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3-21愛しているからそうしたい
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「皆様、盗賊退治に行きませんか?」
「俺は別にいいけど、大きい盗賊団なのか?」
「アクアも行ってもいいの」
「俺様も別に問題ないぜ」
「大きさでいえばまぁまぁです、二百人ほどの盗賊団です」
「ふーん、ちょっと大きめだが確かにまぁまぁだな」
「世の中って盗賊ばっかりいるの」
「まぁ、チビ。厳しい世の中だからな」
リッシュは俺たちから同意が得られたことでホッとしていた、そうしてリッシュは盗賊団の名前や場所などの説明をはじめた。名前はプロムナード盗賊団といって、場所はこの街の西側にある山の中にあるそうだった。俺は盗賊退治に行くのは別に構わなかったが、何故リッシュがそうしたいのか、どうして盗賊退治に行く気になったのかが気になった。
「リッシュ、どうして盗賊退治に行く気になったんだ」
「僕に欲しいものができました、ですが今の僕にはお金がありません」
「ああ、なるほど。その欲しいものって何か、俺たちに教えてくれるか?」
「それは……、無事に手に入ったらお教え致します」
「それならリッシュ、気をつけるんだ。人でもエルフでもドラゴンでも欲が絡んでいる時、そういう時は失敗をしやすいからな」
「シエル様、確かにそうですね。ご忠告をありがとうございます」
こうして俺たちは盗賊退治に行くことになった、いつものように盗賊のアジトらしい場所に着いた、その前に全員がローブを被り鼻まで黒い布で覆って顔を隠した。そうやって準備をしている間、リッシュのことが心配で俺たち三人は彼を観察していた。でもリッシュはいつもどおりの行動をしていた、急に金が欲しいなどと言うから悪い女に騙されている、そんな心配をしていたがリッシュの行動にいつもと変わりはなかった。
「さぁ、それじゃ。いつものように盗賊退治だ、そろそろ行ってみようか?」
「アクアはシエルの傍を離れないの」
「ああ、チビはそうしてな。俺様はシエルより多く盗賊を倒すぜ」
「宝を貯めこんでいるといいですね、それで弱者を救うことができます」
俺たちはリッシュの言葉から急にお金を欲しがる理由、それはまた奴隷になった者に同情でもしているのかと思った、ただそれにしては俺たちに堂々とその理由を教えてくれないのが気になった。でも俺たちがそんなことを気にしていたのは入り口までだった、そこからはいつものように俺が見張りをしている盗賊に声をかけた、とても明るく朗らかにいつもどおりに俺は話しかけた。
「ねぇ、そこのおじさん。プロムナード盗賊団って知ってる?」
「何だてめぇらは、何をしにここへやってきた」
「プロムナード盗賊団を探してるんだ、ちょっとそこをプチッと潰そうかと思って」
「ぶっはははっ、馬鹿じゃねぇか。たった四人で何ができる、俺たちはプロムナード盗賊団だぞ」
「さっさと教えてくれればいいのに、まぁいいや。とりあえず、『電撃槍』!!」
「ぎゃあああぁぁぁ!?」
俺はプロムナード盗賊団だと確認をして、見張りをしていた数人を雷撃の魔法で焼き殺した。そこからはいつも通りだった、俺はアクアと離れ過ぎないようにしながら、そうして盗賊たちを殺していった。アクアはいつものように皆の様子をみて、空から降っている矢や魔法を防御魔法で防いでくれた。レンもいつもどおりだった、俺より盗賊を沢山倒すといいながら、いつでも仲間のことを気にして動いていた。
「おい、この人質を……」
「させません、炎よ!!」
特にリッシュの活躍が今回は凄かった、決して盗賊に人質をとらせなかったし、次々と盗賊たちを射殺していった。それにリッシュの弓の腕はいつものように確かだった、確実に盗賊を一人ずつだが減らしていった。弓矢で戦うというと遠距離戦を普通は思い浮かべるが、リッシュは体術を駆使して近距離の盗賊でも軽やかな動きで射殺してみせた。
