ドラゴンから人間に縛りプレイで最強へ

アキナヌカ

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3-05そう言われたから生きていきたい

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「アクアはスティーリアに生きてて欲しいの」
「ああ、貴女はこんな私のことを本当に、心から想ってくれているのね」

「アクアはスティーリアに幸せになって欲しいの」
「いいえ、もう十分に私は幸せになったわ」

「それならアクアはこう願うの、スティーリアは過去を忘れずにこれからの未来を生きるの」
「ええ、そうね。過去はなかったことにできない、それでも私は生きていかなければならないのね」

 俺たちが隣国である悪魔族の国に着いた時、三カ月くらいかかったがその間にスティーリアは回復していった。俺の大切な家族であるアクアがその心の傷を癒していた、過去に囚われていたスティーリアに未来というものを見るように促した。スティーリアはアクアに優しく話を聞いて貰うことで、そう罪人である自分というものを受けいれて貰うことで、そうして彼女はやっと自分の力で未来へと目を向けることができたのだ。

「皆さん、私をここまで送ってくれてありがとう。私はずっと罪を背負って生きていくわ、自分から死んだりしないでまた薬師としてやり直してみるわ」

 悪魔族の国に着いたらスティーリアとはお別れだった、彼女はもう自分の力で生きていく決心をしていた。過去の罪も忘れるのではなく背負って生きていく、そういう強い覚悟を彼女はもうしていたのだ。俺やレンそれにリッシュはそれぞれスティーリアにお礼を言われた、でも一番に彼女が感謝していたのは自分の心を救ってくれたアクアだった。

「アクアちゃん、どうかどうかいつまでも元気でいてね」
「うん、スティーリア。これでお別れなの、アクアも凄く寂しいの」

「ええ、私もとっても寂しいわ。でも貴女の優しい言葉を決して忘れない、貴女が心から願ってくれたことが、きっとこれからの私を生かしてくれるわ」
「アクアはスティーリアに生きてて欲しい、そう当たり前のことを願っただけなの」

「いいえ、当たり前じゃなかった。私が生きていくことの全てを否定されてしまった時、私がこれからも生きることを許してくれた貴女がとても愛おしかったわ」
「アクアもスティーリアが大好き、スティーリアはアクアのまるで昔のお母さんみたい、とっても優しくしてくれてアクアは凄く嬉しかったの」

 そうして俺たちはスティーリアとお別れをした、アクアとスティーリアはお互いに泣きながらお別れをしていた。そしてスティーリアは別れ際に俺に教えてくれた、スティーリアが死なせてしまった女の子が、その子はアクアにそっくりだったそうだ。まるで亡くなった子どもから許して貰ったようだったと、そうスティーリアはこっちまで切なくなるような笑顔で教えてくれたのだった。

「罪を犯しても償うことができる、そう彼女には証明して貰いたいな」

 スティーリアの姿はやがて雑踏の中へと消えていった、俺たちはそのまま悪魔族の国を見物していくことになった、多くの悪魔はスティーリアと同じように角としっぽを持っていた。だが悪魔族の外見は様々で大きな猫のような者や、一見すると動いている樹のような者までいた。アクアは物珍しげにその悪魔たちを見ていた、俺を含む残りの三人も同じようなものだった。そしてこの悪魔族の国には海があった、とても広くて青い綺麗な海が広がっていた。

「そういえば皆は泳げるのか?」
「アクアは体育で水泳は得意だったの」
「俺様は湖で泳ぎを覚えたぜ」
「僕も村の近くの湖に行っていました」

 俺も湖で『飛翔フライ』の練習をしていた時に泳ぎ方を覚えていた、これならせっかくある海に近づいてみたかったし、ちょっとくらい泳いで遊んでも大丈夫そうだった。俺たちはそれぞれ水着を海の近くにある店で購入した、そうして泳いでいいと開放されている公園で四人で泳いでみた。俺たちの中ではリッシュが一番泳ぐのが上手かった、なんでも妹のディアも湖で泳ぐことが大好きで、いつもリッシュは保護者としてついていっていたそうだ。そして公園で泳ごうとした俺たちは、親切な悪魔族から忠告を受けた。

「ああ、この国によく来たねぇ」
「ここは泳ぐにはいいところだよ」
「でも、マーメイド族が出るの」
「男性は注意しなきゃ」
「気に入られると死ぬまで絞りとられるよ」
「そう彼女たちが美しいからって、騙されちゃいけないからね」

 それが少し気になったが俺たちは海で思いっきり遊んでみた、海水で泳ぐのも空を飛ぶのとはまた違った面白さがあった。ちょうど寒くも暑くもない時期で俺たち以外にも泳いでいる悪魔族がいた、俺たちはそんな彼らと一緒になって海というものをたっぷりと楽しんだ。でもまたこの辺りにはマーメイド族が出るから、特に男性は溺死に注意するようにと言われることになった、そしてアクアがその理由を俺に聞いてきた。

「マーメイド族って何なの? どうして男性は溺死に注意するの?」
「あー、それはだな。アクア、マーメイド族の繁殖に関わる問題なんだ」

「繁殖って交尾のことなの?」
「ああ、そうだ。まず、マーメイド族には男性がいない」

「ええ!? それでどうやって交尾するの?」
「だから他種族の男性を捕まえて、そうしてマーメイド族は交尾をする。それは別に種族の繁栄のためだからいいんだが、気に入った男性を溺死するまで襲うマーメイド族もいるんだ」

