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第二章 開いてはいけない手紙
第七話 ごめんなさい、……様
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(えへへ。今日も、嬉しいことがあったんだ。最近、お義父様が考えていることが分かるようになってきたんだ。ううん、それだけじゃなくて……)
「ああああ……そうだよ……分かってるよ……! ヨゼフだけじゃ、アンナだけじゃ……ないんだよ……」
もう、嫌。
書き出しを見ただけで、何を書いたのか、分かってしまう。
その時の、光景も……自分の気持ちも……思い出してしまう。
なのに、読んでしまう。
読むのを……やめられない。
ぽたぽたと、涙か鼻水か分からないものが垂れてから……紙が、どんどん汚れていく。インクも……にじんでいく。
一冊全部書き上げてからは、大切に保管していたノートのはずなのに。
まるで、汚れていたのが、最初から真実とばかりに……。
(お義父様は、しかめ面で、いつもヨゼフのことを「馬鹿息子」って言っているけれど、本当はヨゼフのことが大切で仕方がないんだ)
「ううう……覚えてる……覚えてるんだよお……」
(最初だけ。……怖そうとか、気難しそうとか思ったのは、最初だけ。本当は、とても優しい人で……私とヨゼフの結婚も、実はすごく喜んでくれていて……)
「うううっ……私、なんて説明すればいいんだろう……?」
(上手く言えないけど……お義父様は一番、私と気持ちが通じている部分があるって、思うんだ。成り上がるために頑張ってきたとかじゃなくて……多分、もっと本当の意味で苦労してきた人……私の勘でしかないけど……きっと間違っていなくて)
「ごめんなさい、ごめんなさい、お義父様っ……」
何を思って、何を決めたのか……。
それだって、私は覚えている。
(私、お義父様のためにも……ううん、このお屋敷の人達みんなにとっても、いいお嫁さんになりたい! そう思ってたら……今日、お義父様が言ってくれたんだ)
「いや……もう、嫌だよお……なんで、私、こんなに馬鹿なんだろう!?」
(「ヨゼフが私に出会ってくれて、良かった」って。……えへへ。……えへへへへへ!)
「私……お義父様だって……本当のお父さんのように……思ってるんだから……。私達を引き取ってくれたおじさまとか、おばさまとは……違って」
私と妹の身分は……一応、貴族。
普通の平民より、立場の低い……貴族。
「そんなことは気にしてないけど……」
「ああああ……そうだよ……分かってるよ……! ヨゼフだけじゃ、アンナだけじゃ……ないんだよ……」
もう、嫌。
書き出しを見ただけで、何を書いたのか、分かってしまう。
その時の、光景も……自分の気持ちも……思い出してしまう。
なのに、読んでしまう。
読むのを……やめられない。
ぽたぽたと、涙か鼻水か分からないものが垂れてから……紙が、どんどん汚れていく。インクも……にじんでいく。
一冊全部書き上げてからは、大切に保管していたノートのはずなのに。
まるで、汚れていたのが、最初から真実とばかりに……。
(お義父様は、しかめ面で、いつもヨゼフのことを「馬鹿息子」って言っているけれど、本当はヨゼフのことが大切で仕方がないんだ)
「ううう……覚えてる……覚えてるんだよお……」
(最初だけ。……怖そうとか、気難しそうとか思ったのは、最初だけ。本当は、とても優しい人で……私とヨゼフの結婚も、実はすごく喜んでくれていて……)
「うううっ……私、なんて説明すればいいんだろう……?」
(上手く言えないけど……お義父様は一番、私と気持ちが通じている部分があるって、思うんだ。成り上がるために頑張ってきたとかじゃなくて……多分、もっと本当の意味で苦労してきた人……私の勘でしかないけど……きっと間違っていなくて)
「ごめんなさい、ごめんなさい、お義父様っ……」
何を思って、何を決めたのか……。
それだって、私は覚えている。
(私、お義父様のためにも……ううん、このお屋敷の人達みんなにとっても、いいお嫁さんになりたい! そう思ってたら……今日、お義父様が言ってくれたんだ)
「いや……もう、嫌だよお……なんで、私、こんなに馬鹿なんだろう!?」
(「ヨゼフが私に出会ってくれて、良かった」って。……えへへ。……えへへへへへ!)
「私……お義父様だって……本当のお父さんのように……思ってるんだから……。私達を引き取ってくれたおじさまとか、おばさまとは……違って」
私と妹の身分は……一応、貴族。
普通の平民より、立場の低い……貴族。
「そんなことは気にしてないけど……」
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