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2-30世界を見るのを邪魔させない
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「こんにちは。俺は商人のシエル、こっちは俺の妹のアクア。それに護衛であるレンとリッシュです」
「ポーラスタ国へようこそ。うん、アクアとリッシュとやらの身分証が無いのか」
「アクアはまだ十歳の子どもなので身分証はないんです、そしてリジエール国ではあの憎むべき奴隷制のせいで、リッシュの身分証は作れなかったんです」
「そうか確かにまだ十歳くらいの子どもだな、……それに彼はエルフだからか。我がポーラスタ国でなら大丈夫だ、奴隷制など無いからエルフも身分証が作れる」
「そうですか、それを聞いて安心しました!!」
「ただ、身分証が無いから通行料を倍額払って貰うことになるが問題ないか?」
「もちろん大丈夫です」
「それじゃ、改めてポーラスタ国へようこそ」
ポーラスタ国の役人の言葉に俺は頷いて、全員で銀貨六枚の通行料を支払った。それで俺たちはポーラスタ国へと入ることができた、俺はいつものようにアクアを背負って歩き出した、レンとリッシュも俺の後についてきた。これでようやくリジエール国から出ることができた、俺たちは慎重に行動していたから追っ手の姿も無かった。
「いやぁ、リッシュのこと。通行料の倍額くらいですんで良かったよ」
「シエル凄く心配してた、リッシュ良かった」
「はい、アクア様。僕はこれで安心して貴方たちについていけます」
「リッシュは何でも大げさ過ぎねぇか」
「いやいや、中には身分証がないと通さないって役人もいる。まぁその時は街道を避けて、ちょっと遠回りするだけだ」
「うん、街道は便利。でも身分証の確認、通行料を取られるのが厄介」
「僕のためだけに迂回することまで考えておられたとは、僕は一生懸命に皆さまにお仕え致します」
「いや、だからそれが大げさなんだって。リッシュ」
「そうそうリッシュも俺たちの仲間なんだからさ、もっとくだけた気安い口調で話してもいいんだ」
「リッシュは真面目なの、だから多分だけど駄目なの」
「はい、シエル様。アクア様の言う通りでございます、僕はこの話し方でいいのです」
「言っても直さねぇのな、リッシュはよ」
ポーラスタ国に入った安堵感から、俺たちはゆっくりと旅を進めていた。もうリジエール国に追われる心配はなさそうだった、なんといっても俺たちはリジエール国の軍事施設を自爆させたのだ。リジエール国にとっては俺たちは憎い仇に他ならなかった、古代遺跡の軍事施設だったからあれには相当な価値があったはずだ。
「良い事をしたはずなのに、追われる身になるなんてな」
「アクアたちこの周辺の国々にとって良い事をした」
「はい、シエル様たちは危険な思考をもった愚かな人間たち、その野望を破壊してくださいました」
「要は気に入らねぇ場所だったっていうだけだ」
「でも人間はいろんな者がいる、だからこそ面白いのさ」
「そうなの、シエル」
「シエル様は器が大きくていらっしゃいます」
「いや、絶対に違うような気がすんな」
「なんだよ、レン。俺はいずれ器のでかい、最強のドラゴンになる男だぞ」
「そう、シエルは強いドラゴンになる」
「今からその日が楽しみでなりませんね」
「俺様だってきっと最強のドラゴンになるんだからな!!」
俺とレンはポーラスタ国の街への道を歩きながら、どっちが最強のドラゴンになるのか競争だ。そう言ってどちらも楽しそうに笑っていた、俺としては最強のドラゴンになってみたかったが、レンが最強のドラゴンになるのも面白そうだった。だから俺とレンは笑っていたのだ、お互いにこれからの成長が楽しみでならなかったのだ。アクアも俺たちの話を聞いて笑っていた、リッシュですら微笑みを浮かべていた。
そうしてやがてポーラスタ国の初めての街についた、街の入り口でリッシュの身分証について聞かれたが、ほとんど国境と同じ遣り取りをすることで済んだ。街に入ったらまず冒険者ギルドに向かった、そしてレンの案内でリッシュは銅の冒険者になることができた。人間の世界で通用するリッシュの初めての身分証だった。リッシュは俺たちには嬉しそうに微笑んだが、冒険者ギルドのお姉さんには笑顔をみせなかった。
