17 / 40
第三章 我慢できるよね。私
第四話 あまり調子に乗ると
しおりを挟む
多分、妹は私が扉を閉めてしまった音を、聞き逃さなかったんだ。
馬鹿なヨゼフとは、違って。
ヨゼフは……どうせ、妹の誘惑にやられて発情して、妹に夢中になっていて……私に対しては、一度もそんなことないのに……!
初めて、ヨゼフと抱き合ったときも……その時は不器用なだけと思っていた。けど、今、思い返せば、きっと私のことなんてなんとも思っていなかっただけ。
ううん、そうじゃなくて……。
(妹は……扉が閉まる音を聞いたから、誰かに見られたんじゃないかと思って……それで……一番話を聞かれたくなかった私に、カマをかけてきた)
だとしたら……。
「アンナ……。あ、あなたは、まだ子供だから分からないかもしれないけど……大人の恋愛には、ペースってものがあるの」
これで、あってるはず。妹は……カマをかけるのとは別に、それはそれとして、楽しんでいた。
「ペース? あはは! なにそれ、言い訳じゃんっ」
「っ! あなたに……私とヨゼフの関係が、どう見えているかは知らないけど、私とヨゼフには、私達のペースがあるの。別に、あなたに心配されることなんて、何もないんだから」
怒りで、声が震える。
「うんうん、だから分かってるって! お姉ちゃん、大真面目になっちゃって、おもしろーい! あははは」
「れ……恋愛っていうのは、別にそういうのだけが恋愛じゃないんだから。私は……あなたが知らないヨゼフの良いところだって、いっぱい知っているんだから」
私は、いつものお姉ちゃんを装っているだけ。
けど……なんで、自分で言っていて、こんなにみじめな気持ちになるのだろう……?
理由は、簡単。もう結果は分かっている……むしろ、最初から勝負にすらならなっていなかった。私は、勝負があることすら知らなかった。
「うんうん、そうだね、そうだね! お姉ちゃんは私が知らないヨゼフの良いところを、いっぱい知ってるよ!」
妹は、見透かしているといわんばかりに笑う。
それは……自分の方が姉でヨゼフの婚約者である私よりも、ヨゼフのことを知っているという意味の笑い。
本当に、憎たらしい笑顔。
それどころか……。
「けど、ヨゼフだって男の人なんだから、あんまり我慢させちゃ駄目だよ?」
「っ……!」
さすがに、怒りが爆発しそうだった。
知ってるくせに……!
もう半分浮気を認めているような発言。
「ま、あくまで私の想像だけどね!」
私が何も言えないでいると、妹はさらに調子に乗ってきた。
「ほら、お姉ちゃんも別に可愛くないわけじゃないんだけどさ……男の人って、やっぱり私みたいに見た目が可愛くて、純粋だけど、”そういう魅力”もある女の子の方が好きでしょ? だから、その分、お姉ちゃんは努力した方がいいって言うかあ……。そうじゃないと、ね! お姉ちゃんでも、分かるでしょ?」
怒りと憎しみで、頭がおかしくなりそう。
この妹は……口で言っているだけじゃないんだから。
昨日の夜……ヨゼフとソファーの上で……。
なんで、こんなのの見た目が私より可愛いの……?
なんで、こんな憎たらしい顔つきなのに、男の人はみんな妹にいくの……?
それでも、私は言った。やっぱり、怒りで声が震えるのを我慢しながら。
「アンナ……あまり調子に乗ると、わ、私も怒るよ? あまり馬鹿を言わないでっていったばかりでしょ」
今までの私だったら、何も気づかなくて、てきとうにあしらって終わり……多分、そうだったと思う。
だから、間違っていないはず。
実の姉妹なのに、女の子として……まるで勝てない私。
女の子として、あまりにも勝てないから……結局、何をどうやっても、負けてしまう。
どんなに我慢をしても、結局、私の負け。
一人でいい……一人で良いから、私の方が好きと言ってくれる男の人がいたら、全てが違うのに……。
「ああ、二人とも、ここにいたんだ」
馬鹿なヨゼフとは、違って。
ヨゼフは……どうせ、妹の誘惑にやられて発情して、妹に夢中になっていて……私に対しては、一度もそんなことないのに……!
