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混血系大公編:第一部
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そんな雑談を交わしつつ、農家さんから朝採れ産地直送の、露店に並んでいる野菜もいくつか購入する。選別するまでもなく全部新鮮ってのがいいよね。まぁ今夜は全部スープにぶち込んでやりますけれども。何品も作るのって苦手なのよねぇ。
「パンは、家の近くで頼めばいいか。スイーツも、パン屋さんの近くで調達できるし。イス、あとどっか見たいとこある?」
「ない」
「じゃあ、家に帰ろう」
「ああ」
重い荷物はイスが持ってくれている。私たちはお互いに荷物を持っていない方の手を繋いで、また他愛のない話をしながら帰路についた。
家に帰ってから、イスと一緒に料理の下拵えをする。お肉は肉叩きで叩いて繊維を切っておいて、塩コショウとスパイスで味付けする。ビョルンが帰ってきたら、後で焼けばいいだけの状態にしておく。スープ用の野菜は、イスが手際よく刻んでくれた。さすが、一通りやってたって言うだけはある。
これならもう1品くらい、作っちゃおうかな。いまある材料でポテトサラダなら作れそうだし、私はそちらにとりかかることにした。マヨネーズなんてないから、ビネガーとオリーブオイルと塩胡椒で味付けになっちゃうけどね。スープに使うベーコンも、サラダ用にちょっとわけてもらおう。
卵はだいたい常備しているので、ゆで卵を作りつつジャガイモをゆでる。人参と玉ねぎを薄く切って、塩を振っておく。自分の作業の合間にイスの様子を伺うと、鍋に水をぶち込んでそのまま煮込もうとするので、「待て待て待て」と急いで止めた。
「なんだ?」
「なんだじゃないわい。ベーコンを炒めて、出た油で野菜を炒めてから煮込んでくれる?」
「なぜだ。煮込めば火は通るじゃないか」
「先に炒めた方が香ばしさが出るの。料理はね、基本的に手間かけた方が美味しくなるのよー」
前世みたいに、固形コンソメとかあればいいんだけどね。溶かせばどうやっても美味しくなるから。ここではそういうのないから、ベーコンとか野菜のうまみをできるだけ引き出すしかない。
「面倒だな」
「あはは、確かにね」
私のポテサラを作る過程を見つつ、イスが口を開く。
「ソレも、旨くするためのひと手間か?」
塩もみをして、ぎゅーっとしっかり野菜の水分を絞りながら私は頷く。
「もちろん。ポテサラは、水分が多いと味がぼやけるからね。しっかり水分を絞って、ジャガイモもゆでた後もう1回炒めて水分を飛ばすの。そうすると、味がしっかり入るよ」
「なるほど」
イスは納得できたらしく、私の言う通りにベーコンを炒め、出てきた油で野菜も軽く炒めてから煮込んでくれた。火加減は魔術で自由自在に調整している。一家に1人魔術師欲しいわ…。味付けは怪しい感じだったので、私が横から鍋に塩コショウを足していく。時おり味見をして、うん、いい感じじゃない?
「イス、味見してみて」
「ん…ああ、確かに、味が違うと思う」
「ふふ。でしょ?」
イスが違いをわかってくれたようなので、嬉しくなって笑顔を向ける。するとイスがこちらをじっと見つめてきて、「キスしてもいいか?」と聞いてきた。
「え。なによ急に」
「ダメか?」
「ダメなわけないでしょ」
ちゅ、と私から唇にキスをする。
「許可なんて、いらないよ。…あなたのしたいときに、キスをちょうだい」
「わかった。そうする」
イスは目を細めて、ほんの少しだけ口角を上げて。私の頬に手を添えて、唇に深いキスをくれた。
それからだいたい料理が出来たので、リビングに移動して紅茶を入れる。今度はリビングに設置してあるミニキッチンで、お湯を沸かす。魔導コンロ、マジで便利だわ。やっぱ火力をもっと上げられるようにしたいな。でもその前にお風呂作りたいしなー。作りたい物が山積みで困るわー、ホント。とりあえずお湯が湧いたので、紅茶を入れて、お茶請けにストックしてあったクッキーも出してっと。
「イス、砂糖は入れる?」
「クッキーがあるなら、いい」
「はぁい」
今日はそんなに頭を使ってないだろうしね。研究が煮詰まってる時なんかは、紅茶に何杯も砂糖入れててドン引きするけど。そんだけ脳が糖質を要求してるんだろうね。
紅茶を置いて隣にくっつくように座ると、またイスがキスをしてきた。ふふ、イスがキス魔になってる。唇を離して、私がイスの頬にキスをして。表情の変化は少ないけど、なんとなくイスが幸せそうな、嬉しそうな顔をしているように見えて嬉しい。大切な友達だったイスハークが、私といることで幸せになってくれるなら、私も嬉しい。
「あ、そうだ。一休みしたら、ショーンさん…地区長さんのところ言ってみる?バイオトイレのプレゼンするなら、場を作るよ」
衛生的なトイレのためなら、全面的に協力する所存でございます。
「ああ、そうだな。テストする場所を選定するのに難儀していたから、受け入れてくれるとなれば飛びつくだろう」
「そっか。それなら善は急げ、イスの休みがあるうちにやっちゃおうよ。来週の休日で提案してもよさそう?」
「1週間か。資料の作成と、発表の原稿は充分できるだろうが…できればデモ機も準備したい。それも担当者と要相談だな」
「わかった、通信具準備するよ。イスの部屋で話す?」