とりあえずリッシュの身分証もできたことだし、俺たちは今日の宿屋を決めて三人部屋をとった。そして少し部屋で休むことにした、皆がリジエール国から無事に出れてホッとしていた。あの国で追っ手に捕まっていたら俺たちはただでは済まなかった、きっと死んだ方がマシだというような目にあわされたはずだった、それだけリジエール国の特に軍の人間からは憎まれているはずだった。そこまでいろんなことを考えてから、俺は少し気になったことをリッシュに聞いた。
「リッシュ、人間のことはまだ嫌いなのか?」
「………………アクア様は恩人ですから平気です、でも他の人間はまだ少し怖いですね」
「その気持ち、アクアも分かるの。知らない大人の人はちょっと怖いの」
「へぇそうなのか、チビ」
「人間にも良い人はいる、アクアのようにな。もっとそんな人間と出会えるといいな」
「そうですね、僕はなるべく偏見を持たずに人間をみてみようと思います」
「アクアもそうするの、きっと良い人間もいるとは思うの」
「まぁ、チビ。何が遭っても俺様たちが守ってやるさ」
「アクアは俺の家族だ、それにリッシュは大事な仲間だ。だから二人とも守ってみせるさ、なぁレン」
「なんという僕には勿体ないお言葉でしょう」
「分かった、アクアが勝てない時にはシエルたちに守って貰うの」
「ああ、俺様とシエルがいれば、二人を守るくらい楽勝だぜ」
そう俺たちは笑い合いながら話をした、現実を考えるならそう簡単な話ではなかった。でも俺たちはそうしたいと皆がそう思っていたのだ、ドラゴンや人間それにエルフという垣根を超えて、そう種族は関係なく助け合えると思っていた。そのままこの先の旅の話になって、次はどこに行ってみようかと皆で話し合った。
「アクアは次はどんなところへ行ってみたい?」
「えっと、皆が仲良くしてる国がいいの」
「皆が仲良くかよ、簡単なようで難しいじゃねぇか」
「そうですね、そのような国を僕は知りません」
「そうだな、俺たちが知らないなら、皆で調べてみればいいさ」
「街の人に聞くの、それか図書館へ行くの」
「知っている奴がいやがるかな」
「図書館!! それは素晴らしい場所ですね!!」
「おお、リッシュは図書館が好きなのか?」
「アクアも好きなの」
「俺様はちょっと苦手だな」
「村で読める本には限りがありました、ですから大きな図書館という場所、実はずっと行ってみたかったのです」
リッシュの村は近くに奴隷制があるリジエール国があった、奴隷狩りで何人ものエルフの仲間を失うことが起こっていた。だから自然と村は閉鎖的な場所になり、人間の街にある図書館なんて大きな施設、そんな場所にリッシュは行くことはできなかった。でも今ならリッシュはそれができるのだ、彼はもう自由でどこに行って何をしても良くなったのだ。
「それじゃ、さっそく図書館に行ってみよう!!」
「わーい、アクアは絵本と魔法書を読むの」
「凄く読む本の落差が激しいのな、チビ」
「ええ、嬉しいです。僕は幸せ者です」
それから宿屋を出て俺たちは図書館へ向かった、入場料を銅貨一枚ずつとられたが皆で図書館に入ることができた。最初リッシュは図書館の本の多さにびっくりしていた、そうして我に返るとさっそく鎖で持ち出し禁止になっている、『中級魔法書』や『上級魔法書』を熱心に読んでいた。俺は息抜きに冒険物を読むことにした、アクアはレンと一緒に絵本とそれに難しい魔法の本を読んでいた。俺たちは夕方になるまでそうしていた、やがて図書館は閉められ俺たちは宿屋に帰った。
「ふぅ、いやぁ満足。満足。やっぱり図書館は楽しいな」
「アクアとレンは凄くいっぱい本を読んだの」
「はははっ、チビが読んでたのは半分は絵本だったけどな」
「素晴らしい空間でした、あれほどの蔵書があるとは世界は広い」
「あっ、そういえば俺は神殿に寄付に行かないといけないな」
「シエルはこじいんの子たちに優しいの、それに神殿の図書室も好きなの」
「そうなのかチビ、神殿の図書室ねぇ、そこって面白いのか」
「神殿の図書室!! 街の図書館以外にも本があるのですね!!」
「割と面白いよ、レン、リッシュ。神殿の図書室はほとんど神学の本だが、中には古代語の本なんかも置いてあるのさ」
「アクアはどんな言語でも読めるの」
「すげぇな、チビ。迷い人ってなんで、そんな力があるんだろうな」
「古代語!! それに迷い人の秘密!! どちらもとても興味深い話ですね」