二百人はいたという盗賊団だったが、壊滅するのにそんなに時間はかからなかった。レンによるとリッシュは発情期だそうだが、性欲というものはこんなにエルフを強くするのだろうか、今回はリッシュはレンと同じくらい多くの盗賊を倒していた。そうして盗賊退治のお楽しみのお宝探しになった、俺たちはいつもどおりに俺とレン、それにリッシュで金貨や銀貨を山分けにした。
「シエル様、次は人質の解放ですね」
「ああ、そうだな」
「申し訳ありませんが、その時に質問をいくつかしてもよろしいでしょうか」
「へっ? ああ、俺たちの正体がバレないようにしてくれれば構わない」
「ありがとうございます、シエル様」
「ああ、うん」
そうして人質を解放することになったのだが、リッシュは声色を変えてその前に人質に質問をした。攫われてきたのはどのくらい前なのか、銀の髪に赤い瞳を持つ女性はいるか、その女性は性的暴行を受けたのかという質問だった。俺たちはリッシュが惚れた女を助けに来たのかと思った、でもリッシュは質問してそれらしい女性が心も体も無事だと分かると、それでもう十分らしくすぐに女性たちを解放した。
「リッシュ、ええとな。一体何がしたかったのか、教えて貰ってもいいか?」
「シエル様、それは僕の欲しいものが手に入ったら、必ず皆様にお教え致します」
そうして俺たちは無事に盗賊退治を終えて街に帰ってきた、でも俺とアクアそれにレンは疑問で頭がいっぱいだった。リッシュは街に帰るとすぐにどこかへ出かけていった、俺たちはリッシュが欲しいものが手に入るまでは、それが何なのか聞くことができず疑問だけが膨らんでいった。やがてリッシュは戻ってきた、そうして俺たちに深く一礼して感謝の言葉を述べた。
「皆様、ありがとうございます。僕は欲しいものをちゃんと手に入れました、これも全て皆様の協力のおかげです」
「良かったな、リッシュ。それで何も持っていないように見えるが、リッシュが欲しかったものって一体何だったんだ?」
俺が代表してそう聞くとリッシュは穏やかに幸せそうに微笑んだ、そうして俺たちをこの街の劇場に連れていった。そこでは様々な芸を披露する者たちがいた、そして俺たちは二人の女性を見ることになった。一人は銀の髪に赤い瞳を持った俺たちが盗賊から助けた女性だった、もう一人は金の髪に青い瞳を持つどちらも美しい女性たちだった。
「金の髪に青い瞳なのがソレイユ、銀の髪に赤い瞳をしているのがルナです」
「へぇー、それでリッシュが好きなのはどっちの女性だ?」
「僕が愛しているのはソレイユです、太陽という意味をもつ名前で胡旋舞がとても得意です」
「それじゃ、ルナっていうのは誰なんだ? もしかしてリッシュは二人とも好きなのか!?」
「いいえ、僕が愛したのはソレイユです。ルナは月という意味の名前持つソレイユの仲間です」
「よく分からなくなってきた、リッシュは結局ソレイユを手に入れたのか?」
そうやって話している間にソレイユとルナの二人が踊り出した、二人の胡旋舞はとても美しかった、そう思わず俺たちも息を呑むほど美しいものだった。リッシュはそんな二人を見て満足気に微笑んでいた、そこには発情期の性欲などはまるで無いように俺には思えた。リッシュはとても美しい胡旋舞を二人が踊り終わるまで、ずっと微笑みながら彼女たちを見つめていた。
そうして踊り終わった二人の幸せそうな笑顔を見届けると、俺たちに宿屋に帰りましょうと言ってきた。だから俺たちは大人しく宿屋に帰ったのだが、もちろんまだリッシュに聞きたいことが山ほどあった。ソレイユのことを愛しているのなら、どうして彼女を手に入れないのか、何故ルナを助ける必要があったのか俺たちは知りたくてたまらなかった。そうしてそんな頭が謎だらけの俺たちに、リッシュはいきなり爆弾発言をした。
「ソレイユとルナは恋人同士です、あの二人はお互いを深く愛しています」
「ええ!? それじゃ、リッシュは恋敵をわざわざ助けたのか!?」
「えっと女の人同士で恋人なの!?」
「はぁ!? それじゃリッシュの恋が実らねぇだろ!!」
「ええ、そうです。ルナは美しいとソレイユが言っていましたから、盗賊に汚される前に助け出せて本当に良かった」
