異世界チートで世界を救った後、待っていたのは逆ハーレムでした。

異文

文字の大きさ
上 下
132 / 234
混血系大公編:第一部

14

しおりを挟む

「ここから依頼主の領地まで、4日くらいよね。じゃあロルフたちが帰還したらすぐ詳細聞かなきゃね」
「ああ。後は、するべきことはあったか?」
「うーん、依頼主の再調査を指示してもよかったかな…十中八九クレームに発展するだろうから。ロルフ達の報告を聞いてからじゃないと、動きようがないって言われればそうなんだけど。力関係調べて、依頼主が逆らえないような相手とか…権力者を把握しときたいかな。後は、弱みを握れたら握っときたいよね。悪手ではあるけれど、脅迫も交渉の一種だから」
 そう伝えると、ビョルンがペシリとおでこを叩いた。
「ああ、なるほど。シウが再調査すると言っていたが…それを見越してのことだったか」
「おー、さすができる秘書」
 基本的に、クレームって対応の迅速さでその後が決まるよね。経験上、時間が経てば経つほど問題も相手の感情もこじれていく気がする。だから後々ムダになったとしても、できる手は全部打っとくべきだと思う。
 ぶっちゃけ『女性トラブル』って言葉が出た時点で、任務に関係のないクレームになることは想像がつくし。相手が理不尽三昧言ってくるようなら、権力か脅迫で抑え込むのが一番早いし確実だ。
「じゃあ後はシウの報告と、ロルフ達の帰還待ちだね。りょうかーい、後は私が片づけるよ」
 そう請け負うと、ビョルンの眉がへにょりと下がった。
「すまん…厄介事を残しちまったな」
 ビョルンは休み明けすぐに、皇城へ出張の仕事がある。トラブル解決は私がすることになるので、罪悪感を覚えているのかもしれない。
「えー?そんなことないよ。どのみち私が団長なんだから、私が解決するべき問題だし。それにビョルンが頑張ってくれたから、今日1日イスとゆっくりできたんだよ。ね?イス」
 イスはまだ資料に目を通しながら、曖昧に頷く。やれやれ、集中しちゃってるわ。
「はは、イスハークは結局仕事か?」
「うーん、私にも一因があるんだけど。後で、ご飯の時にでも話すね。イスは自分の世界に入り込んじゃってるから、今は説明も無理だろうし。…それより疲れたでしょ?ちょっと休んだら?お茶でも淹れるから」
 ソファに座るように促して、ミニキッチンに向かおうとすると、グッと手を引かれる。
「いや…なぁ、ハグしてくれないか」
「あら…」
 ビョルンが少しお疲れの顔を向けて、甘えたような声で囁く。
 慣れない仕事を、頑張ってくれたんだもんね。私はそっと目を細める。
「もちろん。…お疲れ様、ビョルン」
 ビョルンの肩を押して、ソファに座らせて。くすんだ金髪を、胸に抱き込む。
 染み入るような深い息を吐き出すと、ビョルンは私の腰に手を回して、ぎゅっと抱きしめてきた。
「本当に大変だな、事務仕事ってのは」
「えー?いやいや、慣れればそれほどでもないよ。ビョルン達みたいに、命張ってるわけじゃないし…」
「いや…なんというか、力技で何とかなる問題じゃないからな。ずいぶん気を遣ったよ。神経をすり減らした気分だ。体の疲労より、精神の疲労の方がキツイってのは本当だな」
 グリグリと頭を押しつけてきて、ふふ、ビョルンが甘えてくるなんて、珍しい。
「私は命の危機がないってだけで、だいぶ心穏やかに過ごせるからなー。そこまでキツイとは感じないかな。ま、適材適所よね」
 ビョルンの髪を梳いて、チュ、チュ、と頭にたくさんキスを贈る。ビョルンが顔を上げて、唇にキスをする。浅く、深く、何度も口付けをして、鼻を擦り合わせる。
「いつもいつも、危険な任務をこなしてくれてありがとう。それから…ちゃんと無事に帰って来てくれて、ありがとう」
「あぁ…」
 ビョルンがグッとお尻を持ち上げてきて、向き合って彼の膝に座らされる。た、対面座位…。
「シャーラ、お前も…いつもありがとう。俺たちが心置きなく戦えるように、ああやって支えてくれていたんだな」
「ふふ、…ん…、そう言って、んむ、くれると、嬉し…」
 合間合間にキスをされて、まともに話せなくて笑ってしまう。
「ちょっと、んっ、…もー!」
 ふたりでクスクス笑いながら、何度もキスを交わす。ビョルンのが固くなっているのを感じて、腰を振って服越しに股で擦る。ドキドキと鼓動が高鳴って、お腹の奥が熱くなる。ビョルンがチロっと唇を舐めて来たので、それに答えようとして…ふと、視線を感じて横を向く。資料に夢中になっていたはずのイスが、じっとりとこちらを見ている…。
「…続きは夜ではなかったのか?」
「…あ。えーっと…」
「………」
「…し、資料に夢中になってたし…」
「………」
 イスの表情は変わらない。でも、その目は明らかに私を非難している。
「……ご、ごめんなさい…」
 よいしょ、とビョルンの膝から降りて、イスを抱きしめる。イスはでっかいため息をついて、私を抱きしめ返す。ごめん。資料を読んでたけど邪魔をして、イスも巻き込まなきゃいけなかったのかな。公平って難しい…。
「…イス、晩御飯作ろっか。お肉焼くの、イスに火力を調整してもらわなきゃ無理だし。ビョルン、ゆっくり休んでてね」
「ああ、わかったよ」
 ビョルンが「仕方ないな」という顔をして、ちょこっと肩をすくめてみせる。
 イスが資料を片づけてる間にビョルンに紅茶を淹れて、それからイスと一緒にキッチンに向かった。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪

奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」 「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」 AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。 そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。 でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ! 全員美味しくいただいちゃいまーす。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

不埒な魔術師がわたしに執着する件について~後ろ向きなわたしが異世界でみんなから溺愛されるお話

めるの
恋愛
仕事に疲れたアラサー女子ですが、気付いたら超絶美少女であるアナスタシアのからだの中に! 魅了の魔力を持つせいか、わがまま勝手な天才魔術師や犬属性の宰相子息、Sっ気が強い王様に気に入られ愛される毎日。 幸せだけど、いつか醒めるかもしれない夢にどっぷり浸ることは難しい。幸せになりたいけれど何が幸せなのかわからなくなってしまった主人公が、人から愛され大切にされることを身をもって知るお話。 ※主人公以外の視点が多いです。※他サイトからの転載です

異世界の美醜と私の認識について

佐藤 ちな
恋愛
 ある日気づくと、美玲は異世界に落ちた。  そこまでならラノベなら良くある話だが、更にその世界は女性が少ない上に、美醜感覚が美玲とは激しく異なるという不思議な世界だった。  そんな世界で稀人として特別扱いされる醜女(この世界では超美人)の美玲と、咎人として忌み嫌われる醜男(美玲がいた世界では超美青年)のルークが出会う。  不遇の扱いを受けるルークを、幸せにしてあげたい!そして出来ることなら、私も幸せに!  美醜逆転・一妻多夫の異世界で、美玲の迷走が始まる。 * 話の展開に伴い、あらすじを変更させて頂きました。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

処理中です...