そうやって部屋で話した後に俺たちは宿屋にある飯屋に行った、珍しく白パンが置いてある宿屋で食事がくると、アクアがとっても幸せそうな顔をして食べだした。俺はあかり姉さんに白パンを食べさせて貰ったことがあった、レンもドラゴンの養い親から食べさせて貰ったことがあったそうだ。リッシュは白パンは初めてだったようだ、とても柔らかくて美味しいと感激していた。
俺とレンは剣術の話なんかを始めた、剣術もはじめてみると奥が深くてなかなか話が尽きなかった。白パンを味わっていたアクアも途中から剣術の話に参加した、弓矢を使うリッシュは自分は使わないが、逆に剣術を使う相手と戦った時のことを考えて言葉にした。俺たちがそんな平和的な話で盛り上がっていた時だった、突然のことだったが宿屋の外が騒がしくなって幾つも悲鳴が上がった。
俺たちは全員で宿屋から飛び出した、すると街のあちこちから火の手が上がっていた。そして平和な街に似合わない汚れた服を着て剣を持った人間たちがいた、彼らは街のところどころで略奪や強姦をはじめたようだった。街の警備兵が戦っていたがほとんどが殺されていた、俺たちは油断なく臨戦態勢に入って、俺はアクアをいつものように自分で背負って体に固定しておいた。
「俺たちはビアッヘ盗賊団だぞ、それっ火をつけろ!! 女を攫え!! 金を……」
「よっし、分かった。『電撃』!!」
俺はなんだか分かりやすく自己紹介してくれた盗賊を雷で焼き殺した、そうしてからアクアやレンそれにリッシュにこう言ってから戦いはじめた。
「皆、全部殺す前に盗賊団の居場所、それを絶対に吐かせるんだ!!」
「盗賊は根こそぎ退治するの!!」
「はははっ、やっぱそうすんのかよ!!」
「はい、かしこまりました!!」
そう俺が言ってから皆は離れ過ぎないように気をつけながら戦いはじめた、俺は適当な盗賊の一人を捕まえてちょっと脅して盗賊団の居場所を吐かせた。そうすれば後は簡単なことだった、俺とレンは剣と魔法で盗賊団を確実に減らしていった、リッシュも魔力があれば尽きることのない魔法の矢で盗賊を射殺した。アクアは時々俺たちを狙ってくる矢や魔法、それらを『聖なる守り』の魔法で防いでくれた。俺は皆に向かってこう言った、そう楽しそうに笑いながらこう言ったのだ。
「さぁ、俺たちの旅の邪魔はさせない!! こんな奴らはさっさと倒して、もっと広い世界を見に行くんだ!!」
「ポーラスタ国へようこそ。うん、アクアとリッシュとやらの身分証が無いのか」
「アクアはまだ十歳の子どもなので身分証はないんです、そしてリジエール国ではあの憎むべき奴隷制のせいで、リッシュの身分証は作れなかったんです」
「そうか確かにまだ十歳くらいの子どもだな、……それに彼はエルフだからか。我がポーラスタ国でなら大丈夫だ、奴隷制など無いからエルフも身分証が作れる」
「そうですか、それを聞いて安心しました!!」
「ただ、身分証が無いから通行料を倍額払って貰うことになるが問題ないか?」
「もちろん大丈夫です」
「それじゃ、改めてポーラスタ国へようこそ」
ポーラスタ国の役人の言葉に俺は頷いて、全員で銀貨六枚の通行料を支払った。それで俺たちはポーラスタ国へと入ることができた、俺はいつものようにアクアを背負って歩き出した、レンとリッシュも俺の後についてきた。これでようやくリジエール国から出ることができた、俺たちは慎重に行動していたから追っ手の姿も無かった。
「いやぁ、リッシュのこと。通行料の倍額くらいですんで良かったよ」
「シエル凄く心配してた、リッシュ良かった」
「はい、アクア様。僕はこれで安心して貴方たちについていけます」
「リッシュは何でも大げさ過ぎねぇか」
「いやいや、中には身分証がないと通さないって役人もいる。まぁその時は街道を避けて、ちょっと遠回りするだけだ」
「うん、街道は便利。でも身分証の確認、通行料を取られるのが厄介」
「僕のためだけに迂回することまで考えておられたとは、僕は一生懸命に皆さまにお仕え致します」
「いや、だからそれが大げさなんだって。リッシュ」
「そうそうリッシュも俺たちの仲間なんだからさ、もっとくだけた気安い口調で話してもいいんだ」
「リッシュは真面目なの、だから多分だけど駄目なの」
「はい、シエル様。アクア様の言う通りでございます、僕はこの話し方でいいのです」
「言っても直さねぇのな、リッシュはよ」