「でもリッシュ、それじゃお前の好きな人は手に入らない」
「そうなの、リッシュだけ損をしているの」
「ドラゴンなら欲しいメスがいたら、競争相手と戦わなきゃならねぇ!!」
俺もドラゴンだからリッシュの行動が理解できなかった、確かにルナという女性を見捨てるのは酷い話だが、だったらルナを助けた代わりにリッシュにも何か与えられるべきだと思った。でもリッシュはそう言っている俺たちを何故か不思議そうに見ていた、そうしてからリッシュは本当に幸せそうに微笑んでいた、自分が愛することになった人間が幸せになったことを彼は純粋に喜んでいたのだ。
「僕が欲しかったのは生き生きと胡旋舞を踊ってくれたソレイユです、彼女は僕が最初に会った時は恋人のルナを盗賊に攫われ、更に劇団に借金があり彼女は早く身売りしろと言われてました」
「確かにそれは可哀そうだが、リッシュはそれでいいのか?」
「はい、僕はこれでいいです。彼女はルナという恋人が帰ってきて本当に喜んでいました。劇団への借金も僕が代わりに払っておいたので、彼女たちが嫌な客相手に身売りすることもなくなりました」
「でもそれじゃ、それじゃ、リッシュには何も残らないじゃないか!!」
俺はそう言ったがリッシュはまた俺たちを不思議そうに見た、リッシュには本当に何も残らなかった、彼が愛しているというソレイユは別の女性を愛していた。それにリッシュは彼女を助けるためだけに命の危険を冒して盗賊退治までした、それなのにリッシュは何一つ手に入れられないのだ。でも落ち着いて嬉しそうに微笑む、そんなリッシュは本当に幸せそうだった。
それはリッシュの深い愛情がもたらしたものだった、本気でソレイユを愛していたからリッシュは彼女の幸せだけを望んだ。ソレイユ自身をリッシュが手に入れられなくても、リッシュは本当に幸せだったのだ。彼の手の中には形あるものは何も残らなかった、だがリッシュは確かに幸せを手に入れたのだ。誰かを本当に愛してその相手の幸せだけを求めて、そうしてそれが叶ってリッシュは本当に幸せになれたのだ。
「僕の愛おしい人はやっと幸せになれました、彼女が本当に幸せに生きていけるのなら、僕に見返りなんて必要ありません」
「俺は別にいいけど、大きい盗賊団なのか?」
「アクアも行ってもいいの」
「俺様も別に問題ないぜ」
「大きさでいえばまぁまぁです、二百人ほどの盗賊団です」
「ふーん、ちょっと大きめだが確かにまぁまぁだな」
「世の中って盗賊ばっかりいるの」
「まぁ、チビ。厳しい世の中だからな」
リッシュは俺たちから同意が得られたことでホッとしていた、そうしてリッシュは盗賊団の名前や場所などの説明をはじめた。名前はプロムナード盗賊団といって、場所はこの街の西側にある山の中にあるそうだった。俺は盗賊退治に行くのは別に構わなかったが、何故リッシュがそうしたいのか、どうして盗賊退治に行く気になったのかが気になった。
「リッシュ、どうして盗賊退治に行く気になったんだ」
「僕に欲しいものができました、ですが今の僕にはお金がありません」
「ああ、なるほど。その欲しいものって何か、俺たちに教えてくれるか?」
「それは……、無事に手に入ったらお教え致します」
「それならリッシュ、気をつけるんだ。人でもエルフでもドラゴンでも欲が絡んでいる時、そういう時は失敗をしやすいからな」
「シエル様、確かにそうですね。ご忠告をありがとうございます」
こうして俺たちは盗賊退治に行くことになった、いつものように盗賊のアジトらしい場所に着いた、その前に全員がローブを被り鼻まで黒い布で覆って顔を隠した。そうやって準備をしている間、リッシュのことが心配で俺たち三人は彼を観察していた。でもリッシュはいつもどおりの行動をしていた、急に金が欲しいなどと言うから悪い女に騙されている、そんな心配をしていたがリッシュの行動にいつもと変わりはなかった。
「さぁ、それじゃ。いつものように盗賊退治だ、そろそろ行ってみようか?」
「アクアはシエルの傍を離れないの」
「ああ、チビはそうしてな。俺様はシエルより多く盗賊を倒すぜ」
「宝を貯めこんでいるといいですね、それで弱者を救うことができます」
