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3-30最強よりも大切にしたい
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「アーベントさん、お久しぶりなの!!」
「アーベントさん、本当にお久しぶりです」
「おや、シエルくんにアクアちゃん。よく来てくれたね、僕は嬉しいよ」
俺たちは十年後にアーベントさんを訪ねていった、そろそろ街で年齢がおかしいと疑われている俺たちは、新しい住処も探していたところだった。アーベントさんは十年前と全く変わりがなかった、彼はまた俺たちにお茶をご馳走してくれた。そうしてアクアが『愛の涙』を飲んでしまった話をした、おかげでアクアは十年前とちっとも変わらなかった。
「アクアちゃん、無事にシエルくんのお嫁さんになれておめでとう」
「ありがとうなの、アーベントさん。それに『愛の涙』を飲んだおかげで、シエルといっぱい一緒にいられるの」
「シエルくんも良かったね、君たちが結婚できたことが嬉しいよ。そして、『愛の涙』が役に立っていることもね」
「はい、ありがとうございます。アーベントさんのおかげで、アクアとこの先も一緒にいられます」
そうして俺たちは年齢を疑われて街から出てきたことや、新しい住処を探していることなどを話した。そうしたらアーベントさんが微笑んでこの縄張りを譲ると言いだした、縄張りの洞窟の中にあるものは好きに処分していいとも言った。そうして俺たちは少し洞窟を出て、綺麗な花畑のある場所に案内された。
「ここにファムの遺灰をまいたんだ、どうやらもうファムが迎えに来たようだよ」
「アーベントさん?」
「……ファム、……会いたかった…………」
「アーベントさん!?」
この十年をアーベントさんはぎりぎりの力で生き抜いたのだろう、そのまま彼は世界の大きな力に返ってしまった。最期に奥さんが迎えに来たのだろうか、アーベントさんは幸せそうな顔をして、世界の大きな力へ返っていった。俺とアクアは相談してアーベントさんの縄張りを引き継いだ、アーベントさんは自分が消える日が近いと分かっていたのだろう、縄張りの中の洞窟は綺麗に整理されていた。それにアーベントさんが残した財宝もあった、それは千年分の財宝だった、戦いを避けたとしてもそれはかなりの財宝だった。
「シエル、産まれそうなの!!」
「頑張るんだ、アクア!!」
「そうよ、アクアちゃん。頑張って、いきんで!!」
この縄張りに住んで二百年くらいが経って、俺とアクアの子どもが生まれる時には母さんが応援に来てくれた。アクアは俺にそっくりな金色の蒼い瞳を持つドラゴンを産んだ、その子はミストと名付けられた。アクアは翌年には黒色の黒い瞳を持つドラゴンも産んだ、その子はスノウと名付けられた。ドラゴンが一度に二人も子育てするなんて珍しいことだった、俺は二人の子どもの為に狩りを行い毎日沢山の獲物を二人に食べさせた。
「やっぱり人間の姿でいると数値が上がっていくの」
「そうか、俺と同じなんだな」
「でも種族としてはドラゴンなの」
「そこも俺と同じなのか、神様の分類ってどうなってるんだろう?」
ミストとスノウは活発な子どもだった、すぐに洞窟の外へと逃げ出そうとするから、その入り口には頑丈な柵を作っておいた。アクアと俺はとにかく二人にできるだけ食事をさせた、そうするとドラゴンの体はだんだんと大きくなっていった。それに俺の母さんに頼んで二人の教育もしてもらった、母さんは仕方がないですねと言いつつ、二人の子どもに囲まれて楽しそうに授業をしていた。
「アルカンシエル、そろそろお別れです」
「か、母さん。母さんの息子に生まれて俺は幸せでした」
「われもよ、われの愛するアルカンシエル。お前を生んで本当に良かった…………」
「か、母さん」
