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第三章 我慢できるよね。私

第六章 初めてなんて……

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 今はもう、妹がヨゼフを自分のものとして扱っているようにしか、見えない。

「お? おお、そうだなあ。なら、頼むかあ。なあ、リナ?」

 わざとらしい妹と、棒読みにもほどがあるヨゼフ。

 こんな日常の先に、私は……私が望むほんわかとした幸せがあると思っていた。

「うん、もちろん。それで……ヨゼフ、朝食は?」

「ん、まだだけど……別にいいかと思って」

「だめよ、ちゃんと食べないと。メイドさんたちに頼むのも悪いから、妹と一緒に私が用意するね。ちょっと待ってて」

 ある意味、入りやすい。

 こんな三文芝居でもいいのなら。

 今の私でも、入れる。

「ふふっ」

 食堂を出るとき、妹が私を見て、笑った。

 自分が挑発したことで、姉の私が焦りを覚えている……きっと妹からは、そう見えている。

 昨日、私が見ていたことがバレたのとは、違う。

 それは、すぐに証明された。

 私は、さっと食堂から立ち去って……そして歩みを緩めて耳を傾けていた。

「ねえねえ、ヨゼフ。お姉ちゃんって、やっぱり馬鹿だよね!」

 聞こえてきた会話。

「なんだよ? アンナ。というより、お前たち、何か揉めていたみたいだけど、もしかして……」

「ううん、違うよ。むしろ、全然大丈夫だった! ついさっきだって、もう、すっごい面白かったんだから! おまけに今だってさあ……お姉ちゃん、きっと私とヨゼフが仲良くしているのを見て、焦ってるんだよ? あれで女の子アピールしているつもりなんだから。馬っ鹿みたい! あはははは!」

 なんて……憎たらしい妹。

 妹なんて、所詮、ちょっと他の女の子より、見た目が可愛いだけなんじゃないの……?

 もう何でもいいから、殴っておけば良かったの……?

 そんな感情が湧き始めたのは、この時くらいからだったのかもしれない。

「それにしても……アンナは今日も可愛いな。こんな可愛い女の子が、この世にいるだなんて。俺、やっぱお前のことが好きだよ」

「もう、ヨゼフったらあ! あ、そうだぁ……」

 確認することは確認したから、立ち去ろうとして……アンナが媚びを売る声になったのが聞こえた。

 とても、わざとらしい声。

「うん、それもいいかなぁ……ね、ヨゼフ? もし、ヨゼフがぁ……私の言うことをよく聞いてぇ、全部が上手くいったらぁ……私の初めて、ヨゼフにあげちゃってもいいかなぁって、思ってるんだけどぉ……?」

 なに……言ってるの?

 あなたの初めてなんて……。
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