人は俺ということになっている、実際は違うのだがそうなってしまっているのだから仕方がなかった。

「それでは楽しい宴だったが、そろそろ終わりにするとしよう」

 こうして俺はリオンを守りつつ、針の筵のようなパーティを終えた。終わったらリオンは王太子の部屋のベッドに突っ伏していた、俺はそんなリオンの服を脱がせて風呂に放り込んだ。そして俺自身も裸になってロングソードだけは手放さずに、ぐったりとしているリオンの風呂の世話をした。そうしてリオンに寝衣を着せて、俺も寝衣をきてお風呂から出たらアクアとマリンがいた。二人はパーティ中ほとんど食べることができない俺たちに、軽食と軽い飲み物を用意してくれていた。

「ああ、僕たちの為にありがとう。アクア、マリン」
「二人とも偉いな、このジュースは美味い」
「俺様は気がきくからな!!」
「もうアクアったら、それっあたしが選んだジュースだよ!!」

 そうして軽い食事が終わったらアクアもマリンも自室に戻っていった、そして俺とリオンも寝ることにしたのだがこういう時のリオンはしつこかった。

「ねぇ、クロ。ちょっとだけでもセックスを試させて」
「駄目だ、ちょっとなんて曖昧なことできん」

「それじゃ、クロが僕を腰がぬけるまで抱いて」
「おい、それのどこがちょっとなんだ?」

「最終的にはそこまでいきたいなぁって思ってるから」
「結局がっつりセックスになるんじゃないか!?」

 俺は酒の影響もあってか俺に抱かれたがってぐずるリオンをなんとか宥めて、そうしていつもどおりに二人で一緒にベッドで眠りについた。リオンから首筋や鎖骨あたりにキスをされたが、このくらいで俺の貞操が守れるのならば問題ないだろう、そうしてよくリオンが眠った日の翌日の朝だった。

「クロ、おはよう。お腹が空いた、キスさせて」
「おはよう、リオン。ああ、いいぞ」

 俺からキスの許可をとると朝からリオンが濃厚なキスをしてきた、俺はそのエロいキスに思わず勃起しそうになったが、これは食事だから食事だ食事と心に言い聞かせて乗り切った。

「朝から濃厚なキスをどうも、リオン。腹はいっぱいになったか?」
「お腹はいっぱいだけど、やっぱり心が空腹」

「それは俺にはどうしようもできん」
「できるよ、ちょっと僕を抱きしめて『リオン、愛してる』って言うだけで良いんだよ」

 そう言ってリオンがいつまでもベッドを出ようとしないので、俺は優しくリオンを抱きしめてこう囁いた。

「リオン、お前は大切な仲間だ。俺の好きなリオン坊ちゃんさ、機嫌をなおしてさぁ飯を食おう」
「…………………クロはもうズルいんだから!!」

 リオンは俺にとっては弟みたいなものだ、大切な仲間だ、そして小さい頃から一緒に遊んだリオン坊ちゃんという子どもだ。俺が友人としてリオンが好きだと伝えると、リオンは不満そうな顔をしながらも耳は赤くなっていた。そしてアクアやマリンと小食堂に行き、俺たちはいつもどおりに朝食を食べ始めた。何も変わらない普段通りに俺たちの日常だった、そんな日々が一週間ほど続いたある日のことだった。リオンがまたにっこりと良い笑顔で俺たちにこう言った。

「次の悪が見つかった、それを退治しに行こう!!」
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