俺たちはリッシュの言葉から急にお金を欲しがる理由、それはまた奴隷になった者に同情でもしているのかと思った、ただそれにしては俺たちに堂々とその理由を教えてくれないのが気になった。でも俺たちがそんなことを気にしていたのは入り口までだった、そこからはいつものように俺が見張りをしている盗賊に声をかけた、とても明るく朗らかにいつもどおりに俺は話しかけた。
「ねぇ、そこのおじさん。プロムナード盗賊団って知ってる?」
「何だてめぇらは、何をしにここへやってきた」
「プロムナード盗賊団を探してるんだ、ちょっとそこをプチッと潰そうかと思って」
「ぶっはははっ、馬鹿じゃねぇか。たった四人で何ができる、俺たちはプロムナード盗賊団だぞ」
「さっさと教えてくれればいいのに、まぁいいや。とりあえず、『電撃槍』!!」
「ぎゃあああぁぁぁ!?」
俺はプロムナード盗賊団だと確認をして、見張りをしていた数人を雷撃の魔法で焼き殺した。そこからはいつも通りだった、俺はアクアと離れ過ぎないようにしながら、そうして盗賊たちを殺していった。アクアはいつものように皆の様子をみて、空から降っている矢や魔法を防御魔法で防いでくれた。レンもいつもどおりだった、俺より盗賊を沢山倒すといいながら、いつでも仲間のことを気にして動いていた。
「おい、この人質を……」
「させません、炎よ!!」
特にリッシュの活躍が今回は凄かった、決して盗賊に人質をとらせなかったし、次々と盗賊たちを射殺していった。それにリッシュの弓の腕はいつものように確かだった、確実に盗賊を一人ずつだが減らしていった。弓矢で戦うというと遠距離戦を普通は思い浮かべるが、リッシュは体術を駆使して近距離の盗賊でも軽やかな動きで射殺してみせた。
二百人はいたという盗賊団だったが、壊滅するのにそんなに時間はかからなかった。レンによるとリッシュは発情期だそうだが、性欲というものはこんなにエルフを強くするのだろうか、今回はリッシュはレンと同じくらい多くの盗賊を倒していた。そうして盗賊退治のお楽しみのお宝探しになった、俺たちはいつもどおりに俺とレン、それにリッシュで金貨や銀貨を山分けにした。
「シエル様、次は人質の解放ですね」
「ああ、そうだな」
「申し訳ありませんが、その時に質問をいくつかしてもよろしいでしょうか」
「へっ? ああ、俺たちの正体がバレないようにしてくれれば構わない」
「ありがとうございます、シエル様」
「ああ、うん」
そうして人質を解放することになったのだが、リッシュは声色を変えてその前に人質に質問をした。攫われてきたのはどのくらい前なのか、銀の髪に赤い瞳を持つ女性はいるか、その女性は性的暴行を受けたのかという質問だった。俺たちはリッシュが惚れた女を助けに来たのかと思った、でもリッシュは質問してそれらしい女性が心も体も無事だと分かると、それでもう十分らしくすぐに女性たちを解放した。
「リッシュ、ええとな。一体何がしたかったのか、教えて貰ってもいいか?」
「シエル様、それは僕の欲しいものが手に入ったら、必ず皆様にお教え致します」
そうして俺たちは無事に盗賊退治を終えて街に帰ってきた、でも俺とアクアそれにレンは疑問で頭がいっぱいだった。リッシュは街に帰るとすぐにどこかへ出かけていった、俺たちはリッシュが欲しいものが手に入るまでは、それが何なのか聞くことができず疑問だけが膨らんでいった。やがてリッシュは戻ってきた、そうして俺たちに深く一礼して感謝の言葉を述べた。
「皆様、ありがとうございます。僕は欲しいものをちゃんと手に入れました、これも全て皆様の協力のおかげです」
「良かったな、リッシュ。それで何も持っていないように見えるが、リッシュが欲しかったものって一体何だったんだ?」
俺が代表してそう聞くとリッシュは穏やかに幸せそうに微笑んだ、そうして俺たちをこの街の劇場に連れていった。そこでは様々な芸を披露する者たちがいた、そして俺たちは二人の女性を見ることになった。一人は銀の髪に赤い瞳を持った俺たちが盗賊から助けた女性だった、もう一人は金の髪に青い瞳を持つどちらも美しい女性たちだった。