「いや、ここでいい」
「はーい」
すぐに私の部屋に置いてあった通信具を持ってきて、イスの前に設置する。イスは慣れた手つきで操作をして、魔道具の塔に繋いだ。
「パンは、家の近くで頼めばいいか。スイーツも、パン屋さんの近くで調達できるし。イス、あとどっか見たいとこある?」
「ない」
「じゃあ、家に帰ろう」
「ああ」
重い荷物はイスが持ってくれている。私たちはお互いに荷物を持っていない方の手を繋いで、また他愛のない話をしながら帰路についた。
家に帰ってから、イスと一緒に料理の下拵えをする。お肉は肉叩きで叩いて繊維を切っておいて、塩コショウとスパイスで味付けする。ビョルンが帰ってきたら、後で焼けばいいだけの状態にしておく。スープ用の野菜は、イスが手際よく刻んでくれた。さすが、一通りやってたって言うだけはある。
これならもう1品くらい、作っちゃおうかな。いまある材料でポテトサラダなら作れそうだし、私はそちらにとりかかることにした。マヨネーズなんてないから、ビネガーとオリーブオイルと塩胡椒で味付けになっちゃうけどね。スープに使うベーコンも、サラダ用にちょっとわけてもらおう。
卵はだいたい常備しているので、ゆで卵を作りつつジャガイモをゆでる。人参と玉ねぎを薄く切って、塩を振っておく。自分の作業の合間にイスの様子を伺うと、鍋に水をぶち込んでそのまま煮込もうとするので、「待て待て待て」と急いで止めた。
「なんだ?」
「なんだじゃないわい。ベーコンを炒めて、出た油で野菜を炒めてから煮込んでくれる?」
「なぜだ。煮込めば火は通るじゃないか」
「先に炒めた方が香ばしさが出るの。料理はね、基本的に手間かけた方が美味しくなるのよー」
前世みたいに、固形コンソメとかあればいいんだけどね。溶かせばどうやっても美味しくなるから。ここではそういうのないから、ベーコンとか野菜のうまみをできるだけ引き出すしかない。
「面倒だな」
「あはは、確かにね」
私のポテサラを作る過程を見つつ、イスが口を開く。
「ソレも、旨くするためのひと手間か?」
塩もみをして、ぎゅーっとしっかり野菜の水分を絞りながら私は頷く。
「もちろん。ポテサラは、水分が多いと味がぼやけるからね。しっかり水分を絞って、ジャガイモもゆでた後もう1回炒めて水分を飛ばすの。そうすると、味がしっかり入るよ」
「なるほど」
イスは納得できたらしく、私の言う通りにベーコンを炒め、出てきた油で野菜も軽く炒めてから煮込んでくれた。火加減は魔術で自由自在に調整している。一家に1人魔術師欲しいわ…。味付けは怪しい感じだったので、私が横から鍋に塩コショウを足していく。時おり味見をして、うん、いい感じじゃない?
「イス、味見してみて」
「ん…ああ、確かに、味が違うと思う」
「ふふ。でしょ?」
イスが違いをわかってくれたようなので、嬉しくなって笑顔を向ける。するとイスがこちらをじっと見つめてきて、「キスしてもいいか?」と聞いてきた。
「え。なによ急に」
「ダメか?」
「ダメなわけないでしょ」
ちゅ、と私から唇にキスをする。
「許可なんて、いらないよ。…あなたのしたいときに、キスをちょうだい」
「わかった。そうする」
イスは目を細めて、ほんの少しだけ口角を上げて。私の頬に手を添えて、唇に深いキスをくれた。
それからだいたい料理が出来たので、リビングに移動して紅茶を入れる。今度はリビングに設置してあるミニキッチンで、お湯を沸かす。魔導コンロ、マジで便利だわ。やっぱ火力をもっと上げられるようにしたいな。でもその前にお風呂作りたいしなー。作りたい物が山積みで困るわー、ホント。とりあえずお湯が湧いたので、紅茶を入れて、お茶請けにストックしてあったクッキーも出してっと。
「イス、砂糖は入れる?」
「クッキーがあるなら、いい」
「はぁい」
今日はそんなに頭を使ってないだろうしね。研究が煮詰まってる時なんかは、紅茶に何杯も砂糖入れててドン引きするけど。そんだけ脳が糖質を要求してるんだろうね。
紅茶を置いて隣にくっつくように座ると、またイスがキスをしてきた。ふふ、イスがキス魔になってる。唇を離して、私がイスの頬にキスをして。表情の変化は少ないけど、なんとなくイスが幸せそうな、嬉しそうな顔をしているように見えて嬉しい。大切な友達だったイスハークが、私といることで幸せになってくれるなら、私も嬉しい。
「あ、そうだ。一休みしたら、ショーンさん…地区長さんのところ言ってみる?バイオトイレのプレゼンするなら、場を作るよ」
衛生的なトイレのためなら、全面的に協力する所存でございます。
「ああ、そうだな。テストする場所を選定するのに難儀していたから、受け入れてくれるとなれば飛びつくだろう」
「そっか。それなら善は急げ、イスの休みがあるうちにやっちゃおうよ。来週の休日で提案してもよさそう?」
「1週間か。資料の作成と、発表の原稿は充分できるだろうが…できればデモ機も準備したい。それも担当者と要相談だな」
「わかった、通信具準備するよ。イスの部屋で話す?」
「いや、ここでいい」
「はーい」
すぐに私の部屋に置いてあった通信具を持ってきて、イスの前に設置する。イスは慣れた手つきで操作をして、魔道具の塔に繋いだ。
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