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混血系大公編:第一部
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「まぁ、ロルフ様はいらっしゃいませんの?」
私たち3人が部屋に入り、挨拶もする前にそう言い放った女性がいた。当然、この人がダービー伯の娘だろう。30は過ぎてそうだけど、匂い立つ様な色気ムンムンの女性だ。完熟の桃って感じ。胸元の切れ込みすげ~。惜しげもなくさらされた谷間を思わず見てしまい、イスに腕を軽く摘まれる。
「逆じゃない?」とアンリに小声でツッコまれた。はいスミマセン。
彼女は私には目もくれず、イスとアンリをネットリと見つめる。ロルフほどじゃないけれど、イスもアンリもイケメンだ。彼女のお眼鏡にかなったのか、真っ赤な唇が笑みの形に歪んだ。
「シャトラ、紹介しよう。ダービー伯と御息女のレディ・アマニータだ」
「はじめまして」
「ダービー伯、こちらが『対するもの(コントラ)の王』を退けた英雄だ」
「はじめまして。英雄殿にお会いできて光栄だ」
ダービー伯が手を差し出して来たので、握り返す。それからアンリとイスを紹介し、イスが魔道具の塔長だと知るとレディの目つきが怪しく輝いた。
「まぁ、名誉あるサークルの塔長様でいらっしゃるの?サークルで作られている魔道具は、素晴らしいものばかりですわね。こんな素敵な殿方が作ってらっしゃるなんて知りませんでしたわ!」
「……」
ああ、一瞬でイスさんが心のシャッター下ろしちゃった…。こりゃもう開かんぞー。
「それにアンリ様はノアイユ家ご当主の弟君でいらっしゃるのね!婚約者はいらっしゃいまして?」
「実家とは疎遠なので。貴族籍はもう返上して平民になってますのでおかまいなくー」
アンリも素っ気ない。女好きだけど、こういうタイプは苦手なのかしらね。
「まぁ、そうなんですの?でも…」
「アマニータ、少し黙っていなさい。話が進まないから」
「あら、でもお父様…」
「アマニータ」
「……はぁい」
少し頬を膨らませて、彼女は口を噤む。いやはや、いい歳の大人がやっていい仕草じゃないわー。まぁ美人だから、男性は可愛いと思ってくれるのかもしれないけど。うーんでも、マジで美人。あとエロい。ロルフは野性的なエロスって感じだけど、こっちは磨き上げられて洗練されたエロスっていうか…。
「いたいいたい」
「……」
私のアホな考えを察したのか、イスに手の甲をつねられた上に睨まれる。ひぃ、めっちゃ視線が冷たい。
「失礼しました。レディがお美しくて見とれてしまいました」
「あら…」
レディ・アマニータがようやく私を視線に入れる。彼女は私に上から下まで目線をやるとフッと鼻で笑った。地味ですみませんねぇ。
「アマニータ!」
「伯爵様、お気になさらず。本題に入りましょう。まず依頼の件なのですが、『諸事情により』隊長が報酬を受け取らず帰還してしまいましたので、当初の契約通りの残金をお支払いいただきたいのですがよろしいですか?必要であればまたそちらの領へ人をやりますが」
「ああ、いや、大丈夫だ。今日持参してきている。山賊共から回収してくれた品も査定が済んでいたから、そちらの分も持参してある。これが目録だ」
ダービー伯が合図をすると、傍に控えていた執事さんがさっと机に出してくれる。
「アンリ」
「Aye」
アンリは元貴族なだけあって、契約書や数字にも明るい。ダービー伯領に行ったのも彼なので、金額の確認はお任せしておく。
「それから、ロルフが壊したものについてはこちらで弁償いたします。遠距離通信具の修理費用は出ましたか?」
「うむ、それが我が領内にいる魔道具師では、複雑すぎて修理できないのだそうだ。魔道具の塔から人を派遣してもらうしかないのではないかと…」
「それについては、私が請け負おう」
