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1-03危険があってもまだ足らない
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「『抱かれよ煉獄の熱界雷』!!」
俺がとにかく走り続けてあかり姉さんのところへ辿り着いた、するとあかり姉さんは上級魔法の雷であっさりとデビルベアを退治してくれた。いや、あっさりとじゃなかった。よくみるとあかり姉さんの体も震えていたし、その顔色は真っ青になっていた。そして、俺にいきなり抱き着いてきて体のあちこちを調べはじめた。
デビルベアの突撃を避けるのに転がったりしたが、俺はそれでもどこも怪我をしていなかった。あかり姉さんは俺の無事を確かめるとようやく体の震えが収まった、そして俺のことをぎゅうぎゅうと抱きしめて良かったぁぁと泣き出してしまった。やっぱりあかり姉さんは俺の大事な人だ、とても優しくて俺のことを大事にしてくれる貴重な人間だった。
「人間じゃなくて熊で良かったぁ、人間だったら怖くて魔法が使えないもん。うわああぁぁぁん」
「あかり姉さん、もう大丈夫だったから落ち着いて」
「シエルくん、命の危険がある時にはドラゴンに戻っていいんだからね!!」
「いや、それが戻れなかったんだ。何度も試したけど駄目だった」
「え!? 嘘おぉぉ!!」
「いや、本当にマジで」
俺とあかり姉さんは話し合って、そして二人で怒られることを覚悟しつつ、俺の母であるセーメイオンのところに向かった。母は最初は洞窟の最奥に財宝を枕にしつつ寝ていた、俺の救援を求める信号にも気がつかなかったのか、無視されてしまったのか聞くのが怖かったので止めた。そして俺がドラゴンの姿に戻れないことを説明すると、ため息をつきつつ俺とあかり姉さんとの約束、その重要な部分になる問題点をあげてくれた。
「命に関する危険がある時以外は人間でいて、これが鍵でしょう。そんな状況に陥らない限り、シエル。貴方はもうドラゴンには戻れません」
「いや、さっきも結構な命の危機だったんですけど。母上」
「たかがデビルベアでしょう、しかも貴方には逃げ切れるだけの力があった。だから約束が守られ、貴方はドラゴンに戻れなかったのです」
「え? それじゃ、俺はこれからどうしたらいいのでしょうか?」
「片っ端から命の危険に立ち向かってみるべきでしょう、そしてドラゴンに戻れたらあかりとの約束をその場で破棄するのです」
「………………片っ端からってマジで?」
その日以降、俺はあかり姉さんと鍛練をする合間に命の危機と立ち向かい続けた。もちろんあかり姉さんはそんな俺を心配してついてきた、谷から人間の姿で飛び降りてみたりもした。地面がみるみるうちに俺に迫ってきて死ぬ、このままでは確実に死んでしまうと思った。その瞬間に俺の体が無意識に反応した、『浮遊』の魔法が無詠唱で発動し俺は空中にぷかぷかと浮いていた。
デビルベアとも何頭も対峙してみた、はっきりいって今はただの人間でしかない俺だ。絶対に殺されると思った、でも鋭い爪で引っ掻かれて重傷を負っても俺はドラゴンに戻れなかった。俺についてきたあかり姉さんにその度に魔法でデビルベアを退治してもらい、回復魔法をかけてもらってデビルベアからの傷を癒してもらった。あかり姉さんははっきりと落ち込んでいた、俺にごめんねと何度も言っていた。
「……ごめんね、シエルくん」
「いいよ、あかり姉さん」
「でも私の約束のせいで!!」
「いや、俺ももうドラゴンをやめようかと思ってたし」
「え!? 何それどういうこと?」
「俺みたいな弱いドラゴンじゃ、母さんたちの世界じゃ生き残れないってことだよ」
俺が人間の世界で生きていこうとしていたこと、それをあかり姉さんに説明すると姉さんはかなり驚いていた。そして俺は弱いドラゴンなんかじゃない、とあれこれ言って慰めてくれようとした。えいちぴーが?えむぴーが?などと詳しい説明をしてくれたのだが、俺にはさっぱり分からなかった。だから何も気がついてなかった、あかり姉さんがどれだけ凄いことを言っているのか、俺自身は理解していなかった。
「俺も昔は最強のドラゴンになりたかったんだけどなぁ」
「シエルくんはきっとそうなれるよ、人はそうなりたいと思ったものになるんだよ」
「でも俺は人の姿をしているけれどドラゴンにだしなぁ」
「なりたいものがある人はそれだけ努力するってことなの、だからそうなりたいと思った人になれるんだよ」