俺とアクアの子どもが生まれて百年ほど経ったら、俺の母さんの寿命がきてしまった。母さんは最期まで俺のことを想ってくれた、出来の悪い息子だと言いながら、いつも大変な時には俺を助けにきてくれた。俺は母さんを思いながら思いっきり泣いて、そんな俺のことをアクアが優しく抱きしめてくれた。それに二人の子どもたちも泣いていた、二人は俺の母さんにとても懐いていたからだた。
「おい、勝負しようぜ。シエル!! 久しぶりだなチビ!!」
「レン!! よく来てくれた」
「レンもまた強くなったの!!」
「強くなったかよ、シエル」
「ああ、前よりもっと強くなったよ」
「シエルったら、前より凄く強くなったの!!」
レンは時々俺のところに勝負しにきてくれた、それはあの旅から分かれて四百年くらい経っていた。その頃には俺はかなり強くなっていた、レンも強くなっていたがそれ以上に俺の方が強くなっていた。レンは俺に負けて悔しそうにしていたが、また勝負しに来ると言っていた。その頃には俺はどんなドラゴンにも負けなくなっていた、最強のドラゴンになっていた。
「最強のドラゴンか……」
どんなに強いドラゴンにも俺は負けなかった、人間の冒険者たちだって相手にならなかった。それはあかり姉さんが言っていたことを守ったおかげだった、あかり姉さんが俺をここまで強くしてくれた。そんな俺に時々レンは勝負しにきた、そしてリッシュのことも教えてくれた、リッシュは村長になってもっと森の深く安全なところに村を移して安全に暮らしているということだった。
「レンおじちゃん、スノウのこと好き?」
「おお、スノウかまた大きくなったな。よしよし」
「もうスノウは三百歳の大人なの、レンおじちゃんはスノウのこと好き?」
「そうだな、俺様は好きだぜ。お前は強いし度胸のある女だ!!」
「父さん、母さん。スノウはレンおじちゃんから求婚されたから、それを受けるの!!」
「え?」
ミストは既に百五十歳になった時に伴侶を探しに俺たちの傍から旅立っていた、スノウは近くにあった俺の母さんの縄張りを受け継いでいて、しょっちゅう俺たちのところへ遊びに来ていた。そしてスノウはレンのことをとても気に入っていた、だから成人したらレンのことを捕まえようと狙っていた。俺とアクアはスノウのその考えを尊重して、レンには何も言わないでおいた。そして、レンはとうとうスノウに捕まってしまった。
「レンおじちゃんさぁスノウの縄張りに行くの!! 早く、早く、スノウの縄張りの洞窟に行くの!!」
「え?」
「スノウは子どもが二人は欲しいの!!」
「いやちょっと待て、俺様は確かにスノウが可愛いけどな!!」
「スノウは早くレンおじちゃんにキスして欲しいの、もっと先のことも早くして欲しいの!!」
「き、キスだとか、それ以上はまだ早くねぇか!?」
「ちっとも早くないの、むしろ遅いくらいなの」
「ええ!?」
そうしてレンと俺の娘であるスノウは夫婦になった、スノウに押し倒されてレンには初めて発情期がきたそうだ。残念ながら最初の発情期では子どもはできなかったが、スノウは満足そうな顔でちゃんとレンを番になったと報告にきた。一緒にきたレンは真っ赤な顔をしていた、それも無理もないだろう、ついこの前までは子どもだったスノウに、レンは美味しく食べられてしまったのだ。
「俺様が番を見つけるなんて、もっと後のことだと思ったぜ」
「ははっ、スノウはレンのことを随分前から狙っていたからな」
「教えてくれよ!! 親友!?」
「いやでもレンの方もスノウが好きじゃなかったら発情期は来ない、だから大丈夫だっただろ」
「確かに大丈夫だったけど、ドラゴンの発情期って本当に凄いのな」
「俺もアクアを傷つけないように気をつけている、でも発情期は確かに凄いな」
それから後しばらくしてスノウがレンの子どもを産むのだ、レンのスノウとの間の子どもも百五十年もしたら無事に成人して巣立っていった。そうして時間は平等に過ぎ去っていった、やがて俺も千年近く生きたらレンも亡くなった、彼らしいあっさりとした最期だった。俺とアクアはスノウを慰めた。そうしてとうとう俺より先にアクアが倒れた、そうしてアクアとお別れの時がやってきてしまったのだ。