「金の髪に青い瞳なのがソレイユ、銀の髪に赤い瞳をしているのがルナです」
「へぇー、それでリッシュが好きなのはどっちの女性だ?」
「僕が愛しているのはソレイユです、太陽という意味をもつ名前で胡旋舞がとても得意です」
「それじゃ、ルナっていうのは誰なんだ? もしかしてリッシュは二人とも好きなのか!?」
「いいえ、僕が愛したのはソレイユです。ルナは月という意味の名前持つソレイユの仲間です」
「よく分からなくなってきた、リッシュは結局ソレイユを手に入れたのか?」
そうやって話している間にソレイユとルナの二人が踊り出した、二人の胡旋舞はとても美しかった、そう思わず俺たちも息を呑むほど美しいものだった。リッシュはそんな二人を見て満足気に微笑んでいた、そこには発情期の性欲などはまるで無いように俺には思えた。リッシュはとても美しい胡旋舞を二人が踊り終わるまで、ずっと微笑みながら彼女たちを見つめていた。
そうして踊り終わった二人の幸せそうな笑顔を見届けると、俺たちに宿屋に帰りましょうと言ってきた。だから俺たちは大人しく宿屋に帰ったのだが、もちろんまだリッシュに聞きたいことが山ほどあった。ソレイユのことを愛しているのなら、どうして彼女を手に入れないのか、何故ルナを助ける必要があったのか俺たちは知りたくてたまらなかった。そうしてそんな頭が謎だらけの俺たちに、リッシュはいきなり爆弾発言をした。
「ソレイユとルナは恋人同士です、あの二人はお互いを深く愛しています」
「ええ!? それじゃ、リッシュは恋敵をわざわざ助けたのか!?」
「えっと女の人同士で恋人なの!?」
「はぁ!? それじゃリッシュの恋が実らねぇだろ!!」
「ええ、そうです。ルナは美しいとソレイユが言っていましたから、盗賊に汚される前に助け出せて本当に良かった」
「でもリッシュ、それじゃお前の好きな人は手に入らない」
「そうなの、リッシュだけ損をしているの」
「ドラゴンなら欲しいメスがいたら、競争相手と戦わなきゃならねぇ!!」
俺もドラゴンだからリッシュの行動が理解できなかった、確かにルナという女性を見捨てるのは酷い話だが、だったらルナを助けた代わりにリッシュにも何か与えられるべきだと思った。でもリッシュはそう言っている俺たちを何故か不思議そうに見ていた、そうしてからリッシュは本当に幸せそうに微笑んでいた、自分が愛することになった人間が幸せになったことを彼は純粋に喜んでいたのだ。
「僕が欲しかったのは生き生きと胡旋舞を踊ってくれたソレイユです、彼女は僕が最初に会った時は恋人のルナを盗賊に攫われ、更に劇団に借金があり彼女は早く身売りしろと言われてました」
「確かにそれは可哀そうだが、リッシュはそれでいいのか?」
「はい、僕はこれでいいです。彼女はルナという恋人が帰ってきて本当に喜んでいました。劇団への借金も僕が代わりに払っておいたので、彼女たちが嫌な客相手に身売りすることもなくなりました」
「でもそれじゃ、それじゃ、リッシュには何も残らないじゃないか!!」
俺はそう言ったがリッシュはまた俺たちを不思議そうに見た、リッシュには本当に何も残らなかった、彼が愛しているというソレイユは別の女性を愛していた。それにリッシュは彼女を助けるためだけに命の危険を冒して盗賊退治までした、それなのにリッシュは何一つ手に入れられないのだ。でも落ち着いて嬉しそうに微笑む、そんなリッシュは本当に幸せそうだった。
それはリッシュの深い愛情がもたらしたものだった、本気でソレイユを愛していたからリッシュは彼女の幸せだけを望んだ。ソレイユ自身をリッシュが手に入れられなくても、リッシュは本当に幸せだったのだ。彼の手の中には形あるものは何も残らなかった、だがリッシュは確かに幸せを手に入れたのだ。誰かを本当に愛してその相手の幸せだけを求めて、そうしてそれが叶ってリッシュは本当に幸せになれたのだ。
「僕の愛おしい人はやっと幸せになれました、彼女が本当に幸せに生きていけるのなら、僕に見返りなんて必要ありません」
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