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3-06懐かしい子守歌はもう聞こえない
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「レン!!」
「どうして!? レン!?」
「レン様!! すぐに行きます!!」
レンが海に飛び込んでしまった時、一番早く反応したのはリッシュだった。彼は素早く海に飛び込んで、レンが落ちてしまった辺りまで泳いでいった。俺がアクアを背負って岩場からその場所を見下ろすと、何人ものマーメイド族がいることが分かった。彼女たちは美しい長い髪を水の中で揺らめかせながら、レンと助けにいったリッシュを水の中に引きずり込もうとしていた。
「レン、リッシュ!! 『水竜巻』!!」
俺は水の中級魔法を使ってレンやリッシュを避けて、海の中の水を竜巻のようにかき混ぜた。マーメイド族には迷惑な話だったろうが、彼らが死なないように一応は手加減した。やがてリッシュがレンを抱えて水面に現れた、俺とアクアは素早く『浮遊』の魔法を二人にかけた。そうしてレンとリッシュは水から上がって、空中に浮きやがて俺とアクアがいる岩場に辿り着いた。俺とアクアは真っ先にレンの無事を確認した、レンは辛うじてだが息をして水を吐いた、次にリッシュを見たが彼は水も飲んでおらず無事だった。
「がはっ!? げほっ!! けほっ、けほっ!!」
「レン、無事か!!」
「大丈夫なの?」
「なっ、なんだ!! 何が起こりやがった!? げほっ、けほっ、けほっ!!」
「いきなりレンが海に飛び込んだ、それで溺れたからリッシュが助けてくれた」
「まだレンの胸の音が変なの、『大治癒』」
「げほっ、けほっ、うええぇぇ、げほっ!!」
「飲み込んだ水を全て吐き出すんだ、レン」
「レンの胸の音が綺麗になったの、これできっと大丈夫なの」
俺はレンの体を支えて飲み込んでしまった水を吐き出させた、レンの胸にアクアが耳をあてて音を聞いていた。そして胸の中にまだ水が残っている音がしたので、回復の中級魔法を使ってその水をレンの体から追い出した。レンは体の中に入り込んだ水を全て吐き出した、それでどうにかレンの命の危機は去ったようだった。やがてレンはふらつきながら、どうにか立ち上がった。
「くっそっ!! マーメイド族に騙されたなんて恥だ!! 俺様のブレスで焼き払ってやる!!」
「レン!! それはちょっとやりすぎだ!!」
「マーメイド族が皆、死んじゃうの!!」
「まぁまぁ、レン様とりあえず落ち着いてみましょう」
「ああ!? って、リッシュは俺様を助けてくれたんだな。ありがとよ」
「やっと落ち着いたか、レン」
「ふうぅ、マーメイド族の危機だったの」
「はい、レン様。僕は自分にできることをしただけです、どうかその寛大なお心であのマーメイド族も許してやってください」
「そっかそうだな、見間違えた俺様が悪かった。分かったよ、許してやらぁ!!」
「見間違えた?」
「レンは一体何を見たの?」
「マーメイド族は彼女たちなりに生きるのに必死なのです、レン様にお許しいただいて良かったです」
レンは何かを見てマーメイド族のいる海へと飛び込んでしまった、でもレンはただ恥だと言うばかりで何を見たのかは教えてくれなかった。レンはマーメイド族に襲われたが助かった、でもそれからだったレンが歌が聞こえると言いだしたのだ。それで俺たちがどんな歌が聞こえるのかと聞いたら、レンは黙ってしまって教えてくれなかった。そうして三日経った頃だった、宿屋の空き部屋でレンは他の皆には内緒で俺だけに相談してきた。
「シエル、歌がまた聞こえるんだ。この国をそろそろ出ようぜ」
「国を出るのはいいけど、本当に何の歌が聞こえるんだ?」
「チッ、子守歌だ。俺様に聞こえるのは子守歌だ」
「ああ、大いなる種族に伝わるあの歌か」