「アクア、この八百五十年間ずっと楽しかったよ。君がいてくれて、俺は幸せだったよ」
「ふふっ、アクアも幸せだったの、シエルと出会ってずっと幸せだったんだよ」
「アクア、俺もそんなにもう長くない。ちょっとだけ、先に逝って待っていてくれ」
「うん、分かった。ちょっとだけだからね、アクアは待ってるの」
「ああ、あんまりアクアを待たせないようにするよ」
「アクアとシエルは…………」
魂が世界の大きな力に返ったアクア、俺はその遺体を抱きしめて泣いた。そうしたら一滴の涙が奇跡を起こした、そう『愛の涙』へと変わったのだ。俺はもう自分は長くは生きられないから、それを細かい注意とペンダントと共に娘のスノウに託した。いつか人間を愛するドラゴン、そんなドラゴンの手に渡ってくれれば良かった。
アクアの体は灰になるまで焼いて、そうして山の近くの景色が良い場所にまいた。アクアがこの俺の縄張りで気に入っていた景色だったから、そうして俺はその場所でよく過ごすようになった。俺にもそんなに残された時間はなかった、だから俺はアクアの迎えを待ちながら、アクアを埋葬した場所で過ごすようになった。そんなある日のことだった、俺に突然の客が来た。
「私はリトス、貴方に助けられたドラゴン。ぜひ私の夫になって欲しい」
「ああ、随分と俺が昔に助けたドラゴンか。ごめん、俺にはそれはできない」
「この九百年ずっと貴方を探していた、それでも駄目なの」
「ああ、駄目なんだ。もうアクアを待たせるわけにはいかないようだ」
「待って!! まだ逝かないで!?」
「ごめんよ、もうアクアが迎えにきたみたいだ…………」
俺はまぶしい光の中にいた、最強のドラゴンになっていた俺でさえこんな場所は知らなかった。その光の中からアクアが笑って俺を抱きしめてくれた。そしてアクアが亡くなってからずっと寂しかった俺にアクアはこう言ってくれた。いつものように、いつもと同じ口調でそう言ってくれて、俺はそれが嬉しくて眩しい光に包まれて何も分からなくなった。
「アクアとシエルはずうっと一緒なの」
「アーベントさん、本当にお久しぶりです」
「おや、シエルくんにアクアちゃん。よく来てくれたね、僕は嬉しいよ」
俺たちは十年後にアーベントさんを訪ねていった、そろそろ街で年齢がおかしいと疑われている俺たちは、新しい住処も探していたところだった。アーベントさんは十年前と全く変わりがなかった、彼はまた俺たちにお茶をご馳走してくれた。そうしてアクアが『愛の涙』を飲んでしまった話をした、おかげでアクアは十年前とちっとも変わらなかった。
「アクアちゃん、無事にシエルくんのお嫁さんになれておめでとう」
「ありがとうなの、アーベントさん。それに『愛の涙』を飲んだおかげで、シエルといっぱい一緒にいられるの」
「シエルくんも良かったね、君たちが結婚できたことが嬉しいよ。そして、『愛の涙』が役に立っていることもね」
「はい、ありがとうございます。アーベントさんのおかげで、アクアとこの先も一緒にいられます」
そうして俺たちは年齢を疑われて街から出てきたことや、新しい住処を探していることなどを話した。そうしたらアーベントさんが微笑んでこの縄張りを譲ると言いだした、縄張りの洞窟の中にあるものは好きに処分していいとも言った。そうして俺たちは少し洞窟を出て、綺麗な花畑のある場所に案内された。
「ここにファムの遺灰をまいたんだ、どうやらもうファムが迎えに来たようだよ」
「アーベントさん?」
「……ファム、……会いたかった…………」
「アーベントさん!?」
この十年をアーベントさんはぎりぎりの力で生き抜いたのだろう、そのまま彼は世界の大きな力に返ってしまった。最期に奥さんが迎えに来たのだろうか、アーベントさんは幸せそうな顔をして、世界の大きな力へ返っていった。俺とアクアは相談してアーベントさんの縄張りを引き継いだ、アーベントさんは自分が消える日が近いと分かっていたのだろう、縄張りの中の洞窟は綺麗に整理されていた。それにアーベントさんが残した財宝もあった、それは千年分の財宝だった、戦いを避けたとしてもそれはかなりの財宝だった。
