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混血系大公編:第一部
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しおりを挟む「あ、イス。ロルフもぼちぼち帰って来るから、お酒多めがいいかもよー」
「ああ…しかしロルフの気に入る酒はどんなだ?味にうるさいんだろう」
「まーなんだかんだ安酒でもないよりゃマシだ!とか言って飲むから、なんでもいい気がするけど」
「いや、文句を言われるのが嫌だ。面倒くさい」
「あー、言うだろうな」
確かに。ロルフはまだイスとそこまで打ち解けていないのか、ちょい攻撃的なのよね。攻撃する材料があれば、嬉々として文句を言うと思う。
「いっそのことロルフに選ばせたらどう?そうすれば文句も出ないんじゃない?」
「それはいいな。お前が頼んでくれ」
「何でよ、自分で言ってよ」
「いやだ。ロルフに頭を下げたくない」
「子どもか!!」
「はっはっは!」
ビョルンがめっちゃ笑ってる。もー、イスはイスで、ロルフ相手だとやたらムキになるんだよね。子どもっぽいったら。
ひとしきり笑ったあと、ビョルンが片手で口を押さえながら言う。
「ああ、やれやれ。ロルフに頼むなら、金額に上限を定めておけよ。じゃないととんでもない金額になるぞ」
「あー、絶対ここぞとばかりに、高いお酒頼むよね」
「それで、こっそり着服するだろうな」
「ありうる!てか絶対やる!!」
ビョルンと顔を見合わせて、ギャハーと笑う。イスの眉間にグッと皺が寄る。
「…何種類かピックアップしてもらい、そこから予算内で選んでこちらで注文することにする」
「それがいいよー。んふふっ」
「じゃあ、ロルフに頼んでおいてくれ」
「私が言うんかい!」
「はっはっは!」
ビョルンがまた豪快に笑う。まったくもう。
とりあえずプレゼン&宴会については、これで話がついた。次はヴァレさんからの通信について話題を持っていく。
「そういえば今日、ヴァレさん…皇帝陛下から通信があったでしょ?」
「ああ、なんの話だったんだ?」
「爵位についての話。なんとか下げてもらおうと粘ったんだけどさー、結局伯爵位を受け取ることになりそう」
「まぁ、そうだろうな」
はぁー、とため息をつきながらお肉をつつく。
「侯爵よりはマシなんじゃないか?伯爵は、治める領地の規模もピンキリのようだし」
「だが、元は侯爵と打診されたのだろう?小さな領地では済まぬと思うが」
「それよねー。ビョルンは何も言われてないの?」
「あぁ、まぁ…」
ビョルンが顎をさすりながら、曖昧な返事をする。
おん?こりゃなんかあるな。
「ビョルン?」
「あー、そうだな。俺とロルフにも打診はあったんだ。ロルフは騎士爵、俺は伯爵辺りを授与するとな」
「やっぱりあったんじゃん!でもビョルンとロルフの爵位の差が大きくない?」
「その辺は陛下も悩んだそうだが、ほとんどの伯爵は領地もあるし、その下の子爵や男爵はようするに帝都で役職に就いた官吏や騎士がもらう爵位なんだ。ロルフに官吏や騎士が務まると思うか?」
「…無理だねぇ」
「そのためロルフへの褒賞は主に金にして、まぁ俺かお前のもらった爵位と抱き合わせで名誉職としての騎士爵を与えるって話になったそうだ」
ビョルンの言葉に頷きつつも、ふと疑問が浮かび上がる。爵位についての内示がきたのって、確かあの初夜的なのを済ませた後に出勤した日のことだよね?
「あれ、その話が来た時、私たちもう婚約してたんだっけ?」
「いや、結婚するってなった時にその話が来てたんだから、決まったのはもっと前だろうな」
「え。婚約してないのに、なんで私とロルフが抱き合わせになってんの?」
「……まぁ、ロルフの面倒を見るのは俺かお前しかないと思われてたんじゃないか…?」
…おい!兄弟分のビョルンならともかく、婚約する前はただの団仲間でしかなかったんだけど?!なんであんな厄介者の面倒見る要員に勝手にされてんのよ!団長だからか?!今は見る気満々だからいいけど!!
「まぁ、それはいいや。じゃあ、ビョルンも伯爵になっちゃうんだー」
「あー、いや、それがな…」
そう言って、また歯切れ悪い返事をする。
「おん?なに?このさい全部教えてよ」
「あー、怒るなよ?話が来た時には、もう結婚するってなってただろ?それで複婚でお前が当主になることは決まってたから、陛下にそれを伝えて俺の爵位はロルフと同じ騎士爵にしてもらったんだ。その代わりに、別の褒章を貰うことにして…」
はぁ?!そんな手があったの?!
「何それ、ズルぅ!!私も別の褒章にしてって言えばよかった!!」
「いや、無理だと思うぞ。お前は英雄名鑑のトップに名前が載ってるっていうのを忘れたのか?お前への褒章が半端になれば、国民から不満が出るだろう。帝国の威信にかけても、お前には爵位を授与するだろうな」
「うわぁん!ドチクショウ!!」
嘆きながら机に突っ伏す私をスルーして、イスが口を開く。
「私は?私も爵位がつきそうなんだが、回避は無理か?」
「いや何を言ってるんだお前は。サークルの塔長をただの帝国民にしておけるわけがないだろう」
「そうか、残念だ」
特に残念そうでもなくシレっと言い、モグモグとポテサラを口に運んでいる。
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