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混血系大公編:第一部
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しおりを挟む「…冗談か?」
「概ねそうだな」
「…わかりにくいぞ!」
「すまない」
謝りつつも手を止めない。途中お肉を挟みつつ、ポテサラも順調に消費されている。マイペースなイスに、ビョルンはちょっと呆れた顔を向けた。
「イス、ポテサラ気に入ったの?」
「なんだろうか。感動的に美味いというのではないが、ついつい食べてしまう。好みだと思う」
「わかるー。お肉の箸休めにいいよね。また作ってあげるね」
「頼む」
お気に召した様でなによりですわ。
「あ、それでイスも爵位もらうんならさ、領地を隣り合わせにしてもらって、協力して管理とかしたいって話してたんだよね」
「ああ、それはいいな。だがイスハークは塔の生活を主体にしないといけないだろう?領地には代官を置くのか?」
「それしかないだろうな。サークルの中にも、貴族出身者は何人かいる。爵位が決まれば、そこを当たって信頼できる者を探すつもりだ」
「なるほどな」
ふたりの会話を聞きながら、私はちょいと首を傾げる。
「ダイカン?」
私の疑問にはビョルンが答えてくれた。
「領主の代わりに、領地を治める者だよ。平民出身から爵位を得た場合…まぁ滅多にはないが…政治は不得手の者が多いから、代官を任命して代わりに領地を治めてもらうって話は聞いたことがある。後は侯爵の場合は領地が広いから、メインの都市は自分が直接治めて地方に代官を派遣するとかな」
「あぁー、お代官様ってことか!」
「お代官様…?」
今度はビョルンとイスが疑問符を浮かべている。おっと、あの「お代官様~!」って、時代劇独特の言葉なのかしら。
「じゃあ、私もそういう人見つけてお願いすればいいのかな?そうすればここで団長続けてもいいかな」
「どうだろう。私も帝国法は全体をさらった程度だが、正当な理由がなければ代官は置けないのではなかったか?著しく政治手に欠けるとか、領地が広すぎてひとりでは管理しきれないとか、私のように他に代わりのない職務があるだとか」
帝国法なんて必要になる所しか調べたことないんだけど、さらったとか言ったぞこの男。そしてイスなら内容をほぼ把握して覚えてるよね。天才怖い。
「ええー!じゃあ私は厳しそうじゃない?民間の傭兵団じゃぁ、さすがに代わりがないなんていえないよねぇ?」
帝国イチの傭兵団である自負はありますけど!でも民間だしねぇ。さすがにイスのように代わりがない職務とは言い難い。
「まぁ、通常は難しそうだな…。それに、伯爵位に就いたものが民間の傭兵団を運営するのもさすがにまずいと思うが」
「やっぱりダメ?」
そうすると、やっぱり領地経営まったなしかー。勉強しなきゃなぁ。
「傭兵団の今後のこと、考えていかなきゃね。ヴァレさんが一度会いにおいでって言ってたから、ロルフが帰って来たら都合つけて謁見申請してみようか」
私たちはみんな、貴族社会には疎い。何もわからないままホイホイと爵位を受けては、海千山千の貴族たちにいいようにされてしまうだろう。その辺の対策へのとっかかりは、ヴァレさんと話すことで見えて来るに違いない。
もちろんヴァレさんは多忙だから、すぐに会えるとは思えないけど。申請だけはしとかなきゃ、会えるものも会えないしね。
「そうだな。だがまずは、ロルフの件が先だ」
「ああ、それねー。帰って来るまでにロルフがちょっとでも落ち着いてるといいけど」
「アンリには、まずそうなら魔獣の群れにでも放り込んで発散させて来いと伝えておいたが」
「そんな力技、アンリにできるかなー?」
「まあ、あいつの事だ。口八丁でうまいことやるだろう。それでももし荒れていたら…後はまぁ、頼んだ」
「………」
体で宥めろって言ってる?
でも確かに、休み明けからはビョルン、城の騎士団と打ち合わせが入ってて外に出ちゃうんだよねぇ…。最近帝都周辺の森で魔獣の生態にかなり変化があって、何度か調査協力要請が来てる。現場のことは、実際に傭兵たちを率いるビョルンの方がよくわかってるからね。そこはビョルンにお任せしちゃってるんだけど…ビョルンがいないとなれば、ロルフを落ち着かせるのは私の役目になっちゃうよねぇ。
「わかった。がんばる…」
「いざとなったら、イスハークを呼ぶんだぞ」
「はーい」
まぁでも、イスもプレゼンと宴会の準備で忙しいだろうし、なるべく自分でがんばろっと。どんなトラブルだったかまだ詳細は不明だけど、ロルフも最近は我慢が利くようになってるし、私でもなんとか宥められると思う。
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