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混血系大公編:第一部
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「レディの滞在場所はどうする?ウチでいい?ウチ防犯設備はバッチリだし…」
「おいテメェふざけんな」
「わッ」
背後から急にロルフの声がして、彼の姿が認識できるようになる。ビックリした。てっきり壁際にいると思ったのに、いつの間にか背後に来てたんだ。空いていた私の隣にドカッと腰を下ろし、ジロリとこちらを睨みつけてくる。
「あんな色ボケ女を、家に入れるなんて冗談じゃねーぞ」
「えー、さすがにもうロルフに色仕掛けなんてしないよ。そもそも他にそんな防犯設備が整ってるところある?人の命も掛かってるし、その間ロルフが他へ宿泊しても…」
「ああ?なんで俺が外に出なきゃならねぇんだ。クソアマの命がどうなろうと知ったこっちゃねぇよ」
「ちょっと、親御さんの前でそんなこと言っちゃダメでしょ!」
「クソどうでもいい」
「もー!」
こうなったら、絶対ロルフは妥協しないよね。ああでも、考えてみれば嫌なのは当然か。そもそも他所の人がプライベートゾーンに入るのも嫌なのに、一度は自分を襲った相手だもんね。でも他に良いところも思いつかないし、どうしよう。何かご褒美で釣ったりしたら我慢できないだろうか?いやいや、我慢させて変な方向に拗れても困るか…。そうやって悩んでいると、イスが呆れたようなため息をついてから、口を開いた。
「正直、私も反対だ」
「エッ、イスも?!」
「お前の安全が脅かされる可能性があるのだから、いい案とは思えない。心配するな、それについては私が準備しよう。ことサークルの名誉に関わることだから、任せてくれ」
「え?帝国内に、サークルが持つ建物でそんな場所あったっけ?」
「あるだろう、もう忘れたのか?」
「……あッ」
イスに言われて、思い出す。もしかして、イスのお父さんのお屋敷のこと?
「入っていいの?」
「緊急事態だからな、フローラ殿の許可は取った。もちろん、新たに誓約は編むし、監視もつける。それに、アレはもうないからな。問題ない」
「あ……」
そっか。イスの父親の屋敷に残されていた、私と同じホムンクルスのホムちゃん。彼女はもう、とっくに埋葬されている。後は膨大な資料だけだけど、魔術師でない人には読んでも理解できないもんね。なんなら魔術師でも理解できないような、難解な書き方をしてるらしいし…。
『アレ』って言い方がちょっと引っかかるけど、今はそれを指摘している場合じゃないよね。確かにあそこなら認識阻害の附術が地域一帯に刻まれているし、屋敷自体にも防犯システムを組んだから、見つかる可能性は限りなく低いだろう。
「ではダービー伯、レディの身柄はサークルにお任せでよろしいですか?場所は言えないですけど、安全性は相当高い所です」
「ああ、もう、お任せするしかないと理解しております。塔長殿、どうかよろしくお願いします」
「任された」
それから、ダービー伯の提案でレディの護衛任務として契約をすることになった。私達は帰るついでに送り届けるだけだからお断りしようかと思ったんだけど、ダービー伯がその方が安心できるというのでお受けした。迷惑料も込みということで、片道の護衛料としては破格の金額だ。これだけでも皆にボーナス出せそうなので、ありがたい。
「着手金は半額頂いてるんですけど、用意ありますか?」
「ああ、慰謝料にするつもりで準備してきた分がある」
「おー…」
思わぬところで役に立ったね。残りはレディに付き添う騎士が管理し、依頼完了時に支払ってくれることになった。
「アンリ、計算よろしくー」
「AyeAye」
アンリが計算している間にダービー伯はイスとも契約をキチンと交わし、お金を支払っている。さすが一つの領地を治める伯爵様よね。すごくしっかりしてるわ。
それから魔術師姉弟が修理のためにダービー伯と一緒に領地に向かうこと、その分の修理費や出張費はウチで支払うことなども取り決め、ついでに契約書もm作っておく。親しい仲でも、こういうのはちゃんとしとかないとね。
それから今後の行動計画も取り決める。今夜はダービー伯とレディはこの屋敷に泊まることになった。レディのために、騎士が不寝番をしてくれるそうだ。私たちにも部屋を準備してくれると言ったけど、すでに部屋を取ってるからとロルフとイスが即行で断った。
「まぁ、その、やむを得ぬ事情がありまして…」
「ん?あぁー…」
モゴモゴと言う私に何かを察したのか、ハリーさんはニヤッと笑った。
「シーツが汚れても、誰も気にしないぞ」
「気にしなくてもイヤです!」
被せ気味に拒否した私に、ハリーさんは歯を見せて笑った。
契約の話が済んだところで、執事さんがディナーの準備ができたと教えてくれた。素晴らしいタイミングだ。話し合いで遅くなってしまったので、お腹はかなり空いている。
「申し訳ないが、娘の様子を見てきてもいいだろうか」
「ああ、よければアマニータの休んでいる部屋に食事を準備させようか?彼女と一緒にいたいだろう」
「ありがたい。そうさせてもらう」
そう言って、メイドさんに案内されてダービー伯は部屋を出て行った。
「シャトラ、ディナーくらいは付き合ってくれるだろう?」
