異世界チートで世界を救った後、待っていたのは逆ハーレムでした。

異文

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混血系大公編:第二部

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 でもそう感じたのは一瞬で、ヴァレさんはすぐにニコっと笑ってその場の空気を変えた。
「やはりシャトラは、複婚に向いているね!夫たちの顔を見ていれば、きちんと幸福に扱われていることがわかるよ」
 さっきの…気のせいだったのかな?一瞬だったし、取り繕った感じもしないし。
「あー…そうですかね?そう思ってもらえてると、いいんですけど」
 私は気にしないことにして、話を続けた。
「私にはそう見えるよ。これならもうひとりくらい、増やしても問題ないのではない?」
「問題ないってなんですか…もうお腹いっぱいですよー」
 もう、また言ってる。3人相手するのだってひぃこらしてるのに…もうひとりなんて、どこに入る余地があるのよ。
「またまた。君の度量ならいける!」
「もう手一杯でーす。これ以上は受け付けませーん」
 ムッと口を尖らせてみせると、ヴァレさんは歯をちらりと見せて笑った。ああ、この笑顔。懐かしいな。目尻に皺を寄せて、ギュッと目を細めて。屈託のないこの笑顔が、好きだなぁと思う。
 ヴァレさんは、昔はもっと庶民的だった。もちろん皇子の生まれだから、ふとした仕草に教養を感じることは多かったけれど…。でも言葉遣いはもっと粗野だったし、自分の事だって「俺」って言ってた。皇子だけどほとんどそんな感じがしなくて、私とは同じ世界の人だなってその時は思ってた。
 でも再会した今は、どうだろう。身に着けているものも高級品で、上品で隙のない身のこなし。この人は誰?かつて3番街で一緒に過ごしたヴァレさんと、本当に同じ人?
 そう思ったところで、イスの腕にギュッと力が入ったのに気づく。ああ、ごめん、またやっちゃった。ヴァレさんに見惚れてたように見えたよね。謝罪の気持ちを込めて、私の腰を抱く腕にそっと手を添える。大丈夫、ただの憧れだよ。この人に対して恋愛感情なんて、恐れ多くて抱こうとすら思わなかった。
「…ま、その話はとりあえず置いておこうか。さて、ありがとう塔長殿。おかげでだいたいの内容はわかったよ。それで、私はプレゼンで何をすればよい?」
「好きにすればいい。声を掛けたくば掛ければいいし、嫌なら黙って座っていればいい」
「あぁ…なるほど?」
 うーん、仮にも皇帝陛下へ向かってこの物言い。陛下も困っちゃってんじゃん。サークルの塔長って皇帝陛下とほぼ対等なんて聞いたことあるけど、それでもイスの態度見てると心臓に悪いわ。
「あー、ねぇイス、私に発案者で挨拶してって言ってたじゃん?じゃあ陛下にも一言いただいたら?出資者なんだし」
「それは…」
「ちょっとシャトラ、前にも言ったがその陛下っていうのはやめてくれるかい?他人行儀で寂しいじゃないか」
「え?ああ、つい…」
 そういえばハリーさんも、陛下なんて呼ぶなって言ってたっけ。すみません、と謝ろうとするとそれを遮ってイスが口を開いた。
「何を言っている、他人だろう」
 シレッと大暴言を吐くイスさんに、目ん玉をひん剥く。アワアワしながらヴァレさんの様子を伺うと、彼の目から笑みが消える。
「…へぇ?そんなこと言っていいのか?」
 穏やかな口調なのに、凍てつくような声。口元は緩く弧を描いているのに、目が一切笑っていない。怖い!
「何がだ?私と彼女は婚約者という間柄だが、貴方との間にはそういった関係がないのは事実だろう」
 対するイスさんの表情は、そんな冷気を向けられても一切変わらない。それも怖い!
「イスハーク、君はいま帝国民になる申請をしていたな。その上で、彼女と婚約する申請も。いま関係機関で調整中だが、ことサークルの塔長と、貴族になる予定の我が国の英雄の婚約だからな。採択にはかならず私の玉璽がいる。そのことを理解しているか?」
「…つまり、玉璽を押さないと?ずいぶんと横暴ではないか」
 イスが眉を顰めて、非難するような目を向ける。ええっ、マジで?
「最終的には押すことになるだろう。だが、あの手この手で引き延ばすことはできる。理由など、いくらでも作れるのだから。違うかい?」
「……」
 ピリリと空気が張り詰める。
 イスの眉間にグッと皺が寄り、殺気を含んだ魔力がじわりと漏れ出る。怖い!
 ヴァレさんは優雅に足を組み、視線だけで殺せそうな威圧を放出する。怖い!
 修羅場はそれなりに潜り抜けてきたつもりなんだけど、本物の実力者たちの殺気は身の内から震え上がるほど恐ろしい。さすがにこのふたりの間に割って入る勇気はなく、ジリジリと距離を取っていると、庭に続く扉がバン!と開いてビョルンとロルフが飛び込んできた。
 助かった!
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