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混血系大公編:第一部
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しおりを挟む「暴力を振るわずに解決できるのであれば、それがいいだろう。だが、どんなに平和な世界であっても、暴力がなくなることはないと思う。特に男は女より力がある分、解決方法をそちらに頼りがちだ。それに私たちサークルは知性を重んじる集団だと自負しているが、それでも力を示さねば収まらないこともある。力で押さえつけた方が手っ取り早く結果被害が少ないのであれば、その手段を取ってもよいと私は考えている」
「………」
「お前は誰とでもまず交渉を試みようとするが、誰もが理性的で口が達者なわけではない。力でしか解決方法を見出せない人間も一定数いる。ロルフや他の傭兵たちや、山賊や野盗のようにな」
「……うん…」
前世は、かなり平和な世界だったと思う。自分の周囲で暴力事件が起きることなんて滅多になかったし。それでも身近ではないどこかで事件は起きていたし、世界のどこかで戦争だって起きていた。
「だが、これは許される、これは許されない、そういったわかりやすく明確なルールがあれば、ロルフのような男にもある程度コントロールできるのではないか?」
「うーん、そうかも。そうかもしれないけど…やっぱり怖いのは、報復なのよね。暴力は暴力を産む。私たちの傭兵団はかなり武力が高いほうだけれども、それでも軍隊みたいな数の暴力で来られたらどうしようもないし…」
道徳的にも受け入れがたいってのはあるんだけど…でも考えてみれば、その道徳心は前世で育まれたものだからなぁ。イスみたいな知性的な人がケロッと暴力を容認する発言をするくらいだし、ビョルンだって私よりよっぽど理性的だけど、それでも力で解決することは結構あるよね。私の道徳心は、まだ文化的に未熟なこの時代には、そぐわないのかもしれない。
「だからこその証拠隠滅だが…まぁ、そうだな。何事にも絶対はない。だからこそ、ビョルンもお前を1人にさせないように常に気を配っているのだろう。やはり、私たちが4人で婚約したという噂を、帝都以外にも積極的に流すべきではないか?青鴉にそれも依頼しておくといい。4人の英雄がひと家族として団結しているとなれば、手を出そうとする人間はそうはいないだろう。暴力を振るう機会を極力減らしたいのであれば、相手が何か仕掛けようとも思えないほどの力を示すしかない」
「うーん、確かにそうだよね。でも結局私たち民間に身を置いてるから、貴族の動向がまったく読めないからなー。どこまで力を持てばいいのやら…」
「それは、そうだな。確かに私も、帝都の貴族には詳しくない。それこそ、あの男がさっさと…」
イスが何か言いかけたのに、そのまま沈黙する。
「あの男?誰?」
「いや…忘れてくれ。私の口から言うべきではないだろう」
「??」
気になったけれど、イスが言わないって決めたら言う事はないだろうから、追求はしないでおく。
でも、そうか。私はロルフに、無理を強いてしまっていたのかな。というか、ロルフが我慢できたことに私が喜んでいたから、もっと我慢しなきゃって思っちゃったのかもしれない。イスの言う通り、全部全部我慢するのではなく、ここはいいよって逃げ道があった方がいいのは確かだ。そうじゃなきゃ、いつか辛すぎて爆発しちゃうよね。暴力を容認って考え方はしたくないけど、誰かが傷つくよりロルフが傷つかない方が大事だって割り切るしかないのかも。私自身が納得できないからって、それを他の人に強いるのは違うしね。
私は少し考えたあと、何度か頷いて口を開いた。
「でも、そうね。まだちょっとモヤモヤするけど、これ以上考えても、今はちゃんとした答えは見えて来ない気がする。とりあえずは、今できることから手をつけていかないとね」
何か混乱していろいろ深く考えちゃったけど、今回の件は切り札があるものね。難しく考える必要はない。とりあえずはダービー伯爵の件を解決させて、それからゆっくり考えて行こう。
「ああ。それがいい」
「うん。ありがとう、話を聞いてくれて。やっぱ人と話すと違うね、頭が整理しやすくなる」
「そうか。それはよかった」
イスが頷いて、服を脱ぎ始める。…ん?
「イスさん?何で服を脱いでるの?」
「お前だって脱いでいる」
そりゃまぁ、ロルフとした後ですし。リネンケットで体は隠してますよ。いちおう。
「……服を着たままするのか?」
怪訝な顔を向けるイスさんに、こちらも怪訝な顔を向ける。
いま、ずっと真面目な話をしてたよね?エロい雰囲気なんてゼロだったよね?なんでそれが終わって即「よし、ヤろう!」って気持ち切り替えられるの?
「え。ちょっと場が整ってないと思うんですけど…」
「整っているだろう。ベッドの上で、お前は裸だ」
「気持ちの問題!あのねぇイス、やっぱ雰囲気は大事だと思うの。今まで真面目に議論してたよね?それなのにそういう気持ちに急に持っていけないって言うか…」
「私はずっと『そういう』気持ちがあったが」
「ウソッ」
あんな真顔だったのに?!…って思ったけどイスさん鉄面皮だったわ。表情筋死んでる人だったわ。
「嘘ではない」
ベッドに乗り上げて、チュッと不意にイスが口づけてくる。そのまま押し倒されて、何度も何度も口づけられる。
「ん、イス…」
「愛する女が目の前で裸でいるのに、『そういう』気持ちにならないわけがない」
「あッ、あ…ッ」
キスをしながら、イスの手が肌を滑る。触れたところから魔力を送り込まれて、気持ちを置き去りにして強制的に体を高められる。力が抜けて、容易にシーツをはぎとられる。もう、ずるい。魔力を使われたら、敵うわけがない。
イスの右手が胸をやわやわと揉んで、親指が乳首を押しつぶす。魔力が触れて、ピリピリと弱い電流が送られているみたいに刺激される。
「やあッ!」
3人の男にたくさん可愛がられ、開発されてしまった乳首は、弱い刺激でも敏感に反応する。ましてや、魔力なんて送られてしまったら。
「『そういう』気に、なったか?」
「……バカ……」
私を見つめるイスの目が、少し潤んでいる。イスは肌の色が濃いから、肌が赤くなったりとかがわかりにくいんだけど…でも、その目を見れば、興奮してるんだってわかる。お腹の奥がキュンとして、私はイスの頬に手を添えてキスをする。
「なっちゃったじゃない…」
もうホントにチョロいよね、私…。イスを見つめながら囁くと、彼はグッと目を細めて。
「それはよかった」
艶やかな声で囁きながら、キュっと乳首をつねってきて。その強い刺激に、私は高い嬌声を上げた。
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