181 / 198
混血系大公編:第一部
63
しおりを挟む
食事を終えた私たちは身支度を終えて、宿を引き払った。ロルフは朝にもセックスしたせいか非常にご機嫌で、私にチュッと軽くキスを寄越してさっさと出て行った。
同行した団員たちも、集合時間に合わせて宿前にキチンと全員集合している。ただ飲みすぎちゃったのか、顔色の悪い団員が1名見受けられる。
「そこ、二日酔い?帰り道も任務を請け負ってるって通達したはずだけど」
「あぁ、へへ、つい…」
ヘラヘラと笑って返答したのは、戦後に入った若い隊員だ。名前はルードルフ。ビートよりは先輩で、そこそこ仕事をこなせるようになって変に自信がついちゃったって感じかな。こりゃ私が隊長だからって、舐めてんな?団長ではあるものの久しぶりに現場で指揮を取るのもあるし、元々支援職だからそこまで強くもない。力を信望するタイプの人間は私よりビョルンやロルフを崇拝していて、私がトップであることに疑念を抱いている者もいる。それでも、こんなあからさまに態度に出す奴はいなかったけどね。
舐めた態度にアンリが顔をしかめて、私に視線を送る。代わりに注意しようか?って意味だと思う。私は軽く首を振ってそれを制し、彼の目の前に立って宣告した。
「あなたは、ここで帰っていいわ」
「ヘ…ッ?」
間抜けな声を出して固まったルードルフに、冷ややかな視線を送る。
「聞こえなかった?帰れっつったの。そんな酒臭い息を撒き散らして、アンタなに考えてんの?」
「い、いやだって、元は帰るだけって話だったじゃないすか…」
だから飲んでもいいと思ったって?アホか。
「元は、ね。でも昨日ちゃんと通達したよね?だったらそれにコンディション合わせるのはプロとして当然じゃない?こちとら遠足に来てんじゃねーのよ仕事なのよ。一瞬の隙が命取りになる、護衛任務なの。アンタのせいで護衛対象になんかあったらどうすんの?クソみたいなアンタのせいで、仲間が怪我したり命落としたりする可能性もあんのよ。仕事舐めてんの?仕事に対する姿勢もわからないバカにいられちゃ迷惑なのよ!」
「なんだと…ッ!」
カァっとルードルフの顔に朱が差し、頭に血が昇ったことがわかる。まぁ、自分より圧倒的に小柄で弱そうで下に見ている(上司だけどね!)相手にここまでこき下ろされたら、腹も立つだろう。だからこそ煽ってやる。アンタのやっすいプライド、ここでへし折ってやるからな!
「そんなんじゃさぞかし普段の任務も足手まといの役立たずなんだろうね?このど素人が!!」
「F××kin’b××h!」
まぁ、多少の自信をつけていた若手からすりゃあ一番言われたくない言葉よね。多分。怒りで我を忘れた彼が、剣の束に手を掛ける。辺りを取り囲んでいた団員たちも、「何してんだテメェ!」「この馬鹿野郎!」などと怒号を上げ、次々に剣に手を掛ける。うんうん、瞬時に対応できてえらいね。
でも、遅い。
バチバチィッ!!
