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女神の加護 ~強すぎる女神の加護で大変でした~
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僕の世界はいつもどこかおかしかった、僕はウィル・トゥーデ・ファウケース。第一王子として生まれ王太子として大事にされていた、茶色い髪に同じ色の瞳を持った僕は誰にでも愛された。僕は愛の女神アモルの加護を生まれつき貰っていた、でもこの愛の女神の加護が僕の周囲の皆をおかしくした。僕は何をやっても許された、二歳下のザインという弟は許されないのにだ。僕だけは何をしても許されて、褒められて僕は王太子に必要な授業をちゃんと学ぶことさえできなかった。
「国王陛下、王妃陛下。これは私トレア・カントラデ・デクシオンの一存によるもの我が家とは別にお考えください、これが格式ある王家のお茶会でしょうか? 少々ウィル殿下をご自由にさせすぎではありませんか?」
「まぁ、ウィルは可愛いから」
「そうよね、可愛いもの」
「可愛い、可愛いと甘やかすだけではウィル殿下のためになりません、外国の使者の方がこの光景を見たら何と思うでしょう、まだ弟君であるザイン殿下にできていることです、ウィル殿下にも必ずできるはずです」
「………………」
「………………」
そんな僕が五歳になって王太子妃候補の集まるお茶会で、僕のことを初めてちゃんと見て注意してくれる女の子が現れた。それは白い髪の金色の瞳を持つ少女だった、僕がその時どんなに嬉しかったかは言い表せない、そのくらい彼女のことが僕にとっては衝撃的なことだった。トレア・カントラデ・デクシオンなんて綺麗な名前なんだろう、それで僕は父上や母上に久しぶりにおねだりをした。
「父上、母上、僕この子が気に入ったよ」
「おお、そうか。ウィル」
「まぁ、それならこの子を王太子妃にしましょう」
「父上、母上、僕は今日からずっとこの子といたい」
「それでは特別に王太子妃として後宮に迎えよう」
「まぁ、ウィルのおねだりなんて久しぶりね」
そう僕の周囲はこのくらいおかしいのが当たり前だった、僕がねだれば父上も母上もなんだってくれた。逆に僕が文句を言えばその人は投獄されそうになった、だから僕は今までまともに話せる友達なんて諦めていた、きっとどんな人とも話し合えることはないと思っていた。でもトレアというその女の子は僕の方を驚いた顔でみていた、彼女のそんな顔もとても可愛かった。
「トレア、王太子妃の部屋に入っていいかい?」
「よくいらっしゃいました、ウィル殿下」
「君のようにまともに話せる子を初めて見たよ」
「他の方とはお喋りできないのですか?」
「僕が何をしても、僕が正しくて他が間違ってるんだってさ」
「ウィル殿下、よくぞ今までお優しい心を守られました。貴方は一人でずっと頑張ってきたのですね」
そういうとトレアは僕の向かって頑張られました、周囲に流されずご自分のお心を守られました、そうして僕のことを優しく抱きしめてくれた。僕は初めて同い年の女の子に抱きしめられて、頬が赤くなったそれは喜びと安堵からくる心地よさだった。この子だけは本当の僕を見てくれる、僕は絶対にトレアを手放したくなくなった。
それから情けない話だったけど、トレアにとある質問をしてみた、そうしたら彼女は怒って僕の為を思って動いてくれることになった。僕が彼女に話したのは僕の侍女たちのことだった、皆が夜になるとこっそり僕の体を触りに来るのだ、僕には閨のお勉強ですと彼女たちは言っていた、でも僕にはそれが正しいのかどうかも分からなかったのだ。
トレアは僕のクローゼットに隠れて、侍女がくるのを待った。そうしたら案の定侍女の一人がやってきて、僕にこれは閨のお勉強ですよと言った、そうして僕の服を脱がせたり、素肌を触ったりしはじめたので僕は気持ちが悪くて仕方がなかった。でも今夜の僕には味方がいた、トレアがすぐに部屋を飛び出していって近衛兵を呼んできてくれた。