「ええ、ありがたくいただきます」
「よかった。妻に説明できるような話を一緒に考えてくれ」
あっ、やられたわ。
「おいテメェふざけんな」
「わッ」
背後から急にロルフの声がして、彼の姿が認識できるようになる。ビックリした。てっきり壁際にいると思ったのに、いつの間にか背後に来てたんだ。空いていた私の隣にドカッと腰を下ろし、ジロリとこちらを睨みつけてくる。
「あんな色ボケ女を、家に入れるなんて冗談じゃねーぞ」
「えー、さすがにもうロルフに色仕掛けなんてしないよ。そもそも他にそんな防犯設備が整ってるところある?人の命も掛かってるし、その間ロルフが他へ宿泊しても…」
「ああ?なんで俺が外に出なきゃならねぇんだ。クソアマの命がどうなろうと知ったこっちゃねぇよ」
「ちょっと、親御さんの前でそんなこと言っちゃダメでしょ!」
「クソどうでもいい」
「もー!」
こうなったら、絶対ロルフは妥協しないよね。ああでも、考えてみれば嫌なのは当然か。そもそも他所の人がプライベートゾーンに入るのも嫌なのに、一度は自分を襲った相手だもんね。でも他に良いところも思いつかないし、どうしよう。何かご褒美で釣ったりしたら我慢できないだろうか?いやいや、我慢させて変な方向に拗れても困るか…。そうやって悩んでいると、イスが呆れたようなため息をついてから、口を開いた。
「正直、私も反対だ」
「エッ、イスも?!」
「お前の安全が脅かされる可能性があるのだから、いい案とは思えない。心配するな、それについては私が準備しよう。ことサークルの名誉に関わることだから、任せてくれ」
「え?帝国内に、サークルが持つ建物でそんな場所あったっけ?」
「あるだろう、もう忘れたのか?」
「……あッ」
イスに言われて、思い出す。もしかして、イスのお父さんのお屋敷のこと?
「入っていいの?」
「緊急事態だからな、フローラ殿の許可は取った。もちろん、新たに誓約は編むし、監視もつける。それに、アレはもうないからな。問題ない」
「あ……」
そっか。イスの父親の屋敷に残されていた、私と同じホムンクルスのホムちゃん。彼女はもう、とっくに埋葬されている。後は膨大な資料だけだけど、魔術師でない人には読んでも理解できないもんね。なんなら魔術師でも理解できないような、難解な書き方をしてるらしいし…。
『アレ』って言い方がちょっと引っかかるけど、今はそれを指摘している場合じゃないよね。確かにあそこなら認識阻害の附術が地域一帯に刻まれているし、屋敷自体にも防犯システムを組んだから、見つかる可能性は限りなく低いだろう。
「ではダービー伯、レディの身柄はサークルにお任せでよろしいですか?場所は言えないですけど、安全性は相当高い所です」
「ああ、もう、お任せするしかないと理解しております。塔長殿、どうかよろしくお願いします」
「任された」
それから、ダービー伯の提案でレディの護衛任務として契約をすることになった。私達は帰るついでに送り届けるだけだからお断りしようかと思ったんだけど、ダービー伯がその方が安心できるというのでお受けした。迷惑料も込みということで、片道の護衛料としては破格の金額だ。これだけでも皆にボーナス出せそうなので、ありがたい。
「着手金は半額頂いてるんですけど、用意ありますか?」
「ああ、慰謝料にするつもりで準備してきた分がある」
「おー…」
思わぬところで役に立ったね。残りはレディに付き添う騎士が管理し、依頼完了時に支払ってくれることになった。
「アンリ、計算よろしくー」
「AyeAye」
アンリが計算している間にダービー伯はイスとも契約をキチンと交わし、お金を支払っている。さすが一つの領地を治める伯爵様よね。すごくしっかりしてるわ。
それから魔術師姉弟が修理のためにダービー伯と一緒に領地に向かうこと、その分の修理費や出張費はウチで支払うことなども取り決め、ついでに契約書もm作っておく。親しい仲でも、こういうのはちゃんとしとかないとね。
それから今後の行動計画も取り決める。今夜はダービー伯とレディはこの屋敷に泊まることになった。レディのために、騎士が不寝番をしてくれるそうだ。私たちにも部屋を準備してくれると言ったけど、すでに部屋を取ってるからとロルフとイスが即行で断った。
「まぁ、その、やむを得ぬ事情がありまして…」
「ん?あぁー…」
モゴモゴと言う私に何かを察したのか、ハリーさんはニヤッと笑った。
「シーツが汚れても、誰も気にしないぞ」
「気にしなくてもイヤです!」
被せ気味に拒否した私に、ハリーさんは歯を見せて笑った。
契約の話が済んだところで、執事さんがディナーの準備ができたと教えてくれた。素晴らしいタイミングだ。話し合いで遅くなってしまったので、お腹はかなり空いている。
「申し訳ないが、娘の様子を見てきてもいいだろうか」
「ああ、よければアマニータの休んでいる部屋に食事を準備させようか?彼女と一緒にいたいだろう」
「ありがたい。そうさせてもらう」
そう言って、メイドさんに案内されてダービー伯は部屋を出て行った。
「シャトラ、ディナーくらいは付き合ってくれるだろう?」
「ええ、ありがたくいただきます」
「よかった。妻に説明できるような話を一緒に考えてくれ」
あっ、やられたわ。
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