「シエル、産まれそうなの!!」
「頑張るんだ、アクア!!」
「そうよ、アクアちゃん。頑張って、いきんで!!」
この縄張りに住んで二百年くらいが経って、俺とアクアの子どもが生まれる時には母さんが応援に来てくれた。アクアは俺にそっくりな金色の蒼い瞳を持つドラゴンを産んだ、その子はミストと名付けられた。アクアは翌年には黒色の黒い瞳を持つドラゴンも産んだ、その子はスノウと名付けられた。ドラゴンが一度に二人も子育てするなんて珍しいことだった、俺は二人の子どもの為に狩りを行い毎日沢山の獲物を二人に食べさせた。
「やっぱり人間の姿でいると数値が上がっていくの」
「そうか、俺と同じなんだな」
「でも種族としてはドラゴンなの」
「そこも俺と同じなのか、神様の分類ってどうなってるんだろう?」
ミストとスノウは活発な子どもだった、すぐに洞窟の外へと逃げ出そうとするから、その入り口には頑丈な柵を作っておいた。アクアと俺はとにかく二人にできるだけ食事をさせた、そうするとドラゴンの体はだんだんと大きくなっていった。それに俺の母さんに頼んで二人の教育もしてもらった、母さんは仕方がないですねと言いつつ、二人の子どもに囲まれて楽しそうに授業をしていた。
「アルカンシエル、そろそろお別れです」
「か、母さん。母さんの息子に生まれて俺は幸せでした」
「われもよ、われの愛するアルカンシエル。お前を生んで本当に良かった…………」
「か、母さん」
俺とアクアの子どもが生まれて百年ほど経ったら、俺の母さんの寿命がきてしまった。母さんは最期まで俺のことを想ってくれた、出来の悪い息子だと言いながら、いつも大変な時には俺を助けにきてくれた。俺は母さんを思いながら思いっきり泣いて、そんな俺のことをアクアが優しく抱きしめてくれた。それに二人の子どもたちも泣いていた、二人は俺の母さんにとても懐いていたからだた。
「おい、勝負しようぜ。シエル!! 久しぶりだなチビ!!」
「レン!! よく来てくれた」
「レンもまた強くなったの!!」
「強くなったかよ、シエル」
「ああ、前よりもっと強くなったよ」
「シエルったら、前より凄く強くなったの!!」
レンは時々俺のところに勝負しにきてくれた、それはあの旅から分かれて四百年くらい経っていた。その頃には俺はかなり強くなっていた、レンも強くなっていたがそれ以上に俺の方が強くなっていた。レンは俺に負けて悔しそうにしていたが、また勝負しに来ると言っていた。その頃には俺はどんなドラゴンにも負けなくなっていた、最強のドラゴンになっていた。
「最強のドラゴンか……」
どんなに強いドラゴンにも俺は負けなかった、人間の冒険者たちだって相手にならなかった。それはあかり姉さんが言っていたことを守ったおかげだった、あかり姉さんが俺をここまで強くしてくれた。そんな俺に時々レンは勝負しにきた、そしてリッシュのことも教えてくれた、リッシュは村長になってもっと森の深く安全なところに村を移して安全に暮らしているということだった。
「レンおじちゃん、スノウのこと好き?」
「おお、スノウかまた大きくなったな。よしよし」
「もうスノウは三百歳の大人なの、レンおじちゃんはスノウのこと好き?」
「そうだな、俺様は好きだぜ。お前は強いし度胸のある女だ!!」
「父さん、母さん。スノウはレンおじちゃんから求婚されたから、それを受けるの!!」
「え?」
ミストは既に百五十歳になった時に伴侶を探しに俺たちの傍から旅立っていた、スノウは近くにあった俺の母さんの縄張りを受け継いでいて、しょっちゅう俺たちのところへ遊びに来ていた。そしてスノウはレンのことをとても気に入っていた、だから成人したらレンのことを捕まえようと狙っていた。俺とアクアはスノウのその考えを尊重して、レンには何も言わないでおいた。そして、レンはとうとうスノウに捕まってしまった。