「近衛兵!! 中に入って!? ウィル殿下を助けて!!」
「トレア、トレア!? 凄く怖かったよ。凄く気持ち悪かったよ」
「きゃあああ、わっ、私はただの侍女です!!」
「もう大丈夫です、ウィル殿下!!」
「ああ、トレア。君は体は温かいね」
「私はただの侍女です、ウィル殿下付き侍女です」
すぐに父上にも母上にも僕が性的虐待を受けていたことが伝わった、母上は抱きしめて慰めてくれたけれど、僕はトレアの腕の中の方が心地良いと思った。それで僕に閨のお勉強を教えてようとした侍女たちは全て捕らえられた、僕には一人もまともな侍女が残らなかった。それでトレアが良い案を出してくれた、僕の世話は僕と同じくらい年齢の侍従にさせることになったのだ。
「ウィル殿下に必要なのは同じ年くらいで、既にマナーを学んでいる侍従です」
僕よりあまり年上過ぎてもいけない、僕の愛の女神の加護は何をしでかすか分からなかったからだ。そうして侍女から侍従に変わっただけで、僕は随分と気持ちが楽になった。もう涎をたらした狼のような女性に襲われなくていいのだ、それに僕とトレアは一緒に勉強することになった、すると今までウィル殿下は素晴らしいですしか言わなかった教師が、トレアに注意されてまともな授業をしてくれるようになった。
「トレア、僕嬉しいよ!! これでやっと僕も勉強ができる!!」
「ウィル殿下が嬉しいなら私も嬉しいです、私もこれからの授業が楽しみです!!」
「ねぇトレア、そろそろ僕のことをウィルって呼んでくれない?」
「王族を敬称なしで呼ぶのは不敬ですので、愛称としてウィル様でよろしいですか」
「うん、それでいいよ。それじゃあ、次は剣の稽古だっけ?」
「そうですわ、私はこれが楽しみなんです」
剣をもったトレアは恐ろしいほどの速度で動き、王家の教師ですら簡単に倒すことができなかった。僕の見学くらいかなという予想を裏切って彼女はとても強かった、聞けばトレアも戦いの女神であるアルシュの加護を貰って生まれてきたそうだ。彼女にとって剣は戦う手段であり、ただの飾り物ではなかった。僕は努力しようと思った、初めてトレアに勝ちたいとも思った。
「トレアはすごく強いね、僕も君みたいに強くなりたい」
「今からいくらでもウィル様は強くなれなます、それに男性です」
「性別が剣術に影響するの?」
「私の剣は速さはありますが、肝心の力がありません。いずれウィル様は力を持った男性になります、そうなったら私はおそらく勝てないでしょう」
「そうなったら僕がトレアを守る、僕は君のこと大好きだ」
「ふふっ、ありがとうございます」
僕は言葉にして初めてトレアのことが大好きだと気づいた、今まで愛の女神の加護に振り回されて生きてきた僕には初めての感情だった。トレアとだったらまともな話ができた、そうして彼女に怒られた時には僕は落ち込んだ、逆に褒められた時には僕は心から喜べた。トレアは僕にとってとても大切な女の子で、将来は結婚するのだと思ったら嬉しくて堪らなかった。
「さぁ、次の授業に参りましょう。ウィル様」
「分かった、トレア」
「次は難しそうです、政治学です」
「難しいけど、一番必要でもあるね」
「そうです、ウィル様は次の王なのですから」
「分かった、できるだけ頑張るよ」
そうやってトレアと僕は一緒に過ごしていった、彼女がいるおかげで僕はまともな授業が受けれた。もうお茶会で非常識に走り回るようなことはしなかった、同時に大きくなるにつれて僕はトレアを好きだという気持ちも大きくなっていった。トレアのためなら何だってできた、彼女を失わない為ならなんだってやるつもりだった。
「兄上はずるい、あんなに綺麗な王太子妃を手に入れた」
「ザイン、僕にとってトレアはかけがえのない人なんだよ」
「父上だって、母上だって兄上の言う通りにする」
「だからザイン、僕は我儘を言わないようにしている」
「兄上なんて腰抜けだ、何もできない間抜けさ」
「こらっ、ザイン!?」