「むぅ、それじゃシエルも気をつけるの。体は小さいけど、シエルはもう立派な大人なの」
「分かっているよ、俺も十分に注意するさ」

 俺とレンそれにリッシュはそれぞれ大人だった、特にリッシュはエルフで美しく魅力的な男性だった。俺たちはアクアには内緒で気をつけようとお互いに話し合った、マーメイド族の執着は時に異常に強くなることがあるとレンは言っていた。それはレンが育て親のドラゴンから聞いた話だった、マーメイド族は美しく強い種族の男性を狙うから、俺はやっぱりリッシュが一番に危険な気がしていた。

「リッシュとしてはどうなんだ、マーメイド族と子どもを作ってもいいのか?」
「僕としては嫌ですね、自分の子どもを作るなら、きちんと自分で育てたいです」
「それならリッシュは気をつけねぇとな、お前は綺麗だし体も鍛えている」

「そうだよな、リッシュは族長候補だったんだもんな」
「ええ、ですから体を鍛えるのは当然でした。だから、僕は他のエルフより体格が良いのです」
「マーメイド族から狙われるかもな、俺様は顔は綺麗でもねぇしそんなに危険はねぇな」

「いや、レンもなかなかカッコいい顔をしていると思うぞ。ちょっと怖い顔立ちだけどな」
「レン様もお綺麗ですよ、それにドラゴン族だとバレたら、きっと強い子どもができると狙われます」
「うっわっ、俺様もかよ。それじゃ、安全なのはシエルだけじゃねぇか!?」

 確かに俺はレンやリッシュと比べると大人としては小さかった、レンは俺とそう年は変わらないのに背が高くて良い体格をしていた。リッシュはいうまでもなくエルフらしい綺麗な顔に、それに加えて鍛えられた体を持っていた。俺は完全に大人の男としては二人に負けていた、とても悔しいが俺はまだ成長途中なのだ。いつかきっとレンやリッシュのような、マーメイド族に狙われる大人の男になるのだ。

 いや別に俺はマーメイド族には狙われたくなかった、それに交尾をするマーメイド族に溺死させられるのもごめんだった。向こうは本能的にやっていることなのだろう、でも溺死するほど愛されても嬉しくはなかった、ただマーメイド族が得をするだけで迷惑なだけの話だった。そんなことをアクアには内緒でこっそりと男たちだけで話し合っていた、それからはマーメイド族に気をつけながら俺たちは海を純粋に楽しんだ。

「あー、楽しかった。偶には泳ぐのもいいな、なぁアクア、レン、リッシュ」
「アクアも楽しかったの、リッシュは泳ぐのが凄く上手いの」
「ホントだよな、俺様もあんなに綺麗には泳げねぇ」
「お褒め頂き光栄です、僕には泳ぎが下手なディアという妹がいましたから、それで余計によく泳げるようになりました」

「妹ってどんなものなんだろうな、なぁアクア、レン」
「アクアには妹がいなかったから分からないの」
「俺様もだ、残念ながら妹はいねぇからなぁ」
「兄妹というのも良いものです、妹は僕にとても懐いてくれました」

「まぁ、俺にとってはアクアが妹みたいなものか」
「むうぅ、それはとってもアクアは嫌なの」
「なんだチビ、シエルの妹になるのは嫌なのかよ」
「アクア様はシエル様と仲がよろしいのに、……そうですか、だからこそ妹では嫌なのですね」

 俺はアクアが俺の妹になるのを嫌がったことに衝撃を受けた、今までアクアのことを妹のように思っていたし、それにそんなつもりで俺は可愛がっていた。でもアクアは俺の妹になるのは嫌だと言う、何故なのだろうか俺は兄として頼りないのだろうか、俺とアクアのそんな話をリッシュが興味深そうに聞いていた。レンはアクアの態度を不思議そうに見ていたが、そんなに深く気にしていなかった。

「アクアは大切な俺の家族だぞ、そう妹のように大切な家族だ、アクア俺の妹になってくれ」
「家族なのは確かだから良いの、でもシエルの妹になるのは絶対に嫌!!」
「そうですね、シエル様が好きなアクア様としては、それは絶対に嫌でしょうね」

 俺とリッシュの注意がアクアに向いていた、俺はアクアに妹になってくれと頼んだが、絶対に嫌だと拒絶された。俺は立っている地面に倒れ込むくらいに落ち込んだ、いっそ足元の砂の中に埋もれたいとすら思った。それほど俺にとっては衝撃的な出来事だったのだ、アクアに俺は精一杯の愛情を注いでいたが、それを全て拒否されたような気すらした。でも、アクアは俺を確かに家族だとは言ってくれた。

 俺とアクアにとって大事な話をしていたそんな時だった、いつの間にか俺たちの傍からレンがいなくなっていた。俺はそれに気がついて海の方を探した、アクアとリッシュも俺と同じようにレンのことを探し始めた。そうしたらレンは海に一番近い岩場にいた、ちょっと高さがある岩場でそこから海に飛び込むのは危険そうだった。だが俺たちの見ている前でレンは何かに誘われるように動いた、そうしてレンはふらっとその岩場から海に飛び込んでしまったのだ。

「レン!!」
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