「俺様はマーメイド族と交尾なんてできねぇ、だって俺様が見たのは……」
「レンが見たのは何だ?」
そこでレンは言い淀んでいた、彼にとっては言いにくいことだった。俺はレンが話してくれるまで待っていた、レンは明らかに動揺していた。それに落ち込んでもいた、それでも俺は聞いておきたかった。レンを誘惑したマーメイド族は一体何をレンに見せたのだろうか、それはレンが好きになるような女性だったはずだ。でもレンはマーメイド族と交尾したくないと言う、そう言うレンはとても暗い顔で囁くような声で、ようやく俺にレンが見たものを教えてくれた。
「…………俺様が見たのは母ちゃんだ」
「ああ、そうだったのか」
「あれは俺様の母ちゃんだった、だから俺様はマーメイド族と交尾なんてできねぇ」
「そうか、レンにとって彼女はとても愛おしいが、だからといって交尾の対象にはならないもんな」
「だから俺様に聞こえるのは子守歌なんだ」
「そうかよく分かった、明日にはこの国を出よう」
俺はレンが何を悩んでいたのか分かった、俺だって大人になってすぐの頃は母さんやあかり姉さん、そう家族である彼女たちのことばかり考えていた。レンもまだ大人になって日が浅いのだ、だから母親の幻を見せられて海に飛び込んだ。俺たちドラゴン族にとって母親は特別なものだ、ほとんど父親であるドラゴンは子育てをしないから、自然と俺たちにとっては母親のドラゴンがとても大事な者になるのだ。
「アクア、リッシュ。この悪魔族の国を出よう、それにアクアちょっと頼みがあるんだ」
「俺様の為に悪いな、迷惑をかける」
「レンの為なら仕方ないの、シエル。アクアに頼みってなぁに?」
「そうですよレン様、迷惑だなんてとんでもないです」
相変わらずレンにはマーメイド族の歌が聞こえるようだった、俺はそんな歌が聞こえるのならもういっそ、その子守歌をレンの中で別の印象に変えてしまえばいいと思ったのだ。今のレンにとっては大いなる種族に伝わる子守歌は母親の象徴なのだろう、でも今度からはその子守歌は全く違うものになるのだ、その為に俺はアクアに大いなる種族に伝わる子守歌を教えた。
「アクア、できるだけ元気良く、レンを守る為に歌ってほしい」
「うん、分かった。アクアがレンを守るの!!」
それから俺たちは旅支度をはじめた、悪魔族の国は辺境にあったから、珍しい物や本がいっぱいあった。それらを俺は買い占めて自分の『魔法の箱』に入れておいた、それ以外にも旅に必要そうなものを買っておいた。レンはアクアから元気のいい子守歌を聞かされていた、最初の頃はレンはその意味が分からずにあっけにとられていた。
「どうか、お休みなさい!! 大きな世界の力に帰るまで、緑の木々に守られて、多くの精霊が見守る、豊かな森に感謝して、そう優しい風が頬を撫で、光が私たちを照らすなか、そう安らかにお休みなさい!! 私の愛しい者たちよ、もう誰も貴方たちを傷つけることはない!!」
アクアは大いなる種族に伝わる子守歌をとても元気良く歌ってくれた、そこには仲間を守るというアクアの強い意志が感じられた。アクアは子ども寝かしつける為に歌っているのではなかった、自分の仲間であるレンを守る為に必死に歌っていた。俺たちはアクアの元気のいい子守歌を聞きながら、悪魔族の国を出ていき旅へと戻っていった。
「はははっ、チビ。そんなに元気の良い子守歌があるかよ」
レンの表情は最初のうちは暗かったが、アクアの子守唄を聞いているうちに、いつものレンに戻っていった。レンはやっとマーメイド族の子守唄が聞こえなくなったと言った、そうしてアクアの元気のいい子守歌をレンは気に入っていた。悪魔族の国から出ても海が近くにあって心配だったが、もうレンにはマーメイド族の歌が聞こえることはなかった。
「なぁ、シエル。母ちゃんってやっぱり特別だよな」
「ああ、レン。俺にとっても母さんは特別なドラゴンだよ」
