異世界チートで世界を救った後、待っていたのは逆ハーレムでした。

混血系大公編：第一部

２３

　まぁそんなこんなで、たっぷり愛し合った連休を過ごして。今日からまた、お仕事の始まりです！男ふたりの相手は大変だったけれど、イスの魔力が多いからか朝には回復して体はめっちゃ元気です…。昨日お肉も食べたしね！張り切って行こう！！
　ビョルンは皇城で騎士団との打ち合わせ＆合同訓練があるので、一緒に行く団員たちと本部で集合してから皇城へ向かっていった。そのまま数日泊まり込みの予定だ。
　イスは調べたいことがあるらしく、４番街にある魔道具屋に行くと言っていた。そこでプレゼンの準備を色々するらしい。本部まで一緒に行って、その後は辻馬車を拾って魔道具屋へ向かって行った。帰りはまた本部に寄ってくれるので、そのまま家まで一緒に帰る予定。…夢中になって、帰宅時間を忘れないといいけど…。
　そして私は傭兵団本部に出勤して、せこせこと事務仕事です。
　まずは先週のビョルンの仕事ぶりを見直して、概ね問題ないことを確認。自分ならもうちょっと踏み込んでこうするけどなー…って思う部分は何点かあったけれど、よっぽど問題がなければスルーしておく。ヒトの仕事ぶりに、いちいちケチをつけるつもりはない。結果として問題が起きなければいいのだ。問題が起きたら自分で責任を持って処理してもらえばいいし、本人がフォロー仕切れないミスなら私が責任を取ればいい。
「オッケー。シウ、このまま処理していいよ」
「承知しました」
　ま、仕事なんてミスして痛い目みながら覚えていくもんだしね。絶対にやってはいけないミス（個人情報の漏洩とかね）は細心の注意を払ってもらいたいけど、取り返しのつくミスならバンバンやってもらっていいと思う。
「それから、こちらを…」
「ん、あー、ダービー伯の件ね」
　シウが渡してくれた資料を受け取り、チラっと見て頷く。
　ロルフが任務で赴いた土地の領主様で、規模が大きくなった山賊退治の依頼だった。生死不問で略奪品も全回収でオッケーってことだったから、細かいことを気にしなくていい分ロルフ向けの任務だったんだけど。現当主は男性だし、奥様は亡くなってるって話だったし、娘は嫁ぎ済みって聞いてたし、問題ないって思ったんだけどなー。
「……出戻ってきちゃったのか…」
　事前の調査では、確かに何年も前に嫁いでるってことになってた。だけどつい最近、ロルフ達が任務に赴く数日前。離縁をして、実家に戻ってきていたようなのだ。時間がなくて離縁の理由まではまだ調査できてないけど、実家にいた時の周囲の評判はよろしくなかったようで。この女性がトラブルの要因って可能性、大だよねぇ…。
「今んとこ、このダービー伯から何か言って来てない？」
「どうも、アンリさんが副団長に通信した際に、ロルフさんが暴れて通信具が故障したようです。こちらから通信し直そうとしてもできなかったので」
「まじかー…」
　修理費嵩むわー。遠距離の通信ができる通信具って、複雑すぎてイスにしか作れないのよね。各地にいる魔道具屋さんで対処できるくらいの故障なら大した金額いかないだろうけど、作り直しになったらイスにお願いするしかない。ファミリー割引してくれないかな？必要であればワタクシが附術を刻みます…。あとビョルンに言ってロルフのお小遣い減らしてやるからな。覚えてろよ。
「まーでも、時間稼ぎにはなるか…」
「そうですねぇ」
　遠距離の通信ができる通信具は、高額だから数が限られる。各地の衛兵所に１つ設置するのがせいぜいだ。それが壊れたとなれば、向こうも昔のように早馬を出してこちらに連絡を寄越すしかない。もしくは通信具を頑張って直してもらうか。とにかく向こうから連絡が来る前にロルフ達が帰着して、事情を聞ければ上々だ。先に事態が把握できれば、対策の取りようもあるしね。
「あと、交友関係はどう？」
「現当主はなかなかやり手のようですね。今のところ隙が見えません。唯一のウィークポイントはその評判の悪い娘さんですかね」
「そう…とりあえず、その娘の元結婚相手を探ってくれる？そこから切り崩せるかも」
「承知しました」
　まぁねー、事前の調査で評判が悪くない人だから依頼を受けたんだけどね。まぁ、事前調査だって完璧じゃない。これからはロルフを出す時に限って、徹底的に女性関係の調査しなきゃダメかなぁ。めんどくさいなぁ。
　そんな話をシウとしていると、いつの間にか近くに来ていた事務員のルーディが恐る恐る声を掛けてきた。
「あの…すみません。私の調査が足りなくて…」
　そう言われて依頼前の情報調査票を見ると、確かにルーディのサインがしてある。あー、これルーディが担当してくれてたのか。
「気にしないで。決裁を通したのは私だから。私もそこまで調査の必要があるとは思わなかったし、最終的な責任は私にあるよ。それにまだ、それが原因と決まったわけないしね」
「はい…でも…」
「とりあえず、今は考えても想像でしかないから。気持ちを切り替えて、目の前の仕事に集中してちょうだい」
「…わかりました…」
　ルーディは複雑な顔をしていたけど、とりあえず頷いて自分のデスクに戻って行った。正直、気が気じゃないよね。ロルフの怒りが向けられたらと思うと、私でも怖いもん。ロルフの帰着時にルーディを避難させてあげたいところだけど、いつ帰ってくるかはわからないからなー。でも明日明後日くらいには来そうだから、お休み入れてあげようかな。