ダービー伯の言葉を遮り、イスが口を開く。
「我が塔の魔道具師を二人、この領内の宿に待機させている。そちらが帰還する際に同行させてくれればよい。後はその2人が修理を請け負う。修理費は、こちらから彼女に直接請求するから問題ない」
準備万端な様子に、ダービー伯は目を丸くした。
「それはありがたいのですが…失礼ですが、その為にご同行されたのですか?」
まぁ確かに、イチ伯爵領の通信具の為に、サークルの塔長がいきなり出張ってくるとは考えにくいよね。
「私がここに来たのは別件だ。だが、私は彼女の婚約者だから、このくらいはサービスする」
イスさん、ここぞとばかりに婚約をアピールしようとしてるな。
その言葉にダービー伯も驚いていたけれど、一番反応したのはレディだった。
「はぁ?!あなた、ロルフ様とビョルン様とも婚約したんじゃなかった?!なのに塔長様と婚約ってどういうこと?!」
「アマニータ!お前は…」
「お父様は黙ってて!ロルフ様は?!婚約破棄?!」
「まさか。破棄したら私ロルフに殺されますわ」
「あー、無理心中くらいやりそー。でもその前に監禁りょうじょ」
「はいアンリ君ストップ!まぁでもね、私もなんでこんなことになったのかわから…痛い痛いイスさんごめんなさい」
ちょっと痛いくらいの絶妙な力加減でつねられてる!
「彼女を当主として、4人での婚約だ。全員納得の上だし、複婚は合法だから他人にとやかく言われる筋合いはない」
「そんなの…!」
「アマニータ!!」
ダービー伯が強く叱責して、レディがまた黙り込む。ものすごく不機嫌そうに、私のこと睨んでくるけど…。いやスゲーな、こんな思いっきり睨まれるなんて人生においてなかなかない経験な気がするわ。
「はぁ…申し訳ない」
「いいえ、大丈夫です。とりあえず、レディとロルフの間で起きた件について、そちらの主張を伺ってもよろしいですか?お互いの言い分を擦り合わせた方がいいでしょう」
「あぁ、その方がいいだろう。私が聞いたのは…」
「私とロルフ様は、あの時深く愛し合ったのですわ!」
私たち3人が部屋に入り、挨拶もする前にそう言い放った女性がいた。当然、この人がダービー伯の娘だろう。30は過ぎてそうだけど、匂い立つ様な色気ムンムンの女性だ。完熟の桃って感じ。胸元の切れ込みすげ~。惜しげもなくさらされた谷間を思わず見てしまい、イスに腕を軽く摘まれる。
「逆じゃない?」とアンリに小声でツッコまれた。はいスミマセン。
彼女は私には目もくれず、イスとアンリをネットリと見つめる。ロルフほどじゃないけれど、イスもアンリもイケメンだ。彼女のお眼鏡にかなったのか、真っ赤な唇が笑みの形に歪んだ。
「シャトラ、紹介しよう。ダービー伯と御息女のレディ・アマニータだ」
「はじめまして」
「ダービー伯、こちらが『対するもの(コントラ)の王』を退けた英雄だ」
「はじめまして。英雄殿にお会いできて光栄だ」
ダービー伯が手を差し出して来たので、握り返す。それからアンリとイスを紹介し、イスが魔道具の塔長だと知るとレディの目つきが怪しく輝いた。
「まぁ、名誉あるサークルの塔長様でいらっしゃるの?サークルで作られている魔道具は、素晴らしいものばかりですわね。こんな素敵な殿方が作ってらっしゃるなんて知りませんでしたわ!」
「……」
ああ、一瞬でイスさんが心のシャッター下ろしちゃった…。こりゃもう開かんぞー。
「それにアンリ様はノアイユ家ご当主の弟君でいらっしゃるのね!婚約者はいらっしゃいまして?」
「実家とは疎遠なので。貴族籍はもう返上して平民になってますのでおかまいなくー」
アンリも素っ気ない。女好きだけど、こういうタイプは苦手なのかしらね。
「まぁ、そうなんですの?でも…」
「アマニータ、少し黙っていなさい。話が進まないから」
「あら、でもお父様…」
「アマニータ」
「……はぁい」