「いつか俺様は母ちゃんよりも強い、そんなメスのドラゴンを見つけるんだ」
「俺だってそうさ、きっと強くて綺麗な将来のお嫁さんを見つけてみせるんだ」
「いや、お前はチビがいるからな。だから、メスのドラゴンは諦めねぇとな」
「うん? 何で俺の大切なアクアのことが、俺の将来の交尾相手と関係するんだ」
俺がそうレンに言ったらレンはお腹を抱えて笑い転げていた、その笑い方には全く悪意がなくてすがすがしいくらいの笑いっぷりだった。だから俺は不思議には思ったが、レンに対して怒ることはなかった。アクアは俺の大切な家族なのは間違いない、でも俺にいつかドラゴンのお嫁さんができたらどうしよう、いやきっと俺のお嫁さんはアクアのことだって受け入れてくれると思った。
「懐かしい子守歌だった、でも俺様にはもうチビの子守歌があるからな」
「レン、アクアの子守歌。気に入った?」
「ああ、一生懸命に歌ってくれてありがとな。もう、あの懐かしい子守歌は聞こえねぇ」
「それなら、アクアはもう子守歌を歌わないの。でもレンが聞きたい時には、すぐに歌ってあげるの」
「また俺様が聞きたくなったら頼むぜ、チビ」
「うん、アクアは頼まれたの」
やがて海から離れるとレンは少しだけ寂しそうな顔をして、そうして海があった方を見ていることがあった。レンも自分に優しかった母親のドラゴンのことが忘れられないのだ、それでも過去を見続けてマーメイド族の虜になるのではなく、未来を見て歩いていこうとするレンは強かった。そう俺のレンはとても優しくて強い男の子で、同時にとても誇り高きドラゴンでもあった。
そうして俺たちは旅を続けていたが、ある日小さな村へと辿り着いた。そこは別に特徴のない普通の村に見えた、俺たちは夜が迫っていたのでその村の長と話して、空き家になっている家を貸してもらうことにした。そうして俺は商人なので村人相手に物を売ったり買ったりした、そんな俺の隣にいたアクアが俺にこう言った。
「シエル、あの子とっても綺麗。まるで、人間じゃないみたい」
「どうして!? レン!?」
「レン様!! すぐに行きます!!」
レンが海に飛び込んでしまった時、一番早く反応したのはリッシュだった。彼は素早く海に飛び込んで、レンが落ちてしまった辺りまで泳いでいった。俺がアクアを背負って岩場からその場所を見下ろすと、何人ものマーメイド族がいることが分かった。彼女たちは美しい長い髪を水の中で揺らめかせながら、レンと助けにいったリッシュを水の中に引きずり込もうとしていた。
「レン、リッシュ!! 『水竜巻』!!」
俺は水の中級魔法を使ってレンやリッシュを避けて、海の中の水を竜巻のようにかき混ぜた。マーメイド族には迷惑な話だったろうが、彼らが死なないように一応は手加減した。やがてリッシュがレンを抱えて水面に現れた、俺とアクアは素早く『浮遊』の魔法を二人にかけた。そうしてレンとリッシュは水から上がって、空中に浮きやがて俺とアクアがいる岩場に辿り着いた。俺とアクアは真っ先にレンの無事を確認した、レンは辛うじてだが息をして水を吐いた、次にリッシュを見たが彼は水も飲んでおらず無事だった。
「がはっ!? げほっ!! けほっ、けほっ!!」
「レン、無事か!!」
「大丈夫なの?」
「なっ、なんだ!! 何が起こりやがった!? げほっ、けほっ、けほっ!!」
「いきなりレンが海に飛び込んだ、それで溺れたからリッシュが助けてくれた」
「まだレンの胸の音が変なの、『大治癒』」
「げほっ、けほっ、うええぇぇ、げほっ!!」
「飲み込んだ水を全て吐き出すんだ、レン」
「レンの胸の音が綺麗になったの、これできっと大丈夫なの」
俺はレンの体を支えて飲み込んでしまった水を吐き出させた、レンの胸にアクアが耳をあてて音を聞いていた。そして胸の中にまだ水が残っている音がしたので、回復の中級魔法を使ってその水をレンの体から追い出した。レンは体の中に入り込んだ水を全て吐き出した、それでどうにかレンの命の危機は去ったようだった。やがてレンはふらつきながら、どうにか立ち上がった。
