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混血系大公編:第一部

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「仕方ない。ロルフ、私の魔術に耐えられるか?傷の治りを促進させる程度の術なら編める。もちろん激しい運動は駄目だが、出血しない程度にはなると思う」
「う。しゃーねぇな…やってくれ」
 麻酔すら嫌がってたのに…そこまでする?ビョルンが解放すると、ロルフはソファに座り直す。すぐにイスが魔術を紡ぎ、ロルフの顔色がみるみる悪くなる。ただ以前魔法陣を編み込んだ時にくらべれば、腕だけな分全然マシっぽいけど…。
 呆れた目でそれを見ていると、ビョルンが隣にやってきた。
「…お前、3人揃ってるから回避しようとしてたな?」
 私にだけ聞こえるくらいの声で言われ、ギクリと肩を揺らす。
「任務を入れたりして、できるだけ3人重ならないようにしていたものな」
「う…ッ」
 ビョルンさんには、わかってたんだね。完全に図星で、言葉に詰まってしまう。
「…だって、前に3人とした時、すごく大変だったし…」
「…まぁ、あれは確かに、いつにない盛り上がりだったが…」
 ビョルンは、口元を手で覆い隠して答える。でも目元が緩んでいるので、声は神妙にしてるけどちょっとニヤついてない?
 ジロリと睨んでやると、咳払いしてビョルンが口を開いた。
「もし、本気で嫌なら…俺から言って聞かせるぞ。家庭内の輪を保つ上で公平であることは大事だが、お前が嫌なことを我慢させたいわけじゃない」
「ビョルン…」
 彼の大きな右手で優しく頭を撫でられて、心が温かくなる。ビョルンはいつも、私のことを気遣ってくれる。私の気持ちを汲むのも上手だ。それがすごく嬉しい。
 …でも。
「教えてくれ。3人でするのは嫌か?」
 ビョルンの手が首筋に触れ、指がスルリと撫でていく。深くて青い瞳に見つめられて、あの時のことを思い出してしまう。
 3対の目が、私を熱く見つめる。6本の腕が、私の肌を這いまわる。3つの舌が、私の体を弄る。そして3本の、3本のアレが…。
 コクリ、と喉を鳴らす。青い瞳の奥で、情欲が炎のようにちらついているのが見える。同時に、獣のようにギラついた灰色の瞳と、魔力が漏れ出て金色に煌めく瞳を思い出す。
「嫌、か?」
「……嫌、じゃない……」
 熱を持ったため息と共に、震える声を吐き出す。
「そうか。…今夜が楽しみだ」
「………」
 ビョルンの右手が腰に回る。引き寄せられるまま彼の体に身を寄せ、鍛え上げられた厚みのある胸に頭を預けて、目を伏せる。
 …彼は、私を追い詰めるのも上手だ。
 ドキドキする胸を押さえて呼吸を整えながら、ロルフの治療が終わるのを待った。


 イスの魔力が徐々に収束し、金色に輝いていた瞳がいつもの琥珀色に戻る。
「よし、終わりだ」
「…あ”ーー!!クソ気持ち悪ィ!!!」
 イスが魔術を紡ぎ終わるなり、ロルフは私の方に突進してきた。
「ぐえッ」
「シャーラ!魔力流せ!早く!」
「あぁ、はいはい…」
 覆いかぶさるように抱きしめられて、腰が折れそうなんだけど…。仰け反ってほぼロルフに体重を預けた状態で、彼に魔力を流す。少しすると落ち着いたのか、ロルフの力が少し緩んで「ハァーッ」と深いため息が聞こえた。
「あぁ、クソ。やばかった…」
「え、そんなに?」
 イスを見ると、彼はコクリと頷いた。
「最初だからな、長めにやった。明日以降はもっと短い」
「へぇ、毎日やるんだ」
「やらなくてもいいが、やった方が治りが早い」
「なるほど」
 イスと話している間にロルフがゴソゴソと動きお尻を揉み始めたので、ペシっと腕を叩いて嗜めた。
「ほらロルフ、ソファに座って!」
「何でだよ、帰んねーの?」
「モルサスが出たんでしょ?報告書作って騎士団に提出するから」
「あー…買取所にゃ言っといたけどな。そっから伝わるんじゃねーの?」
「伝わっても詳細まではわかんないでしょ?絶対後から報告書の提出要求されるから、先に準備しておくの」
「めんどくせー…」
「これも大事なお仕事!」
 強い口調で言うとロルフはやや不満げに鼻を鳴らして、私を抱え上げるとソファに乱暴に腰を下ろした。
「うわっ」
 ソファに座ったロルフの膝の上に、横抱きで乗せられる。
「何この体勢…」
「報告。そのピアスで録音すんだろ?直接聞かせてやるよ」
 ガブっと左耳を噛んで、ピアスを包み込むようにチュルっと舐められる。
 もう!
「報告書作るのは事務の子がやるの。変な音入れないでよ」
「チッ、ケチくせぇな」
「とか言いつつ揉むな!」
 胸を揉むロルフの手を払い、私はピアスに触れて録音データをリセットした。さっきロルフが舐めた時、作動して何か音声が入ってると嫌だからね。
「抱っこしたままでもいいけど、ちゃんと報告はしてよ?」
「「抱っこ…」」
 ビョルンとロルフが同時に呟く。う。子どもっぽい言い方だったかな?なんだか急に恥ずかしくなってしまう。
「なぁロルフ、俺もシャーラを『抱っこ』したい」
「いいな、私も『抱っこ』したい」
「あぁ?いま俺が『抱っこ』してんだよ!」
 男3人がニヤニヤしながら(イスは無表情だけど)やり始めたので、イラッとしてロルフの胸をバシバシ叩いてやる。
「えぇい、抱っこ抱っこ強調すんな!ホラ、さっさと終わらせて帰るよ!私は美味しいもの食べたいしお風呂も入りたいの!」
「へいへい」
 やる気のない表情のロルフと苦笑するビョルン、ほんのちょっとだけ口角を上げたイスを促して、ようやく聞き取りを開始した。

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