ポーラスタ国に入った安堵感から、俺たちはゆっくりと旅を進めていた。もうリジエール国に追われる心配はなさそうだった、なんといっても俺たちはリジエール国の軍事施設を自爆させたのだ。リジエール国にとっては俺たちは憎い仇に他ならなかった、古代遺跡の軍事施設だったからあれには相当な価値があったはずだ。
「良い事をしたはずなのに、追われる身になるなんてな」
「アクアたちこの周辺の国々にとって良い事をした」
「はい、シエル様たちは危険な思考をもった愚かな人間たち、その野望を破壊してくださいました」
「要は気に入らねぇ場所だったっていうだけだ」
「でも人間はいろんな者がいる、だからこそ面白いのさ」
「そうなの、シエル」
「シエル様は器が大きくていらっしゃいます」
「いや、絶対に違うような気がすんな」
「なんだよ、レン。俺はいずれ器のでかい、最強のドラゴンになる男だぞ」
「そう、シエルは強いドラゴンになる」
「今からその日が楽しみでなりませんね」
「俺様だってきっと最強のドラゴンになるんだからな!!」
俺とレンはポーラスタ国の街への道を歩きながら、どっちが最強のドラゴンになるのか競争だ。そう言ってどちらも楽しそうに笑っていた、俺としては最強のドラゴンになってみたかったが、レンが最強のドラゴンになるのも面白そうだった。だから俺とレンは笑っていたのだ、お互いにこれからの成長が楽しみでならなかったのだ。アクアも俺たちの話を聞いて笑っていた、リッシュですら微笑みを浮かべていた。
そうしてやがてポーラスタ国の初めての街についた、街の入り口でリッシュの身分証について聞かれたが、ほとんど国境と同じ遣り取りをすることで済んだ。街に入ったらまず冒険者ギルドに向かった、そしてレンの案内でリッシュは銅の冒険者になることができた。人間の世界で通用するリッシュの初めての身分証だった。リッシュは俺たちには嬉しそうに微笑んだが、冒険者ギルドのお姉さんには笑顔をみせなかった。
とりあえずリッシュの身分証もできたことだし、俺たちは今日の宿屋を決めて三人部屋をとった。そして少し部屋で休むことにした、皆がリジエール国から無事に出れてホッとしていた。あの国で追っ手に捕まっていたら俺たちはただでは済まなかった、きっと死んだ方がマシだというような目にあわされたはずだった、それだけリジエール国の特に軍の人間からは憎まれているはずだった。そこまでいろんなことを考えてから、俺は少し気になったことをリッシュに聞いた。
「リッシュ、人間のことはまだ嫌いなのか?」
「………………アクア様は恩人ですから平気です、でも他の人間はまだ少し怖いですね」
「その気持ち、アクアも分かるの。知らない大人の人はちょっと怖いの」
「へぇそうなのか、チビ」
「人間にも良い人はいる、アクアのようにな。もっとそんな人間と出会えるといいな」
「そうですね、僕はなるべく偏見を持たずに人間をみてみようと思います」
「アクアもそうするの、きっと良い人間もいるとは思うの」
「まぁ、チビ。何が遭っても俺様たちが守ってやるさ」
「アクアは俺の家族だ、それにリッシュは大事な仲間だ。だから二人とも守ってみせるさ、なぁレン」
「なんという僕には勿体ないお言葉でしょう」
「分かった、アクアが勝てない時にはシエルたちに守って貰うの」
「ああ、俺様とシエルがいれば、二人を守るくらい楽勝だぜ」
そう俺たちは笑い合いながら話をした、現実を考えるならそう簡単な話ではなかった。でも俺たちはそうしたいと皆がそう思っていたのだ、ドラゴンや人間それにエルフという垣根を超えて、そう種族は関係なく助け合えると思っていた。そのままこの先の旅の話になって、次はどこに行ってみようかと皆で話し合った。
「アクアは次はどんなところへ行ってみたい?」
「えっと、皆が仲良くしてる国がいいの」
「皆が仲良くかよ、簡単なようで難しいじゃねぇか」
「そうですね、そのような国を僕は知りません」
「そうだな、俺たちが知らないなら、皆で調べてみればいいさ」
「街の人に聞くの、それか図書館へ行くの」
「知っている奴がいやがるかな」
「図書館!! それは素晴らしい場所ですね!!」
「おお、リッシュは図書館が好きなのか?」
「アクアも好きなの」
「俺様はちょっと苦手だな」
「村で読める本には限りがありました、ですから大きな図書館という場所、実はずっと行ってみたかったのです」