「くっそっ!! マーメイド族に騙されたなんて恥だ!! 俺様のブレスで焼き払ってやる!!」
「レン!! それはちょっとやりすぎだ!!」
「マーメイド族が皆、死んじゃうの!!」
「まぁまぁ、レン様とりあえず落ち着いてみましょう」
「ああ!? って、リッシュは俺様を助けてくれたんだな。ありがとよ」
「やっと落ち着いたか、レン」
「ふうぅ、マーメイド族の危機だったの」
「はい、レン様。僕は自分にできることをしただけです、どうかその寛大なお心であのマーメイド族も許してやってください」
「そっかそうだな、見間違えた俺様が悪かった。分かったよ、許してやらぁ!!」
「見間違えた?」
「レンは一体何を見たの?」
「マーメイド族は彼女たちなりに生きるのに必死なのです、レン様にお許しいただいて良かったです」
レンは何かを見てマーメイド族のいる海へと飛び込んでしまった、でもレンはただ恥だと言うばかりで何を見たのかは教えてくれなかった。レンはマーメイド族に襲われたが助かった、でもそれからだったレンが歌が聞こえると言いだしたのだ。それで俺たちがどんな歌が聞こえるのかと聞いたら、レンは黙ってしまって教えてくれなかった。そうして三日経った頃だった、宿屋の空き部屋でレンは他の皆には内緒で俺だけに相談してきた。
「シエル、歌がまた聞こえるんだ。この国をそろそろ出ようぜ」
「国を出るのはいいけど、本当に何の歌が聞こえるんだ?」
「チッ、子守歌だ。俺様に聞こえるのは子守歌だ」
「ああ、大いなる種族に伝わるあの歌か」
「俺様はマーメイド族と交尾なんてできねぇ、だって俺様が見たのは……」
「レンが見たのは何だ?」
そこでレンは言い淀んでいた、彼にとっては言いにくいことだった。俺はレンが話してくれるまで待っていた、レンは明らかに動揺していた。それに落ち込んでもいた、それでも俺は聞いておきたかった。レンを誘惑したマーメイド族は一体何をレンに見せたのだろうか、それはレンが好きになるような女性だったはずだ。でもレンはマーメイド族と交尾したくないと言う、そう言うレンはとても暗い顔で囁くような声で、ようやく俺にレンが見たものを教えてくれた。
「…………俺様が見たのは母ちゃんだ」
「ああ、そうだったのか」
「あれは俺様の母ちゃんだった、だから俺様はマーメイド族と交尾なんてできねぇ」
「そうか、レンにとって彼女はとても愛おしいが、だからといって交尾の対象にはならないもんな」
「だから俺様に聞こえるのは子守歌なんだ」
「そうかよく分かった、明日にはこの国を出よう」
俺はレンが何を悩んでいたのか分かった、俺だって大人になってすぐの頃は母さんやあかり姉さん、そう家族である彼女たちのことばかり考えていた。レンもまだ大人になって日が浅いのだ、だから母親の幻を見せられて海に飛び込んだ。俺たちドラゴン族にとって母親は特別なものだ、ほとんど父親であるドラゴンは子育てをしないから、自然と俺たちにとっては母親のドラゴンがとても大事な者になるのだ。
「アクア、リッシュ。この悪魔族の国を出よう、それにアクアちょっと頼みがあるんだ」
「俺様の為に悪いな、迷惑をかける」
「レンの為なら仕方ないの、シエル。アクアに頼みってなぁに?」
「そうですよレン様、迷惑だなんてとんでもないです」
相変わらずレンにはマーメイド族の歌が聞こえるようだった、俺はそんな歌が聞こえるのならもういっそ、その子守歌をレンの中で別の印象に変えてしまえばいいと思ったのだ。今のレンにとっては大いなる種族に伝わる子守歌は母親の象徴なのだろう、でも今度からはその子守歌は全く違うものになるのだ、その為に俺はアクアに大いなる種族に伝わる子守歌を教えた。