俺はもうドラゴンに戻ることを諦めていたし、その切っ掛けになったあかり姉さんとの約束も恨んでなかった。ちょっと不便な体になったとは思ったが、最近鍛練をしているおかげで体力もついてきている気がしている。これならば人間の世界で生きていくことはできるのではないだろうか、別に最強のドラゴンにならなくてもいいのではないだろうかと思っていた。
「ちなみにシエルくんはどうして最強のドラゴンになりたかったの?」
「……えーと、母さんみたいなドラゴンに憧れてたし、やっぱり強いメスドラゴンにモテたかったし」
そう正直に言ったらあかり姉さんからは腹に一発拳をくらった、だが本当に純粋に母のような強いメスドラゴンにモテて、次の世代の強いドラゴンの子どもを残したかったのだ。ドラゴンは強さを尊ぶ種族だ、次世代に強い自分の子どもを残すのは大切なことなのだ。でも俺は強いドラゴンにはなれなかったし、もう別の道を考えなくてはならない年頃なのだ。
「シエルくんは十分強いドラゴンになれるはずなんだけどなぁ」
「もういい、あかり姉さん。俺は人間として生きていくさ」
「もう!! それが心配なの!! 人間はね、ある意味ドラゴンよりも怖い生き物なのよ!!」
「あかり姉さんより、俺は母さんが怖い」
同じ上級魔法が使えるものだが、人間であるあかり姉さんはやっぱり細くて小さく弱々しい、対して俺の母親であるセーメイオンは頑丈な皮や鋭い牙や爪を持っているのだ。そんなふうに考える俺にあかり姉さんはああもうと頭を抱えていた、そして色々と考えていたようだが俺に向かってこう言ってきたのだ。
「シエルくん、今度一緒に街に行こう!!」
「え!? 街?」
「そうよ、人間の街の本当の姿を見るの!!」
「いずれは街で生活するかもしれないけど……」
「だったら、なおさら予習は必要でしょう!!」
「う、うん。分かった、あかり姉さん」
こうして俺とあかり姉さんは街まで行くことになった、あかり姉さんは滅多に街には行かないのだ。森にはない品々を手に入れる時にだけ街に行っている、俺がそれについていったことはなかった。だから俺にとっては初めての人間の街になる、俺も人間として暮らすのならば前もって行ってみるのは良いことなはずだ。
「よっし、街に行ってみよう!!」
俺がとにかく走り続けてあかり姉さんのところへ辿り着いた、するとあかり姉さんは上級魔法の雷であっさりとデビルベアを退治してくれた。いや、あっさりとじゃなかった。よくみるとあかり姉さんの体も震えていたし、その顔色は真っ青になっていた。そして、俺にいきなり抱き着いてきて体のあちこちを調べはじめた。
デビルベアの突撃を避けるのに転がったりしたが、俺はそれでもどこも怪我をしていなかった。あかり姉さんは俺の無事を確かめるとようやく体の震えが収まった、そして俺のことをぎゅうぎゅうと抱きしめて良かったぁぁと泣き出してしまった。やっぱりあかり姉さんは俺の大事な人だ、とても優しくて俺のことを大事にしてくれる貴重な人間だった。
「人間じゃなくて熊で良かったぁ、人間だったら怖くて魔法が使えないもん。うわああぁぁぁん」
「あかり姉さん、もう大丈夫だったから落ち着いて」
「シエルくん、命の危険がある時にはドラゴンに戻っていいんだからね!!」
「いや、それが戻れなかったんだ。何度も試したけど駄目だった」
「え!? 嘘おぉぉ!!」
「いや、本当にマジで」
俺とあかり姉さんは話し合って、そして二人で怒られることを覚悟しつつ、俺の母であるセーメイオンのところに向かった。母は最初は洞窟の最奥に財宝を枕にしつつ寝ていた、俺の救援を求める信号にも気がつかなかったのか、無視されてしまったのか聞くのが怖かったので止めた。そして俺がドラゴンの姿に戻れないことを説明すると、ため息をつきつつ俺とあかり姉さんとの約束、その重要な部分になる問題点をあげてくれた。
「命に関する危険がある時以外は人間でいて、これが鍵でしょう。そんな状況に陥らない限り、シエル。貴方はもうドラゴンには戻れません」
「いや、さっきも結構な命の危機だったんですけど。母上」
「たかがデビルベアでしょう、しかも貴方には逃げ切れるだけの力があった。だから約束が守られ、貴方はドラゴンに戻れなかったのです」
「え? それじゃ、俺はこれからどうしたらいいのでしょうか?」
「片っ端から命の危険に立ち向かってみるべきでしょう、そしてドラゴンに戻れたらあかりとの約束をその場で破棄するのです」