「ガ…ッ!」
私の両手が、剣を引き抜こうとしたルードルフの腕に触れる。その瞬間、ガクガクと彼の体が震えて崩れ落ちる。あれ、威力強すぎたかな?地面に倒れ伏したまま動かないんですけど…。これ、元々常に身に着けてる護身装具の効果で、私が攻撃なり受けて魔力が乱れた時に両手で相手に触れると発動するようになっている。スタンガンみたいに雷撃が相手の体を通って、動きを止めるってやつなんだけど…。イスの協力で威力が上がっちゃったから、もしかして気絶しちゃったかも。
「え。死んでないよね?」
恐る恐るイスを見ると、彼はグッと眉間に皺を寄せてみせた。
「死なないように調整はしている。だが、お前を襲おうとした人間は死んでもいいと思う」
「いやいや、いちおうウチの団員なのよ…」
ぶっちゃけ私も煽っちゃったし、こんなんでもウチの大切な団員だしね。鼻に手をかざして、呼吸を確認する。よかった、生きてるわ。
「団長、このバカどうします?」
このまま放置でいいんじゃねぇすか?とか酷いこと言ってる団員を制する。
「さすがにダメでしょ。往来の邪魔になるし」
周囲にはけっこう野次馬が集まっている。ガタイのいい男を小柄な女が瞬時に倒したので、ちょっとしたパフォーマンスになっちゃったみたい。目撃した人が後から集まってきた人に、興奮しながら事のあらましを語っている。
「水ぶっかけましょうかい?」
「いやいや、風邪引いちゃうでしょ。ちょっと待って、バッグのどこかにブランデー持ってたと思うけど」
ロルフの持ってるブランデー、気つけにも使えるから少量拝借してきたのよね。「母ちゃん…?」と呟いた年上のゴツい男を小突きつつ、バッグの中身をさばくる。いかん、バッグの中身が整理できない女なのがばれるー。
「うぅ…」
でもロルフ秘蔵?のブランデーの出番はなかった。うめき声を上げながら、ルードルフが目を覚ます。おお、さすが我が団員。頑丈だね。意識を失っていたのは一瞬だったみたいだ。
「大丈夫そ?」
「……」
しゃがんで覗き込むと、目をパチパチ瞬かせて、なにが起こったのか理解できていないようだ。
「おいバカ、覚えてるか?お前団長に一瞬でやられたんだぞ」
ルードルフの先輩団員が告げると、徐々に思い出したのか、顔を押さえて「マジかよ…」と呟いている。
「お前なぁ、弱い人間がウチの団長になれるわけないだろ?あのボナ・ノクテムの最前線で戦った人だぞ。ルーキーから脱したばかりのお前が、敵うわけねぇんだよ」
「……」
身に着けている魔道具の効果ですけどね。ただこれを開発したのは私だし、私の実力の内だと言わせてもらっていいと思う。剣を抜くモーションや詠唱が不要な分、他の人たちより攻撃速度も早いから、だいたい先手を取れるのも強みですよ。
同行した団員たちも、集合時間に合わせて宿前にキチンと全員集合している。ただ飲みすぎちゃったのか、顔色の悪い団員が1名見受けられる。
「そこ、二日酔い?帰り道も任務を請け負ってるって通達したはずだけど」
「あぁ、へへ、つい…」
ヘラヘラと笑って返答したのは、戦後に入った若い隊員だ。名前はルードルフ。ビートよりは先輩で、そこそこ仕事をこなせるようになって変に自信がついちゃったって感じかな。こりゃ私が隊長だからって、舐めてんな?団長ではあるものの久しぶりに現場で指揮を取るのもあるし、元々支援職だからそこまで強くもない。力を信望するタイプの人間は私よりビョルンやロルフを崇拝していて、私がトップであることに疑念を抱いている者もいる。それでも、こんなあからさまに態度に出す奴はいなかったけどね。
舐めた態度にアンリが顔をしかめて、私に視線を送る。代わりに注意しようか?って意味だと思う。私は軽く首を振ってそれを制し、彼の目の前に立って宣告した。
「あなたは、ここで帰っていいわ」
「ヘ…ッ?」
間抜けな声を出して固まったルードルフに、冷ややかな視線を送る。
「聞こえなかった?帰れっつったの。そんな酒臭い息を撒き散らして、アンタなに考えてんの?」
「い、いやだって、元は帰るだけって話だったじゃないすか…」
だから飲んでもいいと思ったって?アホか。
「元は、ね。でも昨日ちゃんと通達したよね?だったらそれにコンディション合わせるのはプロとして当然じゃない?こちとら遠足に来てんじゃねーのよ仕事なのよ。一瞬の隙が命取りになる、護衛任務なの。アンタのせいで護衛対象になんかあったらどうすんの?クソみたいなアンタのせいで、仲間が怪我したり命落としたりする可能性もあんのよ。仕事舐めてんの?仕事に対する姿勢もわからないバカにいられちゃ迷惑なのよ!」
「なんだと…ッ!」
カァっとルードルフの顔に朱が差し、頭に血が昇ったことがわかる。まぁ、自分より圧倒的に小柄で弱そうで下に見ている(上司だけどね!)相手にここまでこき下ろされたら、腹も立つだろう。だからこそ煽ってやる。アンタのやっすいプライド、ここでへし折ってやるからな!
「そんなんじゃさぞかし普段の任務も足手まといの役立たずなんだろうね?このど素人が!!」
「F××kin’b××h!」
まぁ、多少の自信をつけていた若手からすりゃあ一番言われたくない言葉よね。多分。怒りで我を忘れた彼が、剣の束に手を掛ける。辺りを取り囲んでいた団員たちも、「何してんだテメェ!」「この馬鹿野郎!」などと怒号を上げ、次々に剣に手を掛ける。うんうん、瞬時に対応できてえらいね。
でも、遅い。
バチバチィッ!!