「アクア、できるだけ元気良く、レンを守る為に歌ってほしい」
「うん、分かった。アクアがレンを守るの!!」
それから俺たちは旅支度をはじめた、悪魔族の国は辺境にあったから、珍しい物や本がいっぱいあった。それらを俺は買い占めて自分の『魔法の箱』に入れておいた、それ以外にも旅に必要そうなものを買っておいた。レンはアクアから元気のいい子守歌を聞かされていた、最初の頃はレンはその意味が分からずにあっけにとられていた。
「どうか、お休みなさい!! 大きな世界の力に帰るまで、緑の木々に守られて、多くの精霊が見守る、豊かな森に感謝して、そう優しい風が頬を撫で、光が私たちを照らすなか、そう安らかにお休みなさい!! 私の愛しい者たちよ、もう誰も貴方たちを傷つけることはない!!」
アクアは大いなる種族に伝わる子守歌をとても元気良く歌ってくれた、そこには仲間を守るというアクアの強い意志が感じられた。アクアは子ども寝かしつける為に歌っているのではなかった、自分の仲間であるレンを守る為に必死に歌っていた。俺たちはアクアの元気のいい子守歌を聞きながら、悪魔族の国を出ていき旅へと戻っていった。
「はははっ、チビ。そんなに元気の良い子守歌があるかよ」
レンの表情は最初のうちは暗かったが、アクアの子守唄を聞いているうちに、いつものレンに戻っていった。レンはやっとマーメイド族の子守唄が聞こえなくなったと言った、そうしてアクアの元気のいい子守歌をレンは気に入っていた。悪魔族の国から出ても海が近くにあって心配だったが、もうレンにはマーメイド族の歌が聞こえることはなかった。
「なぁ、シエル。母ちゃんってやっぱり特別だよな」
「ああ、レン。俺にとっても母さんは特別なドラゴンだよ」
「いつか俺様は母ちゃんよりも強い、そんなメスのドラゴンを見つけるんだ」
「俺だってそうさ、きっと強くて綺麗な将来のお嫁さんを見つけてみせるんだ」
「いや、お前はチビがいるからな。だから、メスのドラゴンは諦めねぇとな」
「うん? 何で俺の大切なアクアのことが、俺の将来の交尾相手と関係するんだ」
俺がそうレンに言ったらレンはお腹を抱えて笑い転げていた、その笑い方には全く悪意がなくてすがすがしいくらいの笑いっぷりだった。だから俺は不思議には思ったが、レンに対して怒ることはなかった。アクアは俺の大切な家族なのは間違いない、でも俺にいつかドラゴンのお嫁さんができたらどうしよう、いやきっと俺のお嫁さんはアクアのことだって受け入れてくれると思った。
「懐かしい子守歌だった、でも俺様にはもうチビの子守歌があるからな」
「レン、アクアの子守歌。気に入った?」
「ああ、一生懸命に歌ってくれてありがとな。もう、あの懐かしい子守歌は聞こえねぇ」
「それなら、アクアはもう子守歌を歌わないの。でもレンが聞きたい時には、すぐに歌ってあげるの」
「また俺様が聞きたくなったら頼むぜ、チビ」
「うん、アクアは頼まれたの」
やがて海から離れるとレンは少しだけ寂しそうな顔をして、そうして海があった方を見ていることがあった。レンも自分に優しかった母親のドラゴンのことが忘れられないのだ、それでも過去を見続けてマーメイド族の虜になるのではなく、未来を見て歩いていこうとするレンは強かった。そう俺のレンはとても優しくて強い男の子で、同時にとても誇り高きドラゴンでもあった。
そうして俺たちは旅を続けていたが、ある日小さな村へと辿り着いた。そこは別に特徴のない普通の村に見えた、俺たちは夜が迫っていたのでその村の長と話して、空き家になっている家を貸してもらうことにした。そうして俺は商人なので村人相手に物を売ったり買ったりした、そんな俺の隣にいたアクアが俺にこう言った。
「シエル、あの子とっても綺麗。まるで、人間じゃないみたい」
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