「………………片っ端からってマジで?」
その日以降、俺はあかり姉さんと鍛練をする合間に命の危機と立ち向かい続けた。もちろんあかり姉さんはそんな俺を心配してついてきた、谷から人間の姿で飛び降りてみたりもした。地面がみるみるうちに俺に迫ってきて死ぬ、このままでは確実に死んでしまうと思った。その瞬間に俺の体が無意識に反応した、『浮遊』の魔法が無詠唱で発動し俺は空中にぷかぷかと浮いていた。
デビルベアとも何頭も対峙してみた、はっきりいって今はただの人間でしかない俺だ。絶対に殺されると思った、でも鋭い爪で引っ掻かれて重傷を負っても俺はドラゴンに戻れなかった。俺についてきたあかり姉さんにその度に魔法でデビルベアを退治してもらい、回復魔法をかけてもらってデビルベアからの傷を癒してもらった。あかり姉さんははっきりと落ち込んでいた、俺にごめんねと何度も言っていた。
「……ごめんね、シエルくん」
「いいよ、あかり姉さん」
「でも私の約束のせいで!!」
「いや、俺ももうドラゴンをやめようかと思ってたし」
「え!? 何それどういうこと?」
「俺みたいな弱いドラゴンじゃ、母さんたちの世界じゃ生き残れないってことだよ」
俺が人間の世界で生きていこうとしていたこと、それをあかり姉さんに説明すると姉さんはかなり驚いていた。そして俺は弱いドラゴンなんかじゃない、とあれこれ言って慰めてくれようとした。えいちぴーが?えむぴーが?などと詳しい説明をしてくれたのだが、俺にはさっぱり分からなかった。だから何も気がついてなかった、あかり姉さんがどれだけ凄いことを言っているのか、俺自身は理解していなかった。
「俺も昔は最強のドラゴンになりたかったんだけどなぁ」
「シエルくんはきっとそうなれるよ、人はそうなりたいと思ったものになるんだよ」
「でも俺は人の姿をしているけれどドラゴンにだしなぁ」
「なりたいものがある人はそれだけ努力するってことなの、だからそうなりたいと思った人になれるんだよ」
俺はもうドラゴンに戻ることを諦めていたし、その切っ掛けになったあかり姉さんとの約束も恨んでなかった。ちょっと不便な体になったとは思ったが、最近鍛練をしているおかげで体力もついてきている気がしている。これならば人間の世界で生きていくことはできるのではないだろうか、別に最強のドラゴンにならなくてもいいのではないだろうかと思っていた。
「ちなみにシエルくんはどうして最強のドラゴンになりたかったの?」
「……えーと、母さんみたいなドラゴンに憧れてたし、やっぱり強いメスドラゴンにモテたかったし」
そう正直に言ったらあかり姉さんからは腹に一発拳をくらった、だが本当に純粋に母のような強いメスドラゴンにモテて、次の世代の強いドラゴンの子どもを残したかったのだ。ドラゴンは強さを尊ぶ種族だ、次世代に強い自分の子どもを残すのは大切なことなのだ。でも俺は強いドラゴンにはなれなかったし、もう別の道を考えなくてはならない年頃なのだ。
「シエルくんは十分強いドラゴンになれるはずなんだけどなぁ」
「もういい、あかり姉さん。俺は人間として生きていくさ」
「もう!! それが心配なの!! 人間はね、ある意味ドラゴンよりも怖い生き物なのよ!!」
「あかり姉さんより、俺は母さんが怖い」
同じ上級魔法が使えるものだが、人間であるあかり姉さんはやっぱり細くて小さく弱々しい、対して俺の母親であるセーメイオンは頑丈な皮や鋭い牙や爪を持っているのだ。そんなふうに考える俺にあかり姉さんはああもうと頭を抱えていた、そして色々と考えていたようだが俺に向かってこう言ってきたのだ。
「シエルくん、今度一緒に街に行こう!!」
「え!? 街?」
「そうよ、人間の街の本当の姿を見るの!!」
「いずれは街で生活するかもしれないけど……」
「だったら、なおさら予習は必要でしょう!!」
「う、うん。分かった、あかり姉さん」
こうして俺とあかり姉さんは街まで行くことになった、あかり姉さんは滅多に街には行かないのだ。森にはない品々を手に入れる時にだけ街に行っている、俺がそれについていったことはなかった。だから俺にとっては初めての人間の街になる、俺も人間として暮らすのならば前もって行ってみるのは良いことなはずだ。
「よっし、街に行ってみよう!!」
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