リッシュの村は近くに奴隷制があるリジエール国があった、奴隷狩りで何人ものエルフの仲間を失うことが起こっていた。だから自然と村は閉鎖的な場所になり、人間の街にある図書館なんて大きな施設、そんな場所にリッシュは行くことはできなかった。でも今ならリッシュはそれができるのだ、彼はもう自由でどこに行って何をしても良くなったのだ。
「それじゃ、さっそく図書館に行ってみよう!!」
「わーい、アクアは絵本と魔法書を読むの」
「凄く読む本の落差が激しいのな、チビ」
「ええ、嬉しいです。僕は幸せ者です」
それから宿屋を出て俺たちは図書館へ向かった、入場料を銅貨一枚ずつとられたが皆で図書館に入ることができた。最初リッシュは図書館の本の多さにびっくりしていた、そうして我に返るとさっそく鎖で持ち出し禁止になっている、『中級魔法書』や『上級魔法書』を熱心に読んでいた。俺は息抜きに冒険物を読むことにした、アクアはレンと一緒に絵本とそれに難しい魔法の本を読んでいた。俺たちは夕方になるまでそうしていた、やがて図書館は閉められ俺たちは宿屋に帰った。
「ふぅ、いやぁ満足。満足。やっぱり図書館は楽しいな」
「アクアとレンは凄くいっぱい本を読んだの」
「はははっ、チビが読んでたのは半分は絵本だったけどな」
「素晴らしい空間でした、あれほどの蔵書があるとは世界は広い」
「あっ、そういえば俺は神殿に寄付に行かないといけないな」
「シエルはこじいんの子たちに優しいの、それに神殿の図書室も好きなの」
「そうなのかチビ、神殿の図書室ねぇ、そこって面白いのか」
「神殿の図書室!! 街の図書館以外にも本があるのですね!!」
「割と面白いよ、レン、リッシュ。神殿の図書室はほとんど神学の本だが、中には古代語の本なんかも置いてあるのさ」
「アクアはどんな言語でも読めるの」
「すげぇな、チビ。迷い人ってなんで、そんな力があるんだろうな」
「古代語!! それに迷い人の秘密!! どちらもとても興味深い話ですね」
そうやって部屋で話した後に俺たちは宿屋にある飯屋に行った、珍しく白パンが置いてある宿屋で食事がくると、アクアがとっても幸せそうな顔をして食べだした。俺はあかり姉さんに白パンを食べさせて貰ったことがあった、レンもドラゴンの養い親から食べさせて貰ったことがあったそうだ。リッシュは白パンは初めてだったようだ、とても柔らかくて美味しいと感激していた。
俺とレンは剣術の話なんかを始めた、剣術もはじめてみると奥が深くてなかなか話が尽きなかった。白パンを味わっていたアクアも途中から剣術の話に参加した、弓矢を使うリッシュは自分は使わないが、逆に剣術を使う相手と戦った時のことを考えて言葉にした。俺たちがそんな平和的な話で盛り上がっていた時だった、突然のことだったが宿屋の外が騒がしくなって幾つも悲鳴が上がった。
俺たちは全員で宿屋から飛び出した、すると街のあちこちから火の手が上がっていた。そして平和な街に似合わない汚れた服を着て剣を持った人間たちがいた、彼らは街のところどころで略奪や強姦をはじめたようだった。街の警備兵が戦っていたがほとんどが殺されていた、俺たちは油断なく臨戦態勢に入って、俺はアクアをいつものように自分で背負って体に固定しておいた。
「俺たちはビアッヘ盗賊団だぞ、それっ火をつけろ!! 女を攫え!! 金を……」
「よっし、分かった。『電撃』!!」
俺はなんだか分かりやすく自己紹介してくれた盗賊を雷で焼き殺した、そうしてからアクアやレンそれにリッシュにこう言ってから戦いはじめた。
「皆、全部殺す前に盗賊団の居場所、それを絶対に吐かせるんだ!!」
「盗賊は根こそぎ退治するの!!」
「はははっ、やっぱそうすんのかよ!!」
「はい、かしこまりました!!」
そう俺が言ってから皆は離れ過ぎないように気をつけながら戦いはじめた、俺は適当な盗賊の一人を捕まえてちょっと脅して盗賊団の居場所を吐かせた。そうすれば後は簡単なことだった、俺とレンは剣と魔法で盗賊団を確実に減らしていった、リッシュも魔力があれば尽きることのない魔法の矢で盗賊を射殺した。アクアは時々俺たちを狙ってくる矢や魔法、それらを『聖なる守り』の魔法で防いでくれた。俺は皆に向かってこう言った、そう楽しそうに笑いながらこう言ったのだ。
「さぁ、俺たちの旅の邪魔はさせない!! こんな奴らはさっさと倒して、もっと広い世界を見に行くんだ!!」
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