トレアとは逆にザインと僕は仲が悪くなっていった、ザインは父上と母上から盲目的に愛される僕が気に入らなかったようだ。僕は愛の女神の加護の影響を受けていない、そんなザインと話がしたかった。でもザインは何か悪いことをしては犯人は僕だと言うようになった、もちろん僕が犯人ではないのでザインが罰せられた。ザインという弟は好戦的に、だんだんと狡猾になっていった、僕もトレアもそれが少し心配だった。
「トレアにはやっぱり剣の才能があるね」
「女神アルシュからの加護のおかげでしょう」
「本当に君は素早くて、気が抜けない!!」
「ウィル様も剣が上手くなりました!!」
「これで終わりだよ!!」
「はぁ~、本当にお強くなりましたね。ウィル様」
僕とトレアはもう必要な学問も学び終えて、今日は剣の稽古をしているところだった。僕たちは着替えて剣の話をした後、僕たちの明日に迫った結婚式の話をしていた。そこへ僕付きの侍従が手紙を持ってきた、僕はそれを読みながら父上に用事ができたからと、トレアを王太子妃の部屋に返した。そこにはトレアの父親と跡継ぎの兄が、相次いで流行り病で亡くなったとあった。
「大変なことになった……。父上、明日の件でお話があるのです」
「おお、そうかウィル。何でも言ってみるがいい」
トレアの父親と兄が亡くなったのなら、公爵家はトレアが婿をとって跡を継ぐべきだった。でも僕は絶対にトレアの夫になりなかった、だからトレアに選んで貰うことにした。僕はトレアのいる王太子妃の部屋に行って僕たち二人だけにして貰った、そうして僕はトレアに彼女の父親と兄の死を伝えた。トレアは呆然として涙を流した、僕はそんな彼女を抱きしめて彼女に選んで欲しいと言った。
「1つ、このままトレアと僕が結婚する、公爵家は一時王家預かりとして僕たちの子どもが受け継ぐ。2つ、明日の結婚式は僕の弟であるザインとその婚約者にしてもらう、そして僕は王太子を辞めて君と結婚して公爵家を受け継ぐ。どちらがいいかい? トレア?」
「王太子を辞めて悔いは残らないのですか、ウィル様?」
「強いて言えばザインのことが心配だな、あいつは好戦的でおまけに狡猾になってきている」
「私が王太子妃を辞して、新たな姫君を見つけるというのは?」
「駄目だ、僕は絶対に君の夫になりたい。その為なら王太子を辞める」
「それならばもう選択肢はありません、ザイン様は好戦的で狡猾です。彼が王になったらウィル様が暗殺されかねません、明日私は貴方の妻となります。どうか良い王になってください、私に後悔させないでください」
そうして僕とトレアは結婚式を迎えた、僕はトレアのことが心配だったが、彼女は強く気丈に振る舞っていた。僕の父上は機嫌が良かった、それは僕が王太子を辞めずにいずれは王になるからだった。そうして披露宴も開かれて、僕たちはいろんな貴族からの挨拶を受けた。トレアと僕はファーストダンスも踊った、そうして披露宴も終わって僕たちは退席した。そうして初夜になったが、僕たちは別のことを話していた。
「流行り病とはいったいどのくらいでものです」
「公爵家から一番近くの街で流行ったようだ、もう医者を含めた援軍を向かわせてある」
「母は無事なのですね」
「家から一歩も出ていなかったことが幸いして無事だ」
「………………」
「トレア、君がいますぐ駆け付けたい気持ちは分かるよ。でも流行り病が蔓延してしている場所へ、君を送り出すなんてとてもできない」
僕がそう言うとトレアは僕に抱き着いて静かにただ泣いた、それは父親や兄が亡くなったことへの涙であり、今も流行り病に苦しんでいる領民たちを助けられない涙でもあった。その夜は静かに泣き続けるトレアをただ抱きしめながら僕たちは眠りについた、眠りについてもまだトレアは魘されていたから優しく僕は彼女を抱きしめた。
「ウィル様、私はこのままだと王太子妃の務めを果たせません」
「トレア、それは君を僕が抱いてもいいのかい?」
「あっ、あまり言わせないで下さい。こういうことは苦手なんで……ううぅ」
「僕は本当に愛おしい妻を手に入れた、だからできるだけ優しく愛してあげるよ」