初めて、ヨゼフと抱き合ったときも……その時は不器用なだけと思っていた。けど、今、思い返せば、きっと私のことなんてなんとも思っていなかっただけ。
ううん、そうじゃなくて……。
(妹は……扉が閉まる音を聞いたから、誰かに見られたんじゃないかと思って……それで……一番話を聞かれたくなかった私に、カマをかけてきた)
だとしたら……。
「アンナ……。あ、あなたは、まだ子供だから分からないかもしれないけど……大人の恋愛には、ペースってものがあるの」
これで、あってるはず。妹は……カマをかけるのとは別に、それはそれとして、楽しんでいた。
「ペース? あはは! なにそれ、言い訳じゃんっ」
「っ! あなたに……私とヨゼフの関係が、どう見えているかは知らないけど、私とヨゼフには、私達のペースがあるの。別に、あなたに心配されることなんて、何もないんだから」
怒りで、声が震える。
「うんうん、だから分かってるって! お姉ちゃん、大真面目になっちゃって、おもしろーい! あははは」
「れ……恋愛っていうのは、別にそういうのだけが恋愛じゃないんだから。私は……あなたが知らないヨゼフの良いところだって、いっぱい知っているんだから」
私は、いつものお姉ちゃんを装っているだけ。
けど……なんで、自分で言っていて、こんなにみじめな気持ちになるのだろう……?
理由は、簡単。もう結果は分かっている……むしろ、最初から勝負にすらならなっていなかった。私は、勝負があることすら知らなかった。
「うんうん、そうだね、そうだね! お姉ちゃんは私が知らないヨゼフの良いところを、いっぱい知ってるよ!」
妹は、見透かしているといわんばかりに笑う。
それは……自分の方が姉でヨゼフの婚約者である私よりも、ヨゼフのことを知っているという意味の笑い。
本当に、憎たらしい笑顔。
それどころか……。
「けど、ヨゼフだって男の人なんだから、あんまり我慢させちゃ駄目だよ?」
「っ……!」
さすがに、怒りが爆発しそうだった。
知ってるくせに……!
もう半分浮気を認めているような発言。
「ま、あくまで私の想像だけどね!」
私が何も言えないでいると、妹はさらに調子に乗ってきた。
「ほら、お姉ちゃんも別に可愛くないわけじゃないんだけどさ……男の人って、やっぱり私みたいに見た目が可愛くて、純粋だけど、”そういう魅力”もある女の子の方が好きでしょ? だから、その分、お姉ちゃんは努力した方がいいって言うかあ……。そうじゃないと、ね! お姉ちゃんでも、分かるでしょ?」
怒りと憎しみで、頭がおかしくなりそう。
この妹は……口で言っているだけじゃないんだから。
昨日の夜……ヨゼフとソファーの上で……。
なんで、こんなのの見た目が私より可愛いの……?
なんで、こんな憎たらしい顔つきなのに、男の人はみんな妹にいくの……?
それでも、私は言った。やっぱり、怒りで声が震えるのを我慢しながら。
「アンナ……あまり調子に乗ると、わ、私も怒るよ? あまり馬鹿を言わないでっていったばかりでしょ」
今までの私だったら、何も気づかなくて、てきとうにあしらって終わり……多分、そうだったと思う。
だから、間違っていないはず。
実の姉妹なのに、女の子として……まるで勝てない私。
女の子として、あまりにも勝てないから……結局、何をどうやっても、負けてしまう。
どんなに我慢をしても、結局、私の負け。
一人でいい……一人で良いから、私の方が好きと言ってくれる男の人がいたら、全てが違うのに……。
「ああ、二人とも、ここにいたんだ」
0
お気に入りに追加
4,645
あなたにおすすめの小説
「本当に僕の子供なのか検査して調べたい」子供と顔が似てないと責められ離婚と多額の慰謝料を請求された。
window
恋愛
ソフィア伯爵令嬢は公爵位を継いだ恋人で幼馴染のジャックと結婚して公爵夫人になった。何一つ不自由のない環境で誰もが羨むような生活をして、二人の子供に恵まれて幸福の絶頂期でもあった。
「長男は僕に似てるけど、次男の顔は全く似てないから病院で検査したい」
ある日ジャックからそう言われてソフィアは、時間が止まったような気持ちで精神的な打撃を受けた。すぐに返す言葉が出てこなかった。この出来事がきっかけで仲睦まじい夫婦にひびが入り崩れ出していく。
私はただ一度の暴言が許せない
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。
花婿が花嫁のベールを上げるまでは。
ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。
「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。
そして花嫁の父に向かって怒鳴った。
「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは!