「レンおじちゃんさぁスノウの縄張りに行くの!! 早く、早く、スノウの縄張りの洞窟に行くの!!」
「え?」
「スノウは子どもが二人は欲しいの!!」
「いやちょっと待て、俺様は確かにスノウが可愛いけどな!!」
「スノウは早くレンおじちゃんにキスして欲しいの、もっと先のことも早くして欲しいの!!」
「き、キスだとか、それ以上はまだ早くねぇか!?」
「ちっとも早くないの、むしろ遅いくらいなの」
「ええ!?」
そうしてレンと俺の娘であるスノウは夫婦になった、スノウに押し倒されてレンには初めて発情期がきたそうだ。残念ながら最初の発情期では子どもはできなかったが、スノウは満足そうな顔でちゃんとレンを番になったと報告にきた。一緒にきたレンは真っ赤な顔をしていた、それも無理もないだろう、ついこの前までは子どもだったスノウに、レンは美味しく食べられてしまったのだ。
「俺様が番を見つけるなんて、もっと後のことだと思ったぜ」
「ははっ、スノウはレンのことを随分前から狙っていたからな」
「教えてくれよ!! 親友!?」
「いやでもレンの方もスノウが好きじゃなかったら発情期は来ない、だから大丈夫だっただろ」
「確かに大丈夫だったけど、ドラゴンの発情期って本当に凄いのな」
「俺もアクアを傷つけないように気をつけている、でも発情期は確かに凄いな」
それから後しばらくしてスノウがレンの子どもを産むのだ、レンのスノウとの間の子どもも百五十年もしたら無事に成人して巣立っていった。そうして時間は平等に過ぎ去っていった、やがて俺も千年近く生きたらレンも亡くなった、彼らしいあっさりとした最期だった。俺とアクアはスノウを慰めた。そうしてとうとう俺より先にアクアが倒れた、そうしてアクアとお別れの時がやってきてしまったのだ。
「アクア、この八百五十年間ずっと楽しかったよ。君がいてくれて、俺は幸せだったよ」
「ふふっ、アクアも幸せだったの、シエルと出会ってずっと幸せだったんだよ」
「アクア、俺もそんなにもう長くない。ちょっとだけ、先に逝って待っていてくれ」
「うん、分かった。ちょっとだけだからね、アクアは待ってるの」
「ああ、あんまりアクアを待たせないようにするよ」
「アクアとシエルは…………」
魂が世界の大きな力に返ったアクア、俺はその遺体を抱きしめて泣いた。そうしたら一滴の涙が奇跡を起こした、そう『愛の涙』へと変わったのだ。俺はもう自分は長くは生きられないから、それを細かい注意とペンダントと共に娘のスノウに託した。いつか人間を愛するドラゴン、そんなドラゴンの手に渡ってくれれば良かった。
アクアの体は灰になるまで焼いて、そうして山の近くの景色が良い場所にまいた。アクアがこの俺の縄張りで気に入っていた景色だったから、そうして俺はその場所でよく過ごすようになった。俺にもそんなに残された時間はなかった、だから俺はアクアの迎えを待ちながら、アクアを埋葬した場所で過ごすようになった。そんなある日のことだった、俺に突然の客が来た。
「私はリトス、貴方に助けられたドラゴン。ぜひ私の夫になって欲しい」
「ああ、随分と俺が昔に助けたドラゴンか。ごめん、俺にはそれはできない」
「この九百年ずっと貴方を探していた、それでも駄目なの」
「ああ、駄目なんだ。もうアクアを待たせるわけにはいかないようだ」
「待って!! まだ逝かないで!?」
「ごめんよ、もうアクアが迎えにきたみたいだ…………」
俺はまぶしい光の中にいた、最強のドラゴンになっていた俺でさえこんな場所は知らなかった。その光の中からアクアが笑って俺を抱きしめてくれた。そしてアクアが亡くなってからずっと寂しかった俺にアクアはこう言ってくれた。いつものように、いつもと同じ口調でそう言ってくれて、俺はそれが嬉しくて眩しい光に包まれて何も分からなくなった。
「アクアとシエルはずうっと一緒なの」
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