僕は数日経ってトレアの決心がついてから彼女を優しく愛した、彼女が大好きだったからなるべくそうしたかった。本で読んでいた知識や、既婚者の侍従からの話が役に立った。何度も、何度もトレアに口づけをして、それから彼女の体の奥をトロトロになるまで愛撫して可愛がった。さすがに最初に僕を受け入れた時にはトレアに痛みを与えた、だからそれ以降は彼女が気持ちよくなって泣くくらいに可愛がった。
「ウィル様、ちょっと、ちょっとだけ休ませて!!」
「可愛いトレア、でも今とても気持ちが良いだろう?」
「やああ!? 気持ちが良くて変になりそう!! ああっ!!」
「気持ちが良いなら、止める必要はないだろう」
「待って!! ウィル様!! あああああ!?」
「イッテしまっている君が可愛いよ、トレア」
そうして僕はトレアと何日も愛し合った、トレアは時々ベッドから逃げ出そうとしたが、僕が捕まえて連れ戻した。出会ってから十年降り積もった僕の恋情は簡単に彼女を手放せなかった、もう駄目!?だとか、いやぁ無理いってるの!? なんて可愛いことを言う、そんなトレアを泣かせるのは本当に気持ちが良かった。そうして、トレアが気絶している間に僕は情報を集めていた。
「トレア、聞いて。流行り病はなんとかなりそうだ。昔流行った病とよく似ているらしい」
「本当ですか、ウィル様!? ああ、良かった!!」
「それと不自然なことがあるんだ、そうやって昔流行った病を管理している場所から、今度の流行り病の標本をもちだした者がいるらしい」
「誰かがわざと流行り病を起こしたというのですか!?」
「そうでなければいいんだけど、偶然とは思えないから今調査させている。僕の敵なんて一人しかいないけど、もしそうならこれは裁判にかけて正式に処罰しなくてはならない」
「ああ、それが本当でなければいいのに……」
僕たちはできるだけ犯人が別の人間であることを祈った、だが流行り病の標本を持ち出した者は、複雑な人間関係を伝わって僕の弟であるザインに繋がっていた。ザインは最初はしらばっくれたが証拠がザインが主犯であることを示していた、ザインは裁判で散々喚き散らしたが確かな証拠は覆せなかった。王族であることを考慮してザインは毒杯が与えられた、それでも飲まないのなら斬首刑が待っていた。
「兄上はずるい!! 愛の女神の加護なんて!! 俺には悪戯な女神の加護しかなかった!!」
「お前もやっぱり女神の加護を持っていたのか、でもどんな加護を貰っても人間としてどう生きるかは別だ」
「そんなことはない!! 俺が愛の女神の加護を貰えたら、俺が国王だったんだ!!」
「国王であっても法を無視する者は長続きしない、お前の破滅はお前自身が招いたことなんだよ」
「嘘だ!! 俺にも愛の女神の加護があった良かったんだああぁぁぁl!!」
「ザイン、お前が死なせてしまった人々のために、少しでもお前が悔い改めんことを」
ザインは結局毒を飲もうとせずに斬首刑になった、僕は王になるものとしてザインの最期を見届けた。それからトレアがいる温かい後宮へ戻ってきた、トレアには終ったとだけ告げた。トレアは僕の腕の中でまた少しだけ泣いた、それは父親や兄への涙でありザインへの悔し涙でもあった。それからトレアはしばらくして僕の子を妊娠した、そうして季節が廻ったら可愛らしい男の子が生まれた。
「おお、この子には幸福の女神の加護がございます!!」
僕とトレアはそれを聞いてこの子も、大変な人生を歩むことになるのかと心配した。それくらい女神の加護というのはどう作用するのか分からないことだった、でも僕もトレアも一生懸命に優しく厳しくこの子を愛した。フォルと名付けられたこの子は素直に元気よく育っていった、確かに幸福の女神の恩恵を受けることもあったが、普通の子どもと他には変わりはなかった。
「どんな神々の加護を受けても、人生は努力しだいだね。トレア」
「ええ、そのとおりです。ウィル様」
そうして僕らの第二子は悪戯な女神の加護を貰って生まれてきたが、ファニーと名付けられて兄であるフォルとも仲が良くて、小さい頃は二人で可愛い悪戯をしては皆を笑わせた。ファニーは真面目で誠実な男性に育ちそしてトレアの実家である公爵家を受け継いだ、そうして王家では密かに女神の加護を持って産まれたこどもはその女神によって、少しだけ教育方法が変わることになった。でも、それだけで棒もトレアも沢山の子どもに囲まれて幸せに暮らした、そうして僕たちは最期まで愛し合って生きた。
「国王陛下、王妃陛下。これは私トレア・カントラデ・デクシオンの一存によるもの我が家とは別にお考えください、これが格式ある王家のお茶会でしょうか? 少々ウィル殿下をご自由にさせすぎではありませんか?」
「まぁ、ウィルは可愛いから」
「そうよね、可愛いもの」
「可愛い、可愛いと甘やかすだけではウィル殿下のためになりません、外国の使者の方がこの光景を見たら何と思うでしょう、まだ弟君であるザイン殿下にできていることです、ウィル殿下にも必ずできるはずです」
「………………」
「………………」
そんな僕が五歳になって王太子妃候補の集まるお茶会で、僕のことを初めてちゃんと見て注意してくれる女の子が現れた。それは白い髪の金色の瞳を持つ少女だった、僕がその時どんなに嬉しかったかは言い表せない、そのくらい彼女のことが僕にとっては衝撃的なことだった。トレア・カントラデ・デクシオンなんて綺麗な名前なんだろう、それで僕は父上や母上に久しぶりにおねだりをした。
「父上、母上、僕この子が気に入ったよ」
「おお、そうか。ウィル」
「まぁ、それならこの子を王太子妃にしましょう」
「父上、母上、僕は今日からずっとこの子といたい」
「それでは特別に王太子妃として後宮に迎えよう」
「まぁ、ウィルのおねだりなんて久しぶりね」
そう僕の周囲はこのくらいおかしいのが当たり前だった、僕がねだれば父上も母上もなんだってくれた。逆に僕が文句を言えばその人は投獄されそうになった、だから僕は今までまともに話せる友達なんて諦めていた、きっとどんな人とも話し合えることはないと思っていた。でもトレアというその女の子は僕の方を驚いた顔でみていた、彼女のそんな顔もとても可愛かった。
「トレア、王太子妃の部屋に入っていいかい?」
「よくいらっしゃいました、ウィル殿下」
「君のようにまともに話せる子を初めて見たよ」
「他の方とはお喋りできないのですか?」
「僕が何をしても、僕が正しくて他が間違ってるんだってさ」
「ウィル殿下、よくぞ今までお優しい心を守られました。貴方は一人でずっと頑張ってきたのですね」
そういうとトレアは僕の向かって頑張られました、周囲に流されずご自分のお心を守られました、そうして僕のことを優しく抱きしめてくれた。僕は初めて同い年の女の子に抱きしめられて、頬が赤くなったそれは喜びと安堵からくる心地よさだった。この子だけは本当の僕を見てくれる、僕は絶対にトレアを手放したくなくなった。
それから情けない話だったけど、トレアにとある質問をしてみた、そうしたら彼女は怒って僕の為を思って動いてくれることになった。僕が彼女に話したのは僕の侍女たちのことだった、皆が夜になるとこっそり僕の体を触りに来るのだ、僕には閨のお勉強ですと彼女たちは言っていた、でも僕にはそれが正しいのかどうかも分からなかったのだ。
トレアは僕のクローゼットに隠れて、侍女がくるのを待った。そうしたら案の定侍女の一人がやってきて、僕にこれは閨のお勉強ですよと言った、そうして僕の服を脱がせたり、素肌を触ったりしはじめたので僕は気持ちが悪くて仕方がなかった。でも今夜の僕には味方がいた、トレアがすぐに部屋を飛び出していって近衛兵を呼んできてくれた。
「近衛兵!! 中に入って!? ウィル殿下を助けて!!」
「トレア、トレア!? 凄く怖かったよ。凄く気持ち悪かったよ」
「きゃあああ、わっ、私はただの侍女です!!」
「もう大丈夫です、ウィル殿下!!」
「ああ、トレア。君は体は温かいね」