この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。
そこから始まる物語。
作者独自の世界観です。
短編予定。
のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。
話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。
楽しんでいただけると嬉しいです。
※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。
※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です!
※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。
ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。
今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、
ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。
よろしくお願いします。
※9/27 番外編を公開させていただきました。
※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。
※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。
※10/25 完結しました。
ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。
たくさんの方から感想をいただきました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
[完結]本当にバカね
シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。
この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。
貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。
入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。
私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。
お兄様、奥様を裏切ったツケを私に押し付けましたね。只で済むとお思いかしら?
百谷シカ
恋愛
フロリアン伯爵、つまり私の兄が赤ん坊を押し付けてきたのよ。
恋人がいたんですって。その恋人、亡くなったんですって。
で、孤児にできないけど妻が恐いから、私の私生児って事にしろですって。
「は?」
「既にバーヴァ伯爵にはお前が妊娠したと告げ、賠償金を払った」
「はっ?」
「お前の婚約は破棄されたし、お前が母親になればすべて丸く収まるんだ」
「はあっ!?」
年の離れた兄には、私より1才下の妻リヴィエラがいるの。
親の決めた結婚を受け入れてオジサンに嫁いだ、真面目なイイコなのよ。
「お兄様? 私の未来を潰した上で、共犯になれって仰るの?」
「違う。私の妹のお前にフロリアン伯爵家を守れと命じている」
なんのメリットもないご命令だけど、そこで泣いてる赤ん坊を放っておけないじゃない。
「心配する必要はない。乳母のスージーだ」
「よろしくお願い致します、ソニア様」
ピンと来たわ。
この女が兄の浮気相手、赤ん坊の生みの親だって。
舐めた事してくれちゃって……小娘だろうと、女は怒ると恐いのよ?
公爵令嬢は、婚約者のことを諦める
小倉みち
恋愛
公爵令嬢アメリは、婚約者である公爵子息マートンを、とても愛していた。
小さいころに一目ぼれをし、それ以降、彼だけを追いかけ続けていた。
しかしマートンは、そうじゃなかった。
相手側から、無理やり用意された縁談。
好きだ好きだと、何度もアメリに追い回される。
彼女のことを、鬱陶しいとさえ思っていた。
自分が愛されていないことは知っていたが、それでもアメリは彼を求めていた。
彼と結婚したい。
彼と恋仲になりたい。
それだけをずっと考えていた。
しかしそんなある日、彼女は前世を思い出す。
それは、マートンと親しい関係にある男爵令嬢の胸倉を掴んだ瞬間に起こった出来事だった。
すべてを思い出した彼女は、ここが乙女ゲームの世界であり、自分がそのゲームの悪役令嬢。
そして今、胸倉を掴んでいる男爵令嬢こそが、乙女ゲームのヒロインであることを悟る。
攻略対象であるマートンのルートに彼女が入ってしまっている今、自分に勝ち目はない。
それどころか、下手をすれば国外追放され、自分の家に迷惑がかかってしまう。
ストーリーの結末を思い出してしまった彼女は、悲劇を起こさないように。
マートンのことを、きっぱりと諦めることにした。
7年ぶりに帰国した美貌の年下婚約者は年上婚約者を溺愛したい。
なーさ
恋愛
7年前に隣国との交換留学に行った6歳下の婚約者ラドルフ。その婚約者で王城で侍女をしながら領地の運営もする貧乏令嬢ジューン。
7年ぶりにラドルフが帰国するがジューンは現れない。それもそのはず2年前にラドルフとジューンは婚約破棄しているからだ。そのことを知らないラドルフはジューンの家を訪ねる。しかしジューンはいない。後日王城で会った二人だったがラドルフは再会を喜ぶもジューンは喜べない。なぜなら王妃にラドルフと話すなと言われているからだ。わざと突き放すような言い方をしてその場を去ったジューン。そしてラドルフは7年ぶりに帰った実家で婚約破棄したことを知る。
溺愛したい美貌の年下騎士と弟としか見ていない年上令嬢。二人のじれじれラブストーリー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる