ドラゴンから人間に縛りプレイで最強へ

アキナヌカ

文字の大きさ
上 下
23 / 90

1-23懐かしくて愛おしい

しおりを挟む
「みそ汁と米!! ああ、何も思い残すことはない!!」
「いや、それは困る。それは凄く俺が困る、やっぱりツカサに味噌と米は渡せない!?」

「なんと一度渡しておいてから、そんなに酷いことを言う、シエル。みそ汁と米は日本人のソウルフードなのだ!!」
「そ、そうるふーど?」

「よーしよし、うむ。確かに味噌だ、米も理想的な米だ」
「何かよく分からんが、沢山買ってきたから、まだいくらでもあるぞ」

 俺はツカサが好きなら同じにほん人であるあかり姉さん、彼女もきっと好きに違いないとたっぷりと買ったのだ、そして『魔法マジックの箱ボックス』に全て放り込んでおいた。その日は特別にツカサ本人が神殿の台所を借りて料理をしていた、そうしてツカサと一緒に俺も初めてみそ汁と米を食べてみた。みそ汁は海藻と野菜が具でしょっぱくて美味かった、米ももちもちしててみそ汁と一緒に食べると、何も味付けをしてないのに美味しかった。

「……あかり姉さんにも渡してあげたいなぁ」
「会いに行けばいいんだよ、何を遠慮してるんだい」

「だって俺まだドラゴンに戻れてないし、縄張りも持ってないから帰れない」
「ドラゴンにも面倒な決まりがあるんだね、でもこっそり帰るくらいはいいんじゃないかい」

「そうか!? こっそりとだな!!」
「ああ、偶には故郷に帰るといい。十分に気をつけて、こっそりと行っておいで」

 俺はツカサと話して自分の間違いに気づいた、俺は立派なドラゴンになるまでは帰れないと思い込んでいた。でもドラゴンは本来なら自由な生き物なのだ、どこに行っても良いし誰に会ってもいいのだ。そう気づいたら俺はツカサに礼を言ってから素早く動いた、フィーレの街のジュジュたちにちょっと出かけてくると言って、そうして俺は本能のおもむくまま飛び出していったのだ、でもしっかり母さんにも酒精が強めの良い酒を樽で買うのは忘れなかった。

 そうして近くの森まで走っていって、そこからフードをしっかりと深く被って顔を隠して、『飛翔フライ』の魔法で故郷の魔の森まで飛んでいったのだ。四半刻もあればすぐに着く距離だった。俺はまずこっそりと母さんの巣穴に入っていった、大きい洞窟の最奥じゃなくその途中にある大広間で俺は止まった。洞窟の最奥ではなくそこに母さんが珍しくいたのだ、そうしてとてもよく母さんは眠っているみたいだった、それとも本当は眠ったふりをしているのか分からなかった。そんなツンデレぎみの大切な母さんの近くに、とても酒精が強くて良い酒を俺は『魔法マジックの箱ボックス』から出して樽で置いていった。

「あかり姉さん!!」
「シエルくん!!」

 それから魔の森にあるあかり姉さんの住んでいる小屋に行って、久しぶりに俺たちは抱き合って再会を喜んだ。俺は薄っすら涙が悲しくないのに出た、あかり姉さんはポロポロと涙をこぼしてもっと泣いていた。二人して何故だか泣きながら再会を喜んだのだ、そうして俺はお土産に味噌と米をどっさり出してみた。あかり姉さんもこのお土産をとても喜んでくれて、俺はまたみそ汁と米それに生姜焼きをご馳走になった、なんだかどこか懐かしい味でまた俺は泣けてきた。

「シエルくん、ちゃんとご飯食べてる?」
「うん、でもあかり姉さんのご飯が一番美味しい」

「縛りプレイもそのままなのね」
「ああ、俺すっごく強くなったんだ」

「ふふっ、ステータスで分かるわよ」
「そんでさ、俺はあかり姉さん以外の迷い人に会って……」

 どんなに話しても話は尽きなくて、そのままあかり姉さんの家に一泊させてもらった、俺は子どもの頃のようにあかり姉さんと一緒に寝た。あかり姉さんの体温が気持ち良くて、どこかしこも懐かしい匂いでいっぱいで、俺はぐっすりと安心して眠ることができた。でも一泊以上はまだ独立したドラゴンになってないので俺は遠慮した、俺はあかり姉さんが元気でいることを再確認してフィーレの街に帰った。

「あらどうしたのシエル、目がキラキラしてるわよ」
「本当ですわ、さては彼女ができましたわね!!」
「なっ、なんだって私のシエルをたぶらかしたのはどこの女だ!!」
「神の名のもとに滅するのです」

 フィーレの街に戻ってからも機嫌が良い俺にジュジュたちが驚いていた、彼女ができたとか言われたがそんな素敵なものはまだできていなかった。ジュジュたちに色々質問責めにされたが、俺は都の話なんかをしてあかり姉さんのことは話さなかった。迷い人はこちらの人間が知らないことを知っている、できるだけあかり姉さんを知っている人間は少ない方が良かった。

「俺がいない間に何か遭ったりした?」
「ああ、領主さまが正式に変わったわね」
「ロワ・セハルドーテ様ですわ」
「まだ十七歳の子どもだぞ」
「しぃー、なのです。神のお導きは深いものなのです」

「ふーん、それぐらいかぁ」
「あとはドラゴンスレイヤーが煩いわね」
「いつまでもドラゴン退治したこと、それを自慢ばかりしていますわ」
「いい加減にしろってな」
「新しいドラゴンを必ず狩りに行く、神の名のもとにそう言っているようです」

「なるほど、皆が元気で良かった」
「ふふっ、そういえば紫電の魔法使いが商人ギルトにいるみたい」
「ぜひ、私と勝負して貰いたいですわ」
「とっても、可愛い子なんだってさ」
「そして私たち四人の自慢の子なのです、神はそう言っています」

 えっ、それってよく考えなくても俺のことかなと思って四人を見た。すると四人全員の目が笑っていなくて、そのまま冒険者ギルドの鍛練場にぐいぐい引きずっていかれた、そうしてリリーと魔法の打ち合いをすることになった。要するに的に何かの魔法を当てるだけの簡単なことだ、いや昔の俺ならこれすらできなかった、なぜならその頃は初級魔法の一部しか使えなかったからだ。

「えっと、十個ある的に当てればいいのか」
「多く当てたほうの人が勝ちですわ、私が勝ったらシエルの頭をなでなでしますわ」

「それ、いつも普通にしてないっけ?」
「ここ最近はあまりしていませんでしたわ、だから皆でシエルをなでなでしてみせますわ」

 どっかの痴女もどきのドラゴンスレイヤーと違って、ジュジュのパーティには親愛の情をこめて、俺の頭を軽く撫でられたりしてた。あかり姉さんもよくそうしてくれていたから、俺は別に何も気にしていなかった。大人の女性であるジュジュたちからすれば、体が小さい俺は小動物のような可愛さがあるらしいのだ。ちなみにこんなに仲良くなったのにジュジュ達の年齢は知らない、世の中には知らないほうがいいことがあるのだ。

「ようは魔力制御の練習だな」
「はい、そうですわ」

「それじゃ、『電撃槍ライトニングストライクスピア』」
「ほぇ?」

 動いてる敵味方が混戦している状態でも俺は敵だけに魔法を当てたのだ、それが十個とはいえ動かない的に当てるなんて簡単すぎることだった。くぅ~、俺は成長している、確実に成長しているのだ。初級魔法しか使えない俺はどこにいったのだろう、もう中級魔法は半分くらい覚えているのだ。上級だって偏っているが幾つか使えるくらいだからな、俺が全部の的をあてた後は焦ったリリーが真剣に、そう一個ずつ慎重に的に魔法を当てていた。

「こっ、これで最後ですわ。『火炎フレイム』!!」

 リリーが十個全部の的に当てた時には、俺はそこにいた皆と一緒になって拍手していた、それから俺はジュジュたちのパーティに頭をなでなでされまくった。あかり姉さんが四人増えたみたいで、これはこれで幸せだった。ジュジュのパーティはドラゴンを狙っていないし、四人とも世話焼きで優しい良い人間たちだった。俺はあかり姉さんやジュジュたちそれにツカサなどの良い人間、逆に盗賊などの俺を殺そうとする悪い人間がいるんだ、そう人間には二種類の分け方があると改めて思っていた。

「さて、でもまだまだ魔法の勉強をしないとな」

 俺は頭をなでなでされながら、また魔法の勉強をしないといけないと思っていた。あのやる気が無かった頃の自分を蹴っ飛ばしてやりたい、あの時だったら母さんから直接魔法を教えて貰えた、あの時だったら難しい魔法理論について質問ができたのだ。でも俺の才能はあかり姉さんの考えた縛りプレイによって開花したので、昔のことをうじうじ言っても仕方がないのだ。時間は誰にでも平等にながれていく、それを止めることはも誰にもできなかった。

 冒険者ギルドにまた俺は依頼をだして、剣術の上手い人間と戦って鍛練をして、そうして戦いながら魔法を詠唱するようになった。発動はさせないがいつでも発動できるようにはしていた、どんな時でも魔法が安定して使えるようにしたかったのだ。最初のうちは魔力制御が難しかったが、剣術の腕も上がっていくについて、安定して魔法を維持できるようになった。

「いや自分、誰やねん」

 戦う相手も剣だけじゃなくて、槍や弓矢それに魔法使いなどと、色々と戦ってみて学びを深めた。うーん、昔の俺が今の俺をみたら、そう自分で自分につっこみを入れるくらい俺は鍛練していた。何となく嫌な予感がしていたのだ、何かをやっていないと全てを失ってしまうような気がしていた。成長途中の焦りかなと思っていたのだが、それがそうじゃなかったのを知るのはもっと後になってだった。

「ねぇ、聞いた。大きな盗賊団がいるんだって」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました

言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。 貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。 「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」 それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。 だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。 それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。 それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。 気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。 「これは……一体どういうことだ?」 「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」 いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。 ――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

念動力ON!〜スキル授与の列に並び直したらスキル2個貰えた〜

ばふぉりん
ファンタジー
 こんなスキルあったらなぁ〜?  あれ?このスキルって・・・えい〜できた  スキル授与の列で一つのスキルをもらったけど、列はまだ長いのでさいしょのすきるで後方の列に並び直したらそのまま・・・もう一個もらっちゃったよ。  いいの?

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...