「私はただの侍女です、ウィル殿下付き侍女です」
すぐに父上にも母上にも僕が性的虐待を受けていたことが伝わった、母上は抱きしめて慰めてくれたけれど、僕はトレアの腕の中の方が心地良いと思った。それで僕に閨のお勉強を教えてようとした侍女たちは全て捕らえられた、僕には一人もまともな侍女が残らなかった。それでトレアが良い案を出してくれた、僕の世話は僕と同じくらい年齢の侍従にさせることになったのだ。
「ウィル殿下に必要なのは同じ年くらいで、既にマナーを学んでいる侍従です」
僕よりあまり年上過ぎてもいけない、僕の愛の女神の加護は何をしでかすか分からなかったからだ。そうして侍女から侍従に変わっただけで、僕は随分と気持ちが楽になった。もう涎をたらした狼のような女性に襲われなくていいのだ、それに僕とトレアは一緒に勉強することになった、すると今までウィル殿下は素晴らしいですしか言わなかった教師が、トレアに注意されてまともな授業をしてくれるようになった。
「トレア、僕嬉しいよ!! これでやっと僕も勉強ができる!!」
「ウィル殿下が嬉しいなら私も嬉しいです、私もこれからの授業が楽しみです!!」
「ねぇトレア、そろそろ僕のことをウィルって呼んでくれない?」
「王族を敬称なしで呼ぶのは不敬ですので、愛称としてウィル様でよろしいですか」
「うん、それでいいよ。それじゃあ、次は剣の稽古だっけ?」
「そうですわ、私はこれが楽しみなんです」
剣をもったトレアは恐ろしいほどの速度で動き、王家の教師ですら簡単に倒すことができなかった。僕の見学くらいかなという予想を裏切って彼女はとても強かった、聞けばトレアも戦いの女神であるアルシュの加護を貰って生まれてきたそうだ。彼女にとって剣は戦う手段であり、ただの飾り物ではなかった。僕は努力しようと思った、初めてトレアに勝ちたいとも思った。
「トレアはすごく強いね、僕も君みたいに強くなりたい」
「今からいくらでもウィル様は強くなれなます、それに男性です」
「性別が剣術に影響するの?」
「私の剣は速さはありますが、肝心の力がありません。いずれウィル様は力を持った男性になります、そうなったら私はおそらく勝てないでしょう」
「そうなったら僕がトレアを守る、僕は君のこと大好きだ」
「ふふっ、ありがとうございます」
僕は言葉にして初めてトレアのことが大好きだと気づいた、今まで愛の女神の加護に振り回されて生きてきた僕には初めての感情だった。トレアとだったらまともな話ができた、そうして彼女に怒られた時には僕は落ち込んだ、逆に褒められた時には僕は心から喜べた。トレアは僕にとってとても大切な女の子で、将来は結婚するのだと思ったら嬉しくて堪らなかった。
「さぁ、次の授業に参りましょう。ウィル様」
「分かった、トレア」
「次は難しそうです、政治学です」
「難しいけど、一番必要でもあるね」
「そうです、ウィル様は次の王なのですから」
「分かった、できるだけ頑張るよ」
そうやってトレアと僕は一緒に過ごしていった、彼女がいるおかげで僕はまともな授業が受けれた。もうお茶会で非常識に走り回るようなことはしなかった、同時に大きくなるにつれて僕はトレアを好きだという気持ちも大きくなっていった。トレアのためなら何だってできた、彼女を失わない為ならなんだってやるつもりだった。
「兄上はずるい、あんなに綺麗な王太子妃を手に入れた」
「ザイン、僕にとってトレアはかけがえのない人なんだよ」
「父上だって、母上だって兄上の言う通りにする」
「だからザイン、僕は我儘を言わないようにしている」
「兄上なんて腰抜けだ、何もできない間抜けさ」
「こらっ、ザイン!?」
トレアとは逆にザインと僕は仲が悪くなっていった、ザインは父上と母上から盲目的に愛される僕が気に入らなかったようだ。僕は愛の女神の加護の影響を受けていない、そんなザインと話がしたかった。でもザインは何か悪いことをしては犯人は僕だと言うようになった、もちろん僕が犯人ではないのでザインが罰せられた。ザインという弟は好戦的に、だんだんと狡猾になっていった、僕もトレアもそれが少し心配だった。