「ガ…ッ!」
私の両手が、剣を引き抜こうとしたルードルフの腕に触れる。その瞬間、ガクガクと彼の体が震えて崩れ落ちる。あれ、威力強すぎたかな?地面に倒れ伏したまま動かないんですけど…。これ、元々常に身に着けてる護身装具の効果で、私が攻撃なり受けて魔力が乱れた時に両手で相手に触れると発動するようになっている。スタンガンみたいに雷撃が相手の体を通って、動きを止めるってやつなんだけど…。イスの協力で威力が上がっちゃったから、もしかして気絶しちゃったかも。
「え。死んでないよね?」
恐る恐るイスを見ると、彼はグッと眉間に皺を寄せてみせた。
「死なないように調整はしている。だが、お前を襲おうとした人間は死んでもいいと思う」
「いやいや、いちおうウチの団員なのよ…」
ぶっちゃけ私も煽っちゃったし、こんなんでもウチの大切な団員だしね。鼻に手をかざして、呼吸を確認する。よかった、生きてるわ。
「団長、このバカどうします?」
このまま放置でいいんじゃねぇすか?とか酷いこと言ってる団員を制する。
「さすがにダメでしょ。往来の邪魔になるし」
周囲にはけっこう野次馬が集まっている。ガタイのいい男を小柄な女が瞬時に倒したので、ちょっとしたパフォーマンスになっちゃったみたい。目撃した人が後から集まってきた人に、興奮しながら事のあらましを語っている。
「水ぶっかけましょうかい?」
「いやいや、風邪引いちゃうでしょ。ちょっと待って、バッグのどこかにブランデー持ってたと思うけど」
ロルフの持ってるブランデー、気つけにも使えるから少量拝借してきたのよね。「母ちゃん…?」と呟いた年上のゴツい男を小突きつつ、バッグの中身をさばくる。いかん、バッグの中身が整理できない女なのがばれるー。
「うぅ…」
でもロルフ秘蔵?のブランデーの出番はなかった。うめき声を上げながら、ルードルフが目を覚ます。おお、さすが我が団員。頑丈だね。意識を失っていたのは一瞬だったみたいだ。
「大丈夫そ?」
「……」
しゃがんで覗き込むと、目をパチパチ瞬かせて、なにが起こったのか理解できていないようだ。
「おいバカ、覚えてるか?お前団長に一瞬でやられたんだぞ」
ルードルフの先輩団員が告げると、徐々に思い出したのか、顔を押さえて「マジかよ…」と呟いている。
「お前なぁ、弱い人間がウチの団長になれるわけないだろ?あのボナ・ノクテムの最前線で戦った人だぞ。ルーキーから脱したばかりのお前が、敵うわけねぇんだよ」
「……」
身に着けている魔道具の効果ですけどね。ただこれを開発したのは私だし、私の実力の内だと言わせてもらっていいと思う。剣を抜くモーションや詠唱が不要な分、他の人たちより攻撃速度も早いから、だいたい先手を取れるのも強みですよ。
0
お気に入りに追加
1,029
あなたにおすすめの小説
異世界の学園で愛され姫として王子たちから(性的に)溺愛されました
空廻ロジカ
恋愛
「あぁ、イケメンたちに愛されて、蕩けるようなエッチがしたいよぉ……っ!」
――櫟《いちい》亜莉紗《ありさ》・18歳。TL《ティーンズラブ》コミックを愛好する彼女が好むのは、逆ハーレムと言われるジャンル。
今夜もTLコミックを読んではひとりエッチに励んでいた亜莉紗がイッた、その瞬間。窓の外で流星群が降り注ぎ、視界が真っ白に染まって……
気が付いたらイケメン王子と裸で同衾してるって、どういうこと? さらに三人のタイプの違うイケメンが現れて、亜莉紗を「姫」と呼び、愛を捧げてきて……!?
【R18】騎士たちの監視対象になりました
ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。
*R18は告知無しです。
*複数プレイ有り。
*逆ハー
*倫理感緩めです。
*作者の都合の良いように作っています。
【R-18】喪女ですが、魔王の息子×2の花嫁になるため異世界に召喚されました
indi子/金色魚々子
恋愛
――優しげな王子と強引な王子、世継ぎを残すために、今宵も二人の王子に淫らに愛されます。
逢坂美咲(おうさか みさき)は、恋愛経験が一切ないもてない女=喪女。
一人で過ごす事が決定しているクリスマスの夜、バイト先の本屋で万引き犯を追いかけている時に階段で足を滑らせて落ちていってしまう。
しかし、気が付いた時……美咲がいたのは、なんと異世界の魔王城!?
そこで、魔王の息子である二人の王子の『花嫁』として召喚されたと告げられて……?
元の世界に帰るためには、その二人の王子、ミハイルとアレクセイどちらかの子どもを産むことが交換条件に!
もてない女ミサキの、甘くとろける淫らな魔王城ライフ、無事?開幕!
【R18】転生聖女は四人の賢者に熱い魔力を注がれる【完結】
阿佐夜つ希
恋愛
『貴女には、これから我々四人の賢者とセックスしていただきます』――。
三十路のフリーター・篠永雛莉(しのながひなり)は自宅で酒を呷って倒れた直後、真っ裸の美女の姿でイケメン四人に囲まれていた。
雛莉を聖女と呼ぶ男たちいわく、世界を救うためには聖女の体に魔力を注がなければならないらしい。その方法が【儀式】と名を冠せられたセックスなのだという。
今まさに魔獸の被害に苦しむ人々を救うため――。人命が懸かっているなら四の五の言っていられない。雛莉が四人の賢者との【儀式】を了承する一方で、賢者の一部は聖女を抱くことに抵抗を抱いている様子で――?
◇◇◆◇◇
イケメン四人に溺愛される異世界逆ハーレムです。
タイプの違う四人に愛される様を、どうぞお楽しみください。(毎日更新)
※性描写がある話にはサブタイトルに【☆】を、残酷な表現がある話には【■】を付けてあります。
それぞれの該当話の冒頭にも注意書きをさせて頂いております。
※ムーンライトノベルズ、Nolaノベルにも投稿しています。
5人の旦那様と365日の蜜日【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
気が付いたら、前と後に入ってる!
そんな夢を見た日、それが現実になってしまった、メリッサ。
ゲーデル国の田舎町の商人の娘として育てられたメリッサは12歳になった。しかし、ゲーデル国の軍人により、メリッサは夢を見た日連れ去られてしまった。連れて来られて入った部屋には、自分そっくりな少女の肖像画。そして、その肖像画の大人になった女性は、ゲーデル国の女王、メリベルその人だった。
対面して初めて気付くメリッサ。「この人は母だ」と………。
※♡が付く話はHシーンです
最愛の番~300年後の未来は一妻多夫の逆ハーレム!!? イケメン旦那様たちに溺愛されまくる~
ちえり
恋愛
幼い頃から可愛い幼馴染と比較されてきて、自分に自信がない高坂 栞(コウサカシオリ)17歳。
ある日、学校帰りに事故に巻き込まれ目が覚めると300年後の時が経ち、女性だけ死に至る病の流行や、年々女子の出生率の低下で女は2割ほどしか存在しない世界になっていた。
一妻多夫が認められ、女性はフェロモンだして男性を虜にするのだが、栞のフェロモンは世の男性を虜にできるほどの力を持つ『α+』(アルファプラス)に認定されてイケメン達が栞に番を結んでもらおうと近寄ってくる。
目が覚めたばかりなのに、旦那候補が5人もいて初めて会うのに溺愛されまくる。さらに、自分と番になりたい男性がまだまだいっぱいいるの!!?
「恋愛経験0の私にはイケメンに愛されるなんてハードすぎるよ~」
クソつよ性欲隠して結婚したら草食系旦那が巨根で絶倫だった
山吹花月
恋愛
『穢れを知らぬ清廉な乙女』と『王子系聖人君子』
色欲とは無縁と思われている夫婦は互いに欲望を隠していた。
◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。
【R18】義弟ディルドで処女喪失したらブチギレた義弟に襲われました
春瀬湖子
恋愛
伯爵令嬢でありながら魔法研究室の研究員として日々魔道具を作っていたフラヴィの集大成。
大きく反り返り、凶悪なサイズと浮き出る血管。全てが想像以上だったその魔道具、名付けて『大好き義弟パトリスの魔道ディルド』を作り上げたフラヴィは、早速その魔道具でうきうきと処女を散らした。
――ことがディルドの大元、義弟のパトリスにバレちゃった!?
「その男のどこがいいんですか」
「どこって……おちんちん、かしら」
(だって貴方のモノだもの)
そんな会話をした晩、フラヴィの寝室へパトリスが夜這いにやってきて――!?
拗らせ義弟と魔道具で義弟のディルドを作って楽しんでいた義姉の両片想いラブコメです。
※他サイト様でも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる