ドラゴンから人間に縛りプレイで最強へ

アキナヌカ

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2-16俺たちは運命共同体

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「あっ、もうレン。俺たちについてきた時点で共犯だからな、俺たちは運命共同体って奴だ」
「アクアは覚悟してる、レンも覚悟をするといい」
「嘘だろおおぉぉぉ!! 俺様もかよおおぉぉぉ!!」

 なんだか最後のあたり、レンは遠く虚ろな目をしていた。きっと最後に盗賊から解放した女性たち、彼女たちの可哀そうな境遇に同情したのだ。村や街から盗賊に攫われて、そして力ずくで凌辱される日々を過ごした女性たちだ。レンが同情するのも無理はなかった、俺の友達候補は実はとっても優しい男の子だった、俺はこれでちょっと友情が育まれたようで嬉しかった。

「レンも『魔法マジックの箱ボックス』の魔法が使えて良かったな」
「うん、良かった。あれだけの金貨と銀貨、持ち歩くのは大変」
「あああああ!! いいのか!? 本当に良かったのか!? 俺様はなんか間違ってねぇか!?」

 レンは盗賊退治が終わってからもしばらく何かと葛藤していた、盗賊退治という行為に間違いなんてあるわけがなかった。向かうはこっちを殺しにくる悪党だったし、俺たちも万が一の時は殺される覚悟でいた。それが自然界の掟というものだった、自然界では自然に逆らうような弱い者は死んで、自然に逆らわない強い者は生き残るのだった。

 そうして近くの街に行って二人部屋をとったが、まだレンの目の中には迷いがあった。それはレン自身で解決すべきことだったし、俺たちが口を出すことではなかった。だから俺は他のことを聞いてみた、俺くらいのドラゴンにずっと聞いてみたいことだった。それはだ、レンが使っていた自分の牙の剣のことだった。

「でも、レンは自分の牙を剣にできるんだから凄いな」
「はぁ!? これくらいドラゴンなら、誰だってできることだろ?」

「でも、俺にはまだできない」
「嘘だろ、そんなこともできない奴に俺様は負けたのか!?」

「俺は体も小さくて、まだ牙も十分に成長していないみたいなんだ」
「そっ、そっか。まぁ、そのうちにきっとでっかい牙が生えるさ」

 激しい言動とは違って、レンは話してみるとわりと良い奴だった。俺の体が小さいことを馬鹿にしなかったし、俺を大人のドラゴンだと認めて決闘した。それに俺にまだ剣になるようなふさわしい牙、それがまだ生えていないことも、レンなりに慰めてくれるという良い奴だった。こんな良い奴と決闘できて俺は良かった、そう俺は少なくともレンには大人のドラゴンだと認められたのだ。

「俺もそのうち立派な牙を剣にするんだ!!」
「ああ、そうだ。頑張って成長しやがれ、そして俺様みたいにロングソードくらい持ってみな」

 俺が最初に友達になったケントニスはもちろん牙の剣を持っていた、それはロングソードでとても固く強い剣だった。俺ももう少し成長したら牙の剣を持つことができるだろう、自分の牙でできた剣を持つのが今から楽しみだった。最初は今使っているショートソードくらいかもしれない、でもいつかはレンが言ってくれたように、ケントニスやレンのようなカッコいいロングソードを使ってみたかった。

「レンの剣は牙なの、ねぇねぇアクアの歯も剣にできる?」
「できるわけねぇだろ!?」
「アクアの可愛い歯じゃ無理なんだよ、アクアは人間だからね」

「………………アクアもドラゴンに生まれたかった」
「仕方がねぇだろ、てめぇは人間なんだからな」
「アクア、生まれる種族を自分で選ぶことはできないんだよ」

「アクアがもしドラゴンだったら、シエルが喜んで交尾してくれるメスドラゴンになれたかも」
「ぶはっ!?」
「そうだな、それはそうかもしれない。でも、人間のアクアもとっても可愛いぞ」

「アクアは可愛い? うん、シエルが交尾したくなるくらい。アクアはいっぱい可愛くなってみせる」
「てめぇらは一体どういう関係なんだ!? ああ!?」
「俺とアクアは大切な家族だ、出会ったのは盗賊団のアジトだった」

 そうして俺はアクアと俺が出会った時のことを話した、アクアが盗賊団に捕まって痩せ細っていたことや、他にもアクアが継母からいじめられていたことも話した。その間アクアは俺の膝の上に乗って、うんうんと一生懸命に頷いていた。それからレンのアクアを見る目が少しだけ優しくなっていった、アクアに対するレンの態度が少しだけ変わっていった。アクアはもちろんレンのことを気に入った、アクアは新しいお友達ができて上機嫌だった。

「レン、一緒にお喋りしよう」
「…………喋りたきゃ、勝手に喋れ」

「うーんとね、それじゃ効果的な魔力の運用とその効果についてね」
「うっわっ!? てめぇ、随分と難しいことを知ってんだな」

「シエルがいっつも勉強してる、シエルはいろいろ知ってて賢い」
「ふーん、そうか。まぁ魔力の使い方は大事だな、魔力が切れたら死ぬかもしれねぇからな」

「そうなの、だからできるだけ消費する魔力を減らすのが大事なの」
「ふーん、そうか。それで具体的にはどうするんだ」

 レンが俺の子分になってから、アクアとレンが話すことも増えた。まだレンは決してアクアに自分の体を触らせなかった、でもお互いに言葉を交わし合うくらいには仲良くなった。俺は子分だと言われていたが、レンのことを友達だと思っていた。俺にも同世代の友達ができたんだと幸せだった、俺とレンとは主に剣の使い方なんかを話し合うことが多かった。

「剣術は強い人から学んだほうがいい、強い人間との勝負は勉強になる」
「だからお前はそんなに強いのかよ」

「練習と実戦を繰り返すんだ、すると強くなるのが早い」
「と、盗賊退治ってやつか」

「レンも俺たちの友達なら、盗賊退治には慣れた方がいい」
「いや友達じゃねぇから、俺様はてめぇの子分だからな!!」

 そんなある日のことだった、新しい街の入り口で俺たちは俺たちは街への列に並んでいた。そうして役人から街に入っていいか検問を受けるはずだった、遠目でも入り口に黒髪のお姉さんが一人いるのが見えた。俺はあかり姉さんとはあまり似てないなと思っていた、短い髪のとても元気そうな普通の女の人だった。でも俺とレンよりも早く、アクアが重大な危険が迫っていることに気づいた。

「シエル、あの女の人は迷い人。清水翡翠っていう名前が見える」
「アクア、レン、逃げるぞ!!」
「チッ!! こっちだ!!」

 それを聞いた俺とレンの行動は早かった、街へ入ろうと皆が並んでいる列から、俺たちはすぐに飛び出して逃げ出したのだ。アクアからの注意がなければ危なかった、俺とレンはドラゴンだと目をつけられて狙われたはずだ。俺は安全なところまで皆で逃げたら、アクアのことをいっぱい偉いと言って褒めた、レンはそんなアクアと俺のことをただ静かに黙って見ていた。

 その夜は近くに他の街や村もなかったので野営をした、アクアとレンは何かいっぱいお話をしていた。小さい声なので俺には何を言っているか分からなかった、でもアクアとレンの仲が良くなることは、それは良い事だと思って俺は黙っていた。食事を終えて皆でお茶を楽しんでいた。そんな静かな夜の星が綺麗な空の下でだった、レンがアクアと俺に向かって改めて向き合いこう言いだしたのだ。

「俺様は間違ってた、アクアお前は良い迷い人なんだな」
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