「トレアにはやっぱり剣の才能があるね」
「女神アルシュからの加護のおかげでしょう」
「本当に君は素早くて、気が抜けない!!」
「ウィル様も剣が上手くなりました!!」
「これで終わりだよ!!」
「はぁ~、本当にお強くなりましたね。ウィル様」
僕とトレアはもう必要な学問も学び終えて、今日は剣の稽古をしているところだった。僕たちは着替えて剣の話をした後、僕たちの明日に迫った結婚式の話をしていた。そこへ僕付きの侍従が手紙を持ってきた、僕はそれを読みながら父上に用事ができたからと、トレアを王太子妃の部屋に返した。そこにはトレアの父親と跡継ぎの兄が、相次いで流行り病で亡くなったとあった。
「大変なことになった……。父上、明日の件でお話があるのです」
「おお、そうかウィル。何でも言ってみるがいい」
トレアの父親と兄が亡くなったのなら、公爵家はトレアが婿をとって跡を継ぐべきだった。でも僕は絶対にトレアの夫になりなかった、だからトレアに選んで貰うことにした。僕はトレアのいる王太子妃の部屋に行って僕たち二人だけにして貰った、そうして僕はトレアに彼女の父親と兄の死を伝えた。トレアは呆然として涙を流した、僕はそんな彼女を抱きしめて彼女に選んで欲しいと言った。
「1つ、このままトレアと僕が結婚する、公爵家は一時王家預かりとして僕たちの子どもが受け継ぐ。2つ、明日の結婚式は僕の弟であるザインとその婚約者にしてもらう、そして僕は王太子を辞めて君と結婚して公爵家を受け継ぐ。どちらがいいかい? トレア?」
「王太子を辞めて悔いは残らないのですか、ウィル様?」
「強いて言えばザインのことが心配だな、あいつは好戦的でおまけに狡猾になってきている」
「私が王太子妃を辞して、新たな姫君を見つけるというのは?」
「駄目だ、僕は絶対に君の夫になりたい。その為なら王太子を辞める」
「それならばもう選択肢はありません、ザイン様は好戦的で狡猾です。彼が王になったらウィル様が暗殺されかねません、明日私は貴方の妻となります。どうか良い王になってください、私に後悔させないでください」
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「流行り病とはいったいどのくらいでものです」
「公爵家から一番近くの街で流行ったようだ、もう医者を含めた援軍を向かわせてある」
「母は無事なのですね」
「家から一歩も出ていなかったことが幸いして無事だ」
「………………」
「トレア、君がいますぐ駆け付けたい気持ちは分かるよ。でも流行り病が蔓延してしている場所へ、君を送り出すなんてとてもできない」
僕がそう言うとトレアは僕に抱き着いて静かにただ泣いた、それは父親や兄が亡くなったことへの涙であり、今も流行り病に苦しんでいる領民たちを助けられない涙でもあった。その夜は静かに泣き続けるトレアをただ抱きしめながら僕たちは眠りについた、眠りについてもまだトレアは魘されていたから優しく僕は彼女を抱きしめた。
「ウィル様、私はこのままだと王太子妃の務めを果たせません」
「トレア、それは君を僕が抱いてもいいのかい?」
「あっ、あまり言わせないで下さい。こういうことは苦手なんで……ううぅ」
「僕は本当に愛おしい妻を手に入れた、だからできるだけ優しく愛してあげるよ」
僕は数日経ってトレアの決心がついてから彼女を優しく愛した、彼女が大好きだったからなるべくそうしたかった。本で読んでいた知識や、既婚者の侍従からの話が役に立った。何度も、何度もトレアに口づけをして、それから彼女の体の奥をトロトロになるまで愛撫して可愛がった。さすがに最初に僕を受け入れた時にはトレアに痛みを与えた、だからそれ以降は彼女が気持ちよくなって泣くくらいに可愛がった。
「ウィル様、ちょっと、ちょっとだけ休ませて!!」
「可愛いトレア、でも今とても気持ちが良いだろう?」
「やああ!? 気持ちが良くて変になりそう!! ああっ!!」