少し頬を膨らませて、彼女は口を噤む。いやはや、いい歳の大人がやっていい仕草じゃないわー。まぁ美人だから、男性は可愛いと思ってくれるのかもしれないけど。うーんでも、マジで美人。あとエロい。ロルフは野性的なエロスって感じだけど、こっちは磨き上げられて洗練されたエロスっていうか…。
「いたいいたい」
「……」
私のアホな考えを察したのか、イスに手の甲をつねられた上に睨まれる。ひぃ、めっちゃ視線が冷たい。
「失礼しました。レディがお美しくて見とれてしまいました」
「あら…」
レディ・アマニータがようやく私を視線に入れる。彼女は私に上から下まで目線をやるとフッと鼻で笑った。地味ですみませんねぇ。
「アマニータ!」
「伯爵様、お気になさらず。本題に入りましょう。まず依頼の件なのですが、『諸事情により』隊長が報酬を受け取らず帰還してしまいましたので、当初の契約通りの残金をお支払いいただきたいのですがよろしいですか?必要であればまたそちらの領へ人をやりますが」
「ああ、いや、大丈夫だ。今日持参してきている。山賊共から回収してくれた品も査定が済んでいたから、そちらの分も持参してある。これが目録だ」
ダービー伯が合図をすると、傍に控えていた執事さんがさっと机に出してくれる。
「アンリ」
「Aye」
アンリは元貴族なだけあって、契約書や数字にも明るい。ダービー伯領に行ったのも彼なので、金額の確認はお任せしておく。
「それから、ロルフが壊したものについてはこちらで弁償いたします。遠距離通信具の修理費用は出ましたか?」
「うむ、それが我が領内にいる魔道具師では、複雑すぎて修理できないのだそうだ。魔道具の塔から人を派遣してもらうしかないのではないかと…」
「それについては、私が請け負おう」
ダービー伯の言葉を遮り、イスが口を開く。
「我が塔の魔道具師を二人、この領内の宿に待機させている。そちらが帰還する際に同行させてくれればよい。後はその2人が修理を請け負う。修理費は、こちらから彼女に直接請求するから問題ない」
準備万端な様子に、ダービー伯は目を丸くした。
「それはありがたいのですが…失礼ですが、その為にご同行されたのですか?」
まぁ確かに、イチ伯爵領の通信具の為に、サークルの塔長がいきなり出張ってくるとは考えにくいよね。
「私がここに来たのは別件だ。だが、私は彼女の婚約者だから、このくらいはサービスする」
イスさん、ここぞとばかりに婚約をアピールしようとしてるな。
その言葉にダービー伯も驚いていたけれど、一番反応したのはレディだった。
「はぁ?!あなた、ロルフ様とビョルン様とも婚約したんじゃなかった?!なのに塔長様と婚約ってどういうこと?!」
「アマニータ!お前は…」
「お父様は黙ってて!ロルフ様は?!婚約破棄?!」
「まさか。破棄したら私ロルフに殺されますわ」
「あー、無理心中くらいやりそー。でもその前に監禁りょうじょ」
「はいアンリ君ストップ!まぁでもね、私もなんでこんなことになったのかわから…痛い痛いイスさんごめんなさい」
ちょっと痛いくらいの絶妙な力加減でつねられてる!
「彼女を当主として、4人での婚約だ。全員納得の上だし、複婚は合法だから他人にとやかく言われる筋合いはない」
「そんなの…!」
「アマニータ!!」
ダービー伯が強く叱責して、レディがまた黙り込む。ものすごく不機嫌そうに、私のこと睨んでくるけど…。いやスゲーな、こんな思いっきり睨まれるなんて人生においてなかなかない経験な気がするわ。
「はぁ…申し訳ない」
「いいえ、大丈夫です。とりあえず、レディとロルフの間で起きた件について、そちらの主張を伺ってもよろしいですか?お互いの言い分を擦り合わせた方がいいでしょう」
「あぁ、その方がいいだろう。私が聞いたのは…」
「私とロルフ様は、あの時深く愛し合ったのですわ!」
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