「気持ちが良いなら、止める必要はないだろう」
「待って!! ウィル様!! あああああ!?」
「イッテしまっている君が可愛いよ、トレア」
そうして僕はトレアと何日も愛し合った、トレアは時々ベッドから逃げ出そうとしたが、僕が捕まえて連れ戻した。出会ってから十年降り積もった僕の恋情は簡単に彼女を手放せなかった、もう駄目!?だとか、いやぁ無理いってるの!? なんて可愛いことを言う、そんなトレアを泣かせるのは本当に気持ちが良かった。そうして、トレアが気絶している間に僕は情報を集めていた。
「トレア、聞いて。流行り病はなんとかなりそうだ。昔流行った病とよく似ているらしい」
「本当ですか、ウィル様!? ああ、良かった!!」
「それと不自然なことがあるんだ、そうやって昔流行った病を管理している場所から、今度の流行り病の標本をもちだした者がいるらしい」
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「そうでなければいいんだけど、偶然とは思えないから今調査させている。僕の敵なんて一人しかいないけど、もしそうならこれは裁判にかけて正式に処罰しなくてはならない」
「ああ、それが本当でなければいいのに……」
僕たちはできるだけ犯人が別の人間であることを祈った、だが流行り病の標本を持ち出した者は、複雑な人間関係を伝わって僕の弟であるザインに繋がっていた。ザインは最初はしらばっくれたが証拠がザインが主犯であることを示していた、ザインは裁判で散々喚き散らしたが確かな証拠は覆せなかった。王族であることを考慮してザインは毒杯が与えられた、それでも飲まないのなら斬首刑が待っていた。
「兄上はずるい!! 愛の女神の加護なんて!! 俺には悪戯な女神の加護しかなかった!!」
「お前もやっぱり女神の加護を持っていたのか、でもどんな加護を貰っても人間としてどう生きるかは別だ」
「そんなことはない!! 俺が愛の女神の加護を貰えたら、俺が国王だったんだ!!」
「国王であっても法を無視する者は長続きしない、お前の破滅はお前自身が招いたことなんだよ」
「嘘だ!! 俺にも愛の女神の加護があった良かったんだああぁぁぁl!!」
「ザイン、お前が死なせてしまった人々のために、少しでもお前が悔い改めんことを」
ザインは結局毒を飲もうとせずに斬首刑になった、僕は王になるものとしてザインの最期を見届けた。それからトレアがいる温かい後宮へ戻ってきた、トレアには終ったとだけ告げた。トレアは僕の腕の中でまた少しだけ泣いた、それは父親や兄への涙でありザインへの悔し涙でもあった。それからトレアはしばらくして僕の子を妊娠した、そうして季節が廻ったら可愛らしい男の子が生まれた。
「おお、この子には幸福の女神の加護がございます!!」
僕とトレアはそれを聞いてこの子も、大変な人生を歩むことになるのかと心配した。それくらい女神の加護というのはどう作用するのか分からないことだった、でも僕もトレアも一生懸命に優しく厳しくこの子を愛した。フォルと名付けられたこの子は素直に元気よく育っていった、確かに幸福の女神の恩恵を受けることもあったが、普通の子どもと他には変わりはなかった。
「どんな神々の加護を受けても、人生は努力しだいだね。トレア」
「ええ、そのとおりです。ウィル様」
そうして僕らの第二子は悪戯な女神の加護を貰って生まれてきたが、ファニーと名付けられて兄であるフォルとも仲が良くて、小さい頃は二人で可愛い悪戯をしては皆を笑わせた。ファニーは真面目で誠実な男性に育ちそしてトレアの実家である公爵家を受け継いだ、そうして王家では密かに女神の加護を持って産まれたこどもはその女神によって、少しだけ教育方法が変わることになった。でも、それだけで棒もトレアも沢山の子どもに囲まれて幸せに暮らした、そうして僕たちは最期まで愛し合って生きた。
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